信じられない! 空飛ぶ不思議なリボン!?

作者:洗井落雲

●リボンが空を飛ぶ
「ふんふん、ふふ~ん♪」
 上機嫌、鼻歌交じりで街を歩くのは、シルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)だ。
 ケルベロスとしての激しい戦いが続く昨今、定期的に存在するとはいえ、やはり休日となれば体と心を休める嬉しいもの。
 日頃の疲れを発散するように、シルフィリアスは遊びや買い物の計画を立て、いざ出発。今日一日の事を思い描きながら街を行く……と言う状況だ。
「……ん?」
 と、ふとシルフィリアスは声をあげて、小首をかしげた。視線の先には、街を見下ろせるような公園があって、そこにふよふよと、可愛らしいリボンが風に舞っていた。
 風に舞う――それだけなら、誰かのリボンが風に飛ばされたのか、そう思うだけかもしれない。けれども、それは、まるで蝶のように、意志を持ってひらひらと――飛んでいる。
 珍しいなぁ……いや、そうじゃない。何か変じゃないか。シルフィリアスが、ケルベロスとしての経験から、何らかの異常性を感じ取る。思わず身構えると、そのリボンより、ぶわりと何かが噴出した――それは、無数のモザイクだ!
「ドリームイーターっすか!?」
 驚愕に、思わず声をあげるシルフィリアス。だが、その瞳をさらなる驚愕の色に染めるであろう出来事は、今眼前にて発生しようとしていた。
 噴き出したモザイクが晴れると、そこには人――見覚えのある少女の姿があった。そして少女が手を掲げると、飛行していたリボンがその手に収まる。少女はそのリボンを、自らの髪にしっかりと結び付けた。まるで、アニメの変身シーンのようにも思える一連の行動。いや、それよりも。
「自分……!? 自分の姿をコピーしたっすか!?」
 シルフィリアスが叫ぶ。
「あなたの身体……自分が頂くっす」
 現れたドリームイーター……『フライングリボン』の少女は、光無き眼を、シルフィリアスへと静かに向けた――。

●緊急招集
「集まってもらって感謝する……緊急の案件だ」
 そう言って、アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は、集まったケルベロス達へと向けて、そう言った。
 なんでも、シルフィリアスが休日、単独行動中にドリームイーターに襲われるという予知がなされたというのだ。
 この予知を、シルフィリアスへと告げようとしたものの、本人とはどうしてもコンタクトが取れない。
「こうなっては仕方がない。シルフィリアスが襲撃されるタイミングは分っている。皆は直接現地に向かって、シルフィリアスを救出、合流。敵を撃退してほしい」
 敵は配下を連れておらず、単独で襲撃を仕掛けてきたのだという。その手段から、おそらく戦闘能力に自信があるに違いあるまい。
 戦場となるのは昼前の公園だが、敵により人払いがされていたのだろう、周囲に一般人はおらず、新たにやって来ることもないという。
「シルフィリアスを救い、敵を撃退してほしい。シルフィリアスはもちろん、君たちも無事に帰ってきてくれよ? それでは、君たちの無事、そして作戦の成功を、祈っている」
 そう言って、アーサーはケルベロス達を送り出した――。


参加者
羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)
駒城・杏平(銀河魔法美少年テイルグリーン・e10995)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
メイキス・ガンスモーク(ブレイズピアサー・e79382)
 

■リプレイ

●二つのセレナーデ
「くぅ……まさかあちしの姿をコピーするなんて……!」
 じり、と後ずさりながら、シルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)は呻くようにそう言った。
 シルフィリアスの目の前に立ちはだかるは、ドリームイーター、『フライングリボン』。フライングリボンはその紫の髪を風にたなびかせ、一歩、シルフィリアスへと迫る。
「くふふ……怖かろうっす……」
 不敵に笑う『フライングリボン』……! その言葉を肯定するかのように、シルフィリアスはわなわなと震えた。
「当たり前っす! こういう状況に陥ると、大体の場合仲間が『間違えた、ごめん♪』とか言いながらフレンドリーファイアしてくるんっすよー! 特にあの、胸カースト最下層……」
「誰が大平原の小さな丘よオラァ!!」
 突然! 叫びとともに現れた何かが、シルフィリアスを強かに蹴り飛ばした! その接近に、シルフィリアス、フライングリボン、両者とも気づかぬ完ぺきなインターセプト! 幸運だったのは、その一撃にグラビティが込められていなかったことであろう。込められていたらダメージはあるが、通常攻撃は、ケルベロスにはダメージはない――とはいえ、痛くないとは言っていないのだが――のだ!
「ぐわーーっ、っすー!」
 シルフィリアスがゴロゴロと地を転がる! が、勢いを殺さずに素早く飛び上がり、ずざざ、と両足で地を滑りつつ着地。この程度の不意打ちなど、日常茶飯事であるシルフィリアスにとって、受け身をとってすぐさま復帰することはたやすい――とはいえ、痛くないとは言っていないのだが――のだ!
「そ、そんなことは言っていないっす! それじゃあ『ちょっとある』じゃないっすか! あちしが例えるとしたらそう、波すら立たぬ水平線――」
「余計悪いわよっ!」
 がるる、と唸るのは、先ほどの不意打ちを仕掛けた人物――羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)である。シャーマンズゴーストの『まんごうちゃん』は、主を宥めようとあたふたと両手を振っていた。
「えっと……増援っすか!?」
 あっけにとられたまま、フライングリボンが叫ぶ。増援なのか、新たなる第三勢力なのか。フライングリボンにはよくわからなかった。いや、結衣菜と、そしてともに現れた者たちがケルベロスであることは分ってはいたのだが、もしかしたらシルフィリアスを討伐しに来たのかもしれない、と思う程には、結衣菜は殺意マシマシであった。
 ぐりん、と結衣菜が首を振って、フライングリボンを見やった。ひっ、とフライングリボンが悲鳴を上げる。しかし一転、結衣菜は小首をかしげつつ、いつもの可愛らしい表情と声で、
「どっちが本物なんだー。そっくり過ぎて区別がつかないー」
「くっ……わかりやすい棒読みを……」
 フライングリボンは、思わずたじろぐ。とはいえ、セリフだけをとってみれば、結衣菜はシルフィリアスの援護に訪れたのだろう。たぶん。きっと。おそらく。めいびー。フライングリボンはそう思う事にした。
「ま、まぁ、冗談はそれくらいにして……」
 と、結衣菜を宥めるように言ったのは、駒城・杏平(銀河魔法美少年テイルグリーン・e10995)である。
「冗談?」
 にこり、と笑って結衣菜が尋ねるのへ、杏平もたまらずたじろいだ。
「いや、ほら、偽者は……胸にモザイクがあるから」
 指さす杏平。見てみれば、確かにフライングリボンの胸は、モザイクによって包まれている。
「そう、そうっす! それっすよー!」
 と、シルフィリアスは憤懣やるかたない、とい言った表情で声をあげた。
「なんであちしの格好して胸にモザイクつけてるんすか! 胸を隠してるみたいであちしが風評被害うけるじゃないっすか!」
「いや、それは自分の欠損が……」
 しどろもどろに声をあげるフライングリボン。その様子に、結衣菜は何か勝ち誇ったように、両手を腰に当てて見せた。
「つまり、胸が足りないっていう事ね! やっぱりシルフィリアス、その胸は偽物だったんだわ!」
「なんであちしの胸が足りないって話になるんっすか!」
 地団太を踏みつつ抗議の声をあげるシルフィリアス。
「なるほど……つまり、これは胸をもんで確かめる……という事になりますね?」
 両手をわきわきとさせながら、にじり寄るのはシフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)だ。高速で両手をわきわき。120FPSのぬるぬるとした動きで両手をわきわき。
「ひいっ、セクハラっす! どうせもむならあっちの偽者にするっす!」
「なんですって!? 偽者なら揉んでもいいんですか!?」
 ぐりん、と高速でフライングリボンへと視線を向けるシフカ! その眼は獲物を見つけた肉食動物のごとく輝き、その両手は獲物を捕らえる触手めいてうねうねした!
「ひいっ、セクハラっす!」
 たまらず悲鳴を上げるフライングリボン。
「えっと、その……そろそろ真面目に戦おうよ……?」
 おずおずと手をあげる杏平。これは地獄に仏、溺れる者はなんとやら、フライングリボンはこくこくと頷いて、
「そ、そうっす! お前ら全員、生かして帰さないっす!」
 ファイティングポーズをとった。そのままどうにかこうにか、一気に殺意を膨らませ、場の雰囲気に軌道修正を図る。こうなっては、さすがにコメディ一辺倒というわけにはいくまい。
「なら……あちしも本気っす!」
 シルフィリアスが手にした杖、『カラミティプリンセス』を振るうと、その身体を可憐な輝きが包み込んだ。プリンセスモードによる変身。それは、ミニスカート姿の、さながら魔法少女のような衣装だ。
 くるり、と回ってウインクひとつ。
「魔法少女ウィスタリア☆シルフィ参上っす」
 可愛らしくポーズを決めながら、魔法少女ウィスタリア☆シルフィ、変身完了である。
「ならば、僕も!」
 杏平がその手をかざすと、きらきらとした輝きが、その身を包み込んだ。子供から、大人へ――エイティーンの能力で、18歳へと、今、華麗なる成長を遂げる――。
「颯爽登場! 銀河魔法美少年テイルグリーン!」
 ぴっ、と手をかざしつつ。可愛らしいポーズをとり、銀河魔法美少年テイルグリーン、ここに登場である。
 さぁ、ここに魔法少女と銀河魔法美少年は集った。二人――そして仲間たちは、フライングリボンへ向けて、ファイティングポーズ。
「さぁ、覚悟するっすよ、あちしの偽者め!」
 シルフィリアスは手にした杖で、びしっ、とフライングリボンを指す。同様に、杏平もまた、手にした剣をフライングリボンへと指し、
「空飛ぶリボン、お前の企み、僕たちが阻止し」
「まって、ちょっと、まって?」
 と――声をあげたのは、メイキス・ガンスモーク(ブレイズピアサー・e79382)である。左手をこめかみにやり、右手は杏平を制するように掲げている。何やら考え込んでいる様子で、メイキスは続けた。
「今――美少年? 美少年、って言った? 美少女じゃなくて?」
「えっ」
 杏平が小首をかしげる。メイキスは、深刻気な表情で、
「重要な……重要な事なのよ。わかる? 美少年……なのね? 美少女じゃなくて?」
「あ、はい……一応、銀河美少年……やらせてもらってます……」
 おずおずと答える杏平。メイキスが深く――深く、息を吐いた。
「ありがとう……そう、なんて言ったらいいかしらね……私はね、ロリコンなのよ」
「あ、はい」
「それでその……少年は対象外……うん、でも……可愛いからいいかな、って」
「あ、はい」
「うん、そうね。やっぱり可愛ければそれはすべてに優先するわ。それで相談なんだけど、戦いが終わったらでいいの、撮影会しない? シルフィリアスちゃん、結衣菜ちゃんも一緒に……どうかな?」
「あ、えーと」
 杏平が、シルフィリアスと結衣菜へと、視線を向けた。
 二人も困った顔をしていたが、ややあって、シルフィリアスがおずおずと声をあげた。
「……考えておくっす」
「ありがとう」
 メイキスは笑った。
 いい笑顔だった。
「さぁ、来なさい、フライングリボン! 平和と撮影会を守るため! 私たちが相手になるわ!」
 メイキスはその手に武器を構え、フライングリボンへと宣言する。その眼は、今は正義に輝いていた。
「な、なんかよくわからないけどうおおおおっす!」
 フライングリボンも、半ばやけっぱちに叫び、その胸のモザイクを爆発させるように吹き出し――。
 なんにしても、戦いの火ぶたは、ここに切って落とされた。

●奏でるセレナーデ
「戦闘準備完了……では行きましょうか」
 先ほどまでの様子はどこへやら、その両腕に『縛神白鎖『ぐlei伏ニル』』を纏わせたシフカは、怜悧な視線を、フライングリボンへと向けた。それは、デウスエクスであるフライングリボンが、刹那、本能的な恐怖を覚えるほどに、冷たく、鋭い視線であった。
「くっ……マインドジャック!」
 叫ぶフライングリボンのモザイクがリボンの形を成し、放たれる。それは相手の精神を覗き、弱点をトラウマとして投影する力を持つ。
「させない! まんごうちゃん、守って!」
 結衣菜の命に応じて、まんごうちゃんはぴょん、と跳んだ。迫るリボンをその身で受け止め、精神へのハッキングにふらつきながらも、耐えて見せる。
「やれやれ……できればもっと、楽しみたかったところですが」
 呟き、シフカは接敵する。『廃命白刃『Bluと願グ』』。その刃が月を描くような軌跡で振るわれるのを、フライングリボンはモザイクを盾のように展開して受け止める。
「た、楽しむ、って!?」
 ひぃ、とフライングリボンが声をあげるのへ、シフカはしかし、平然と答えて見せた。
「それはもう。触れたり、抱きしめたり……それ以上も」
 くすりと笑うシフカ。その表情はエロティシズムに満ち溢れていたが、フライングリボンにとっては、恐怖の笑みでしかなかっただろう。
「今度は全力よ! 『ルナイクリプス』!」
 結衣菜はオウガメタルへと呼びかけ、そのきゃしゃな腕へ、鋼の鬼を纏わせる。先ほど、シルフィリアスへの攻撃とは違い、強力なグラビティを込めた一撃が、フライングリボンを、展開していたモザイクの盾ごと吹き飛ばした。
「くっ……あれで、手加減してたっすか!?」
 衝撃に、顔をしかめるフライングリボンへ、結衣菜は可愛らしく鼻を鳴らして、答える。
「全力だったわ! ただグラビティを込めてなかっただけ!」
「それもどうなんっすかね……」
 困惑するシルフィリアス。まぁ、グラビティを使わないダメージは無効(痛くないとは言っていない)のケルベロスに対して、グラビティを使わずに攻撃を行うのはまぁ、じゃれているようなものなのだろう。
「気を取り直して……あちしの格好で迷惑千万っす! 此処でとめさせてもらうっすよ!」
 杖を振るえば、放たれる氷河期の精霊が、フライングリボンへと襲い掛かる。フライングリボンは両手をかざし、その猛吹雪から顔を守る様にしてガード。
「くっ……」
 うめくフライングリボンへと、
「そうだよ、それに人の身体を奪うなんて……!」
 吹き付ける風、その合間を縫うように、杏平はフライングリボンへと接近し、
「めっ! なんだぞ!」
 可愛らしく。
 とても可愛らしく、叱った。
「ぐわーっ!」
 フライングリボンが胸を抑える! その可愛らしい叱責の言葉は、相手のすさんだ心や闇などを一発で吹き飛ばす威力を持つ! カワイイ!
「うわ、ヤバい、よだれと鼻血出そう」
 たまらず口元を抑えるメイキスである。しかし、一瞬でその口元を締めると、
「そうね、悪いオンナノコには、お仕置きと行こうかしら」
 そう言ったメイキスの、両の手が黒く、暗く燃え上がる。迸る地獄の炎。メイキスは走った。一足飛びにフライングリボンへと接敵すると、その両手を突き出す。
 組み合わせられたその両腕は、まるで黒い蛇のように見えた。両手でフライングリボンを掴めば、それは黒蛇がかみついたかの如く。
「『蛇咬毒刺吻(ヴァイパー・キッス)』……絶望と炎に蕩けなさい」
 嗜虐的な、狂喜の笑み――フライングリボンの体内にて、注ぎ込まれた地獄の炎が燃え盛る。体の内を焼き尽くす激痛に、フライングリボンは目を見開く。その様を見て喜びの笑みを浮かべるメイキス、その胸の裡に燃え盛る闇とは、如何ほどのものなのだろうか。
 フライングリボンは、どうにかその拘束を振り切ると、荒い息を付きながら、ケルベロス達と距離をとった。
「……ふざけてるのかと思ってたっすけど、なかなかどうして。やるじゃないっすか」
 忌々し気に顔をゆがめつつ、己の身体をモザイクにて修復する。
「まぁ、実力だけなら充分な人たちっすから」
 シルフィリアスが肩をすくめて見せる。それから不敵に笑って、続けた。
「あちしを狙ったのが運の尽きっす。あなたはここで、終わりっすよ」
「それはこっちの……セリフっす!」
 フライングリボンは跳躍、宙へと舞うとモザイクを展開。無数のリボンと化して解き放つ。次々と着弾するリボンが、ケルベロス達の精神を蝕む――くらくらとする視界を、しかし頭を振って無理矢理正常な状態へと引き戻す。
「悪あがきですね」
 呟き、シフカは両の手の鎖を解放した。それは、宙を駆けるフライングリボンを捉え、
「これは……!?」
 球状のドームを作り上げ、フライングリボンを包み込む。
「動けば発動します……私の『殺技弐式『鎖陣・ドRoお巳』(サツギニシキ サジン・ドロオミ)』は……!」
 強引な突破を図ろうとするフライングリボン。しかし、シフカの言葉通り、フライングリボンの動きに反応し、ドーム内部から無数の鎖が放たれ、フライングリボンの身体を強かに打ち付ける!
「くっ……腕が……っす!」
 鎖の直撃した部位が、まるで石化したかのように動かない。鎖の拘束より解き放たれたフライングリボンは、そのまま地へと落下する――その背後より、突如として現れたのは、結衣菜の姿である。
「音も、光も、そして拍手も無い、マジックショーの開幕よ」
 それは、周囲の空間を操作し、光を歪め、そして音を歪める、結衣菜のマジック。その空間に隠れし結衣菜を、捉えることは決してできない。
 斬撃が、フライングリボンの身体を切り裂いた。傷口からモザイクがあふれ出し、その生命わずか、と言った様相だ。
「とどめ、行くっすよ!」
 シルフィリアスの掲げたロッド、その先端に光が集まり、同時に破壊のエネルギーが蓄積されていく。
 それは、魔法少女ウィスタリア☆シルフィの必殺技。エネルギーと共に、すべての悪を吹き飛ばす――。
「グリューエンシュトラール!」
 解き放たれたエネルギーが、フライングリボンを貫いた。
 荒れ狂うエネルギーの奔流の中、フライングリボンの身体を構成していたモザイクが瞬く間に消し飛び、やがて宙を舞うリボンもまた、粉みじんに消え去ったのであった――。

●一つのセレナーデ
「魔法少女ウィスタリア☆シルフィ、大勝利、っす☆」
 ぴっ、とポーズを決めつつ。シルフィリアスは笑った。
「お疲れ様。それにしても、偽者かぁ……モテモテだね」
 杏平が笑うのへ、シルフィリアスは、微妙な表情を見せた。
「いや、モテモテ……っすかね……?」
「一応、無事でよかったわ」
 と、結衣菜。その足元では、まんごうちゃんが、こくこくと頷いている。
「うう……ありがとうっす、平たい胸族の王女サマ……」
「もー! ゆるさないっ!!」
 両手を振り上げながら、シルフィリアスを追う結衣菜。シルフィリアスは笑いながら逃げて回っている。まぁ、こういった冗談が言えるのも、仲の良さゆえなのかもしれない。
「それより……撮影会、まだかしら」
 そわそわと言うのは、メイキスである。その手には、かなり本格的な一眼レフカメラを構えていて、すぐさまシャッターを切りそうな雰囲気だ。
「何でしたら……この後、一緒に遊びに行くのでも構いませんよ。遊びに行くのはもちろん、ええ、ええ、そのあとも色々と」
 と、微笑むシフカ。その表情には、些か危険を感じなくもない。
「え、ええと……とりあえず、考えさせてほしいっす……」
 苦笑しつつ、シルフィリアスが答えた。

 いずれにしても、シルフィリアスの危機は去り。
 休日は、もう少し続きそうだった。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年6月3日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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