大菩薩再臨~怪鳥達の絢爛たる戦

作者:寅杜柳

●賑やかな二羽
「デカい武器! 頑丈な鎧! それこそが人の智慧であり文明の産物であり正義なのだ!!」
 夏の眩しい太陽が輝く真昼間の採石場で、重戦士のような暑苦しいビルシャナがあらぶっていた。
 そしてそんな暑苦しいビルシャナが暴れる採石場に、上空から二つの影が舞い降りる。
「行動はド派手であればあるほど良い明王、上空3000mより大・見・参!」
 片方の影、派手なビルシャナが奇妙なポーズを決めつつ叫ぶ。
 突然の乱入者をじっと見つめる全身鎧のビルシャナに、もう一体のビルシャナがそっと近寄り、不思議な力を注ぎ込む。
 ビルシャナ大菩薩を再臨させる為に、頼んだぞ。そう言い残し、おたふく仮面のビルシャナは姿を消失させた。
「我が名はフリント。衆合合切衆合無――大菩薩再臨を果たすには如何せん」
「うむ、ド派手に暴れグラビティ・チェインを収集する事也」
 消失を見届けた二羽はお互いに顔を見合わせ頷く。そしてフリントが豪快に大剣を振り回し、地面に突き立てる。
「露出は罪、紙耐久は害悪! 装甲薄い奴らはブチ壊す!」
「ド派手な俺にお前が泣いて、風が騒ぐし嵐が呼ぶぜ! 即ち、大・爆・発だァァアァァ!!」
 謎の大爆発を背に、二羽のビルシャナは真夏の太陽に負けぬ暑苦しさでそう叫んだ。

「あっつい……」
 ぱたぱたとバインダーで扇いでいるのは雨河・知香(白熊ヘリオライダー・en0259)。どうやら真夏は厳しいらしい。
 そんな彼女はケルベロス達が見ていることに気づくと、居住まいを正し表情を引き締めて相対する。
「集まってくれて有難う。皆の活躍で竜十字島のゲートを破壊されて、それを足掛かりにドラゴン勢力の制圧地域の解放が進んでいた。だが……知っている人もいるかもしれないが、一部地域が天聖光輪極楽焦土菩薩というビルシャナに破壊されてしまった」
 それだけでも十分困った事なんだが、と知香は続ける。
「このビルシャナはドラゴンの制圧地域を破壊して奪ったグラビティ・チェインを利用して、ビルシャナ大菩薩を再臨させる為に強力なビルシャナを集結させようとしているらしい」
 菩薩の力は恐ろしいものだ。当然、この暴挙を見逃すわけにはいかないだろう。
「今回アタシの予知で見えたのは奪った力で強化されたビルシャナ達だ、こいつらをなんとしてでも撃破してきて欲しい」
 そして知香は机の上にファイルを広げ、今回見た予知についての説明を開始する。
「現場は宗像大社に比較的近い採石場だ。行動はド派手であればあるほど良い明王がそこで暴れていたフリント……全身鎧の猛禽のビルシャナに合流して、グラビティ・チェインを集める為に近隣の都市へと向かおうとしている所に仕掛ける事が出来る」
 時間帯は真昼で、付近に人影もないから純粋に戦いに専念していいのだと知香は続ける。
「能力についてはフリントは重装甲にも拘わらず豪快に切り込んで大剣を叩きつけて来る戦士型、多少のダメージを省みずその全力を敵に叩き込むのが基本スタイルのようだ。たまに構えを取って守りを固めてくることもある。そしてもう一方のド派手な明王は遠距離から大火力の攻撃を放ってくる。炎と水の力をそれぞれ使うだけでなく、それらを合わせて大爆発を引き起こしたりもしてくる。いずれも言動に見合わず力量はかなり高い」
 一応付け入る隙も見えた、と白熊のヘリオライダーは言う。
「どちらも自分の教義を信じ切っているからか、そこを突かれると逆に脆くなる。例えば油断させたり、教義に疑問を持つようなカッコよさを見せつける事が出来れば弱体化するかもしれない」
 そこまで説明した知香は資料を纏め整え、ケルベロス達の顔を見る。
「強化されたビルシャナはまだ力を十分に使いこなせてはいないように見えた。時間が経てばより厄介な相手になるかもしれない」
 どうか皆、よろしく頼んだよと知香は締め括り、ヘリオンへと乗り込んだ。


参加者
ラーヴァ・バケット(地獄入り鎧・e33869)
天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)
秦野・清嗣(白金之翼・e41590)
トリューム・ウンニル(碧き天災の運び手・e61351)
ロスティ・セヴァー(身体を探して三千里・e61677)

■リプレイ

●宴の始まり
 採石場に着地したケルベロス達は少し離れた岩陰からビルシャナ達の様子を観察していた。
「……相変わらずうるさい奴、奴らだねえ」
 採石場で楽しげに騒ぐビルシャナ達を見つめ、ラーヴァ・バケット(地獄入り鎧・e33869)はその鉛色の兜の内の炎を揺らめかせる。
「ただでさえ暑いのに暑苦しいビルシャナ、それも二人ですか……」
 そしてそれに応えるように地獄と混沌でその身を補う竜人、ロスティ・セヴァー(身体を探して三千里・e61677)はうんざりしたように呟いた。
「極端そうだけどどっちも派手って意味では同じかね?」
 こっそり岩陰から顔を覗かせ様子を見ているのは秦野・清嗣(白金之翼・e41590)とキンキラ毛玉のボクスドラゴン響銅。
「爆発が派手なのいいじゃん? トリじゃなかったら友達になってたかもね!」
 黒い骨竜ギョルソーを隣に、テンション高く言ったのはトリューム・ウンニル(碧き天災の運び手・e61351)。割とアバウトであった。
 ふざけているように見えるビルシャナだが、その戦闘能力自体は高い。今はまだ隙もあるが、放置して折角得た対竜戦争での利を横取りされるわけにはいかない。
(「此処で潰させていただきましょうね」)
 バケツ兜の中の炎はその熱の真逆、冷徹に揺らめく。
 一方でロスティは浮かない顔でテンションは低い。
(「……気のせいですね、ハイ」)
 その理由は、大爆発を起こす明王の力が彼自身の力に似ているから生じた不安。
「それじゃまずは、俺が注意を惹いてくるよ」
 そう言うと、清嗣と響銅は近くの小高い場所へと隠れ移動を始めた。

●派手に暴れ
 突然、採石場に破裂音が多数響く。
「敵襲か!? ド派手に蹴散らしてやるぜ!」
 即座に反応した明王が音のした太陽の方角を振り向けば、採石場の高所から何かが舞い降りてきた。
 いわゆる、天使なのだろう。錫の色の白髪にコケモモの花を咲かせ、柔らかに薄紫の瞳を細める白い面梟の翼を四対広げ空から舞い降りる清嗣。金銀の糸を惜しみなく散りばめた、往年の女優のように煌びやかでひらひらとした、少々際どい服装でスタイル自体もバッチリ、きらきらと輝く程にパーフェクト。
 頑張ってその上から紙吹雪を一生懸命に撒いている黄金色の響銅の表情はいつも通りな辺り、慣れているのだろう。
「……中々やるな!」
「そんな軽装蹴散らしてやろう!」
 ド派手至高の明王は一瞬考えその姿を認めたが、鎧の方は敵愾心を燃やされた様子。
 その瞬間、二羽は完全に清嗣へと意識が集中していた。
 横合いからラーヴァのグラビティを中和する光線、そして奇怪な砲弾がフリントに放たれ命中。
「そこにもいたのか!」
 だが鎧の猛禽はまるでダメージを意に介する事もなく、その重厚な鎧の重さなど感じていないかのような速度で突撃の向きを切り替え、天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)達前衛へと飛び込み、振りかぶった大剣を豪快に叩きつけた。蛍は辛うじて銃身で防いだが、重量のある剣の一撃の勢いを止めきれない。共に薙ぎ払われたギルフォード・アドレウス(咎人・e21730)も強烈なダメージを受けたが、彼は即座に重力の力を宿した斬霊刀で、蛍は炎弾で反撃するが、猛禽は即座に後ろへと跳躍していた。
「追加はこのド派手な大・爆・発だぁー!」
 二人の耳に矢鱈うるさい声が響いたかと思えば、先程フリントが居た位置に炎と水の弾丸が同時に着弾、その二つが混ざり合い水がぼこぼこと沸騰、一瞬の後に大爆発を引き起こし、二人と箱竜達を包み込んだ。
「流石だな!」
「お前の方こそド派手ないい一撃だったぞ!」
 言葉を交わす二羽の怪鳥を他所に、傷ついた前衛達の背後に普段の五割増しのカラフルな爆発が巻き起こる。トリュームのそれに重ね、ギョルソーと響銅は属性インストールで自身を治療。少し遅れ、清嗣が守りを崩す星型のオーラをフリントに蹴り込み、同時にラーヴァが銀の矢を放つ。矢と鎧がせめぎ合い、火花が弾けた。
「いい得物だな!」
 フリントの言葉は率直。ラーヴァの弓は彼自身の身の丈以上に巨大。巨大な武具をこそ正義とするフリントには素晴らしく見えたのだろう。
「重装備や鎧は良いもの。もちろん同意見です」
 ラーヴァ自身も武具は重装備を好む。
(「もっとも、その扱い方には見解の相違がありますが」)
「大きい武具、本当カッコいいですし何より強い……その立派な鎧なら多少の攻撃なんて気にせず過ごせそうです」
 重ねてロスティの言葉に気分を良くしたフリントは、その軽やかな動きを止めどっしりと構える。
「それにド派手なのって良いですよね、強い攻撃は大体派手ですし存在感も抜群です。僕も爆発大好きなんです」
「ほほう、見所があるな! 爆発はいいぞ!」
 期待するようなド派手明王の視線を受け、竜人は巨大なトマトのようなハンマーの頭部を変形させて猛禽に砲弾を放つ。
 放たれた砲弾はロスティの地獄の炎と混沌の水を纏ったトマト、それがフリントへの着弾と同時に弾けた。
「派手さは今一つだが……インパクトは中々だな!」
 少々生ものっぽい奇妙な爆発に、明王はほほうと感心している。
「変形巨大武器とは中々見所がある。だが、この程度では砕けぬぞ!」
 ねばねばするトマト汁のような液体を振り切るように、フリントが駆け出す。僅かに動きは鈍っているがまだまだの様子。
 猛禽を阻むよう清嗣が嘉留太を投擲するが、剣に弾かれ防がれた。フリントの勢いある剣の前に響銅が割り込んだ。獲物を処理するような守りを砕く連撃に一瞬怯むも、素早く後方から放たれたスチームと自身のヒールで安全圏まで体力を戻す。
「ド派手良いねぇ、キラキラも良いよ~」
 のんびりとした口調の清嗣が後方の明王を素敵だね、と褒める。けれど続く言葉は、
「でもねぇ……君、ド派手に! とか言う割に可也地味だね……足り無いなぁ」
「何をいうか! 炎と水、爆発をここまでド派手に操る我を!」
「まぁまぁ、落ち着いて最後まで聞いて。豪快さは有るけど華が無いし、暴れるだけって美学とは言えないね。炎と水は綺麗で派手だけど君自身が添え物になってない?」
 よく考えれば、明王自身の派手さを全面に出すような攻撃はない。
「自身を前面に出す! ……其処の鎧君の方がそういう意味では個性が有って派手だよ?」
 負けてるねぇ、とのんびり辛辣な言葉を投げかける清嗣の狙いは仲間割れ。敢えて教義対象の程度を比較する事で連携を崩す為の言葉。
「成程、今はフリントがド派手に見えるか。ならば精進せねばな!」
 ただ、この明王は自分が常に最上でなければならないというタイプではなかった。教義そのものを否定する訳でもないから仲間割れには繋がらない。
「……ところで、炎と水の力は元から持ってました?」
 そんなド派手明王の表情を窺いながらロスティが問う。
 ビルシャナ自身の能力に類するものなのかもしれないが、仮に自前でないのなら、自分の力を奪った存在と繋がりがあるのかもしれないからだ。
 けれど明王は首を傾げ、水弾を返答とする。それは響銅が割り込み防いだ、仮に何らかの手段で後天的に習得したとして、敵であるケルベロスにそれをぺらぺらと喋る事はない、という事だろうか。

 そしてそのまま、派手な攻撃の応酬は続く。
 お互いに派手な攻撃を撃ち合い、ビルシャナ達の猛攻を黒の骨竜と緑がかった黄色の毛玉竜が必死に防ぐ。その形で戦況は硬直していた。
 後方からトリュームが銀の粒子が大量にばら撒き、前衛達の傷を癒やす。
 とかく景気よく爆発や粒子を展開するトリュームだが、回復の判断自体は的確。彼女の支援がなければ押し切られ、早々に崩されてしまっていただろう。
 主に合わせギョルソーがフリントへとタックル、守りを固めていた猛禽の構えを崩す。合わせて清嗣が天から光を降らせるが、範囲が広いせいか呪縛を増幅させるには至らない。
「ああ、派手なのは良いことです。目立つし、それを受けた敵の反応もよく見える」
 だが、光の雨に続いてラーヴァが炎の雨、もとい矢を空より落とす。呪縛をも喰らい、増幅させて燃え広がる炎をフリントは剣を振るいかき消したが、身体に残る呪縛は消せぬまま。さらに炎に注意を逸らされた隙に、ロスティの流星の如き飛び蹴りが炸裂。
(「しかしどうにも既視感がありますね」)
 フリントの戦う姿に、ラーヴァは何となく思う。かつてダモクレスだった頃に気の合う友人だったような気がする。それは或いは、半壊して地獄で補った頭脳が齎す誤認なのかもしれない。
 仮に友人だったとしても、体を地獄で補い装いも随分と変わった自分が元友人だったと向こうが気付くかどうかも不明だ。
 だが、かつてがどうだったとしても、ラーヴァの手が緩むことはない。
 巨大弓の代わりにガトリングガンへと持ち替えたラーヴァが爆炎の弾丸をばら撒く。派手にばら撒かれたそれに晒されたフリントの鎧は焦げてしまいそうな熱を帯びる。
 旧友に会う機会は貴重で良いものだとは思う。だが今のラーヴァはケルベロス、つまりデウスエクスを殺す、装置。
(「殺し合うしかないだろう。お互いにね」)
 『友』と『討伐対象』、この二つは矛盾しない。ラーヴァはそう割り切っていた。
(「後ろを狙うべきでしょうか……」)
 一方、ビルシャナの攻撃にロスティは思案していた。自分に注意を惹きつけられればダメージ分散で前衛が楽になる、と。
 ただ、明王が崩れかけた側から敢えて標的を切り替える利はないだろう。それにダメージ軽減に繋げられるグラビティも持ち合わせていない。
 そう結論付けたロスティは、フリントへと再び意識を集中させた。

●宴も酣
 そして、戦況がついに動く。
「混沌の地獄の力で……悪い効果を増幅させます!」
 清嗣が星形のオーラを蹴り込むと同時、ロスティがチェーンソー剣に混沌の水と地獄の炎を纏わせ斬りつける。大剣で打ち合わせたフリントだが、炎と水は剣伝いに猛禽の腕へと侵食、肉体を苛む呪縛を増幅させる。
「ちょこまかと……!」
 すぐに退いたロスティを見、鎧の猛禽は悔し気に悪態をつく。それもそのはず、フリント自身の攻撃が当たらなくなっているのだ。
 散々煽てられたからか、鎧の猛禽の動きは短調かつ大雑把になっている。取り返そうと放つ派手で大きな一撃は隙だらけ。
 そのスキを突くのは楽しく愉しい、ラーヴァの兜の下から炎が漏れ出す。
 彼は静かに固定砲台にも似た長大な脚付きの弓に銀の矢を番え、
「我が名は熱源。余所見をしてはなりませんよ」
 警告、同時に射出。放たれた矢は地獄の炎を纏い、重力に従い地上の猛禽を鎧ごと貫通した。積み重なった炎や呪縛は、フリントから攻撃を避ける為の軽やかな動きや鎧の強度を奪い去っていたのだ。
「――やはり、巨大な武具は最高だな。バケット」
 最期にそう呟き、フリントは崩れ落ちる。
「おのれ、よくも同胞を!」
 その瞬間、明王の頭に衝撃が走る。
「派手な行動はいいことだと思います……特に、地味な行動を隠す際には、ですね。ハイ」
 ラーヴァの炎の矢と入れ替わりに翼を広げ跳躍していたロスティの流星のような飛び蹴りが炸裂。反撃に放たれた水弾はギョルソーが受け止めた。同時、ヴァルキュリアの少女の金属蒸気が即座に治療する。金属片混じりの蒸気の噴射で固められたギョルソーは、黒骨の体を金属で覆った形になり、実に派手に仕上がっている。
「むむ……この場で派手さを乗せてくるとはやるではないか」
 こんな状況でも派手なモノは気になってしまうようで、そんなビルシャナに空の霊力を纏うラーヴァの一撃が命中、呪縛をより増幅させる。
 攻撃も派手さを増していたが、此方も力んでいるからか急所を辛うじて回避できる程度の精度。トリュームと箱竜達にも余裕が生じ始める。
 そして数分後、明王は既に満身創痍だ。
 清嗣が投擲した嘉留太の一枚が明王に突き刺さり青い光を放つ。光が映すのは明王自身の凋落のきっかけ。
「なんだこれは!」
「懺悔と自新の札、だよ」
 その光は懺悔と後悔の念を起こさせ、改過自新へと向かわせるよう働きかけるはずだが、その効果は薄いようだ。
 だがその光に紛れ、ラーヴァのグラビティを中和する光線が明王に命中。派手な攻撃に紛れるその目立たぬ一矢を見抜くことはできなかった。
 そしてトリュームが前に出、テンション高く何ともオサレなアイテムを掲げる。
「ハーイ、今週のビックリドッキリなヤツはコレ!」
 彼女が宣言すれば、虚空から奇妙なパーツが出現し合体。見る見るうちに巨大化したそれは、
「ゴー!」
 トリュームが目標たる明王を指し示すと明王へ突撃。
「むむ! 何と派手な……いや、負けんぞ!」
 派手さを至高とする明王は、そんな派手な攻撃を躱すなど考えもしない。真っ向から迎撃し、自身の炎と水と爆発の派手さが上回る事を示すしかなかった。
 ビルシャナが炎と水を両手に召喚、巨大兵器に向けて同時に解き放つ。
 何となく、少女の頭にビックリドッキリ古代兵器のちょっとした説明書が亜棚を過る。確か、火災や爆発がなんとかかんとか。
 爆発。
「ま、いっちゃえ!」
 彼女の声と明王の炎弾と水弾が古代兵器に直撃し、爆発を起こしたのは同時。瞬間、閃光と同時にビルシャナの引き起こした爆風以上のものが、採石場に吹き荒れた。
「いやー、まいったまいった! 想像以上!」
 キメ顔でトリュームが笑う。距離を少し空いていた事もあり、ケルベロス達に爆風の影響はほとんどなかった。一方、至近距離から直撃を受けた明王は固まったまま煙を吐いている。
 チャンス。清嗣の放った半透明の御業ががっちり掴み、ロスティが一息に距離を詰める。
「これで終わりです……!」
 地獄の炎と混沌の水、自身の上半身の多くを補う二つをチェーンソー剣に纏わせた、輝く刃をロスティが振るう。回転する歯車型の刃の鮮やかな軌跡に明王は躱す事すらできず、その滑らかな斬撃で全身を刻まれ、ついには崩れ落ちた。

●宴は終わり
 ラーヴァは蛍とギルフォードの様子を看ている。前衛で多めに攻撃を受けていた為少々疲労の色が濃いようだ。
「お疲れ様、冷たいラムネはどうかな」
 清嗣が仲間達全員によく冷えた瓶ラムネを配り、戦の疲れを労う。
 ラムネを受け取ったトリュームはその瓶をまず額に軽く当て、涼をとる。
「ところでなんでそんな服装なんですか……」
「んー……内緒だよ」
 ロスティの今更だがもっともな問いに、清嗣はさらりとかわし周囲に転がる石の一つを拾い上げる。
「石としては傷物の穴あきの中に色々と有ったりするのよ」
 こういう奥ゆかしい美しさが良いよねぇ、と響銅に石を見せれば、箱竜も気に入った様子でこくこくと毛玉のような全身を動かし頷いた。

 かくしてビルシャナは討ち果たされ、ケルベロス達は静寂を取り戻した採石場を後にしたのであった。

作者:寅杜柳 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年9月1日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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