子供たちを草むらに潜んだ変質者が狙っているだと!?

作者:星垣えん

●盗み見ている
 うだるような暑さの午後。
 青々とした自然を誇る公園には、元気に駆け回る子供たちの姿があった。
「次あっちいこーぜ!」
「あーっ。どこ投げてんだよー」
「喉渇いたー。水飲んでくるわ」
 とかく疲労を避ける大人であれば日陰に逃げこんでごろ寝しているだろう。だが子供らはボールを蹴ったり投げたりあるいはその身ひとつで遊びまわり、夏の日差しをものともしない。
 体力低下が騒がれても、やはり子供は元気であった。
 そしてビルシャナも変わらず元気であった。
「……イイ。すごくイイ」
 公園の片隅に潜んでいた鳥さんが涎を垂らしている。夏だというのにギリースーツを着込み、スナイパーじみた伏せスタイルで自然と一体化して涎を垂らしている。
「イイですね」
「最高ですね」
「愛ですね」
 よく見たら鳥さんの周りの茂みにも、ギリースーツ部隊がいる。10人はいる。
 そしてみんな手元にスケッチブックを置き、一心不乱に鉛筆を走らせている。
 その視線が向く先は――元気に遊ぶ子供だった。
「やはり無邪気に遊ぶ子供はイイ!」
『いやーまったくですね!!』
 溌溂と、ギラギラと目を輝かせる鳥さんと信者たち。
 危ない。
 間違いなく子供たちが危ない。

●とりあえず逮捕しよっか
「夏だっていうのに何をしているんですか」
「夏だからということかもしれんぞ」
 呆れすぎてぺたぺたとヘリポートにペンキを塗っているアンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)に、ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)が眩しい夏の太陽を見上げて返した。
 暑くなってくると、とは言うよね。
 って猟犬たちが納得してたら、王子はタブレットで何処かの地図情報を見せてきた。
「ここの大きな公園にビルシャナが出てくるらしい。信者を引き連れて子供たちを遠くから愛で、スケッチをしているようなので退治してきてくれ」
 聞いた限りでは当面の危機がまるでなかった。
 変質者が近くにいるという危機はあるかもしれないけどデウスエクス的な危機はまったく読み取れない説明だった。
 刷毛をペンキ缶に入れたアンヴァルがこちらに顔を向ける。
「信者がいるんですか。鳥はいつもどおり弱いでしょうから気にしないとして、信者の数はどれぐらいなんです?」
「10人だ」
「10人も変態が」
 憂うべき事実に立ち尽くすアンヴァル。
 子供を愛でる変質者10人(+鳥)が一堂に会している。
 事態は急を要している気がしてきた。
「だが心配するな。信者たちは移り気なようでな……子供たちよりも魅力的な被写体を提供できればそっちのスケッチを始めるだろう。着飾って奴らの前に出ていくとか、綺麗な壺とか可愛いペットとかを見せてやれば喜び勇んで食いつくはずだ」
 子供に執着していないのは何よりだが、それはそれで別種の変態でないだろうか。
 と思ったが言葉は飲みこむ猟犬たちであった。
「さあ、それでは公園に向かうぞ。今日は暑いからな。1日中スケッチなどしていたら熱中症になるかもしれん……そうなる前にカタをつけてきてくれ」
 王子が再び、夏の日差しに目をやった。
 かくして、猟犬たちは11人の変質者に会いに行った。


参加者
和郁・ゆりあ(揺すり花・e01455)
ビスマス・テルマール(なめろう鎧装騎兵・e01893)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
伊織・遥(自縄自縛の徒花・e29729)
エレコ・レムグランデ(小さな小さな子象・e34229)
栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)
ナナリア・クレセント(フルムーンシンガー・e37925)
アンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)

■リプレイ

●夏の気配
「ふふふ……みんな元気ね」
「エネルギーを感じ取れますよね」
「愛ですね」
 茂みに潜み、スケッチを続ける変質者たち。
 それを木陰から観察しているアンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)とナナリア・クレセント(フルムーンシンガー・e37925)。
「まさか本当に居るとは……」
「ビルシャナって本当になんでこんなのしかいないのかしら……」
 やっちまった的な顔をするアンヴァルの横で、首をふりふりするナナリア。その足元でシング(テレビウム)が奏でる『シャン……シャン……』というタンバリンの音色が実に物悲しい。
「その気持ち、ゆりあもわかるわ!」
「我輩もよーくわかるのパオ!」
 うんうんと頷いた和郁・ゆりあ(揺すり花・e01455)とエレコ・レムグランデ(小さな小さな子象・e34229)が、ぽむっとナナリアの両肩に手を置く。
 毎度ながら鳥さんたちはやってくれる。
 が、よく考えたら子供を遠くから愛でるだけなら善良な部類ではないか。ナナリアは過去に出会ってきた高レベルな鳥さんたちを思い返す。
「まあ、多少マシかもしれないけど……」
「しかしそう思っていられない人もいるようですよ」
「ええ、あっちの人ですね」
 横合いから声をかけてきたのは、ビスマス・テルマール(なめろう鎧装騎兵・e01893)とシフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)である。
 2人が指差したほうでは――栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)がちょこんとしゃがんでいた。
「なんだろう……暑いのになんとなく悪寒がするんだが……」
 自らの腕をさする理弥。
 無理もないだろう。だってドワーフだから。
 4月から大学生となり、構内で「どこから入ってきたの?」と心配の声をかけられ続ける日々を送っているのだから。
 ビスマスはナナリア&エレコ(12歳)へ振り向く。
「お二人も気をつけて」
「私はいちおう対策してるよ……」
「我輩もバッチリなのパオ」
 2人が全身タイツやらリュックサックやらを見せる。当然だけどビスマスは首を傾げましたよ。
 そこへシフカの咳払い。
「準備は万端と言うのならば行きましょう。子供を守るのもケルベロスの使命です」
 そう言いつつスーツの上着を脱ぐシフカ。
 頑張ろうという気合の現れにも見える。
 だが、なんとなくそうではない気がした一同。
「なんですかその目は。変なことは言ってないと思いますが?」
「じゃあそういうことにしておきますね」
 深く頷くアンヴァル。
 そんな流れで猟犬たちは茂みに潜む変質者たちに接近。
 でも近づくほどに「子供良き」とか「昂る」とか聞こえてくるので、伊織・遥(自縄自縛の徒花・e29729)の表情にはありありと暗い陰が落ちていた。
「無邪気に遊ぶ子供たちが微笑ましいというのは分かります。ですがなんですかその涎は……」
「な、何よその顔は!?」
「明らかにドン引きしている!?」
 鳥および信者たち(口元の涎を拭いつつ)が茂みから体を起こす。
 遥はにっこりと微笑んだ。
「とりあえずそこのビルシャナは蒸し鶏になりたいのであれば人を巻き込むのはやめましょうね??」
「蒸し鶏になりたいのであれば!!?」
「どこからどうツッコめば!?」
 もうね、騒然だったよ。

●いいから考え直せ
 数秒後、鳥と信者たちは何だかんだ正座で横並びになっていた。
 完全なるお説教享受モード。
 その前に立つのは腕組みする理弥だ。
「あのさ……モデルにはちゃんと許可とらないとダメだろ。肖像権の侵害になるぜ? 隠れながら描いてる時点でやましいことしてるって自覚があるんじゃねぇの?」
「いえ自由に遊んでいる姿が良いかなと」
「やましいと思ったことはありません!」
「そんな台詞でどうして胸を張れるんですか……」
 毅然と理弥の言い分に抗う信者の勇姿に、眉間を押さえる遥。さすが夏場にギリースーツを装備しちゃうだけあり、無駄に強敵である。
 理弥は背後に隠していたブツを、体の前側にどーんと置いた。
「俺はこれを描くのをすすめるぜ。ド定番の石膏像!」
 どやっ、と披露したのはまさに美術室の片隅とかに安置されてる石膏像(母校より拝借)。
「これなら肖像権を考える必要もないし、夜になると目が光ったり勝手に歩き回ったりするっていう逸話もあるし描き甲斐があるよな」
「描き甲斐とかいう話じゃねえぞ!」
「どっか捨ててこい!」
「動かないから見る角度を変えて描いたりできるし、ほら」
「まったく話を聞く気がない!?」
 自分で描いた石膏像が並ぶスケッチブック(普通に上手い)をぱらぱらとお披露目する理弥くん。
 が、信者たちの視線はその絵にちっとも向かない。
 じーっと向く先は……理弥本人。
「そんな石膏像よりきみを!」
「あの子供たちに混じって遊んでみたりしない!?」
「や、やめろー! 俺は大学生だーーっ!?」
 はぁはぁする信者に体を引っ掴まれ、理弥が慌てふためく。
 悪い予感って的中するよね。特にこういう案件だとね。
「……色々と言いたいことばかりですが少し落ち着いて下さい」
 壮絶な争いを繰り広げる理弥&信者を、体を滑りこませて仲裁する遥。
 両者に十分距離を取らせると、肩で息をする信者たちにスマホ画面を見せた。
「自然と一体化したいのであれば動物辺りでもスケッチなさっていればよろしいでしょう。ほら、例えば猫とか猫とか」
 スマホが表示しているのは、にゃんこ画像だった。にゃんこがにゃんにゃんしており、思わず見ている信者たちの脳内もにゃんにゃんするようなにゃんこ画像だった。
「ふむ、猫か……」
「今の時期なら涼しい日陰で休んだりしていると思われますし、暑い中このような場所にいるよりそちらに向かわれては?」
「いやいや子供のほうが尊いに決まって――」
「涎がつくので蒸し鶏は向こうにいてほしいのですが」
「汚物を見るような目で!?」
 遥からのあまりの扱いに消沈する鳥。
 子供を見て涎を垂らす――それはかくも重い罪だったのである。

●描くならこっちを描きなさい
「ところで皆さん。皆さんは魅力的な被写体が欲しいのですよね?」
「えっ、それはまあそう――ッ!?」
 ビスマスの声に振り返った信者たちが、ぴたりと動きを止めた。
 青い鳥型鎧装が、燦然と輝いていた。ひろげた翼は凛々しく、細部に光る虹色が眩しい。
「そのゴテゴテした姿は……!」
「これだけではありませんよ」
 オウガメタルのソウエンさんが変形し、鎧装となってビスマスの身を包む。鎧の青はより海のように深くなり、サバを象った手甲がぱくぱくと口を開閉させる。
 信者――特に男の信者は、瞠目するしかなかった。
「変形合体……だと!?」
「しかも私はあと2回変身を残しています」
「なにそれしゅごい!!」
 しゅぱぱぱ、と握った拳を上下させる男信者たち。
 その期待に応え、いったん垂れ幕(ナメビスが頑張って下ろしてる)の向こうに隠れるビスマス。
 で。
「例えば穴子な浴衣など!」
「い、一転して白い衣装だ!」
「カラーチェンジいいね!」
 白浴衣の上に穴子っぽい白鎧をまとったビスマスに、万雷の拍手。
「こちらはアナゴクオンです!」
「頭にすごい穴子乗ってる!」
「これは剣に変形できます!」
「あぁーそーゆーギミック滾るー!」
「さらにはこうしてビットも!」
「す、すげええええ!!」
 別の穴子っぽい鎧に換装したビスマスが頭部ユニットを剣に変え、グラビティで煌々と輝くホタテシールドを宙に浮かべる。
 そのスーパーロボット感に、男たちはたまらず鉛筆を走らせていた。
「これは捗るぜぇ!」
「この線の多すぎる感じが燃えますな!」
「大盛況ですね。思わず嫉妬してしまいそうです」
「ははは。こういうのは男として描かずには――」
 背後からそっと囁いてきたシフカへ笑いながら振り返った男が、ちょっと前にビスマスにやったのと同じくぴたりと挙動を止める。
 全裸の女である。
 衣服をすべて脱ぎ捨てたシフカが、恥じらいもためらいもなく立っているのである。胸とか隠す気もない。画面外からやってくる不自然な光さんもない。
 男たちの手から、ぽろっと鉛筆が落ちる。
「フゥゥーー! 今日はなんて日だ!!」
「全裸に! 公園で全裸になる女性に遭えるとは!」
「さあ、スケッチしてもらって構いませんよ。ポーズはどうします? やっぱり腰や背中はくねらせるべきですよね。こう、人差し指とか唇に添えてみましょう」
『ヤッタゼェェェーーーー!!』
 嬉々としてポージングをするシフカに、血走った目で大歓声を贈る男たち。
「あっ……あの人、普通に! 普通に裸……に……!」
 赤面する理弥だが、彼も男子。その視線は全裸のシフカさんに向……かない! もう大学生なのに目を逸らしてしまう!
 そんなピュアっ子がいるというのにシフカときたら……。
「よければ変質者とか罵ってくれてもいいですよ。嬉しくなります」
「レベルが高い!」
「こいつ……脱ぎ慣れてやがる!?」
 眉ひとつ動かさずに気分よくスケッチされておる。
 ただ問題もあってな。
「何あれ……」
「ひくわー」
 女子勢が半端なく冷えこんでいた。
 露出狂の女に熱狂する男たちという絵面に、心の底から冷えていた。
 女信者たちのスケッチブックをぽんぽん叩く鳥。
「ならばやっぱり子供たちを!」
「そうですね!」
「元気な子供たちを描いて私たちも元気に――」
 鉛筆を取り、親のごとき生温かい眼差しを子供らに向けようとする女たち。
 だがそのとき! 恐ろしい影が上空に現れた!
「くわー! くわー!」
「な、ななな何あれ!?」
「わからない……わからないけど恐らく全身タイツの人間よ!」
 ふよふよと飛んできた物体を見て、女たちはそう言った。
 人型の黒いシルエット、大きくはばたく翼、そして落ちかけた目玉や裂けるほど開かれた口蓋の不気味な被り物――素の状態だったら愛でられるの不可避なので全身タイツ&被り物でUMAに扮したナナリアちゃんは、結果的に尋常じゃない不審者になっていた。
 しかしナナリアは不屈の心を持っている。
「くわー! くわー!」
「あくまで謎の生物のフリを!?」
「なんてメンタルの強さなの!?」
 ばさばさと飛び、女信者たちの視線を一身に集めるナナリア。
 何だかんだ、子供らへの興味を削ぐことには成功しとった。

●好きなだけ描きなさい
「そこのあなたたち。こちらを見て下さい」
「ん?」
「あれ……壺?」
 謎の声をかけられた信者が振り返ると、ジャングルジムの上に壺が置かれていた。
 人間大のクソでかい真っ赤な壺が。
「めっちゃ不自然!」
「人参みたいに情熱的で綺麗な壺だと思った? 中にはおいしい人参がたっぷり詰まってると思った?」
「いや思わねえよ!」
「どう見ても中に人が入ってるだろうが!」
 信者の怒号が浴びせられるが、壺さんは構わずぱかーっと上蓋を外した。
「残念! 中身はかわいいウサギさんでした!」
 どーん、と現れたのはバニースーツに網タイツを装備したアンヴァル。
 なぜかわからんけどそんな最強装備になってるアンヴァルは、しゅばっとジャングルジムから降りると、ジャングルジムの棒に腕を絡めた。
「ウサギさんはゴキゲンですからサービスしますよ!」
「こ、これはポールダンスの風情!」
「いいぞもっとやれ!」
 ダイナマイトモードを発動し、魅惑的なパフォーマンスで信者を沸かせるアンヴァル。ちなみにダイナマイトモードって武装がダイナマイトな感じに変形するだけだからその……ボンキュッボンとかダイナマイト爆発後の衣服ボロボロセクシーとかにはならないんだ……すまない。
 一方。
 鳥や女信者たちの前には、堂々とした立ち姿のゆりあがいた。
「人の数だけアホな……もとい色んな趣味はあるわ。でも隠れてするってのはどうなのよ!?」
「そっと見守る……それの何が悪いの!」
「いや悪いでしょ!」
 反論してきた信者たちへ、くるっと背中を見せるゆりあ。
 リュックサックを背負っていた。
 そしてそのリュックサックに、帽子を被ったオレンジ色の象さんがすっぽり収まっていた。
「象が密輸されそうに!」
「そこ! 人聞きが悪い!」
「ぱおー!」
 信者の誤解をびしっと正すゆりあの背中で小象――エレコが前脚をばたばたする。可愛い。
 素の子供状態から動物変身することで信者が涎を垂らすのを避け、かつ動物さんの魅力で心を奪う。これこそエレコ&ゆりあのイカした作戦である!
 難点はリュックが重いことだ!
「小さくても象は象だわ……ぱおさん痩せたほうがいいんじゃ……」
「ぱおー!!」
「いたっ!? ぱおさん暴れないで! リュックが肩にくいこむー!」
 エレコの乙女的反乱により、ゆりあの肩に大きなダメージが入った。
 だが今は痛みを気にする場合ではない。ゆりあは足元にいるトピアリウス(テレビウム)を指差した。
「ついでにこっちのロボットもかわいいわよ!」
「!?」
(「ほらトッピー。これも仕事よ」)
 急の御指名に飛びあがって驚くトピアリウスに耳打ちするゆりあ。
 やれやれ……と信者の前に出るトッピー。ぴょんぴょんとその場でジャンプ。
 ――と思った瞬間、テレビウムの短い脚は軽快なステップを刻んでいた!
「す、すごい!」
「踊ってる可愛いー!」
「ぱおー!」
「あっ! 象さんも四つ足でぴょこぴょこしてるー!」
「ほらどう! 2人とも可愛いでしょ! この世の中にはいっぱいかわいいものがあるのよ! そしてこの二人はスケッチし放題よ許可とったから!」
 軽妙なダンスを見せるトッピー&エレコを示しながら『描いてよし』と主張しまくるゆりあ。すると信者たちはスケブをひろげ、目を輝かせた。
 愕然とする鳥。
「ちょ、ちょっと。あっちの子供――」
「今はこの象さんたち!」
「描かなくちゃね!」
「愛ですね!」
 信者たちの耳に、もう教祖さまの言葉は届かなかった。

 さくっと鳥さんが片付くと、ゆりあはんーっと体を伸ばした。
「はー疲れたわー……」
「ねーねー、ゆりあちゃん。我輩リュックに入るの気に入ったのパオ! もっかいやってほしいのパオ!」
「いや重いから。あつくるしいわ!」
 腕をくいくいしてきたエレコ(NOT象)に言い切るゆりあ。
「だめパオ?」
「だめぱお。それにあんたはペットじゃなくて対等な友達でしょ」
「そっか、うん……そうパオね!」
 少し考えこんだエレコがにぱっと顔を輝かせる。
 だが対照的に、正気に戻ってスケッチしている元信者たちを見る遥の顔は陰っていた。
 見つめる先の元信者は――ひたすら猫を描いている。
「猫を気に入ったようですね」
「そうみたいね」
 遥の隣に歩いてくるナナリア。
 その目は遥と同じく元信者を――猫を眺めてはぁはぁする元信者を見ている。
「新たな変態が生まれなければいいのですが……」
「新たなビルシャナも生まれないといいわね……」
 2人は、すっと目を細め、眩しい夏空を見上げていた。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年7月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。