城ヶ島制圧戦~坐す朧藤

作者:彩取

●制圧戦の報せ
 城ケ島の強行調査。
 その結果判明した、城ケ島にある『固定化された魔空回廊』の存在。
 ジルダ・ゼニス(レプリカントのヘリオライダー・en0029)はそれを踏まえた上で、こう告げた。固定化された魔空回廊に侵入し、内部を突破する事が出来れば、ドラゴン達が仕様する『ゲート』の位置特定が可能となる。
 位置特定後は、その地域の調査を行った上で、ケルベロス・ウォーによりゲートの破壊を試みる事が出来る。破壊に至ればドラゴン勢力は新たな地球侵攻を行えなくなる。
 つまり、城ケ島の制圧、および固定化された魔空回廊の確保は、
「ドラゴン勢力の侵略阻止に繋がる、という事です」
 強行調査の結果によると、ドラゴン達にとって、魔空回廊の破壊は最後の手段。
 よって電撃戦で城ケ島を制圧し、魔空回廊を奪取する事は、決して不可能ではない。
 ジルダはそう言い、続いて作戦の概要を話し始めた。

●名は、朧藤
「まず、仲間の築いて下さった橋頭堡。そこから城ケ島公園に進軍します」
 城ケ島公園は、ドラゴンの巣窟である。
 進軍の経路はヘリオライダーの予知で割り出される為、その通り移動すれば良い。ケルベロスの役目は、魔空回廊を奪取する為に、ドラゴンの戦力を大きく削る事だ。
「そして、こちらが皆さんが戦う個体の情報です」
 本作戦に当たり、この個体に付けられた呼称は――朧藤。
 藤色の鱗を持つしなやかな身体は、長く枝垂れた藤の花を彷彿とさせる。光を浴びれば鱗は真珠のように輝き、長い尾や翼、艶やかな角や爪先に至る全てが、濃淡異なる藤色に染まった竜だ。ただ、瞳だけが朧掛かった月のように、淡い黄色に染まっている。
「藤は強い生命力の象徴であり、高貴さを表す色ですが」
 この竜も、色に相応する誇り高さを持っている。
 朧藤は、敵と定めた全ての者を、全力で屠るだろう。
 各々の矜持を示せとばかりに、鋭い眼光を向ける朧藤。毒性を持つ藤色のブレスや、鋭い爪、花を思わす尾での攻撃。全てが、油断のならない強力な物だ。また、速やかな殲滅を目指すように、こちらの攻撃を見極めながら、攻撃の矛先を決めてくる。
 極力隙のない作戦を立てる事が、必要となるだろう。
「万全を期して尚、苦戦を余儀なくされる程の相手です」
 ケルベロスの敗北は、魔空回廊の奪取の断念に繋がりかねない。
 今後の展望、その全てがこの――城ケ島制圧戦にかかっているのだ。


参加者
アリッサ・イデア(藍夜の月茨・e00220)
バレンタイン・バレット(けなげ・e00669)
雨月・シエラ(ファントムペイン・e00749)
白羽・佐楡葉(紅棘シャーデンフロイデ・e00912)
ジークリンデ・エーヴェルヴァイン(バッドエンドフェアリーテイル・e01185)
ルシェーラ・ナルヴァ(砂塵の戦竜・e01620)

■リプレイ

●坐す朧藤
 城ケ島公園の一角。
 進軍した一同は、そこで標的の姿を確認した。
「――朧藤、名に違わぬ優婉な姿ですね」
 識別用の呼称とは言え、名は体を表すとはこの事である。
 アリエータ・イルオート(戦藤・e00199)が仰ぎ見る竜の身体は、まさに藤の花を彷彿とさせる色に染まり、日を浴びた鱗は花が雫を纏ったかのよう。対し、アリッサ・イデア(藍夜の月茨・e00220)は薄く息を吐き、僅かに口角をあげ囁いた。
「つくづく、花に縁があるものね」
 皮肉か、あるいは必然か。
 ともあれ、眼前の花は滅ぼすべき標的だ。
 ならば定めに従うのみと、ビハインドのリトヴァと共に歩むアリッサ。前列にて守りを固める者の内、ジークリンデ・エーヴェルヴァイン(バッドエンドフェアリーテイル・e01185)も前進し、眼鏡越しに竜を見据えた。
「獲物の色形は関係ない。あれが敵なら、みどもは戦う」
「確かに。……さあ、始めよう。血に濡れた闘争を」
 敵意を隠さぬ仲間に続き、鉄塊剣の切っ先を竜へと向けたルシェーラ・ナルヴァ(砂塵の戦竜・e01620)。それを開戦の合図と見なし、天を仰ぐ朧藤。
 
 その咆哮は、純然たる殺意の象徴だった。
 姿こそ季節忘れた花の如く、趣深きさまではあるが、
「この花は、愛でるには余りにも……苛烈」
 震える空気を浴び、シュゼット・オルミラン(桜瑤・e00356)が感じたのは、掛け値なしの力の差。個々で挑もうものなら、為す術もなく蹴散らされる事だろう。するとバレンタイン・バレット(けなげ・e00669)はキッと敵を睨んだまま、共に立つ仲間に告げた。
「みんなの力をあわせて、全力でむかえうとう! それがレイギってやつさ!」
 誇り高き手合いには、敬意を持って挑むべし。
 その心得を胸に銃口を向けるバレンタイン。後列に構えた少年の両側、雨月・シエラ(ファントムペイン・e00749)と白羽・佐楡葉(紅棘シャーデンフロイデ・e00912)も淡々と意志を込め、花の名を与えられた竜に宣言した。
「敢えて花と呼ぶなら、その花、手折らせて貰うよ」
「藤が咲くにはまだ遠い筈。謹んで、芟除いたしましょう」
 敵を全力で迎え屠る。その気概を秘めているのは、竜だけではないのだから。

●全力とは
 敵と定めた者を、全力で屠る朧藤。
 強者でも弱者でも、一人でも多数でも、かの竜の戦いは変わらない。
 脆い場所から敵陣を崩し、隙を見せれば容赦なく攻め立てる。
 弱点を突くのは卑怯ではない。
 命懸けの戦場であれば、それは当然の事である。
 初撃、朧藤のブレスを浴びた前衛。対し、ケルベロス達の半数は火力や防御を高める技を放ち、半数は呪縛を伴う攻撃を駆使して応戦した。後者の内、アリッサとバレンタインは炎と捕縛を敵に与え、その効果をより深める為に、敵の急所を掻き斬るジークリンデ。そして竜の火力を削ぐ為に、ルシェーラも力を解放した。
「その一手、封じさせて貰おう」
 畏敬と敬意を込め繰り出されたのは、膂力を乗せた重い一撃。
 基の三の型・山颪(キノサンノカタ・ヤマオロシ)。朧藤の体勢を崩し、攻撃の機転を抑える為に放たれたこの技は、ルシェーラが選択した中で最大の命中率を誇るもの。それが直撃した瞬間、ルシェーラは好戦の色を隠さず笑んだ。
「……ふふ、ドラゴンの力、俄然楽しみになったな」
 確かに傷は与えた筈だが、なおも悠然と坐す朧藤。
 究極の戦闘種族たる竜。その姿が、嘗て勇者の種族と名を馳せた者の末裔に、闘争心という火を灯す。だが、その火ごと掻き消さんとして、振り被られた長い尻尾。藤色の鞭の如く横薙ぐ尻尾が、リトヴァを含めた前衛陣に襲いかかった。
 その姿に、嘆息をもらした佐楡葉。
 眼前には巨大な標的。事前に聞き及んでなお、優美と感じる朧藤。
「惜しい事です。あれが一刻の後、亡骸になるとは」
 その姿を仰ぎ見て口を開き、敵の尾が元の場に舞い戻る前に、佐楡葉は手に絡めた黒き鎖で守護の魔法陣を描きあげた。
 螺旋を描き戦場を駆け、前列へと向かうケルベロスチェイン。そしてその先に坐す月色の瞳を真っ直ぐ見つめ、佐楡葉は柘榴の双眸を僅かに細めた。
「後方で良い身分だなどと、嗤いたければ嗤いなさい」
 しかし、竜は沈黙したまま、寧ろ感心するように目を細めた。盾役で前列を固めるなど、最も堅実な守りの策。それを支える癒し手を潰そうにも、最も火力に秀でた爪の一撃は届かない。一方、敵の火力が佐楡葉の治癒を上回る物だと判断したアリッサは、鎖で魔法陣を展開し、敵の足止めへと続くいとし子に思いを伝えた。
「頼りにしているわ、わたしのリトヴァ」
 己が運命など、呪いを手にした日に決している。故に、恐れなく盾の役目を担うアリッサ。そのすぐ後方、陣の中心に位置したアリエータも、仲間に続き詠唱した。
「幽冥より此方へ――」
 朧藤へと寄せられたのは、魔力に惹かれ波と化した荒ぶる霊。
 引かぬ霊の波は足止めの力に変わり、朧藤の動きを鈍らせていく。
 その只中で、淡紅藤の髪を靡かせるアリエータ。
「これが直の一撃ですね。では改めて……私はアリエータ」
 いざ、尋常なる勝負をここに。そう告げる彼女の瞳に迷いはない。
 一同が重視した呪縛の数々。特に足止めの持つ可能性は、戦況を左右する要素である。
 当たらない攻撃では勝利など掴めない。だがこの瞬間、その不安とは無縁の者がいた。一同の中で最も高い精度を誇る射手、バレンタインだ。
(「――見ててね師匠、おれきっとがんばるから!」)
 大きな耳を揺らしながら、颯爽と戦場を駆ける生粋のガンナー。
 スナイパーとして立つ戦場で必中の念を掲げ、銃口を向けるバレンタイン。
「おれのキョウジは全勝不敗! まけたらおわり、自然の掟さ。だから――」
 敵が如何に強大でも、眼光鋭く睨もうと、
「――だから、勝つ!」
 竜が力尽きるまで、幾度となくこの銃弾をみまうのみ。
 その直後、両翼を広げた朧藤の姿に、シエラは静かに告げた。
「さあ、さっさと終わらせてしまおう」
 自然と零れたその言葉は、大切な人の紡ぐ口癖。
 そうして心を研ぎ澄ました瞬間、シエラの剣を地獄の業火が包み込んだ。
 武器の姿が歪む寸前まで、激しく燃え盛る黒い焔。その代償である激しい痛みを感じたまま、シエラは前進して剣を掲げた。
「……ッ! ぐ、ぅぅっ!」
 唇を噤み、苦痛を堪えての苛烈な一閃。
 黒焔は藤色の鱗を覆い、傷口から肉を焼き尽くさんと燃え続けた。それに続き、後方より竜の元へと駆けたシュゼット。艶やかな夜色に、桜の花あかりが灯る髪を靡かせて、シュゼットは流星の煌めきと共に跳躍した。
「冬風にも朽ちぬ藤の花――御相手頂きましょう、朧藤殿」
 後は、重力のままに降り、その力ごと繰り出すのみ。
 その衝撃の反動を使い、花が舞うようにふわりと降り立ったシュゼットの横、竜へと向けられたのはアームドフォートの主砲二門。照準が定まれば速やかに砲撃を。そうしてジークリンデは口を堅く結んだまま、フォートレスキャノンを発射した。しかし、続くルシェーラが鉄塊剣を振り下ろした直後である。
「――!!」
 朧藤の標的は、より崩し易い場所。
 鋭い爪が大鎌の如く振り上げられ、アリエータに襲いかかる。それを防ぐ為に踵を返し、陣の中央に直進したジークリンデ。
 瞬間、足元が沈む程の衝撃を受け、それでも、ジークリンデはこう言った。
「今回は守備が役目。ええ、いいわ。だってみどもの――」
 ジークリンデの本懐は、デウスエクスに死をもたらす事。
 それを少し、荒い言葉に置き換えるのなら、
「――私の望みは、デウスエクスをぶっ殺す事」
 これ以上に的確な言葉は、ないのだ。

●勝利の座
 迫り来るわざわいは、祓うのみ。
 共に戦う仲間達が傷を負わずに、勝利を掴み取るまで支え抜く。
 それは日々治癒に従事する者として、シュゼットが抱く固き意志だ。しかし今、射手として竜と戦う戦場で、シュゼットは熱を感じていた。
 血は沸き立ち、身は躍動し、心の片隅では微かに、火花が爆ぜる音がする。
(「まさか私は、歓んでいると――」)
 であるならば、それは意志とは相反する衝動だ。
「……それも良いでしょう」
 しかし、シュゼットはそれを否定はしない。それが今、竜を屠る力となるのなら、艶やかに喰らう蝶の如く、花海の淵へと竜を堕とす刃を振るうのみ。
「――沈め」
 瞬間、竜は一層激しく、初めて苦痛を滲ませ咆哮した。
 その光景に大きな耳をぴんと立て、奮起と共に声を発したバレンタイン。
「おれたちの力、効いてる! いこう!」
「漸く態度に出したな。これまでの態度も貴様の矜持の証か、朧藤」
 少年の声をそう継いで、ルシェーラは戦竜刀と共に駆けた。竜の装飾が施された片刃の大剣を、細枝を振り回すように揚々と、豪快に振り回す。
 全ては砂岩の戦士としての矜持。
 そして、重厚無比の一撃を振り下ろした瞬間、
「それでも、砂岩の戦士の誇りは、決して崩されない」
 ルシェーラはそう告げ、すぐさま守りの姿勢を取った。堅実であり確実に事を運ぶケルベロス達の作戦と陣形。結果、朧藤は全体への攻撃を軸に、時折爪の一撃を交えて攻め立てた。陣形全てに傷を与える事で、綻びが生じる機会を窺っていたのだろう。しかし、敵の思惑ごと潰すのみと、ジークリンデがなおも駆ける。狙うのは敵の急所唯一点。だが直後爪の直撃を受け、ジークリンデの姿は消えた。
 噴煙の如き砂塵の中、しかし、その声は掻き消えない。
「最大効率で殺せるならそれでいい、仲間も庇うわ」
 攻撃が自分に来るのは好都合、仲間を庇うよりも確実だ。それに、
「そしたら、より多く殺せるのでしょう?」
 盾となり、己が感じる痛みの分だけ、
「みんな、頑張って」 
 仲間の力が竜を屠る。
 そして、誰一人倒れぬように、佐楡葉は告げた。
「薔薇の馨りは、お好きかしら」
 瞬間、潸々と零れ落ちた紅薔薇の雫。それに吐息を添えれば、雫は癒しの芳香となり、ジークリンデの爪跡が露と消えた。それは列攻撃と織り交ぜて傷を蓄積させてもなお、朧藤が攻めあぐねていた要因の一つ。
 すると、それまで沈黙を貫いていた竜が、静かな声を紡ぎ始めた。
「――忌々しい香だ。さぞ気分も良いのだろうな」
「ええ、楽しいですよ。あなたの毒牙をすべて無駄にしていくのは」
 対し、澄まし顔で返す佐楡葉。
 そこに言葉を重ねて、アリッサはこう問うた。
「さて、では朧の藤と虚空の薔薇。どちらがより、強いかしら」
 睫毛の影が瞳に落ちる。
 そして唇からは、鍵となる詠唱が紡がれた。
 血吸いの薔薇、その呪い。それはアリッサの影を介して竜へと迫った。
 欲するのは藤色の巨躯に流れる血潮。そうして影纏う竜を見つめ、アリッサは断じた。
「緋薔薇に抱かれて、お眠りなさい。この星は侵させないわ」
 これは何者にも譲れぬ戦い。
 そう語るアリッサの身体にも、否、誰もが確実に消耗している。
 しかし、譲れぬ思いは朧藤も同じである。
「――ならばやはり、言葉は要らぬな」
「ええ、こちらも……最期を迎えるまで立ち続けてみせます」
 誰の最期かは、言うまでもない。
 しかし、戦意と礼節さえ感じるアリエータの言葉に、竜は瞳に弧を描いた。そしてアリエータも、そこに在る変わらぬ殺意と矜持へと向けて、氷結の螺旋を撃ち放つ。冬風を遥かに凌ぐ、氷の縛波が竜を襲った。
 あくまで役割に対し献身に。
 しかし、竜が描いた弧に似たものが、アリエータからも窺える。
(「苦境にあっても崩れぬ矜持。最期までそれを貫きますか、朧藤」)
 そう問わずとも、答えは最初から示されていた。
 それを感じ、アリエータは微かに高揚を覚え、皆が絶えず駆け巡る中、バレンタインも首が枝垂れぬようにと耐える竜を見定める。
「――……にゃ!!」
 瞬間、藤色のブレスに包まれた少年。
 跳ねるような声が、不意に戦場へと零される。
 しかし、バレンタインは決して銃口を下げはしない。
(「最初だって、本当はちょっとだけ、こわかった……でも!」)
 習った銃技に、秘めた教え。そして、共に戦う皆の姿。
 その中で、自分だけが遅れをとる訳にはいかない。
 だから、負けず嫌いの少年は、志高く前を向いた。
 藤色の靄を掻き分けて、負けん気を込めた眼差しのまま前へと駆ける。
 そして竜を目前に、バレンタインはこう言った。
「眼に焼きつけろ、この一瞬の光!」
 放たれたのは直線を描く一粒の星。
 その一瞬に誇りを込めて、竜の誇りが霞む程、眩い煌めきと共に撃ち放つ。それがもう一粒零され、先の銃弾に続いたのはご愛嬌だ。
 加減がないからこその全力。
 そして、強き竜さえ乗り越えて、自分達は前へと進む。
 シエラはその思いを胸に、再び剣に地獄の炎を纏わせた。
「終わりにしよう、朧藤。最初の宣言通り――手折らせて貰うよ」
 業火の如き黒の焔。しかし、その余りに強力な炎に対し、シエラが望むのはごく穏やかな安寧だ。気高い矜持ではなく、大切に想う人との時間が欲しい。それを自覚した上で、シエラは唇を噛み締め、剣を掲げた。
 その斬撃を受け、炎を纏った朧藤。
 竜は堪らずに叫び、天を仰いだまま動きを止めた。
 やがて、その首は力無く項垂れ、地響きを伴い地面に堕ちた。
 淡い黄色の瞳は、朧を纏った月のように薄く、霞んだまま閉ざされていく。それを見て、シエラは己が炎を鎮め、深く息を吸い込んだケルベロス達。それは輪郭も薄れ、コギトエルゴスムさえ残さずに、一匹の竜が城ケ島公園から消滅した瞬間だった。

●繋いだ道筋
 朧藤を屠った時点で、気を失っている者はいなかった。
 しかし、治癒に徹底していた佐楡葉は思う。この後再び朧藤と同等――否、ある程度劣る相手であっても、迎え撃つには不安が残る。
「――どうされますか」
 答えを察した上での問いに対し、引き際を見誤る者はいなかった。
 速やかに指定ルートに向かい、移動を始めるケルベロス達。
「みどもが先行する。後ろも気を付けて」
「他の舞台の状況も気になるが、それも帰還すれば分かるだろう」
 ジークリンデとルシェーラを先頭に、アリッサとバレンタイン、そして佐楡葉がそれに続き、シエラも今日の手応えを胸に、帰りを待つ人の元へと急ぎ駆けた。その時、しんがりについたシュゼットとアリエータが、思いを胸に振り返る。
「――少し、見習わせて頂きますね」
 囁くアリエータと、静かに一礼したシュゼット。
 確かにあれは敵だった。しかし、その勇姿は敬意を抱けるものだった。
 故に、誇り高き朧藤の姿を胸に秘め、彼女達は仲間の後を追った。制圧戦全体の戦況を、一同は未だ知らない。しかしきっと、道は繋がったのだと信じている――。

作者:彩取 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月9日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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