七夕防衛戦~オオカミさんはご機嫌ナナメ

作者:質種剰

●呼び集められし者たち
 東京都。
 港区より上空5000mの位置に浮かんでいる『ジュエルジグラットの手』。
 寓話六塔戦争に敗北して以来、ドリームイーターはゲートの扉へ鍵をかけて封鎖し、引き篭もるようにして過ごしていたが、その扉に最近、異変が起こった。
 何らかの力の影響で、綻びが生じ始めたのである。
 異変に気づいた寓話六塔らは、すぐに手を打った。
 扉の封鎖を維持するべく、日本各地に散らばっていたドリームイーターへ、ジュエルジグラットへ集結せよと命じたのだ。
「ケッ……今更指令なんて何様のつもりダ」
 狼の獣人『赤ずきんのオオカミ』も、命令を受けたドリームイーターの1人である。
「あの『青ひげ』ヤロウ、次に会ったらタダじゃおかネー……!!」
 指令を下す立場の相手に対してやたらと敵愾心剥き出しではあるが、それでも赤ずきんのオオカミの足は、素直に港区へと向かっているのだった。

●強敵を迎え撃て
「レーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)殿が、日本各地に潜伏していたドリームイーターの動向……ダンジョン『ジュエルジグラットの手』へ向けて移動開始する気配を、突き止めてくださったであります」
 レーグル殿が七夕の魔力を利用してドリームイーターが動くのではないかと警戒なさっていたお陰であります——小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が説明する。
「どうやら、多くのケルベロスがダンジョンを制覇した事をきっかけに、分かたれた2つの場所を繋げる七夕の魔力によって、寓話六塔の鍵で閉ざされたドリームイーターのゲートが開かれようとしてるであります」
 ドリームイーターたちは、ゲートの封鎖を維持してケルベロスを寄せつけまいと、急いで戦力を集めているのだろう。
「皆さんには、この集結する強敵たちの迎撃、撃破をお願いしたいのであります」
 集結するドリームイーターを撃破する事が出来れば、7月7日に開かれるゲートへの逆侵攻すら可能かもしれない、とかけらは請け負った。
「さて。皆さんに戦っていただくドリームイーターは『赤ずきんのオオカミ』。……服は赤ずきん、頭はオオカミという二足歩行のドリームイーターであります」
 赤ずきんのオオカミは、赤い糸で縫い止められた筈の大きく裂けた口をガバッと開いて、噛みつき攻撃を主に仕掛けてくるという。
 また、モザイクが詰まったバスケットを豪快に振り回して近距離の敵を複数体一気に斬り裂き、凄まじい瞬発力によって文字通り足元を掬ってくるらしい。
「他にも、ボタンでできた目から炎を吐いて広範囲へ理力に満ちた魔法攻撃をする事もありますから、お気をつけくださいまし」
 そこまで伝えると、かけらは彼女なりに考え得る予測を付け加えて、説明を締め括った。
「ジュエルジグラットの扉が開かれれば、再び鍵で封印する為に、寓話六塔が姿を見せる可能性が高いであります。うまくすれば、ゲートの封鎖を解くだけでなく、寓話六塔を討ち取るチャンスになるかもしれませんね」


参加者
アルフレッド・バークリー(エターナルウィッシュ・e00148)
神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)
ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)
岡崎・真幸(花想鳥・e30330)
言葉・彩色(妖シキ言ノ刃・e32430)
月白・鈴菜(月見草・e37082)

■リプレイ


 東京都港区。
 ケルベロスたちは、寓話六塔の指令に従ってジュエルジグラットへ向かっている『赤ずきんのオオカミ』を待ち受けるべく、ジュエルジグラットの真下に網を張っていた。
 何せ、あれだけ巨大な手が上空に浮いているのである。その直下から波が引くように遮蔽物も障害物も少なくなり、図らずも戦闘に適した場所になったのは自然な成り行きであろう。
「何だテメーら、通行の邪魔だ邪魔ダ!!」
 赤ずきんのオオカミは、ファンシーな姿に不似合いなほどのガラの悪さを発揮し、出会い頭に因縁——もっとも、8人の邪魔をする意志は明確な為、因縁とは言い難いかもしれない——をつけてくる。
「こいつは赤ずきんなのか狼なのか?」
 チンピラのように威嚇する赤ずきんのオオカミを見て、思わず眉根を寄せるのは神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)。
 後ろで纏めた長い銀髪と紫色の瞳が特徴的な、シャドウエルフの青年。
 性格は軽い口調から伺えるように楽観的だが、その実責任感が強く、自分へも他人へも厳しいところがある。
 ケルベロスへ覚醒したのを契機に父親の過干渉から脱するべく、従妹夫婦の元にて下宿中だそうな。
「狼の皮かぶった赤ずきんだとサイコパスって言うのか? よりヤバい奴感あるな」
 瑞樹は今時の若者らしい言い回しで率直かつ過激な感想を述べると、オオカミへ光の尾煌めく飛び蹴りを放った。
「あら赤ずきんちゃん。そんなに急いでどちらまで? ん、これは別のお話だったかしら……」
 氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)は、オオカミが逃げないよう退路を塞ぎながら、冗談を言う余裕も見せた。
 豊かな黒髪と灰色の瞳が大人しそうな印象を与える、鎧装騎兵の少女。
 基本的に明るく誠実な性格で、一般人の前へ出る時は鎧装騎兵っぽい装備を整えるところからもその真面目さが窺える。
 ケルベロスとして依頼や戦争に挑む傍ら、大学に通って情報工学を勉強しているらしい。
「へっ、七夕の魔力さえなけりゃこんな面倒なおつかい、誰が行くかってんダ」
「七夕の魔力、そういうのもあるのね……上手く利用できるように頑張りましょうか」
 忌々しげに吐き棄てるオオカミを前に、かぐらは小型治療無人機の群れを器用に操って、前衛陣の守りを固めた。
「分かたれた二つを繋ぐ魔力、かぁ……」
 一体ゲートはどんな状態だろうと、天高く浮かぶジュエルジグラットの手をふと見上げるマヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)だが、オオカミの包囲に抜かりはない。
 夜明け色の瞳と髪に咲いた赤いハイビスカス、褐色の肌が異国情緒を漂わせるオラトリオの女性。
 良くも悪くも素直で純真な性格をしていて、その生真面目さと他人への深い思いやりが彼女の魅力だろう。
 シャーマンズゴーストのアロアロは、かなり人見知りする為か、今日も今日とてフルフル震えていた。
「ぬいぐるみっぽくてファンシー……といえなくもないかもだけど、だいぶイライラしてるみたいだね……」
 マヒナはオオカミの外見を興味深く観察する傍ら、エクトプラズムで作った疑似肉体を前衛陣へあてがい、異常耐性を高める。
 アロアロも主の意思に忠実に、非物質化した爪を振るってオオカミの霊魂を傷つけた。
「オオカミさん、ちょっと寄り道いかがですか?」
 ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)は、口先だけ至極穏やかにオオカミへと語りかける。
 水晶のように透き通った水色のツノと、緑が鮮やかな長い髪、褐色の肌を持ったドラゴニアンの女性。
 細い目や弧を描いた口元からいつも笑顔のように見えるが、これが素の表情だったりする。
 性格はマイペースで時に辛辣な一面を覗かせるも、普段は傍観者に終始している。
「ケルベロスだかナンだか知らねぇが、オレサマは今急いでんだヨ!!」
 オオカミは苛立ちを抑えきれない様子で、広範囲に炎を吐きつけてきた。
「あっつ……!」
 メディックのマヒナを背中で庇いながら、かぐらが呻く。
「悪いオオカミは猟師に狩られるものですよ」
 ラーナは微かに皮肉めいた声音を響かせると、超硬化した爪でオオカミの腹を引っ掻き、呪的防御ごと服や皮膚を切り裂いた。
 一方。
「……やっぱり……そんなに楽しくない……」
 月白・鈴菜(月見草・e37082)は、ヘリオンから降下してこっち、ジュエルジグラットの手の下へ着いても尚、どこか憮然とした様子である。
 それというのも、彼女は前回と同様、上空で小檻に蹴落とされていたのだ。
 風の団団長がいない空虚感を無自覚ながら埋めるべく、彼と同じ行動を取っている鈴菜。
「……もしかして性別の違いなら……今度は蒼眞『に』飛び込んでみようかしら……?」
 彼が小檻へ飛び込む愉しみを自身では体感できない理由をそう憶測して、
「……でも……もしかけらみたいに嫌がられたら……」
 鈴菜はどこか上の空な様子でオオカミへフローズン・ブルームを射ち込み、急速に凍てつかせるのだった。
「ボクたちもとうとう、受けてばかりじゃなくこちらから行動を起こせるようになったんですね。感慨深いです」
 と、しみじみした風情で呟くのはアルフレッド・バークリー(エターナルウィッシュ・e00148)。
 儚くも優しい微笑が印象的な、金髪の少年だ。
 フォークランド諸島出身故か本土に憧れを抱く紅茶党で、特にアッサムが好きらしい。
 最愛の義妹の為にのみ生き、鬼桜と狂桜の攻性植物を操って戦う鹵獲術士でもある。
「では、嚆矢といきましょう。フォートレスキャノン、全力全開!」
 アルフレッドは歴戦に裏打ちされた自信を漲らせて、アームドフォートの照準を合わせる。
 主砲から一斉発射された砲弾たちが、吸い込まれるようにオオカミへ命中、苦痛を伴う激しい衝撃を与えた。
 他方。
「あれだけの数、一体どこへ隠れていたのだかな……まあ、敵戦力をある程度削る良い機会なのかね」
 岡崎・真幸(花想鳥・e30330)は、港区目指して続々と集結しているドリームイーターたちの事を考えて、呆れとも感心ともつかぬ溜め息をついた。
 偏屈でキッツい性格と上から目線、目つきの悪い人相が特徴的なオラトリオの男性。
 短く整えた髪には赤白黄の彼岸花が咲き、雰囲気だけなら美形にも見えなくはないが、最近は伴侶への不器用な愛情表現が残念さをいや増している。
 ちなみに料理の腕は壊滅的だが、本人曰く食材を切るだけなら得意らしい。
「……こいつ、オオカミなのか? 童話になぞらえた存在ならそれはそれで気になる」
 オカルト研究家としての性なのか、しげしげとオオカミを眺め眇めつする真幸。
 その傍ら、ジグザグに変形したミサキの刃で斬りつけ、奴の肉が治りづらい形に斬り刻むのも忘れなかった。
 チビは属性インストールを後衛陣に試みて、少しでも火炎による負傷を回復させようと必死だ。
 さて。
「はてさて——同じ語り部に語られた御話、赤ずきんのその後のオオカミの怪異」
 言葉・彩色(妖シキ言ノ刃・e32430)は、何やら赤ずきんのオオカミとは因縁浅からぬ仲らしく、抑揚のない声音へ微かな複雑さを乗せて笑う。
 笑顔の白狐面で覆い隠した内側へも常に笑みを貼りつけている、どこか底知れない雰囲気の巫術士の女性。
「食らった人に化け、それに親しい人を騙してまた食らう……元はそういう童話の怪談だったかな?」
 流石は怪談話が好きで語るのも得意なだけあって、彩色にかかれば赤ずきんもおどろおどろしい怪談へと変貌を遂げる。
「『彼女』はもういないけれど、このオオカミは、ボクが収集しよう」
(「『妖シキ言ノ刃』とは、そういう怪談(ことば)なのだから。『言葉彩色』とは、そういう怪異(いろ)なのだから」)
 ——『私』は、親友にそう語って貰ったケルベロスなのだから。
 渦巻く感情をちらとも表に出さず、それでいてオオカミの感情を暴きにかかる彩色。
「ではでは、御耳と御目々を同時に拝借。今宵を彩るは『妖シキ言ノ刃』。怪談紡いで語り部騙る、白狐面の怪異譚。どうか、最期の時までお楽しみ頂けますよう」
 滑らかな舌がすらすら回って、不可思議な言葉の刃がオオカミの胸を貫き、寒風吹き荒ぶ空虚な内面を曝け出す。
 幾らモザイクで彩っても隠し切れないと。
 一度失ったものは例えモザイクを晴らしても戻る事はないと。


 鏡を至近距離でずっと翳されるように自らの見たくもない内面を突きつけられて、喜ぶ人間はいない。
「テメェ……」
 オオカミは怒りを爆発させて、モザイクバスケットを振り回してきた。
「!」
 アロアロがラーナを庇って斬撃並みに鋭い殴打を喰らう。
「青ひげとやらの言っていた季節の魔法が気になる。季節、なら星まつりの七夕だけではないよな」
 と、眉間のシワをますます深くして思案するのは真幸。
「……今は考えるより先に潰すか」
 手早く異界の神を召喚するや、その白く輝く醜悪な神に凍てつく無差別攻撃を好きにやらせた。
 オオカミの凍傷がより酷くなる一方、アロアロがチビのヒールによって態勢を立て直している。
「おおかみだけど赤ずきんの恰好なのな。血染めの赤なんだろうけど、どっちつかずな感じだな」
 新たな血で染めてやろうとでも言いたそうに、瑞樹は釘が沢山生えたエクスカリバールをフルスイング。
「グホォッ……!」
 頭を撲たれたオオカミが吹っ飛ぶほどの大打撃を齎した。
「あれ、そういえばあのダンジョンの側に来るの初めてかも……何度も攻略してくれた人に感謝ね」
 かぐらはジュエルジグラットの手を改めて遠目に眺めながら、ドラゴニックハンマーを砲撃形態へ変化させる。
 現れた砲口から竜砲弾をぶっ放して、オオカミの平衡感覚を容赦なく奪った。
「タナバタってオリヒメサマとヒコボシが無事会えますように、って願う日だし、ふたりにあやかって普段会えない人に会いたい、って願う人も多いよね」
 どことなく神妙な面持ちで、ぽつりと呟くのはマヒナ。
「魔法の源は誰かの願い、なのかもしれないね……」
 Hoku loaの力で自分とかぐらと大自然を霊的に接続して、彼女の傷を大きく癒した。
「暖炉より熱く、オオカミ焼きはどうですか?」
 ラーナはルドラの子供達へ己が地獄を纏わせると、オオカミを力いっぱいぶっ叩いて火傷を負わせた。
「……赤ずきんのオオカミは……どうして指令に従うのかしら……」
 掌を翳して竜語魔法を詠唱する最中、ふと感じた疑問を口にするのは鈴菜。
「……そんなに嫌なら従わなければいいのに……」
 彼女らしい物言いでオオカミへ冷めた視線を送ると共に、放たれたドラゴンの幻影がオオカミの身体へ燃え移り、勢いよく焼き尽くした。
「『季節の魔法』はボクたちケルベロスがいただきました。ゲートが開くところを指をくわえて見ていて……くれるわけないですよね」
 アルフレッドはオオカミをにこやかに挑発してから、古代語の詠唱を始める。
「自分たちの敗北を知らぬまま逝かせてやるのもまた慈悲の一つ」
 魔法光線を放ってオオカミの胸を撃ち貫くと、その身体が石のように重くなる呪いを発動させた。
「今よりこの場を彩るは、過去写す紫鏡の御話――」
 惨殺ナイフの鏡面が如き刀身へオオカミの忘れたい過去を映しながら、彩色がグラビティに相応しい言葉を紡ぐ。
 具現化したトラウマは何やら人の形をとってオオカミを物理的に攻め始めたようだが、奴にしか見えない為にそれが誰なのかまでは、わからない。


「夢喰いにはオカルトっぽい行動を取る奴もいるし興味はある……が、原因が分かればただの事象か」
 つまらん——と当のドリームイーターを前にして、まるでツンデレのような、それ以上の屈折した憧憬のような複雑な感情を吐露する真幸。
 それでもミサキとマキナを手に舞う動作は正確で、オオカミを解体するぐらいの威力があった。
「使うかギリギリまで迷ってたけど、やっぱり御業宿しておいて正解だったかな」
 瑞樹は半透明の『御業』に炎弾を撃たせて、オオカミを焼き捨てる勢いで燃え上がらせる。
「一撃たりとも外すわけにはいかない……」
 と、ドラゴニックハンマーへ雷の霊力を宿すのはかぐら。
 ハンマーの重量を感じさせない神速の突きをオオカミへ繰り出し、空腹の腹をバリッと突き破ってみせた。
「『フラをどうしても踊りたいなら、恥じらいは家に置いてこよう』……さあ、一緒に!」
 マヒナはハワイのことわざを用いてオオカミを踊りへ誘う。
「げっ、ナンだこれ、体が勝手に……!?」
 自ら心底楽しそうにフラ——フラダンスを踊ると、グラビティの力でオオカミにも同じように踊らせて、奴の戦意を幾許か削いだ。
 アロアロは変わらず爪と原始の炎を交互に放って、オオカミの体力を着実に減らしている。
「こうだったでしょうか?」
 うろ覚えのコマンドから鋭い足技を繰り出すのはラーナ。
 テキトーながらに力の籠った爪先がオオカミの顎を見事に蹴り上げ、そのまま連続コンボを叩き込んだ。
「……赤ずきんのオオカミは……性別はどちらなのかしら……?」
 氷結輪と竜語魔法でオオカミの体温を自在に上下させていた鈴菜が、ふと首を傾げる。
「……服装は女ものだけど……女装している方はいっぱいいそうだし……」
 フローズン・ブルームが身体へ深々と突き刺さって絶叫しているオオカミの声は、若い男のそれに聴こえた。
「畜生、それもこれも全部青ひげのせいダ……」
 もはや致命傷を負っていると言って差し支えないほど重傷なオオカミが、今更ながらに敗色を悟って逃げようとする。
「どこへ行く気です? ボクらを置いていくなんてつれないですね」
 だが、それを許すアルフレッドではなく、そもそも8人がかりで囲んだ包囲網が簡単に崩れる筈もなかった。
「お互い全力でいきましょう! そしてあなたをここで討滅します」
 言うや否や、青く透き通った正八面体のドローン『Device-3395x』を多数飛び回らせ、全方位からの同時攻撃をお見舞いするアルフレッド。
「グエッ!!?」
「目的地へは決して行かせない。他のところもここと同じはずですよ」
 背中や頭上から容赦なく撃たれて遂に膝をつくオオカミを前に、アルフレッドは勝利を確信した。
「今よりこの場を彩るは、傷抉る一人鬼ごっこの御話――」
 そして、虫の息の『赤ずきんのオオカミ』を最後に仕留めたのは、彩色の惨殺ナイフによる一撃であった。
「『赤ずきんのオオカミ』……回収完了」
 オオカミの中から何某かの魔法もしっかり鹵獲したようで、手応えを感じながら——これにてへいまく——と呟く彩色。
「よくよく考えてみれば、腕が残された時はずいぶん驚かされましたけど、今となっては見慣れてしまいましたね」
 ラーナは、その細い目で遥か上空の手を見上げて、感慨深そうに呟く。
「だからといっていい景色とも言えませんし……さてさて、七夕には何と出会えるんでしょうね」

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年7月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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