ミッション破壊作戦~牙が崩れ落ちるとき

作者:なちゅい

●ドラゴン勢力のミッション破壊作戦
 ドラゴン・ウォーの勝利。
 それによって、ケルベロス達の士気は高まっている。
「皆、お疲れ様。ついにドラゴンのゲートを破壊できたね……!」
 歓喜に沸くケルベロス達へ、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)も嬉しそうに語り、勝利を祝福する。
 その後、ドラゴン勢力のミッション地域の強襲型魔空回廊が消滅したことにより、ドラゴン、ドラグナー、竜牙兵、オーク、以上4種族のミッション地域の完全開放が可能となった。
「ただ、強襲型魔空回廊がなくなったからと言って、敵がいなくなったわけではないよ」
 ゲートを失った事で戦力が補充されない為、制圧自体は時間の問題だ。
 しかし、強襲型魔空回廊を失った敵勢力が自暴自棄になり、周辺地域に攻撃を仕掛けてくるような事があれば、被害は免れない。
「そこで、皆には、強襲型魔空回廊を失って混乱している敵の頭上から、ボクのヘリオンを使って降下作戦を行い、敵の首魁の撃破してほしいんだ」
 強襲型魔空回廊の消滅に加えて強襲により首魁を失えば、混乱した敵戦力はケルベロスの敵では無い。周囲に進撃を行うまでもなく、殲滅する事が可能となる。
 危険な降下強襲作戦となるが、今のケルベロスなら実現なはずだよと、リーゼリットはメンバー達の背中を押す。

●今作戦について
「今回は竜牙兵の占領地域のうちから1つ選択し、攻略に当たるよ」
 骨の様な体躯を持つ竜牙兵。ドラゴンの先兵ではあるが、その実力は侮れない。
 攻撃するミッション地域ごとに現れる敵の特色があるので、攻撃する場所を選ぶときの参考にするのも良いだろう。
 そういえばと、ケルベロスの1人がここで、グラディウスがないことに気づく。
「強襲型魔空回廊がもうないからね。攻撃対象がないなら、グラディウスも必要ないよ」
 併せて、魂の叫びを考える必要もない。全力でこの地域の開放の為、強敵の撃破に当たってほしい。
 勝利できたなら、状態にもよるが、ミッション攻略に当たる他のケルベロスと掃討作戦を行う形でも問題ないだろう。

 一通り説明を終えたリーゼリットはさらに続ける。
「ドラゴン勢力の拠点を一気に叩き潰すチャンスだよ」
 デウスエクス……ドラゴン以外の勢力は今なおミッション地域を増やし続けているが、ドラゴン勢力の拠点がすべてなくなれば、状況は大きく有利になるのは間違いない。
 この作戦は殲滅戦に近いものではあるが、ケルベロスにとって今後の戦いを大きく勢いづけるものになる可能性が高い為、なんとしても勝利したい。
「以上だね。どうかよろしく頼んだよ」
 リーゼリットは真剣な瞳でケルベロス達へと訴えかけてから、自らのヘリオンへと参加メンバーを招き入れるのだった。


参加者
レーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)
空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)
峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)
瀬戸口・灰(忘れじの・e04992)
因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)
田津原・マリア(ドラゴニアンのウィッチドクター・e40514)
グラニテ・ジョグラール(多彩鮮やかに・e79264)

■リプレイ

●解放の為の戦い
 ヘリオンから降下するケルベロス達。
 今作戦はミッション破壊作戦ではあるが、彼らの手にグラディウスはない。
「よもや、こんな事に使う日がくるとは……」
 改めて、近づいてくる地面を見下ろすピンクの髪のレプリカント、モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)。
 表情を変えぬ彼女だが、先ほどヘリオンからオペラグラスで地上をしみじみとした態度で見下ろしていた。
「ドラゴン系の、ミッション地域を、解放できるようになったのは、よかったよね」
 空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)は黒い翼を羽ばたかせて、降下予定地点の状況を確認しながら告げる。
 長い間、奪われたままだった地域の解放作戦。
「こんな形でミッション破壊ができるなんて、思うとりませんでした」
 自らの青い翼でバランスをとる田津原・マリア(ドラゴニアンのウィッチドクター・e40514)は地上を見回し、敵の状況把握に努める。
 これまでのミッション破壊作戦では、幾度も魂の叫びを伴う降下を繰り返し、少しずつ強襲型魔空回廊を傷つけることしかできなかった。
 だが、その魔空回廊ももうなく、この地の戦力が補充されることはない。
 人々の生活を脅かす竜牙兵をこの地域から駆逐する為に。マリアは力を尽くす。
「これも、竜十字島に命がけで向かってくれた彼らのおかげかな……」
 中性的な見た目をした兎のウェアライダー、因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)は、その際に亡くなったメンバーの1人との交流を思い返す。
 やはり彼も、この状況まで漕ぎつけたことに感慨深げを覚えていたようだ。
「さ、気持ちを切り替えて行くとしますか!」
 白兎もいつになく真面目に、眼下に広がる建物を見下ろす。
 そこは、和歌山県海南発電所。
 どうやら、その稼働は停止しているようだ。
「放置しすぎてドラゴン残党に再利用されるのも嫌だから、片付けられるところは早く片付けていかないと」
 長い髪に羽織ったケルベロスコードを靡かせる峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)が告げた。
 ちなみに、恵のコートの中には黒ビキニだけと、なんとも大胆な格好である。
「あのドラゴン相手にゲートも破壊出来たんだ。この場所も俺達の手で解放できるはず」
「今回は、ドラゴンじゃなくて、竜牙兵が相手だけど……それは、関係ない」
 灰の言葉を受け、無月達は皆へと呼びかける。
 この地を、取り戻そう……と。

 徐々に、近づいてくる地面。
 メンバー達の視界に発電所の建物が大きく映る。
「さて、ミッション時とは異なるであろうか」
 山羊の王様であるマーコールの角を持つ竜派ドラゴニアン、レーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)が周囲の敵戦力を見極める。
 その数は、ミッション攻略に当たるケルベロスの働きもあってか、かなり減ってきている。
(「思ったより兵はいないが……」)
 青髪のシャドウエルフ、瀬戸口・灰(忘れじの・e04992)は、この場にいる一回り大きな竜牙兵……黒竜牙の首魁を見定める。
「みんなを怖がらせるためだけに、ずっとここは襲われ続けていたのかー……」
 グラニテ・ジョグラール(多彩鮮やかに・e79264)もまた発電所というものに興味を抱いていたようで、必要以上にその建物を見回していた。
 生活を便利にしようと生まれた建物のはずが、今では反対の使われ方をしている現状。
 それがグラニテにはもの悲しく思えて。
「……今、助けるからなー!」
 地上が近づく。以前と違い、バリアなどはない。ただ突っ込むのみ。
「夏には大運動会、そして水着が待っているんだ。さっさと処理させてもらうよ」
 白兎はチェーンソー剣を振り下ろすが、その場の竜牙兵は素早く飛び退いた。
 いつもは雷光と爆炎、スモークが味方してくれたが、それがない。
 着地したグラニテは小型閃光手榴弾を地面へと投げつける。
 眩い閃光は数体の目を灼いたが、首魁と数体は咄嗟に防いだらしい。
 面倒な取り巻きがいる状況。その数はすくないものの、今まで、グラディウスの恩恵がいかに大きかったかを感じさせられる。
「大将首はここにいマス。下手に動き回るよりは、纏めて倒してしまいマショウ」
「そうだな」
 モヱの提案に同意する灰は、この場にいるのが黒竜牙の部隊だけであることを目視で確認する。
「ここから奴等が被害を拡大させないように、なるべく多く倒していくか」
「変に暴れだす前に、きっちり片付けていかないとね」
 灰に同意する恵もまた敵が他部隊を呼ぶ前にと、手早くこの場の黒竜牙達の殲滅へと当たるのである。

●邪魔な取り巻きを蹴散らして
 この場を占拠していた竜牙兵……「黒竜牙」。
 見た目には力で攻め来るタイプには見えず、纏う黒い装甲が忍者や、特殊工作員といったものを思わせる姿だ。
 その中に、一回り大きな個体がいる。
「イクゾ、奴ラヲ殲滅スルノダ……!」
 メンバー達は皆、自身のグラビティの命中率などでその実力を目で確認することで、そいつが首魁だと再確認した。
「首魁のみ狙えれば良いのデスガ」
 そう考えていたモヱだが、さすがに甘かったかもしれない。
「邪魔だから、引き剥がしたいね」
 後方支援に当たる恵が言うように、首魁だけを引きつけるか、あるいは周囲の雑魚を蹴散らしつつ首魁を狙うしかなさそうだ。
 首魁単騎狙いでグラビティを編成しているメンバーも多い。
 白兎も改めてチェーンソー剣で、グラニテもエアシューズで蹴りかかるが、やはり取り巻きが邪魔をし、盾となるべく割り込んでくる。
 また、取り巻きが逆に炎の刃で切りかかってきたり、爆破スイッチを押してこちらの広範囲を連鎖爆発させてきたりしていた。
 それらはできるだけ被害を軽減させようと、盾役となる無月、灰が前に出て身構え、敵の攻撃を受け止める。
 モヱのミミック、収納ケースもまたカバーに当たり、炎に塗れつつも偽物の財宝をばら撒いて敵を惑わしていく。
 抑える仲間達の回復にはモヱ、恵、そして、灰の翼猫の夜朱が動いていた。
 敵の攻撃は首魁を含め、炎での攻撃がメインとも言える。
 それもあって、モヱはライトニングロッド『Magical i-Land』を手に雷の壁を築いて延焼を防ぐ。
 夜朱も大きく翼を羽ばたかせ、炎が燃え広がるのを食い止めてくれていた。
「この程度、全然熱くはないぜ」
 まだまだ戦いは始まったばかり。灰は相手を挑発するように言い捨て、ゾディアックソードを手にして星座のオーラを敵陣へと放つ。
 さらに、無月が続く。
「足元……注意……。……もう遅いけど」
 彼女が告げると同時に首魁の足元から多数の槍が生え、真下からその体を貫かんと攻め立てていく。
 現状は、敵の炎には淡々と対処を続ける。
「13・59・3713接続。再現、【聖なる風】」
 ごく一部、魔術回路を開放した恵は浄化の風を吹かせ、仲間の体に引火した分を含めてこの場で燃え上がる炎を鎮火させていく。
 戦いの中で、マリアは新手が合流しないかと警戒する。
 最悪、バイオマスを撒いて、援護に訪れる敵のかく乱も考えつつ、マリアは仲間達の強化に当たる。
「皆さんの助けになりますよう」
 マリアは自分以外のメンバーを優先してオウガ粒子を撒いていく。
「首魁は火力役だ」
 相手のポジションを見極めたレーグルは仲間に告げながら、バスターライフルより凍結光線を発射していく。
 そうして、レーグルは相手盾役の体を凍り付かせ、スムーズな撃破へと当たっていた。

 交戦が続き、盾役となっていた取り巻きの黒竜牙が倒れていく。
 取り巻きを巻き込みながらも白兎は首魁の撃破を優先するが、それでも一撃で倒せると判断すれば、ギザギザの刃を持つカマキリブレイドで傷口を抉るように切り刻み、その生を終わらせてしまう。
 敵の攻撃は比較的、盾となるメンバーへと集まる傾向がある。
 それもあって、モヱは妖精弓『Dummy ENTER』へと持ち替え、妖精に祝福された矢で回復と共に破邪の力を一時的に纏わせていく。
 マリアもカラフルな爆発を巻き起こし、仲間の士気を高める。
 彼女の場合は回復よりは強化を優先ではあるが、それでも傷を塞いでいることに変わりはない。
「これなら、このまま戦って問題あらへんですね」
 しばらくは、マリアも現状維持しつつ、仲間の支援強化。ブレイブマインで火力のかさ上げを行う。
 それによって、力を高めるレーグルは首魁との距離を詰めて。
「お前達の主は誰だ」
 この黒竜牙という存在は、その名の通り黒き竜によって生み出された存在だという話だ。
 それを気にかけたからこそ、地獄化した炎の両腕を飾る巨大な縛霊手に降魔の力を籠め、レーグルは全力で殴り掛かりながら問いかけた。
「主ヲ売ル部下ガイルト思ッタカ……!」
 手にする凶刃を怪しく煌めかせる黒竜牙は回答を拒絶し、その軌跡を赤く燃え上がらせてレーグルへと切りかかってきた。
 やはり答えぬかと諦観もしていた彼と入れ替わるように灰がその一閃を受け止めると、続いて後方からグラニテが前に出る。
 アイスエルフであるグラニテは全身に黄緑色の氷を生やしているが、力ある息吹は凍てつく風となって相手の体を凍り付かしていった。
 夜空に光る星と龍をイメージした『星龍砲』より、無月が凍てつく光線を発して敵の体の凍る領域をさらに広げる。
 さらに、敵の一撃をその身をもって食い止めた灰がいつの間にか跳び上がり、流星の一蹴を首魁へと見舞っていく。
 仲間の体を焦がす炎は恵がすぐに光の盾を張り巡らし、回復手としての立ち位置を合わせて鎮火していった。

 取り巻きは残ったままではあるが、メンバー達はそれらを抑えつつ、首魁の討伐を優先する。
「グウウゥゥ……!」
 黒い鱗を纏い、自らの体力回復に当たる首魁。
 それを見たケルベロス達は、さらに攻撃の手を強めていくのである。

●巨大な黒い牙の破壊を
 敵は弱ってきてはいるが、決してその攻撃が弱まっているわけではない。
「その動き、止めてもらいますよ!」
 その為、マリアは相手の牽制の為、グラビティチェインを抑制する効果のある光の麻酔弾を黒竜牙の首魁へと撃ち込んでいく。
 周囲の敵の抵抗はなおも激しい。
 モヱのミミック、収納ケースも身を張ってくれているが、そろそろ体力が厳しくなってきている。
「意趣返ししたところデスガ……」
 回復手として立ち回る以上、回復の手は止められない。
 モヱはそんな歯痒さも覚えながらも、前線を持たせてくれる仲間へと電気ショックを飛ばして賦活を続けていく。
 だが、モヱは最悪暴走も頭にちらつかせてはいたが、そこまで追い詰められることはなさそうだ。
 実際、元よりこの場に取り巻きこそいたが、増援は一切この場に現れない。やはり、強襲型魔空回廊がなくなったことで戦力不足はあるのだろう。
「ヤラセハセヌ……!」
 いつの間にか、設置していた爆弾を黒竜牙の首魁が起爆する。
 堪える無月や灰もかなりダメージと疲労が蓄積してきてはいた。
 だが、淡々と自らに気力を撃ち込む無月は己の腕を超硬化させて素早く敵の体を貫く。
 続けて、灰も翼猫の夜朱の助けを借りて傷を塞ぎつつ、暴風を伴う強烈な回し蹴りで取り巻きを巻き込み、首魁の体を薙ぎ払っていく。
 恵が後方から彼らの体に燃え上がる炎の鎮火を兼ね、ピンク色の霧を展開して火傷と切り傷の治療に当たる。
 その間に、前線のレーグルが再度繰り出す降魔の力を伴う縛霊手での一撃を叩き込み、相手の体力を奪いながらも強かに殴打した。
「グアアァァッ……!」
 さすがに、その体をよろめかす首魁。
 そいつへと白兎、グラニテが仕掛ける。
 白兎は一度、カマキリブレイドを明後日の方向へと投げ飛ばす。
 そちらへと首魁の気が逸れたタイミング、白兎が飛び込んで。
「さあ、召し上がれ♪」
 彼は満月状のエネルギー弾を直接、首魁の身体へと叩きこんでいく。
 続き、グラニテもまた群青絵具で夜空と、そこに流れる星々を描き出す。
「きらきら煌めく夜の中で、ひときわ輝くもの。ほら、きみにもきっと見えるはずだよー。だって、あれは」
 それは、首魁に幻惑の術を見せ、敵に天高くより落下しているかのように錯覚させる。
 本来、グラニテのそのグラビティは天体衝突の衝撃を体験させるのだが、その前に白兎の撃ち込んだエネルギー弾が首魁の体内で大きく膨れ上がって。
「グ、グワアアアアッ!!」
 敵はその意識の中で、流星のごとく落ちながら爆ぜ飛んでしまったのだった。

●完全解放を目指して
 首魁を含め、この場の取り巻きを撃破したケルベロス一行。
 あとは、周辺にまだ残っているはずの残りの敵を掃討できれば、この地……海南発電所の解放も叶うはずだ。
「一応、脱出経路の確認も……っと、先にミッション参加者と合流した方がいいですかね」
「そうだね。落ち着いたら、ヒールで修復もしたいし……」
 マリアが仲間達へとそう話を持ち掛けると、恵も希望を口にする。
 皆、まだまだ戦う気満々のようで。
「まだまだ戦えるぞー」
「わたしも問題ない」
 グラニテも、無月も、掃討作戦に賛成する。
「この地域から、脅威を完全に取り除いていこう」
「ワタシもいきマス」
 灰もなるべく多くの竜牙兵を撃破しようと、意欲を見せる。
 モヱも後でヘリオンにて預けたオペラグラスを引き取りに行くことを考えつつ、その参加を希望していた。
「ドラゴンがこのままで終わるとは思えぬが……」
 レーグルは一抹の不安を抱くものの、この場が一段落したことには間違いない。
「これでこの地も、ようやく復興できるであろうかな」
 一息つき、レーグルもまた仲間を追っていくのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年6月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。