七夕防衛戦~嘘を食らう男

作者:なちゅい


 ある夜。その男はゆらりと動き出す。
「ついに……、動き出すんだね」
 その男は、まるでタバコの煙のように口からモザイクを吐き出す。
 黒く長い髪に、物憂げな表情。シャツにズボンの上から黒いフード付きのローブを纏い、ロングブーツを履いている。
 そして、左手に大きな鍵の剣。右手には革表紙の本を持つ。
 『嘘喰らいのエドヴァルド』という名の彼はテレパシーのようなもので何やら指令を受けたらしい。
「ジュエルジグラットはあるのは……東京都港区、だったね」
 再び、モザイクの煙を吐き出す彼は、物静かで厭世的な印象を抱かせる。
 それでも、指令とあれば行かざるを得ないといったところか。
 彼は手にする革表紙の本を開くと、そこからもモザイクが溢れる。
 嘘が欠損したエドヴァルドは、己のモザイクを晴らすべく様々な嘘を収集していた。
「今回こそ、このモザイクは晴らせるだろうか」
 そんな期待も抱きながらも、彼は東京都港区上空に浮かぶ『ジュエルジグラットの手』を目指すのだった。


 ヘリポートにて。
 今度はドリームイーターに大きな動きがあったということで、ヘリポートへとケルベロス達が集まる。
 すでに、レーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)は七夕の魔力を利用し、ドリームイーターが動くのではないかと警戒していたそうだが、それを察知してくれたらしい。
「日本各地に潜伏していたドリームイーターが、ダンジョン『ジュエルジグラットの手』に向けて移動を開始しようとしているようなんだ」
 ケルベロス達へ、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)はそんな説明を行う。
 どうやら、多くのケルベロスがダンジョンを制覇した事と、分たれた2つの場所を繋げる七夕の魔力により、寓話六塔の鍵で閉ざされたドリームイーターのゲートが開かれようとしているようだ。
 ドリームイーター達はゲートの封鎖を維持し、ケルベロスを寄せ付けないように戦力を集めているのだと思われる。
「皆には、この集結する強敵達を迎撃、そして撃破を頼みたいんだ」
 集結するドリームイーターを撃破する事が出来れば、7月7日に開かれるゲートへの逆侵攻すら可能かもしれない。

「敵となるドリームイーターは、『嘘喰らいのエドヴァルド』だね」
 エドヴァルドは個人で行動し、配下などは連れていない。
 物憂げな青年魔法使いといった容姿の彼は『嘘』が欠損しており、それを手にする革表紙の本に収集しようとしているらしい。
 実際、エドヴァルドはそうして活動を行っていたようだが、ドリームイーターの勢力『寓話六塔』の指示を受けた彼は、ジュエルジグラットの手を目指している。
 この為、その近辺に向かうことで、このドリームイーターと遭遇できるはずだ。
「『嘘喰らいのエドヴァルド』は手にする鍵の他、モザイクを飛ばすことで嘘を感知したり、実際に嘘を食らおうとしてくるようだね」
 また、受けた傷をモザイクで補修するグラビティも持つようだ。

 一通り敵について説明したリーゼリットは、さらに話を続ける。
「皆のダンジョンの探索が、ドリームイーターのゲートを撃ち破る力となったようだよ」
 ともあれ、ジュエルジグラットに集まるドリームイーターを倒し、次の戦いに備えたい。
 ジュエルジグラットの扉が開かれれば、再び鍵で封印する為に寓話六塔が姿を見せる可能性が高い。
「うまくいけば、ゲートの封鎖を解くだけでなく、寓話六塔を討ち取るチャンスになるかもしれないね」
 ――ドリームイーターへと攻撃する大きなチャンスを見逃してはならないよ。
 リーゼリットはケルベロス達へとそう告げ、説明を締めくくったのだった。


参加者
朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)
レヴィン・ペイルライダー(秘宝を求めて・e25278)
伊織・遥(自縄自縛の徒花・e29729)
水瀬・和奏(フルアーマーキャバルリー・e34101)
アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)
霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)
エルム・ウィスタリア(好奇心の塊・e35594)
茅宮・火奈(赤眼護剣・e56465)

■リプレイ


 とある夜。
 東京都港区の上空には、白く巨大な手……ジュエルジグラットの手が浮かんでいる。
「今回は宜しく頼むよ」
 ゴーグルを着用した青髪の青年、レヴィン・ペイルライダー(秘宝を求めて・e25278)が改めて、仲間達へと挨拶する。
「ドリームイーターのゲート解放とは、大きな話になってきましたね」
 メイド服姿の茅宮・火奈(赤眼護剣・e56465)がその手を見上げて呟く。
「ですが、ひとまずは七夕を安心して迎えられるよう尽力させて頂きましょう」
 気弱で引っ込み思案な彼女だが、それでも今回は仲間達の為にと小声ながらも決意を口にしていた。
 ただ、蔦の少女人形を抱くアンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)はそれ以上に気になるのが今回の相手。
「……嘘を感知する力か。いやだなあ」
「嘘を感知し喰らうドリームイーター、ですか……」
 モノトーンで統一された服装の伊織・遥(自縄自縛の徒花・e29729)はヘリオライダーに聞いた情報を思い返す。
「……ということは私も、きっと……いえ、何でもありません」
 遥は首を振り、言いかけた言葉を止めた。
「嘘は笑える範囲内が一番ですー」
 猫のウェアライダーである朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)は非常に素直で、表情や尻尾で感情が非常に出やすいらしい。その言葉もまた本音なのだろう。
「嘘を感知する敵……と言っても、どこまで感知するのでしょうか」
 長い銀の髪を靡かせるエルム・ウィスタリア(好奇心の塊・e35594)は、嘘を集めようとする今回の敵に強い興味を抱いていたようだ。
 上空の手が頭上へと見えるようになってきた頃、メンバー達は黒いフード付きのローブを纏う敵影を確認する。
 アンセルムが誰も他に近づかぬよう殺界を形成する中、彼の親友の1人、大人びた容姿の霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)は仲間達の話を聞いて一言。
「成る程。不思議な特徴があるようですが……」
 確かに、親友のアンセルムとは奇妙な縁がある相手であるような、そうでもないような。そんな不思議な印象を抱く。
「……僕にはさほど関係ありませんね。敵ならば破壊するのみ、ですから」
 それは、ある意味ではいつも通りに、和希はこの任務に臨む。
「思うところがないわけでは無いですが、今は敵の撃破に集中いたしましょう」
 遥の呼びかけを受け、メンバー達はドリームイーター目指して駆けていくのである。


 ケルベロス達が近づいていくと、その男もこちらに気づいたらしい。
「来ると思っていたよ、ケルベロス」
 口元から煙のようなモザイクを吐き出すそいつの名は、『嘘喰らいのエドヴァルド』。
 そのドリームイーターを目にし、火奈が仲間達へと小声で確認する。
「嘘を交えた会話を行えば、相手をおびき出す事は出来るでしょうか」
 そこで、レヴィンが夢喰いにジュエルジグラットに向かわせぬようすべく、咄嗟に思いついた嘘は……。
「あ、こんな所にツチノコが!」
 散々悩んだ挙句に出た嘘があまりに子供っぽいものだったことに、レヴィンは恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしてしまう。
(「こんな嘘しか思い付かないオレって……」)
 しかし、この場の仲間達はそんなレヴィンがついた嘘をカバーするように反応して。
「……えっ、ツチノコ?」
 ボディラインが出るほどの薄手の衣装を纏う鎧装騎兵の少女、水瀬・和奏(フルアーマーキャバルリー・e34101)は騙された振りをして、周囲を見回す。
「……え? つちのこ? ……どこです?」
 エルムもまた、興味を示す。嘘というのは頭に過ぎれども、本当かもしれないと考えてしまうのは性分だろうか。
「わざとらしいけれど、それもまた嘘……だね」
 ただ、それは自分のモザイクを晴らすには及ばないと、エルムは大きな鍵を構えた。
 とにかく、ゲートの方へと行かせるわけにはいかない。
 できる限り、敵をゲートから遠ざけさせる為、環は仲間と共に回り込もうとする。
 改めて、敵を見据えたアンセルム。
「…………」
 しかしながら、彼はいつも以上に言葉を噤む。
 相手はまるで嘘発見器のような存在だ。どんな些細な嘘でも敏感に反応してしまうのだろう。アンセルムはそれに感知されることを、ひどく恐れている。
 そんな彼の様子に、エドヴァルドは気にかけつつ。
「あまり、皆を待たせられないものでね」
 自らを取り囲むケルベロスを突破すべく、グラビティを発してくるのである。


 ドリームイーター『嘘喰らいのエドヴァルド』はジュエルジグラットを目指し、ここまでやってきている。
「キミ達が僕のモザイクを晴らしてくれると期待しているよ」
 ただ、彼もケルベロスとの遭遇は想定済みで、すでに臨戦態勢にある。
 ケルベロスとしては、彼が逃走する可能性を常に考慮しつつ立ち回らねばならない。
「ツチノコって食べると牛肉の味がするって、おばあちゃんが言ってました!」
 先手を取る環が突撃し、敵をローブごと貫かんとパイルを打ち出す。なお、素直な彼女は嘘だと顔に書いてしまうほど目が泳ぎ、尻尾を小さく早く動かしている。
 対するエドヴァルドはそれを身にかすめつつも、心を抉る鍵を環へと振るって。
「ああっ……」
 環の視界に見える爆発事故。崩れ落ちる瓦礫、所々に見える血痕、倒れる人々……。
 トラウマとなって呼び起こされたそれらを、環は振り払おうと空中を振り払おうとする。
「…………」
 アンセルムは親友の環に続き、腕に纏わらせた攻性植物『kedja』を蔓触手と化して伸ばし、エドヴァルドの体へと絡みつかせようとしていく。
 多少それらに絡まれた敵へ、いつの間にか高く跳び上がった和希が重力を伴って蹴りかかっていった。
 感情こそ余り大きく示さぬ和希だが、その目はデウスエクスに対する敵意……いや、狂気を思わせる何かを滲ませる。
 仲間に注意を払おうとするエドヴァルドへ、レヴィンと和奏が敵の気を引こうと呼びかける。
「ツチノコって、牛肉っぽい味がするって本当なんだな」
「……えっ、蛇なのに牛肉なんですか?」
「嘘……逃さないよ」
 そんなレヴィン達の嘘にも、しっかりと反応する敵。
「……騙されてません、信じてませんよ?」
 すかさず、嘘に騙されてごまかそうとする和奏は装備するアームドフォートから浮遊砲台を展開させて。
「絶対に逃がしません。……行けっ!」
 和奏はそれらの砲台と自らの武装と合わせ、多角的に敵を攻め立てていく。
 レヴィンも後を追い、バスターライフルから敵目掛けて光線を発射する。
 眩い一閃が宙を駆け抜け、うまく敵の気を引けたことも合わせ、レヴィンは爽快感を覚えていた。
 そうなれば、エドヴァルドの後方から、仲間達が狙い撃ってくれる。
「さあ、別世界へ誘って差し上げましょう」
 こちらも笑顔を浮かべる遥。
 彼が呼び出す幻惑の炎は敵の周囲へと浮かび上がり、相手へと視界の全てが炎に埋め尽くされているような幻覚を与え、痛みすらも錯覚として感じさせてしまう。
「……これも、嘘……いいね。キミ達素晴らしいよ」
 はたまた、エドヴァルドが言っているのは遥のグラビティ『幻界侵食・不知火』のもたらす炎か、それとも……。
 遥は素知らぬ顔で距離を取り、さらに攻撃のチャンスを待つ。
 そこで、闇夜を照らすように放たれる光。
 エルムが仲間達の為にと、腕に巻きつけた攻性植物から黄金の果実をもぎ取り、その光で前線の仲間達を照らしていたのだ。
「…………」
 エルムもまた嘘をつけない性格であり、作戦の都合もあって黙っていたが、やはりエドヴァルドの嘘を集める性質が気になってじっと観察し続けていたようだ。
 その横から火奈が仲間の支援をと、流星の蹴りを敵へと叩きこんでいく。
「戦いは苦手ですが……」
 僅かに体勢を崩しかけた敵を見つつ、火奈が呟く。
「皆を護る為に頑張ります」
「……それに、偽りの心はないようだね」
 エドヴァルドは火奈から視線をそらし、嘘をついていたメンバー達を見つめていたのだった。


 交戦の最中、ケルベロス達は嘘喰らいの操る鍵によってトラウマを見てしまう。
 惨殺ナイフで敵に切りかかる環はすでに、自らの覚醒のきっかけとなった爆発事故を目にしていた。
 また、後衛陣にまで鍵の攻撃は及ばぬが、仲間がトラウマを受けたことに呼応し、錯覚のようなものを感じて。
 遥は自らの嘘に対して何かが攻め立ててくるような感覚を、エルムは暗い場所に1人で取り残されたような感覚を一時的に感じてしまう。
 だが、それらは本当にトラウマとなったわけでない。一時の気の迷いを覚えた彼らは攻撃支援に、回復にと立ち回る。

 さて、前線ではオウガメタル『シルヴェル』を纏うアンセルムがエドヴァルドへと殴り掛かる。
「それも、嘘……」
 ローブをボロボロにされながらも嘘喰らいは過敏に嘘に反応し、貪欲に食らいついてこようとしてくる。
 和希は仲間を庇うべく前に出て、モザイクを受け止めていた。
 体に走る痺れに耐え、和希は狂気の視線で相手を捉えて凍結光線を発射し、嘘喰らいの体から熱を奪い取っていく。
 和奏も的確に同じ場所へと銃撃を加え、さらに凍る面積を広げていった。
 遥は自らの幻惑の炎による回復抑制の力を強めようと、空の霊力を纏わせた刀でエドヴァルドへと切りかかる。
 逆にエルムは仲間へと手厚く回復に当たり、履いた妖精靴で軽やかにステップを踏み、仲間達へと花びらのオーラを舞わせて治癒に当たり、トラウマも消し去っていく。
 傍の火奈は前線メンバーが回復し、態勢を整える間に高く跳び上がって。
「……いきますッ!」
 日本刀を構えた火奈が繰り出すは、星眼流壱ノ太刀、『流星』。
 その名の通り、彼女は己の体重を乗せた一撃をエドヴァルドへと浴びせかけていく。
「ツチノコ、見たんだって!」
 あくまでツチノコ押しのレヴィンは、精神を集中させてリボルバー銃を相手に突きつける。
 この瞬間、銃が好きな彼は恍惚としていたが、銃弾は確実に嘘喰らいの体を撃ち抜いて苦痛を与えていく。
 続けざまに後方から遥が霊力で帯電させた刀身を突き出し、一気に敵を貫いていった。
「くうっ……」
 ケルベロス達の攻撃は苛烈に、連続して浴びせかけられ、さすがにデウスエクスも押され気味だ。
 開く書物から飛び出すモザイクで傷を埋めようとするが、エドヴァルドはさほど塞がらないことに気づく。遥のアンチヒールの影響だろう。
 敵の足は鈍ってきている。
 愛用のアームドフォート『グランドスラム』で敵を捕捉しながら、和奏は高速演算によってその弱点を導き出し、砲弾を命中させていく。
 体力が尽きかけつつあるエドヴァルドも、和奏の一撃に顔を引きつらせつつ鍵とモザイクを操り続ける。
(「因縁に決着をつけるお手伝いができれば」)
 火奈はアンセルムを一瞥してから刀に呪いを纏わせ、見とれるほどに美しい斬撃を繰り出す。
 嘘喰らいが多少避けたところで火奈は捕捉した敵を逃さず、その体を切り裂いてしまう。
 間髪入れずにレヴィンがリボルバー銃を掃射していくと、さすがのドリームイーターも傷口からモザイクを零して苦痛に呻く。
「これではモザイクを晴らすどころではなさそうだ」
 エドヴァルドは一度離脱するか、強引にジュエルジグラットを目指すか思考する。
 ただ、嘘をつけぬ嘘喰らいだ。素直に指令を尊重して、目的地を目指すことにしたらしい。
「敵が逃げます」
「それは違う。……逃げるわけではない」
 エルムが仲間へと忠告を入れると、エドヴァルドが否定する。
 それは、自らの目的を吐露しているのと同じ。
 一気に距離を詰めた環。足に集中させていた食らった魂を腕に移して。
「猫の『狂気』……耐えられはしません!」
「あああっ……!」
 敵の背後から鋭い爪で切り裂く環。その傷は間違いなく致命傷だ。
 自らの消滅を感じたエドヴァルドは、迫りくるアンセルムへと向き直り、心抉る鍵を突き入れる。
「……その人形。キミからは嘘が見えた」
 ゾクリとアンセルムは寒気を覚える。
 嘘が見破られれば、皆との関係も……。
 併せて襲い来る蔦。トラウマを発症してしまっていたのだ。
 だが、彼は強く気を持ち、エドヴァルドを足蹴にして。
「…………!」
「逃げるお手伝いというやつさ。……なんてね」
 態勢を崩しかけた敵へ、アンセルムは陣を展開していく。
「悪いけど、キミを逃がすつもりはないよ。――術式展開。いくよ……!」
 普段、ワイルドスペースから残霊を呼ぶこともあるが、今この場にパートナーとなる和希がいる。
「――術式展開。行きます!」
 和希もまた止めも近いと判断し、傍にいるアンセルムと並び立ち、白と黒の術式を組み上げていく。
 息を揃えた2人の魔術士は多数の氷の楔を生み出す。
 さらに闇と光の精霊達が踊り、それらは全て嘘喰らいを追尾し、包囲する。
 氷の槍はそいつの体を突き刺さっていき、精霊達がその体へと集まり、体を侵食していく。
「嘘というのはいいものさ。……それをドリームイーターに奪われるのは、勿体なさすぎるからね」
「キミは……その人形愛は……」
 そう言いかけたエドヴァルドは術に飲まれ、淡いモザイクとなって消えていく。
 そこに残された1冊の本『秘めたる心』。
 アンセルムはそれに気づき、そっと拾い上げたのだった。


 夢喰い『嘘喰らいのエドヴァルド』を討伐して。
 街中での戦いということもあり、人々の日常生活に支障が出ぬよう、メンバー達は戦闘によって荒れたアスファルトの地面やコンクリートの歩道を補修する。
 和奏はヒールドローンを飛ばし、エルムは真夏に似合わぬ雪を降らせ、環は気力を放って周囲を幻想交じりに均し、亀裂を塞ぐ。
 その手伝いを、手作業で行う和希とアンセルム。
 普段の穏やかな調子に戻っていた和希の様子がアンセルムにはありがたい。
「……これで大丈夫ですね」
 火奈は仲間に気力を発して回復に当たり、同時に周囲の補修が終わったことを確認した。
 そこで、エルムが仲間達へとこう声をかける。
「嘘は嘘でも暴いて良い嘘と、そのままにしておいた方が良い嘘がある……んですよね」
 彼はそこでふと、思ったことを仲間達へと尋ねる。
「ところで。ツチノコって美味しいんでしょうか……?」
「さあね」
 首を傾げたのは、最初にツチノコの話を持ち出したレヴィン。
「そもそも、ツチノコって本当にいるんですかねー」
 環も興味を示して、尻尾をふらふらと揺らしていたようだ。
 エルムは「冗談ですよ」と流し、この場の仲間達の労をねぎらって。
「お腹が空きましたし、ご飯にしましょうか」
 ツチノコ料理じゃないですよと告げた彼の一言が笑いを誘い、この場のメンバー他は一緒に食事へと向かったのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年7月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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