七夕防衛戦~目指せ、魔法少女!

作者:白鳥美鳥

●七夕防衛戦~目指せ、魔法少女!
「ちょ、ちょっと待つっす! そんなの聞いてないっすよ!!」
 何かを聞いたらしいシルフィリアス・セレナーデは、必死の形相だ。
「指令って何なんすか! あちしにはあちしの目的が……ああ、もう! 面倒事はさっさと終わらせてやるっす!」
 そう叫ぶと、シルフィリアスはジュエルジグラットに向かって走って行く。
「~~!! これが終わったら、絶対、魔法少女になってやるっす~~!!」

●ヘリオライダーより
「みんな、大変だよ!」
 デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、ケルベロス達に話しかける。
「七夕の魔力を利用してドリームイーターが動くんじゃないかと警戒していた、レーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)が、日本各地に潜伏していたドリームイーターが、ダンジョン『ジュエルジグラットの手』に向けて移動を開始しようとしている事を突き止めてくれたんだよ」
 現在の状況をデュアルは話し始めた。
「どうも沢山のケルベロスがダンジョンを制覇した事と、分たれた2つの場所を繋げる七夕の魔力によって、寓話六塔の鍵で閉ざされたドリームイーターのゲートが開かれようとしているみたいなんだよ。だから、ドリームイーター達は、ゲートの封鎖を維持し、ケルベロスを寄せ付けないようにと、戦力を集めているんだろうね」
 デュアルは真剣な表情になる。
「みんなには、この集結する強敵たちを迎撃して撃破して欲しい。集結するドリームイーターを撃破する事が出来れば、7月7日に開かれるゲートへの逆侵攻も可能になるかもしれないんだ」
 敵となるドリームイーターについてデュアルは説明し始める。
「相手のドリームイーターは、シルフィリアス・セレナーデ。魔法少女みたいなドリームイーターだね。えっと、同じ名前のケルベロスの子がいるんだけど、別物だからね。本人とくれぐれも間違えない様に。まあ、悪魔の角に羽と尻尾付きだし……まず間違えないんじゃないかな。とにかく、悪魔の角とか羽とか……それに魔法の杖も持っているけど、髪が触手みたいになってて、それからも魔法みたいな事が出来る感じかな。基本的に、魔法を巧みに操る存在だと思ってくれて間違いないよ。それを考えて戦いに望んでほしい」
「この戦いに勝利して、シュエルジグラットの扉が開かれれば、再び鍵で封印するために寓話六塔が姿を見せるかもしれない。上手くいくかは全てはみんな次第。みんなの勝利を心から願っているよ!」


参加者
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)
羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)
大首・領(秘密結社オリュンポスの大首領・e05082)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
スノードロップ・シングージ(抜けば魂散る絶死の魔刃・e23453)
神苑・紫姫(吸血鬼の岩櫃紫姫・e36718)
 

■リプレイ

●七夕防衛戦~目指せ、魔法少女!
「~~! 本当に面倒っす!!」
 ジュエルジグラットへ行く様に指示されたドリームイーター、シルフィリアス・セレナーデは、かなりイライラしていた。彼女の目的は魔法少女になる事。自由気ままの性格の為に今一つ乗り気では無いのは確かだったりする。
 そんな彼女の前に、見るからに怪しそうな人物が現れた。彼の名は、大首・領(秘密結社オリュンポスの大首領・e05082)。自称、世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大首領だ。
「フハハハ……我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスが大首領!!」
「……はっ、悪の組織!? 魔法少女の敵っす!!」
 魔法少女を目指すドリームイーター・シルフィリアスにとっては明らかなる敵。
「オリュンポスのアタシの役職なんでしたッケ。まあ破壊とかその辺の役目ですし、兎に角斬るkillするだけデス」
「ふ、ふふふ、悪の組織構成員に恐れをなしたかシルフィリアス! 掛かってくるがいい、相手してやる!」
 領に合わせる形で、同じく構成員であるスノードロップ・シングージ(抜けば魂散る絶死の魔刃・e23453)、その仲間の振りをするミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)が続く。
 目の前に現れた悪の組織。魔法少女としては見過ごせない状況。ドリームイーターは動揺していた。
「魔法少女ウィスタリア☆シルフィ参上っす」
 そんな中、杖を振り、光に包まれて魔法少女衣装に変身して可愛く決めポーズを披露するのは『本物』のシルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)。
「ま、魔法少女!?」
「悪の首領がここに来てるっす! 魔法少女として一緒に倒すっす!」
 悪の組織に魔法少女と状況に混乱しているドリームイーターに向かってそう協力を促すシルフィリアス。味方の振りをして油断を誘う作戦……なのだが。
「我が構成員であるシルフィリアスならば、本物もそれに相応しき装いを普段からしているに違いないだろう! さぁ、共に協力してシルフィリアスを倒そう。なに今なら、私につけばお前の好物であるポテチも特別につけてやろう!」
 悪の組織である筈の領からも勧誘を受けるドリームイーター。そもそも本物のシルフィリアスが領の組織の団員なので、作戦が微妙にずれたらしい。
「……」
 しばし、沈黙が訪れる。
「ちょ、ちょっと、勧誘しちゃ駄目っすよ! あちしが魔法少女仲間と騙して不意打ちする予定が狂うっす!」
「し、しかし、シルフィリアス、お前は我が構成員で……いや待て、どっちが本物のシルフィリスなのだ!?」
 シルフィリアスの言葉に領は慌てる。そして、考える。……今、悪者なのはどちらのシルフィリアスなのか。彼の構成員はどちらなのか? 見た目はドリームイーターの方が悪魔の角や翼もあって悪の構成員っぽい。もう一人も良く知っているシルフィリアスであり、文句を言ってくる辺りが本物っぽい。……彼の中で、一段と区別がつかなくなった。そして周りも何と言って良いのか分からなくなり、また沈黙が訪れる……。
 その沈黙を破ったのはドリームイーターの方だった。
「……分かったっす」
 わなわなと震えながら、ドリームイーターはびしっとシルフィリアスに向かって杖を突きつけた。
「この魔法少女は偽物っす! 魔法少女は悪の組織に加担しないし、手も繋がないっす! 偽物は許せないっす!!」
「……至極まともな反応ですわね」
「どんな魔法少女が許しても、このドリームイーターはシルフィを許さないって感じね……」
「偽物と本物の区別が面倒デスネ。何か目印つけマショウ」
「先に謝っとこう……シルフィリアスちゃん、間違ったらゴメンね~?」
 ドリームイーターの反応に、神苑・紫姫(吸血鬼の岩櫃紫姫・e36718)と羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)は深いため息をつき、スノードロップと平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)は既に区別がつかない発言をしている。
 しかし、恐らく今、一番、正義の魔法少女になろうとしているのはドリームイーターの方だった。
「偽物の魔法少女も、悪の組織も……この魔法少女シルフィリアス・セレナーデが許さないっす!」

●魔法少女誕生!
「偽物の魔法少女と悪の組織は纏めて一掃っす! くらえ、シューティング☆スター!」
 くるりっと杖を振りまわすと、ドリームイーターは可愛らしい形をした大粒の氷の渦を巻き起こし、シルフィリアス、領、和へと撃ち放った。
「ふっ、我が演技で見事正体を現したようだな!」
「あ、あれ……? いま攻撃を受けたのは……はっ、そうだ! ボクたちのシルフィリアスちゃんが、お胸が大きいはずがない……!」
「ちょっと和さん、その理解の仕方、可笑しいっす!」
 氷の攻撃を喰らいながら、領は上手くいったと嘯き、和は変な理解を示し、それにツッコミを入れるシルフィリアス。
 そんな彼女は、ふらりと立ち上がるとドリームイーターに寄っていく。顔付きが怖い。そして、長い紫の髪の毛を触手の様に扱いながらドリームイーターを絡め取った。
「あちしの偽物なのにこの胸はおかしくないっすかね」
「ひっ……!」
 明らかに恐怖の表情を浮かべるドリームイーター。
「そんなもの見せつけるから胸囲に乏しい子が暴れるじゃないっすか」
 そんな様子に構う事無く、シルフィリアスは目にハイライトのない笑顔を浮かべながら両手でドリームイーターの大き目な胸を揉もうと……。
「喰らえ、マジカル結衣菜キック!!」
 恐怖に震えているドリームイーターにセクハラ行為を行おうとしているシルフィリアスに結衣菜の飛び蹴りが入った。
「さ、早速胸囲に乏しい子がっ」
「胸囲に乏しい子じゃない……じゃなくてセクハラするんじゃなーい!! 見なさい、泣いてるじゃない!!」
 結衣菜が指差す先にいるドリームイーターは実際、半泣き状態でかなりショックを受けている模様だ。
「……シルフィリアス。秘密結社オリュンポスとはいえ、セクハラは許されない行為だぞ?」
「トラウマを植え付けてやろうと思っていましたが……必要無さそうですね。可哀想に思えてきました」
 続けて領とミリムにも冷たい目で言われるシルフィリアス。
「な、なんなんすか!? 今回は誤射じゃなくて、お説教される方っすか!?」
「……シルフィ様。相手が偽物でも、何でもしても良い訳ではありませんのよ?」
 時々、シルフィリアスの変装をしている紫姫も強く言っておく。今後、自らにも危険が及ぶかもしれないので、余計に強く念を押して。
「魔法少女になるのは……あちしなんっす……あちしこそ、本物の魔法少女。本物の魔法少女の戦い方見せてやるっす! ……偽物はこの世から消えるっすよー!!」
 半泣きになっていたドリームイーターは、気を持ち直したらしく、ステッキと触手の様な長い髪を使って浮かび上がらせたのはメルヘンな可愛らしい世界。可愛い生き物たちが踊り歌い、シルフィリアスと周囲の仲間達を巻き込んで夢の中に連れて行く。
「ボク知ってるの……最近の魔法少女はとってもスタイルが良いの……つまり、こっちのお胸の乏しいシルフィリアスちゃんが偽物なの~!」
 和が見事にかかり、本物のシルフィリアスに向かって襲い掛かっていく。
「った~! 今度はこっちのパターンっすか~! それと、あちしは乏しくないっす!」
「和様、しっかりなさって下さいませ」
 いきなりシルフィリアスに攻撃を仕掛けた和を紫姫は慌ててピンクのオーラを使って癒した。
「ご、ごめんなさいなの~」
 和は同様の状態になってもおかしくないシルフィリアスと領を星の力を使って癒していく。
「皆さん、見てください。『本物の魔法少女』が怒りの眼差しでこちらを見ていますよ」
 ミリムの冷静な言葉に、皆はドリームイーターの方を見る。彼女の言葉通り、激しい怒りを向けている『本物の魔法少女』が確かにそこにいた。
「さあ、皆さん。真剣に行きますよ!」
「デスデース♪ 魔法少女は真っ二つデース♪」
 賑やかな仲間達にミリムはそう言うと、ドリームイーターに向かって花の嵐を放つ。それに続いて、怖い事を言っているスノードロップの無数の霊体を憑依させた斬撃が襲った。
「まんごうちゃん、一緒に頑張るわよ」
 シャーマンゴーストのまんごうちゃんにそう声をかけると、結衣菜は半分呆れつつエクトプラズムを使ってシルフィリアス達を回復し、まんごうちゃんもサポートする。
「頑張ってね~」
 和もスノードロップ達へとオウガ粒子を放って集中力を高めていった。
「魔法少女は真っ二つとか怖いっす……」
 間違えないで欲しいという視線をスノードロップに送りつつ、シルフィリアスも杖を構える。
「領さん、頼りにしているっすよ」
「任せろ、シルフィリアス」
 シルフィリアスは間違えない様にという念も込めて領に協力を求め、それに彼も頷く。シルフィリアスは雷の力を、領は精神的な力を込めてドリームイーターに撃ち放った。
「吸血鬼・岩櫃紫姫、参ります! 星良姉様も、お願い!」
 紫姫は蝙蝠の翼を広げ、そこから放たれる光が結衣菜達を包み、護りを高めていく。星良も真面目に鎌を振るって斬りつけた。

●魔法少女シルフィリアス・セレナーデ
「悪の組織め! 凍てつく吹雪、シューティング☆スター!」
 ドリームイーターは氷の渦を生み出すと再びシルフィリアス達に向かって放つ。その凍てつく攻撃から紫姫はシルフィリアスを、星良は和を庇った。
「あら、今助けた方がホンモノでしたっけ?」
「本物っす! ってゆーか、冗談言ってる場合じゃないっすよ!」
 この段階でもボケた反応をする紫姫に、シルフィリアスは必死に反論する。確かに、今回の相手は本気でこちらを悪の組織としてみなし、魔法少女として倒そうとしているからだ。……覚醒してしまった原因はこちらにあるのは確かなのだが。
「……不本意ながら、本当に悪の組織になってしまった感じがあるのですが、倒させて戴きますよ」
 ミリムは薔薇の花弁を舞い散らせながら、幻想的な突き攻撃をドリームイーターに向かって繰り出す。
「喰らいつけ、血染めの白雪」
 呪詛を載せた魔刀『血染めの白雪』で、スノードロップも続けざまに斬りつけた。
 結衣菜はエクトプラズムを使って、和達に護りの力を与え、まんごうちゃんは紫姫の回復に努める。和は自由なるもののオーラを使ってミリムに護りの力を与えた。
 仲間達が回復に努める間にシルフィリアスは、杖の先端に光と共にエネルギーの塊を集めると先端をドリームイーターに向けて光のエネルギーの塊を撃ち放つ。タイミングを合せるように、領も竜砲弾を撃ち込んだ。更に紫姫の漆黒の魔弾が撃ち込まれ、ポルターガイストによって様々な物が叩き込まれた。
「偽魔法少女? それとも悪の組織の大首領?」
 シルフィリアスと領、どちらを狙うか考えを巡らせているらしいドリームイーター。髪がゆらゆら揺れている所からすると、それに関したものだろう。
「そうはさせませんよ!」
 ミリムはドリームイーターに組み付き、視線をこちらに向けさせようとする。
「とっておきを見せちゃるデース!! わが声に従い現れヨ!! 抜けば魂ちる鮮血の刃!! ダインスレイブ!!」
 スノードロップは、魔法で作り出した生き血を浴びるまで鞘に納まらないという魔剣を召喚し、ドリームイーターを引き裂いた。
 結衣菜は一旦、回復は和に任せて、エクトプラズムで大きな霊弾を作り上げると、ドリームイーターに放つ。その間に和はオウガ粒子をスノードロップ達に重ねるように放ち、まんごうちゃんも回復に回った。
「全て我が掌の上だ!」
 領は浮遊する歪な巨腕を具現化させると、ドリームイーターを殴りつけ、叩き潰す。そのタイミングに合わせてシルフィリアスの放つ電撃が走った。更に、紫姫は尋常では無い怪力がドリームイーターを引き裂き、そのエネルギーを吸い取ると、星良の鎌が舞う。
「……魔法少女が悪に屈する訳にはいかないっす!」
 ドリームイーターは可愛らしいメルヘンチックな生き物たちを呼びだすと、歌い踊り、眠りに誘っていく。それを紫姫と星良がシルフィリアス、和を庇った。
「薔薇の剣戟で酔いしれるがいいです!」
 ミリムは薔薇の花弁を舞い散らせ華麗な剣技でドリームイーターを翻弄する。そこに、スノードロップの魔刀が呪詛を載せて斬りつけた。
 和は傷ついている紫姫達に向けて星の力を使い癒していく。
 結衣菜はドリームイーターにナイフを突き立てると、切り刻んでいった。
「シルフィ、後は任せたわよ。というか、責任取って頂戴」
「分かってるっすよ!」
 結衣菜の言葉にシルフィリアスは頷く。
「行くっすよー」
 シルフィリアスは杖の先端に光とエネルギーを集めて、その塊をドリームイーターに向かって放った。
 その一撃を受けてドリームイーターは可愛らしいリボンを舞わせながら消えていったのだった。

●魔法少女達へ向けて
「……流石に今回は本気でしたわね」
「みんな、お疲れ様~」
 疲れを口にする紫姫と、皆を労う和。
「ったく、とんでもない偽物っす!」
 怒りを露わにするシルフィリアスに、結衣菜は冷たい視線を送った。
「……今日のシルフィの行いで、魔法少女の信頼は地の底に落ちたわよ」
「確かに失墜しまシタネ」
「他の魔法少女の皆さんに弊害が及ばないと良いのですけれど……」
 スノードロップとミリムも頷く。今回、悪の組織の一員の魔法少女としてのシルフィリアスという存在が明かされたからだ。……いや、周りも知っているかもしれないけれど、少なくとも敵に悪の組織側とみなされた事は確かなのだ。魔法少女の信頼に関わる。
「分かったっすよ……。信頼を取り戻せるようにするっす。……多分」
「多分、じゃなーい!!」
 あんまり反省している様子の無いシルフィリアスに対して、結衣菜の飛び蹴りが入った。
 ……事件としては解決したが、この一件が他の魔法少女達に知られない様にしないといけない。そう思う一同だった。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年7月7日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。