それは禁断の室内着

作者:星垣えん

●だーらだら堕落
 日差しの強い1日だった。
 外にいるだけで目も眩み、少し歩けば汗が止まらない。道行く人たちはハンカチやタオルで汗を拭い、うんざりしたような顔で歩いている。
 それを家の中から眺めていたビルシャナは、さっと遮光カーテンを閉じた。
「皆が暑い中を歩いているのを尻目に、クーラーを効かせた部屋にいる優越感よ」
「最高ですよね」
「周りが不幸だからこそ幸せが際立つと言いますか」
 鳥さんの後ろに控えていた男たちがしきりに首を縦に振る。
 平日の昼日中にカーテンを閉じ切った暗い部屋でぐーたら過ごして悦に浸っている……どう考えても見習ってはいけない人たちだった。むしろ心配になる人たちだった。
 が、彼らの顔に憂いは見られない。
 それどころか妙に軽やかで晴れやかな表情である。
「こういう暑い日は室内にいるに限る……そして室内といえばそう! ジャージだ!!」
「ええ! ジャージ最高っすね!」
 しゅばっ、と両腕をひろげた鳥さんはクソダサ芋ジャージだった。
 そして周囲の男たちもまたクソダサ芋ジャージだった。
 いくら人目がない家の中だからってそれ着たらもう一種の終末宣言ですよ、というレベルでファッション性の欠片もないクソダサ芋ジャージだった。
「ジャージこそは至高の衣! 軽いし着ていて楽だし、着飾ることを諦めて精神的にも解放される! これ以上の衣服はないよホント。家でごろごろするのに超最強だもん。そう思わない?」
「そう思います!」
「どう考えてもベストオブベストっすよ」
「だよねー」
 一斉に床に腰を下ろし、盛大にごろごろしはじめる鳥たち。
 これ以上やると戻れなくなるんじゃないかな、ってぐらい自堕落な生活だった。

●少しは外で遊びなさい
「という状況ですー」
「6月からこの調子じゃ7月8月はどうなってしまうっすか……!」
 マロン・ビネガー(六花流転・e17169)が超簡素な紙芝居で説明しおえると、黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は額の汗を拭って天を仰いだ。
「6月でジャージですから7月になったら上を脱いでるです?」
「ということは8月にはパンイチに……それは大変っす!」
 目を見開き、深刻な空気を醸し出すダンテ。
 彼も暑さで結構やられてるんじゃないだろうか、と思う猟犬一同だった。
 というわけで日々ヘリオライダーとして働いてお疲れだろうダンテを労り、猟犬たちは紙芝居をとんとんして仕舞っているマロンに視線で話の続きを促す。
「ジャージ大好きな鳥さんが信者さんと一緒に民家に引きこもってますから、レッツゴーして解体なのです」
 しゅっしゅっ、と手刀で掻っ捌く仕草をするマロン。
 なるほど鳥さんは食肉扱いされるぐらいには弱いらしい。
「信者さんはみんなジャージを着てるのです。でもたぶんジャージ以外に過ごしやすい服装を持ち出してあげれば目を覚ますと思うです。たとえばモンブランの着ぐるみとかサバト服とかおすすめなのですー」
 どっからともなく人間大のモンブラン装備と儀式めいた黒布を引っぱり出すマロン。
 感覚のズレが致命的すぎる。
 どっちもおよそ夏場に着るものじゃなかった。
「今は量販店で速乾シャツとかたくさんあるし、ジャージより涼しくて楽な服もたくさんあるっすよね。そこらへん教えてやればいいんじゃないっすかね」
 ひょこっと顔を出したダンテがさりげなく補足する。
 確かにモンブランとかサバトよりは良さそうだ、と頷く一同。
「それじゃ準備ができたら行くっすよ! 今日は暑いっすからね……ヘリオンにジュースとかアイスとか用意しといたっす。ご自由にどうぞっすよ!」
 やったー、と万歳する猟犬たち。
 かくして、一行はアイスを食べて涼むついでに鳥を倒しに行くことになりました。


参加者
志場・空(シュリケンオオカミ・e13991)
地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)
心意・括(孤児達の母親代わり・e32452)
朱桜院・梢子(葉桜・e56552)
アルテア・オールリンデ(無気力冥途・e67485)
 

■リプレイ

●まるで家の中のような……って家だったわ。
 快適に過ぎるビルシャナ宅。
 鳥も信者たちも芋ジャージに身を包み、ぐーたら寝転がっている。
 時間をMAX無駄にしているそのさまは、まさに背徳の一語に尽きた。
「流石にアカン!」
「のわーーっ!!?」
「だ、誰!? 急に誰ー!?」
 ずだだだドカーン! と駆けこんできて扉をぶち破った志場・空(シュリケンオオカミ・e13991)は開口一番、叱りつけていた。いきなりの闖入者、そして扉をぶっ壊されたという現実に鳥も信者も跳ね起きる。
「何だ貴様は! 扉を開けたらエアコンの効きが悪くなるだろうが!」
「それはすまない」
 急に冷静に謝る空。
「だがジャージはアカン! もう少しマシなものに着替えろ!」
「こいつ……ジャージを侮辱すると言うのか!」
「するとも! ぶっちゃけ私たまに通行人を建物裏に――」

 人に聞かせられない話を始めたので優美なBGMをかけてしばらくお待ち下さい……。

「――だから普段着ジャージ相手は小中学生までしかムリっ!!」
「世間的には貴様のほうがムリだわァァーーーー!!!」
 鳥さんが血管ぷちぷちレベルで吠えた。何を……空おまえホントに何を言ったんだよ……芋ジャージさんがキレてらっしゃるぞ……。
 そっから怒涛の言い合いが始まったので、アルテア・オールリンデ(無気力冥途・e67485)と朱桜院・梢子(葉桜・e56552)はカップアイス片手に見物モードに移行する。
 メイド服と和装(浴衣)が並んでアイス食べてるさまは割とシュールだった。
「こういう暑い日はアイスに限りますね」
「うーん、定番のばにらも美味しいしちょこみんとの爽やかさも捨てがたいわぁ……」
「あ、私まだチョコミントは食べておりませんね」
「たくさん貰ってきたから、よければおひとつ食べる?」
「ではお言葉に甘えまして……」
 梢子がひろげた紙袋(ドライアイス入り)から、ごそごそとチョコミントを取り出すアルテア。
 紙袋ぎっちぎちにアイスが詰まってるのを見るに梢子さんは一切の容赦なくヘリオンからアイスをいただいてきたようだ。梢子さん的には『成功条件:あいす食べる』だったようだ。
 なので呑気にアイス食べ続ける梢子さん、のちょっと横では地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)が心意・括(孤児達の母親代わり・e32452)の服装を見て慌てていた。
「く、括さん……! 自分の家ではないので、流石に下着は付けたままで……!」
「やーねー、わかってるわよ。下着は着けてるから安心してー」
 顔を真っ赤にしてちょこちょこアワアワしてる夏雪に笑う括は、だぼっと大きなTシャツ1枚であった。腿のあたりまで裾が下りて、しかもそっから生足。
 ぱっと見、穿いてない状態である。
 夏雪が心配するのも無理はなかった。
 だがその夏雪も夏雪で、ちょっと可笑しな格好をしている。
「なーくんもパジャマを着て完全にリラックスモードねー?」
「こ、これは説得のために着ているだけです……!」
 ゆるゆるパジャマの猫耳フードをきゅっと握り、顔を隠そうとする夏雪きゅん。その仕草がとても可愛かったので、括は心行くまで撫でたり抱きしめたりしちゃった。
 夏雪きゅんの顔がいっそう赤くなったのは言うまでもない。

●日本の夏といえばさあ!
 芋ジャージの上に黒いロングコートを羽織った鳥さんが、呆けたような顔をする。
「暑くない……だと!?」
「冷暖房及びエアコン完備のコートだ。私は体型を少し隠すために着ている。わかったか。わかったら脱げ。羽毛がつくから」
 鳥さんから自分のコートをはぎ取り、颯爽と羽織る空。
 言い合っていくうちに『貴様のコートこそどうなんだ!』と言われ、年がら年中着ているコートを試着させるに至った感じです。
「まあ夏にコートが合わないのはわかる。だから私はジャージよりもいいものを持ってきてやったぞ」
「いいもの?」
「ああ。これだ!」
 持ちこんでいた袋に手をつっこみ、衣装を取り出す空。
 出てきたものは――作務衣と甚平だった。
「すごく日本っぽい!?」
「これも着ていて楽だぞ。さあ着てみろ」
「うわやめろ俺たちはジャージをあーっ」
 抵抗もむなしく芋ジャージを引っぺがされ、空の手によって作務衣or甚平に着替えさせられる信者たち。
「俺たちの聖装が……」
「ジャージよりは幾分かマシに思えますが」
「これが芋じゃーじ……どの辺が芋なのかは分からないけどたしかに楽そうではあるわねぇ」
 がっくり項垂れる甚平野郎たちに遠慮なく言い放つアルテアの後ろで、梢子が信者の着ていた芋ジャージをつまみあげてしげしげと眺める。葉介(ビハインド兼夫)が『触らないほうが……』と言いたげにそわそわしてるが、梢子の好奇心はそれしきではちっとも止まらない。
 一方、鳥さんは空に言いつけられてビシッと立ち尽くしていた。
「それじゃ来客を想定して『いらっしゃい』って言ってみようか」
「い、いらっしゃい……」
「次はそこの作務衣くん、言ってみよう」
「いらっしゃい……」
 言われるまま棒読みでエア客を歓迎する2人。
 空は腕組みしながら何度も頷いた。
「うん、やっぱりジャージよりも作務衣だろう。引きこもるとしてもコンビニとかスーパーとか、宅配便とか人前に出るときはあるしな。ジャージより作務衣とかを着よう」
「えぇ……」
「そんな変わるー……?」
「竹の団扇とか持ってみろ! 何か格好いいだろう!」
 その辺の壁をドンってやって空が凄み、信者たちを黙らせると、そこへ芋ジャージ分析に飽きた梢子がすすすすっと参戦した。
「確かに芋じゃーじよりは作務衣がいいと思うわ!」
「でもあなた浴衣じゃないですか……」
 勢いよく割りこんできた梢子に、信者たちの冷めた視線が集まる。
 そう、梢子は浴衣姿だった。花火でも観に行くような華やかなやつではなく、たとえば旅館に用意されているような、ゆったり室内で過ごすのに最適なやつだった。
 つまりはツッコミを受けるのも必然。
 けれど梢子さんは言い訳もせず、むしろ胸を張る!
「だって浴衣もいいと思うのよね! 羽織って帯を結ぶだけで着られる手軽さ! 厠で用をたす時も下を降ろす必要すらないしね」
「それは確かに楽だなあ……」
「着やすさで言えば今のところベストか……?」
「羨ましいですね。私、だいたい年中メイド服ですけど着るのがとにかく面倒で……」
 梢子の話に身を乗り出す信者と信者とアルテア。
 メイドでありながら溢れ出る怠惰スピリットを併せ持つアルテアの瞳はもう梢子の浴衣に釘付けである。
「浴衣メイドとかあってもいいと思うのですよね。新しい風を吹きこむということで」
「そうねー。挑戦してみればいいんじゃないかしらー?」
「メイドさんでなく女中さんになってしまうのでは……?」
 日々の労力削減に向けてやる気を覗かせるアルテアにぱちぱちと拍手をする括の後ろで、家の中で世話してくれる浴衣の人を想像した夏雪。明らかにメイドではなかった。
 とか3人が和やかに話している中、梢子はその場でくるっと回って浴衣姿を見せつける。
「特にこれからの季節は涼しくていいわよ~。夏の夕暮れ時、浴衣で縁側で夕涼みとかいいじゃない。着てるだけでなんとなく絵になるでしょう?」
「うむ……そう言われると浴衣もいい気がしてくる」
「いくらぐらいで買えるんやろ……」
「お、おい、おまえら……!」
 信者たちのあっさりとジャージを捨て去りそうな雰囲気に、不安げに首をきょろきょろさせるジャージの鳥さん。
 そんな彼を嘲笑うかのように、梢子はごろんと床に寝そべった。
「もともと浴衣は湯上がりに着る、日本の伝統的なくつろぎ用の衣装なんだからこうしてもいいのよ。あ~浴衣落ち着くわ~……寝転がっても苦しくな~い」
 そしてごろごろした。
 31歳とは思えぬ全力のごろごろだった。ごろごろするうちに少し襟とかはだけたりして、肉付きの良い肢体がちょっと覗いたりする。気づいた葉介が慌てて止めたとき、男たちが盛大に舌打ちを響かせたのは言うまでもない。
「……でも浴衣も良きだな」
「ああ。普通に楽そうだし」

●そもそも怠けるという点でも甘い
 作務衣やら浴衣をすすめられ、右に左にと心が揺れまくった信者たち。すでに(強制的に)ジャージ姿から脱却しているので果たして説得が要るのだろうか。
 そんな思いを抱きながら、夏雪はぺたぺたと歩き、猫耳フードパジャマの雄姿を信者たちの前にさらけ出した。
「ジャージは中途半端なのでやめた方が良いと思います……」
「えっ、中途半端?」
「何を言う! ジャージこそ怠惰を極めたベストフォームでしょうが!」
 そのこころは? とか訊こうとした信者を押しのけ、鳥さんが夏雪の前に出てくる。
 2人の間に緊張感が漂う……かと思ったが芋ジャージと猫耳パジャマという取り合わせでそんなものが生じるはずがなかった。これから両者並んで昼寝を始めてもおかしくないと思う。
 そんな中、夏雪きゅんは両腕をひろげて信者らに訴えた。
「汎用性を求めるのではなく、外に出る気も無いのであれば、例えばパジャマではどうでしょうか……? そのまま寝る事も出来ますし、快適ですよ……!」
「パジャマかあ」
「オーソドックスな選択だな」
「でも普通すぎてパンチがなくない?」
 互いに顔を合わせ、夏雪の姿をチラ見しつつ話しこむ信者ども。芋ジャージ着てた分際で意外性とか気にしてやがるが、それも夏雪の次の言葉で吹き飛んだ。
「ジャージを着ている人とパジャマを着ている人が居るとします……。郵便が届いて取りに行く必要がある時に、パジャマの人とジャージの人、どちらが玄関に行く事になると思いますか……? コンビニに買い出しに行かなくてはいけない時は……?」
「はっ!!?」
 面白いほど口をあんぐり開ける男たち。
「そうです、ジャージは着飾らないとはいえ、外でも活動できる服装です……。半端な格好は家でゴロゴロする妨げになります……!」
「な、なんということだッ……!」
「それでは体よく面倒事を押し付けられてしまうやないか……!」
 茫然とした信者たちが、がっくりと床に手をついた。
 ジャージは外でもいける。いかにダサくとも、くすくす笑われようとも、外出しようと思えばそれが許される服装なのだ。外に出られぬ服装の者と争えば勝ち目はないのだ。
 そうして苦悩する信者たちを、物言わず眺めるアルテア。
「パジャマでも出ようと思えば出られる気がしますが」
「まあ、人目を気にしなければ問題ないわね! 私はもし寝間着だったら葉介に代わりに行ってもらうけど……」
『……』
 さらっと言ってくれた梢子をじぃっと見つめる葉介は、きっと慣れている。色々申しつけられるのにきっと慣れすぎてしまっている。
 そんな葉介さんの受難をよそに、夏雪きゅんの隣まで来る括。
「ジャージって動きやすい格好だから、つい家事のお手伝いをさせたくなっちゃうのよねー。庭にも出られるから洗濯物をお願いしても良さそうだし……あ、汚れてもいい格好だからそのままお掃除もお願いしちゃおうかしら!」
「お、お手伝いだと……!」
「そんなことになったら……汗をかいてしまう!」
 括さんのオカン的トークを受け、項垂れていた男たちが真っ青になった。
 胸のうちに湧いてくる黒い靄――絶望によって!
「んー、あなたたちはどうしてもダラダラしたいのねー」
「もっちろん!」
「絶対にエアコンの効いた部屋から出たくないぜ!」
 ちょっと括が理解を示すと、しゃきっと立ち上がって爽やかになる男たち。
 それならば、と括はTシャツ1枚のイケない若妻風になっている自分を手で指し示す。
「ならジャージ自体着る必要もないんじゃないかしらー? 下着の上にTシャツやYシャツを1枚羽織っておけばいいと思うわよー」
「な、何ぃ!?」
「ということはその下は下着のみ!?」
「それいいよね。私もたまにやるけど評判いいんだー」
 ざわついてTシャツの裾らへんを窺う男たちに混じり、しれっと赤裸々に自分のことを語りだす空。そのままぺらぺらとアカンことを喋りだしたのでアルテアはメイドとして渋々彼女を部屋の隅に担いでいった。
「お風呂上がりの火照った時でも良い感じだし、逆に入る時も直ぐ脱げちゃう! 大きめのシャツにしておけば、むしろ下着も要らないんじゃないかしらー?」
「着ないという選択か……!」
「確かに着ることばかりに気を取られていたが……人は脱ぐこともできる!」
 カッ、と両の眼をひらく男たち。
 何かに目覚めた、まさしく開眼した感じの顔だった。
 そこへ未練がましく、おずおずと声をかける鳥。
「あの……ジャージ……」
「馬鹿野郎! ジャージなど着ていられるか!」
「貴様だけでジャージパーティーでもしていろ鳥が!」
「そんなっ!!」
 あまりの変心っぷりに、鳥さんは結構傷ついた。

●さあ家に帰ろう
「どうせジャージ推すなら『運動してゴロゴロする時も同じ服ばっか持ってれば楽ちんー』とかそれっぽい名目にしとけー!」
「あーすごい涼しグアアアアアアアッッ!!?」
 顔面をなでる氷結の力に涼んでいた鳥さんが、断末魔をあげる。
 空の螺旋氷縛波により、夏においてはわりかし快適な温度の中で鳥さんジャージタイプは安らかに逝った。メンタルが傷ついた隙を見逃さぬ猟犬たちによってスピード作業で逝った。
「壮絶な激闘でしたね」
「そうね……ちょっと私、頭がきーんしてきたかも……」
 光となって天へ昇ってゆく鳥さんを見送るアルテアと梢子。その手には相も変わらずカップアイスが握られている。激闘とか言ってるけどその相手って鳥だった? 2人とも別の冷たくて美味しい強敵と戦ってない?
「しかしもうこれで仕事も終わりですね。アイスも食べられましたし帰りましょうか」
「そうね帰りましょう!」
 最後のカップアイスを食べ終えた2人が、急に力強く帰宅宣言を繰り出す。
 いよいよ本当にアイス食ってただけ疑惑が強まった瞬間だった。
「じゃあ私たちも帰りましょうかー。ほらソウちゃんも、帰るわよー」
「そうですね……もうやることもありませんし……」
 部屋の中を暇そうにふわふわしてたソウ(ウイングキャット)に声をかけた括に頷き、ぺたぺたと歩いてくる夏雪きゅん。猫耳がぴこぴこ揺れる。
 それをじー……っと目で追う括。
「……? 括さん……?」
「なーくん……」
 きょとんとしつつ首を傾げる夏雪きゅん。
 ここで確認しよう。夏雪きゅんはまず素材が可愛い。それが猫耳パジャマを着ているのだ。
 そしてもう、仕事は終わっている。
 つまり導き出される結論はひとつ!
「なーくん、帰ったらこのまま一緒にお昼寝するわよ!」
「ど、どうして……!」
 びくっ、と肩を震わし、それから夏雪はお昼寝コースを避けようと精一杯の主張を繰り返した。
 もちろんすべて却下され、帰ってから2時間ぐらい添い寝すやすやした。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年7月3日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。