●
千葉県の砂浜へと突如現れた巨大な黄金竜。
グアアオオオオオオオオオオオオオ!!
猛り吠えるその竜は荒ぶりながら、人里へと向かう。
その竜の全身は金色の鱗に覆われ、背には天使の翼を持ち、尻尾には紅と蒼の薔薇が七輪連なって咲いている。
胸には太陽を象った紋章が浮かび、その目からは常に赤い涙が流れ落ちていく。
それは、ロウガ・ジェラフィード(金色ノ戦闘神・e04854)の変わり果てた姿だった。
幸い、その巨大さもあって、人的避難はスムーズに事が運んだものの……。
その竜は、人がいなくなった街へと虹色の光線を口から吐き出した。
さらに、背の天使の翼を広げて光を発射し、次々に建物を破壊してしまう。
グオオオオオオオオオオ…………!!
竜は止まる素振りを見せない。
全身のオーラを高めた竜は力を高め、6体もの自身の分身を生み出す。
7体の竜はそれぞれ浮遊させた光の剣を手につかみ、手前のビルを切り刻んでしまう。
轟音を立てて、崩壊していくビル。
グアアアアアオオオオオオオオオ!!
1体に戻った竜はなおも吠え、街を荒らし続けるのである……。
●
ヘリポート。
ケルベロスが集まるその場へと、1機のヘリオンが降り立つ。
そして、そこから降りてきたリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が朗報をもたらす。
「暴走してしまったロウガの居場所、突き止めたよ……!」
ドラゴン・ウォーの最中、暴走して行方不明になったロウガ・ジェラフィード(金色ノ戦闘神・e04854)。リーゼリットはその行方を捜していたのだ。
おそらく、ドラゴン・ウォーの直後、ロウガは気を失ってしばらく海上を彷徨い続けていたと思われる。
しかしながら、暴走状態のままで目覚め、日本までたどり着いたロウガは破壊の限りを尽くし、人里を襲う予知が確認されている。
「できれば、海岸に上がってくるタイミングで彼と対したいところだね……」
千葉県の沿岸部は海岸から直に町がある場所も多い。この為、ロウガが街に入る前に食い止めたい。
ただ、暴走状態の相手を止めるのは簡単ではない。それだけ、彼の戦闘力は高まっているのだ。
「だから、ロウガを弱体化させる必要があるよ」
彼は同情などせず、戦士としての自分と戦ってくれることを望んでいる。
それによって満足することで攻撃の手が緩まり、弱体化していくものと思われる。
暴走して無謀な行動をしたロウガが被害を出してしまう前に力づくで止め、正気に戻したい。
「ロウガの望みをかなえるように戦えば、きっと彼を救い出せるはずだよ」
正面からの全力バトル。それがかなえられるかどうかはケルベロス次第だ。
どうか、ロウガの望み通りに戦い、目覚めさせてあげてほしい。
リーゼリットは最後にそうケルベロス達へと望むのだった。
参加者 | |
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ロゼ・アウランジェ(七彩アウラアオイデー・e00275) |
エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486) |
上野・零(焼却・e05125) |
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524) |
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770) |
ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231) |
刈安・透希(透音を歌う黒金・e44595) |
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384) |
●
千葉県の某海岸。
砂浜の上で東の海上を見つめるのは、10数人のケルベロス達。
これから始まる戦いへと何者にも介入されぬ為、女性と見紛う風貌のシャドウエルフ、ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231)は殺界を展開して。
「来たかロウガ。戦神などという大それた名、返上してもらう」
遠方から、日の光を受けて金の鱗を煌めかす竜が羽ばたいてくる。
その竜は暴走の果て、姿を変えてしまったロウガ・ジェラフィード(金色ノ戦闘神・e04854)だった。
「先のドラゴン戦でやらかしてしまわれてたのですわね……」
飛来してくる竜を見つめる馬の獣人騎士、エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)が呟く。
獣人型であることも多い彼女だが、今回は人型での参加だ。
「……君も、暴走しちゃったんだね」
暴走の経験がある上野・零(焼却・e05125)にとってその影響は大きく、髪と瞳が変色した上で無感情状態になってしまったそうだ。
徐々に、大きくなってくる竜の巨体。
その姿に、髪に七彩の薔薇を咲かせるオラトリオ、ロゼ・アウランジェ(七彩アウラアオイデー・e00275)はロウガの今の姿が天使の戦士である貴方らしいと考えつつ、竜と化した彼に届くよう大声で叫ぶ。
「ロウ! ロウ、聴こえていますか?!」
ロウガと同じく金色の翼を持ち、髪に赤と蒼の薔薇を咲かせたロゼ。
だからこそ、彼女は親近感を抱くロウガを兄のように慕い、ロウと呼ぶ。
グオオオオオオオオオオ…………!!
しかしながら、接近してくる金色の竜はただ、大声で咆哮するのみ。
――竜を倒すのが天使の役目。そう言っていたのに、貴方が竜になるなんて。
「絶対、絶対、帰ってきていただきますからね!」
「取り戻しましょ。貴女にとってのお兄様を」
凛とした態度で呼びかけるロゼへ、エニーケが後ろ姿を見せつつ心から励ますように告げる。
重傷を厭わず、暴走奮戦したロウガ。
「ドラゴニアゲートで活躍した黄金竜星軍の姿なのでしょうか」
そんな彼が全力を尽くす戦いが望みと聞き、短く刈り揃えたつけ髭ドワーフ、イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)は思う。
何の為に戦ったのかをロウガに思い出させて正気に戻し、救出したいと、イッパイアッテナはこの戦いに参加している。
「零さん、ハルさん、エニーケさん、透希さん、ロゼさん歌声期待してます」
彼はこの場のメンバー達へと挨拶し、雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)にも一言。
「リュエンさんよろしくお願いします」
「ああ、最善を尽くそう」
応じた彼はイッパイアッテナの要望に応え、メディックとして立ち回るようだ。
「ロウガさん……」
金木犀を髪に咲かせた源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)は、救出対象のロウガと同じ旅団に所属している。
ドラゴン・ウォーでロウガが暴走したと聞き、瑠璃は大きな衝撃を受けると共に彼らしいと思ったとのこと。
「強い戦士の誇りを持ち、雄々しく戦うロウガさんは僕の憧れだ」
その瑠璃の言葉に、婚約者である如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)が頷く。
半年に満たない中で、沙耶は3度の共闘経験がある。
誇り高く戦うロウガの姿が沙耶にはとても眩しく、その回数で魅せられるのに充分だったそうだ。
「そうだね。よくわかるよ」
瑠璃も沙耶の話に共感していた。
「……どんな思いでそれを選んだのかを、私は知らない」
もう目前にまで接近してきた巨大な竜へ、零は淡々と語り続ける。
「……ただ、だ。……今、君が全力の戦いを望んでいる事は知っている」
右目の地獄を燃え上がらせ、零は相手を見据えて。
「……なら、その望みに全力を以て応えるまで……」
彼は徐々に、自らの体を地獄の炎で包み込む。
「あなたが帰って来られる場所はきちんとあるのですから、こちらなりにソフトかつ過激にやらかすとしましょうか……」
エニーケもまた、地裂竜鱗砲槌【メーレスザイレ】を手にして正面から向く竜を迎え撃つ。
「お前の判断を否定はしない」
ハルもドラゴンを倒す為なら迷わず同じことをしただろうと、閃光剣『緋月』を抜く。
「だから、必ず止めてやる」
その間にも、接近するロウガは大きく翼を羽ばたかせる。
強風を巻き起こし、彼は砂埃を上げながら海岸へと降り立ってきた。
「何を思ってその涙を流しているのか、私には分からないが……」
その竜を、中性的な見た目の女性歌手、刈安・透希(透音を歌う黒金・e44595)は見上げた後、周囲を見回す。
この場もそうだし、サポートに駆け付けたメンバーがいる。
そして、この依頼の成功を祈り、彼の帰りを待つ友人知人は沢山いるはずだ。
「全力で連れ戻させて貰うぞ」
グアアアアアオオオオオオオオオ!!
空気を振るわせて叫ぶロウガへと、皆武器を向ける。
それが彼の望みだと言うならば。
――始めようか、ロウガさん……!
いつもはクールだが、今回ばかりは気合十分の零に、応じたメンバー達が頷く。
「状況開始。皆、全力であの男を取り戻すぞ!」
「……レッツ! 殺し合い!!」
巨躯の金色竜を囲むように、ハルやエニーケは布陣していく。
「私はロウの妹分」
そして、ロゼは、すっと息を吸って。
「荒ぶる魂の奥に眠る、貴方に届くように歌います!」
戦いに臨む仲間達へと、ロゼもまた全力で歌を響かせる。
――ロウガへと必ずその歌が届くように、と。
●
グオオオオオオオオ……!!
巨躯の金色竜となり果てたロウガ・ジェラフィード。
胸には太陽を抱き、血の涙を流し続ける彼には意識がなく、ただその力を放出してくる。
早速、彼は金色の翼を広げ、聖なる光線を撃ち出してきた。
手荒い一撃を堪えながらも、瑠璃は霊杖「金木犀」を手に構えて。
「ロウガさん……。いつまでも僕と沙耶さんの憧れでいてほしい」
だからこそ、ここで貴方を失うわけにはいかない。
こうして、全力で戦えることに強く光栄を感じ、強い敬意を持って相対すると誓った瑠璃。
「貴方の望む全力の戦いで、貴方を取り戻してみせるよ」
すぐさま、彼は杖の先端からエクトプラズムを圧縮した大きな霊弾を撃ち出していく。
「ロウガさん、愉快に振る舞いながらも強かで誠実」
イッパイアッテナも相棒であるミミック、『相箱のザラキ』と光線を凌ぎ、転ばぬように砂浜を駆けて。
「全てを撥ね返す力を」
ザラキが恐れを抱かずに巨大な竜へとかぶりつく間に、イッパイアッテナは闘志を奮い立たせる言葉を紡ぎ、自分達やこの場の仲間達へと頑健の暗示を施す。
相手が全力で向かってくるならば、エニーケもまた全力で挑むのみ。
「こんなところで討たれて、終わるタマではないのでしょう?」
ヒールドローンを展開する彼女は呼びかけを絶やさず、その救助へと尽力する。
その後ろから、沙耶が鳥を模したクロッケーの木槌『The Mallets of Slugger』を構えて。
「ロウガさん、貴方はいつまでも私と瑠璃にとって、オラトリオの戦士として戦う手本であって欲しい」
砲弾を撃ち込み、沙耶は最大限の敬意を持って荒ぶるロウガの動きを止めようとしていく。
自らが展開した殺界を起点とし、ハルは無数の刀剣を内包する領域を展開しつつ交戦する。
「なるほど、やはり君は私とよく似ている」
そのハルもまた戦いの合間を見て、ロウガへと呼びかけて。
「だが、君は私とは違う。帰るべき場所がある。待っている妹がいる。ならば、君は己を取り戻すべきだ」
すでに仲間の支援が自らに及んでいることを実感しながらも、ハルは具現化した刀を煌めかせ、美しい軌跡を描いて巨大な竜の体を切り刻まんとする。
「……燃え上がるは我が心体、我が地獄――さぁ、いざ至れや地獄道」
零はグラビティによって、自らの体のほとんどを地獄へと変えていく。
「――黒き焔は、此処に一つ……ッ!」
その外側に高純度の黒い地獄を纏ってから、零はロウガへと言い放つ。
「……その選択肢を選ぶのも構いやしない」
譲れないモノはあったのだろうと、一定の理解は示す零は黒い炎を迸らせ、一気に近づいて。
「――ただ、このまま帰ってこれないなんて展開は、絶対に認めないからな……ッ!!」
一気にその炎を直接叩きこみ、ロウガを攻め立てていった。
皆がロウガを元に戻したいと考えるのは、ロゼの存在もある。
白亜の竪琴「Kalliopeia」の虹の弦を爪弾きつつ、「紅瞳覚醒」の歌詞をそらんじる彼女。
――抱け! 猛き想いを 生き抜くための強き意志を……。
リュエンが伴奏してくれる中、ロゼはアイドル歌手『A.A』としての美声を砂浜に響かせる。
――固く持って 高く突き上げろ……。
仲間達に守りと癒やしを与える為の歌だが、その歌はロウガの心に響かせられるようにとの願いも込められていた。
グアアアオオオオオオ!!
竜と化した、貴方へと届きますように。そう祈って。
「絶対、絶対、帰ってきていただきますからね!」
ロゼの叫びの直後、同じく「透」という名で歌手活動を行う透希が声を発し、周囲の空気を振動させるほどの声でロウガの動きを封じようとした。
「悪いな、私の歌はロゼのように優しくはないんだ」
透希はさらに己の拳を獣と変え、巨躯のロウガの目を覚まさせるべく殴り掛かっていくのだった。
●
暴れ狂う金色の竜ロウガ・ジェラフィード。
グアオオオオオオオオ!!
その口へと虹色の光が集まり、一直線に放たれる。
相手をメインとなって抑えるのは、イッパイアッテナと瑠璃だ。
この場は瑠璃が仲間の盾となりつつ、彼は自らに秘められた太古の月の力を使う。
「月の女神の銀色の弓矢の力、具現するよ」
守護神の銀の弓矢の力をもって、瑠璃は仲間達へと癒やしと共に武器へと鋭さを与えていく。
源の一族、次期族長の義弟として育った瑠璃は族長を支える為、婚約者である沙耶を護れる男となる為に鍛錬に励む。
その最中、立ち会った今回の1件。憧れを持つロウガとの戦いに、彼は全力を尽くす。
そして、過去の贖罪の為に戦いの場へと身を投じ続ける沙耶。
彼女は遠距離狙撃型の魔法のステッキで、時空を凍結させる一撃を飛ばす。
自身と同じ気持ちを持つ瑠璃と、沙耶は敬意を持ってこの戦いに身を置き続ける。
相手に負けず、気高く勇ましく戦場を駆けまわるエニーケは呼びかけを続けて。
「生きるのなら、自分自身に抗ってみせなさい!」
地裂竜鱗砲槌の槌部分、爪を開放して展開した砲塔から、エニーケは砲弾を発射していく。
僅かに怯むロウガへ、ハルがさらに言い放つ。
「皆の声を聞け。ロゼの歌を聴け。届くまで……この刃、刻み続けるまでだ」
戦場にある剣で、ハルは金色竜の体を切り刻む。
刃が振るわれる度に舞う幻の薔薇。気をしっかりと持たねば、それを目にするだけで意識を奪われてしまうことだろう。
続き、零が全身の地獄からオーラを飛ばす。その背後からは、ロゼがオウガ粒子を舞わせ、さらにカラフルな爆発で生じる爆風で仲間達の士気を高めていた。
仲間であるはずのケルベロスへと、自らの力を振るい続けるロウガ。
グオオオオ、オオオオオオオオ!!
その猛りは留まりを知らず、ロウガは全身のオーラを高めて6体もの分身を生み出す。
7体もの竜が光の剣を手にし、一斉にケルベロスへと飛びかかってくる。
「その剣……向けるべき相手を間違っているぞ」
交戦によってやや気性を荒くした透希がロウガへと告げ、惨殺ナイフで切り刻み、動きをより強く封じ込めようとしていく。
しかしながら、ロウガは止まらず、イッパイアッテナの体を切り裂いてしまう。
すぐさま、リュエンが危険を察し、緊急手術でイッパイアッテナの回復に当たっていたようだ。
この場には、サポーター達の姿もある。
ちさは周囲に一般人がいないか確認した後、この場のメンバー達へとお弁当やおにぎりを差し出し、回復に当たってくれる。
「其処に楽園は存在するのか。天使よ。在り得ない」
ユグゴトもまた、メンバー達の傷を直接破壊しながらもロウガに告げた。
「失楽園は其処では無いのだろう?」
そうでなければ、涙を流すはずもないのだ。
彼に向けて飛び込む宵一は、以前手合わせした時のことを思い出しながら、巫術士としての力を行使する。
「浅小竹原 腰なづむ 虚空は行かず 足よ行くな」
その歌はロウガにも聞こえているらしく、グラビティ・チェインによって拘束されていく。
グオオオオオオ!!
しかしながら、強引に動くロウガは全身のオーラを高め、再び自らの分身を生み出す。
一斉に切りかかる7体の竜によって、ケルベロスのカバーに入ったミミック『相箱のザラキ』がその身を爆ぜ飛ばす。
「自分が何者で、何のために戦ったのか思い出して!」
ヒールドローンを展開するイッパイアッテナは、何があっても仲間達を護ろうと身を粉にして盾となる。
仲間達を痛め続けるロウガに対し、徐々に怒りを募らせたエニーケ。
彼女はサポーターの陣内から支援を受けつつ、やんわりとした口調ながらも毒を吐く。
「勝負事なら、本来の姿でタイマンなさいな! この金メッキトカゲ!!」
その罵声こそが、エニーケのグラビティ。言葉の暴力で相手の心を抉っていくのだ。
少しずつ、ロウガの動きは鈍ってきていたようだが、彼はまだ満足できていないのだろうか。その力に弱体化の様相はなかなか見えない。
ケルベロス側も、荒ぶるロウガの力を受け止め、疲弊が激しい。
中衛の透希ですらも、仲間達の回復に回る必要が出てきていて。
「ロゼの声が聞こえてないはずないだろう?」
透希は希望の為に走り続ける者達の歌を響かせて仲間達を癒やし、さらにロウガへと告げる。
「ロウ、きこえますか?」
そのロゼは、メンバー達の治療に当たりながら、さらに呼びかける。
「みんなみんな、待ってるのですよ。貴方のお帰りを。……もちろん私も」
彼女は皆の声を届けようと美声を響かせ続ける。
その声を背に、透希はさらにロウガへと言い放つ。
「いつまで寝ぼけているつもりだ。帰りたくないなんて我儘は聞かないぞ」
グルルル……。
チームの盾となる瑠璃もまた霊杖「金木犀」を振るい、自らと大自然を霊的に繋げて傷を癒やす。
一方で沙耶はロウガの動きが止まり始めたことを察し、占いの力を使って。
「勝利の運命を切り開きます!!」
普段は、自らが進む運命を進む為にと行使する力だが、今回はロウガの道を切り開けるよう思いを込め、呼び出した赤銅色の戦車に砂浜を駆け抜けさせ、ロウガへと突撃していく。
グ、オオオオッ……!
その隙を零は逃さない。
「……君を待っている人が此処に居る。なら、目を覚ます時だ」
地獄と化した自身の体より、零は地獄の炎弾を撃ち出していく。
その巨体がついに、揺らぐ。
全力での戦いにロウガが満足し、力が弱体化してきていたのだ。
「はやく、帰ってきてくださいね!」
戦いの間ずっと、ロゼは正面を向いて諦めることなく呼びかけ続けていた。
「大切なお兄さまを、失いたくないのです!」
グ……ウウッ……。
弱りながらもロウガはなおも分身体を生み出し、切りかかろうとしてくる。
飛び込むハルは複数の竜を迎撃し、真っ向から刃で打ち合っていく。
領域内に具現化した無数の刀剣で分身の光剣を受け流していき、ハルは一つに束ねた刃でロウガ本体の体を切り裂いてしまった。
グ、グオオオオオオオオオオッ……!!
その全身が強く光り輝く。
「本来の君だったなら、倒れていたのは私だったかもな」
言葉を漏らすハルは、砂の上に膝を突いてしまう。
同時に、光り輝く金色竜の体は急速に縮んでいく。
光が止むと、人の姿に戻ったロウガが砂の上に横たわっていたのだった。
●
戦いが終わり、砂浜にはケルベロスだけが残される。
人の姿に戻ったロウガに、堪えられずに涙をこぼすロゼは笑顔を浮かべて。
「おかえりなさい」
「……ただいま」
「ロゼを泣かせるなんて、後が怖いな」
仲間達の怪我の確認に回る透希は、涙を流して笑うロゼを見ながら笑う。
「心配掛けた分、暫くは大人しく療養していた方がいいな」
自身へと気にかける透希にロウガが笑いを浮かべると、イッパイアッテナが気力を撃ち出して。
「ロウガさんには本来の姿が似合いますね」
それに応じるエニーケはドローンを展開して治療に当たり、無事を確認してすぐこの場を去っていった。
サポートに駆け付けたメンバー達も口々に、その帰還を喜び合う。
「お帰りなさい、ロウガさん」
「お帰りなさいませ。ロウガさん。……本当に良かった」
友人達に囲まれる彼へと、瑠璃は万感の思いを込めて。そして、沙耶は安堵の気持ちと共に声をかけた。
「お帰り、ロウガ」
「ああ、ただいま」
再び、ロウガはこの場の仲間達へと挨拶する。
そこで、ハルが彼の体を起こすように手を差し伸べた。
「帰るぞ。最後の台詞が駄洒落のままでは、いくら君でもおさまりが悪いだろう?」
「うふふ、ロウの駄洒落、また聞かせてね」
涙を拭いたロゼが苦笑するロウガへとそんな希望を口にする。
すると、いつもの調子で早速駄洒落をぶっこむロウガの姿に皆笑い合う。
そんな彼らの声は次第に遠くなっていき、戦場となった砂浜では波の音だけが静かに鳴り響いていたのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年6月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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