ミッション破壊作戦~終わりの、その後に

作者:秋月きり

「みんな! ドラゴンのゲート破壊おめでとう! これは歴史的に見ればローカスト、螺旋忍軍に次ぐ快挙。でも、ドラゴンという個体最強を謳うデウスエクスのゲートを破壊した事に大きな意味があるわ!」
 リーシャ・レヴィアタン(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0068)は喜色に富んだ声で、惜しみない賞賛をケルベロス達へと向ける。それは、心よりドラゴン種族のゲート破壊に成功した事を喜ぶ祝福でもあった。
「それと、朗報……になるのかな? ドラゴン・ウォーの結果によって、ドラゴン勢力によるミッション地域の強襲型魔空回廊の消滅が確認されたわ」
 強襲型魔空回廊は日本各地に存在するデウスエクス侵攻の拠点である。それが消えた事が意味する事は一つだった。
「そう。ミッション地域の完全解放が成っちゃったの」
 だが、その全てが手放しで喜べる事ではないとリーシャは言葉を続ける。
「強襲型魔空回廊が消えたからと言って、残された戦力が消滅した、と言うわけではない処ね。勿論、戦力が補強されないから、制圧自体は時間の問題でしょう。ただ、だからと言って静観する訳にもいかないのも事実よ」
 未だ、ミッション地域を制圧していた戦力は残されているのだ。それが自暴自棄にミッション地域に飽き足らず、周囲を攻撃する事があれば、甚大な被害は免れないだろう。
 その懸念は近い内に現実の物となりかねない。
「だから、みんなにはミッション地域に乗り込んで貰って、そのミッション地域の首魁――要するに、ボスね。その撃破を行って欲しいの」
 ミッション地域は今、強襲型魔空回廊を失い、混乱している最中だ。そこにヘリオンよりの降下作戦を行い、敵の首魁を討つ。そうすれば敵は完全に烏合の衆へと成り下がるだろう。そうなってしまえば彼らはケルベロス達の敵では無く、殲滅が可能となる。
「……と、気楽に言っちゃったけど、危険な降下作戦になる事は想定されるわ。だけど、みんななら出来るって信じてる」
 リーシャから向けられる信頼は厚かった。
「どのミッション地域を攻めるかは、みんなに一任するわ。これまでのミッション、或いはミッション破壊作戦を踏まえて選択、撃破へと向かって欲しいの」
 どのドラゴン勢力の地域を攻めても、そこに見合った特色がある。また、ゲートと共に戦力を失っている言え、そこは個体最強を謳われたデウスエクスだ。努々油断出来る相手ではない。
「あ、従来のミッション破壊作戦と違ってグラディウスの出番もないから、魂の叫びも必要ないわ。だからみんなにはただ、ドラゴンを――敵の首魁を倒す事に専念して欲しいの」
 それだけが此度の望みであり、目的だった。
「ドラゴンのゲートを破壊した今、ドラゴン勢力の拠点を叩き潰す絶好のチャンスよ。みんなは困難な道を選択し、ドラゴン勢力のゲートを破壊する事が出来た。だから、今回もきっと……」
 そして、期待と祈念を込め、リーシャはケルベロス達を送り出す。それはいつもの言葉と共に紡がれていた。
「それじゃ、いってらっしゃい」


参加者
鵺咬・シズク(黒鵺・e00464)
ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)
相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889)
ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)
北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)
服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)

■リプレイ

●月山の空
 幾渡、この景色を見ただろう。幾渡、この空に立っただろうか。
 降下ハッチに立つ鵺咬・シズク(黒鵺・e00464)の視線は眼下に聳える月山に注がれていた。
 前髪を嬲る風も、椀を思わせる半円状の火山も変わらない。ただ、一つだけ。異なる事があった。
「魔空回廊がねーな」
 前情報の通りとランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)が呟き、アンゼリカ・アーベントロート(黄金騎使・e09974)が首肯する。
 二人が告げた通りであった。
 月山を覆っていた筈の強襲型魔空回廊、正確に言えば、そこから展開されていたドーム状のバリアは、今や見る影もない。ドラゴン・ウォーでゲート破壊に至った影響が、この地にも現れていたのだ。
「ゲートの破壊、そして魔空回廊の完全破壊が成された今、残るはミッション地域に残る竜どもだ!」
 血気盛んな北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)の独白は、共に飛び立とうとするこがらす丸のエンジンの唸りと共に。
「兵どもが夢の跡……にはまだ早いやもしれんな」
 戦いの時はまだかと笑う服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)の言葉に、くはっと相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889)が笑みを浮かべ、ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)はふっと静かに微笑する。
 戦いの時は直ぐ側に。これから始まるのは掃討戦。だが、相手が最強種族たるドラゴンである以上、気を抜ける戦いではない。
「ああ。俺達が勝って終わり。これはそう言う戦いだ」
 成否を占ったコインを掌で弄びながら、卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)が薄い笑いを浮かべる。
 無論、コイントスの結果が戦いの勝利を告げる訳ではない。これは単なる景気づけ。だが、信心だろうがジンクスだろうが、勝利への糧になるならば、全てを利用するつもりだ。
「今日が最後だ。ケリをつけてやるよ!」
 シズクの号の元、ケルベロス達は虚空へと、我が身を投げ出すのであった。

 そう。これは終わった戦いの、その後の戦いだ。
 ドラゴン・ウォーの勝利は日本各地に設置された強襲型魔空回廊の強制停止と言う結果をもたらし、そして取り残されたドラゴン達はケルベロス達によって掃討されていく。
 周囲に被害を振りまかない為に。敗色の彩りを濃くする為に。
 ――これは、その先陣を切った者達の物語であった。

●剣竜『ギルドレイブ』
「――殺すッッ!!」
 戦場に響く凶声は竜人の叫びだった。グラディウスを携えない今、叫びに意味は無い。だが、それでも彼は咆哮する。それが自身がドラゴンにぶつける意志だと言わんばかりに。
 ギルドレイブを襲ったそれは彼の叫びのみではない。流星を携える跳び蹴り、そして共に走るテレビウム、マンデリンのバールに良く似た棒状武器の一撃だった。
「不意打ちは卑怯と言うまい。――斬撃勝負といこうか、剣竜よ」
 降下後、体制を整えたソロの機刃は孤月の軌跡と共に。鱗を切り裂かれたギルドレイブから苦悶の呻きが零れる。
「1発なら躱される弾丸でも、6発同時なら!」
 その隙を穿つ様、一音六射の弾丸が放たれた。計都の放つ弾丸は鱗の下に潜り込み、ドラゴンの肉体を――とりわけ、巨大に発達した刃翼の根元を破壊していく。
 続く地面を抉る怪音は、こがらす丸による擦過音であった。地面を抉りながらスピンしたサーヴァントの車輪殴打は、竜人同様、蹴りの如く、ドラゴンの竜体に食い込んでいく。
「貴方と即座の相対が叶った事を幸運と言うべきか否か判らないけど――」
 砲塔を突きつけ、アンゼリカは叫ぶ。目の前に現れたそれこそが、自身らが倒すべき敵ならば、名乗る事こそが今は相応しい様に思えた。
「さぁ、黄金騎使がお相手しよう!」
 そして繰り出された回し蹴りはドラゴンの身体を抉り、血をしぶかせた。
 首魁と思わしきギルドレイブの一体は即座に見つかった。群れるギルドレイブの中でもとりわけ巨大な一体はしかし、魔空回廊の跡地から動こうとしていなかった。或いは、竜十字島への再接続を働きかけていた最中だったかも知れない。だが、真相など、ケルベロスにとって意味を為さない物だった。
「どうだい、狩られる立場になった御感想は? 聞くまでもねえな。恨み言以外答えられねえのが答えだろうさ!」
 ランドルフの叫びもまた、流星纏いの蹴りと共に。
 その叫びでようやく理解したのだろう。
 侵略者が誰で、今、何が起きているのかを。
「ォォォオオオオオっ!」
「はっ。五月蠅ぇな!」
 咆哮に薄く笑う泰孝は右腕をブゥンと振るう。手裏剣の如くギルドレイブを強襲したそれは、指に手挟んだ麻雀の百点棒であった。
「テメーを蝕む一本場。さあ、どこまで伸びるかね?」
 治癒を阻害する毒に蝕まれたドラゴンの行く末は如何なる物か。張り付く笑みに、しかし、応じる物は居ない。
 戦輪よろしく投擲されたウイングキャットのリングによる攻撃、そして。
「さぁ! いざ尋常に……勝負ッッ!!」
 飛びついた無明丸の貫手が、ギルドレイブの鱗を切り裂いたのだ。零れた叫びは痛みの為か、強襲への怨みの為か。
「よぉ。ギルドレイブ。別れを告げに来たぜ」
 その鋭い眼光をドラゴンに叩きつけ、シズクが静かな声を上げる。
 伴う爆発は、自身の宿敵を打ち倒す為の誓い。
「アアアアアアッ!」
 全ての鱗を逆立て、否、剣状に伸ばしたギルドレイブが再度、咆哮する。
 その叫びは何処か、歓喜にも似ていた。

●殲火剣嶽
 その攻撃は剣戟で、そして、暴力そのものであった。
 荒れ狂う息吹は全てを刀剣と化し、その刃は生ある者の肉体を切り裂く。
 その戦いをシズクは知っていた。この地の攻略は今まで四度為され、その何れもが強襲型魔空回廊の破壊に至っていない。自身が相対した三度、並びに目を通した報告書に記載されていた光景を鑑みれば、それは剣嶽の名に相応しい物であった。
 ブレスが翻る度に仲間が傷つき、血反吐が月山の地に零れ落ちる。
 4人と2体から成る前衛が引き起こす減衰はしかし、ブレスからの全てを守る絶対の盾とはなり得なかった。切り裂く刃の追加効果を減らす事は叶っても、ダメージそのものを減らす事は出来ないのだ。そして、如何にディフェンダーが庇おうとも、傷を負う者が複数存在する事は、避けようのない事実だった。
「――ちっ。回復が間に合ってねぇ!」
 叫びは光の蝶を喚ぶランドルフからだ。
 見切りを厭わず重ねられるギルドレイブの息吹が重ねられ、その都度、傷つく前衛の6者に向けられる治癒は、防御を担うシズクや竜人、マンデリンだけでは事足りていなかった。故に、狙撃手であるランドルフもまた、治癒に奔走せざる得なかったのだ。
 否、それは彼だけではなかった。
 攻撃を担うはずの無明丸もまた、叫びによって自身の傷を吹き飛ばし、ソロはギルドレイブの御霊を喰らう事で自己治癒と成している。
(「攻撃手が治癒を行うなんぞ、悪手も良いところだけど……」)
 減った手数を埋める様、弱体化光弾を放つアンゼリカは、独り言ちる。
 だが、ランドフルの叫び通り、治癒が間に合っていないのも事実。それも一重に――。
「メディックの不在、か」
 或いは攻撃手の不足と、研ぎ澄まされた殴打をギルドレイブに叩きつけながら、計都は嘆息する。
 こがらす丸を含めた4枚の盾は防御としては役目を果たしている。だが、彼らが得手とする事は防御であり、治癒ではない。持久戦に持ち込むのであれば治癒専任者の存在は必須だった。
 持久戦を捨て、速効の撃破を望むのであれば、ソロと無明丸のみで構成された攻撃手は及第点のレベルだ。自身を含め、それを3者の狙撃手で後押しする筈だったが、それは決定的な処で形をなし得ない。
 狙撃手はあくまで攻撃を当てる事がその加護なのだ。
 決定打となり得る効果的打撃は、常に起こりえる物ではない。
「ガアアアアアアッ!」
 そして咆哮と共に再び息吹が吹き荒れる。
「どうした、回復しねーと動けなくなって弄り倒されるだけになるんじゃねーの?」
 ギルドレイブとて無傷と言う訳ではない。自己治癒に意識を向かわせるべく紡がれた泰孝の挑発はしかし、咆哮と刃の嵐によって掻き消されていった。
(「やっこさん、覚悟を決めやがったって事か」)
 其処に映る瞳の色に、全てを悟った泰孝は唾棄と共に苦み走った表情を浮かべる。
 思えば一度、ギルドレイブは確かに自己治癒を行った。それを阻害したのは自身が投擲した百点棒だ。それで悟ったのだろう。自己治癒に意味は無いと。
 元より帰る場所を失ったドラゴンだ。起死回生を狙うならば、此処でケルベロス達をくびり殺すほか無い。その覚悟を抱くに充分な条件が整っていた。
 サーヴァント、なけなしの良心の戦輪がギルドレイブを切り裂き、追うソロの回転槍と化した刺突が身体を貫く。如何に身体が傷つこうとも、見切りを考慮すれば、魂食いを続けて行うわけにいかない。故に、多種多様な攻撃でギルドレイブを追い詰めていく。その判断は正しい。
 だが、それでも、幾多に攻撃を紡いでも、未だ、ギルドレイブは動きに衰えを見せていなかった。
「チキンレースと言うわけじゃな! その心意気や良し! 覚悟し往生せい! ぬぁああああああああああーーーーーッ!!!」
 無明丸の殴打を受け、ぐらりと揺れたギルドレイブが浮かべたそれは、不敵な笑みであった。

●殴り合いの果てに
 幾渡紡がれただろうか。
 再度吹き荒れた刃の息吹に、最初に動きを止めたのは、計都のサーヴァント、こがらす丸であった。
「――っ!」
 ボロボロの身体を切り裂かれ、光と化していく従者の最後を、計都は奥歯を噛みしめながら見送る。ギルドレイブの攻撃とこがらす丸の防御による相性の差異、そしてサーヴァントならではの体力の低さだ。消滅は覚悟していた。
「刃物への恐れは振り切った。消えろ、刃の竜よ!!」
 仇討ちとばかりに弾丸を乱射するが、しかし、ギルドレイブの攻撃は止む事を知らない。
 刃のブレスに、そして、刃を纏う体当たりが次に牙を剥いたのは、竜人のサーヴァント、マンデリンであった。
「――ちっ!」
 自身の半身を抉られる痛みを舌打ちで誤魔化す竜人の脇をすり抜け、ギルドレイブに肉薄する影があった。
 トレードマークのポニーテイルを揺らし、駆け抜けるその影は、シズクその人であった。
「これが俺の最後の技だ!」
 ボロボロとなった装束だけでなく、全身すら血に染めた彼女は、凄惨な笑みを浮かべる。腰の鞘に収まった対の剣には触れず、彼女が握りしめたそれは、両腕から出現した巨大な光――自身の身長をも超える、巨大な光剣であった。
「俺はてめえの剣を受け切ったぜ。てめえも最後まで無様は晒すなよ? ――一刀必殺!」
 シズクの生み出した光の剣がギルドレイブの鱗に食い込み、血肉を切り裂き、骨を断つ。一層巨大な咆哮は、断末魔の叫びの如く、月山に響き渡る。
 だが。
「はっ。耐えきった、か」
 それでもなお、ギルドレイブは沈まない。翼は折れ、四肢は半ば断たれ、それでも自身に影落とす死そのものを排斥するよう、そこに聳立していた。
 そして、そこに笑みが浮かぶ。それは蹂躙の証。自身を一介の剣として振るう戦士の笑みであった。
 前足が振るわれる。刃と化した前肢を防ぐ力など、シズクに残されていなかった。
 そう、シズクには残されていなかった。
「お膳立てはしてるんだ。外したら指さして笑ってやるからな」
 身に纏う紅の衣と闘気、それだけを盾に飛び出した竜人は自身の背後に笑いかける。其処に浮かぶ色は信頼。守って託す。それが自身の役割だと周知した男の笑みであった。
「まったく、頼りになる奴だよ、お前は」
 翻る青は苦笑と共に。
 共に一対に構えた機刃が唸りを上げる。それは、ソロの両腕に宿った侵略者に抗う青き刃――地球そのものの意志だった。
「地球はお前たちデウスエクスのものじゃない。この星を食らうことが弱肉強食の理と言うのなら……私がお前たちに本当の力を見せてやる!!」
 そして青き光と化したソロが跳ぶ。侵略者たるデウスエクスを、その一翼であるドラゴンを、ギルドレイブを切り裂く為に。
 対するギルドレイブもまた、ソロを迎撃すべく頭部を引く。竜を竜たらしめる必殺の生体武器、息吹に全てを注ぎ込む様に。
 だが、それが発せられる事は無かった。
「ぶち砕けッ! シルヴァリオン!!」
「究極の光を、今、打ち込んでやるっ!」
 ブレスが形を成すその刹那、ランドルフの銀色に輝くオウガメタルによる殴打、そしてアンゼリカの放つ光の槍が放たれる。金と銀、異なる、しかし近しき色に強襲されたギルドレイブは瞬間、動きを硬直させてしまう。
 突き刺さった攻撃は二人が紡いだ物だけでは無い。泰孝の電撃が、計都の氷弾が、そして無明丸の拳が、ギルドレイブの鱗を抉り、血肉へと穿たれていた。
「全ての命の源たる青き星よ。一瞬で良い……私に力を貸してくれ!」
 そして、青き煌めきが翻った。
 走る光は二条。
 それは十字にギルドレイブの首へと叩きつけられ、光の軌跡を描く。
「――終わりだ」
「ああ」
 とんと地面に降り立ったソロは、両腕を染める血を振り払い、仲間に笑いかける。応じたそれは、ふっと微笑するシズク微笑だった。
 そして、その背後で、どうっとの音と共に土煙が沸き立つ。
 振り返らずとも判った。その音が意味する事を。
 その彼女の背後で、首を切り飛ばされたギルドレイブの屍体が、地面へと転がっていた。

 そして、物語も終盤を迎えていた。
 山頂に座したケルベロス達は広がる裾野を見やる。その視線の先にあるのは静けさを取り戻しつつある山肌だ。
「無事に勝てたね、だがドラゴンが支配していた地域は多い。これからも!」
 アンゼリカの声ははつらつと響く。この山にまだ、ギルドレイブは残っている。だが、首魁を倒した今、彼らが掃討されるのは時間の問題だろう。
「その前に、此処だな」
 残ったギルドレイブ達もそうだが、刃と変えられた山肌をどうするかと、ランドルフは苦笑する。とりあえずヒールを掛けるにせよ、相手は海抜1984メートルにも及ぶ霊山だ。高さ、広さを考えれば、多くのケルベロスによる人海戦術が必要だろう。
 首魁は倒した。それでもまだやる事は沢山ある。
 シズクは眉をひそめ、仲間達を見やる。誰もが同じ表情を浮かべているのは、きっと、考える事が同じだからだろう。
 それぞれの思案が彼らを染め上げ、そして。
「わははははっ! この戦い、わしらケルベロスの勝ちじゃ! 勝ち鬨を上げい!」
 そんな無明丸の脳天気かつ脳筋な台詞が響き渡った刹那。
 彼らはぷっと笑みを零す。
 それは、春の風の中に相応しい、爽やかな笑み――勝利の余韻の中で奏でられた颯爽とした笑いであった。

作者:秋月きり 重傷:相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年6月4日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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