パンダこりゃ!

作者:星野ユキヒロ


●パンダこりゃ!
 百円パンダ。遊園地の屋上などで子供が乗るあれである。百円を入れるとメロディと共によちよち動き、癒し系アトラクションともよばれているとかなんとか。
 群馬県の山ぎわの町に、小さな小さなレジャー施設の廃墟があった。近隣の住民が趣味で作った公園に毛が生えた程度のもので、かつては子供の遊び場だったが今は閉鎖されて放置されている。
 その廃墟の真ん中にぽつんと、壊れた百円パンダが鎮座していた。ボロボロのテント屋根の下に置かれているため、ほかの道具よりも比較的綺麗な状態で残っており、やや感傷的でエモーショナルな佇まいで存在している。
 そんな百円パンダに忍び寄るものがあった。それは小型ダモクレス! 蜘蛛のような動きでカサカサと這いよると、内部機械に入り込み、中枢部分に取り付く。
『パンダ……パンダ……パンダこりゃ』
 生まれいでた百円パンダダモクレスは、施設の持ち主が作ったオリジナルパンダソングを奏でながら歩き出した。

●百円パンダダモクレス討伐作戦
 群馬県で百円パンダのダモクレスの事件が起こることを鉄・千(空明・e03694)は懸念していたという。
「バッチリ的中ネ。皆サンには、百円パンダのダモクレスを倒しに行ってもらうヨ」
  クロード・ウォン(シャドウエルフのヘリオライダー・en0291)が今回の事件の概要を話す。
「現場の土地は再利用されずに持ち主の家の物置のようになってるから、基本的には用のない人は入ってこないネ。警察にも人が入ってこないように頼んでるアルけど、廃墟の遊園地なんて好きな人は好きなものだし、パンダも歩くのコトだから誰か攻撃されてグラビティチェインを奪われる前になんとかしてきて欲しいヨ」

●百円パンダダモクレスのはなし
「このダモクレスは姿はほぼ元のパンダのまま、殺傷能力のあるものネ。とは言え元のパンダよりはさすがに動きは早くなっているし、レプリカントの種族能力と同じような攻撃をしてくるヨ。可愛い外見に騙されるとイタタな目を見てしまうことうけあいアル」
  クロードは手持ちのモバイルで現地の航空写真を見せて戦闘区域を説明した。
「敷地から人のいる地域までのあいだを、警察に封鎖と避難をお願いしたアル。だから人払いは気にせず、純粋に戦闘頑張っチャイナ」

●クロードの所見
「大熊猫、卡哇伊 (カワイー)ネ。ウォンさんも大好きヨ。きっと昔遊んだ子供たちも大好きだったに違いないと思うヨ。そんなものが人を襲ったらとても悲しいカラ、皆サン頑張って来て欲しいヨ」


参加者
鉄・千(空明・e03694)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
除・神月(猛拳・e16846)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
ジェミ・ニア(星喰・e23256)
影守・吾連(影護・e38006)
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)
霏・小獅(カンフー零式忍者・e67468)

■リプレイ

●廃墟への道
 群馬の人通りの極端に少ない山道に降り立ったケルベロス達は、さっそく件の廃墟に向かった。
「ふーん、辛気臭ぇ場所だな。まぁ、こんな場所でもよ……昔はガキ達が集まって楽しんでいたんだよな……っと、いっけね。感傷に浸ってる場合じゃねぇや」
 霏・小獅(カンフー零式忍者・e67468)は人のいない場所特有のひんやりとした空気にややセンチメンタルな気持ちになったようだ。
「100円パンダにまで取り憑くなんてダモクレス、何でもありだね……パンダが安らかに眠れるよう、きちんと止めないと!」
「パンダさんがゆっくり眠れるように頑張るのだ!」
 影守・吾連(影護・e38006)と鉄・千(空明・e03694)、通称どらごにあんずはいえーい! いえーい! と拳を突き上げやる気を表明している。
「最近、盟友の那岐と婚約者の瑠璃と初めて遊園地に行きまして、100円入れて遊ぶパンダさんを知りました」
「パンダなロボットさんです? 写真で見た事は有るですが、一度乗ってみたかったです」
 如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)とマロン・ビネガー(六花流転・e17169)は100円パンダに馴染みが深くないようで、なんとなくうきうきとしていた。
「パンダさん……、そんなに可愛いのに何故ダモクレスに!?」
「かつて親しまれた100円パンダさんに民衆を襲わせはしない! オリジナルパンダソングがやや気になりますね」
 ジェミ・ニア(星喰・e23256)とイッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)は可愛く楽しいパンダと凶悪なダモクレスのギャップが気になったようだった。
「このあたしを前にパンダで挑んでくるとは頭が高ぇじゃねーカ! 格の違いってもんを教えてやんヨ!」
 パンダのウェアライダー、除・神月(猛拳・e16846)が意気込むと、持ち主から預かった入口の鍵を開ける。
 パンダとの楽しい遊戯の幕開けである。

●メカパンダあらわる
『パンダ……パンダ……パンダこりゃ』
 電子音と共に物陰から出てきたそのパンダはほぼ元のパンダと同じ形とは言え、かさかさと動き回って率直に言って気持ち悪かった。
「ゆ! 夢が壊されました!!」
「いや! 見ようによってはなんか可愛い、と言えないこともない?」
 うきうきしていたマロンが実物を見て思わず悲鳴をあげた。ジェミも少し期待していたらしくやや混乱している。
「可愛いと思えるうちに、なんとかしましょう! 後ろはお願いしますよマロンさん」
 イッパイアッテナが攻性植物『Vergiss du Nicht』を変形させ、黄金の果実を実らせた。前衛に耐性を付与したのだ。
 その間にもサーヴァント、『相箱のザラキ』がパンダモクレスにかぶりつく!
『パンダ!』
「パンダはあたしダーっ!!」
 神月の電光石火の蹴りがパンダモクレスを蹴り抜いた!!
『パンダこりゃーっ!!!』
 蹴りにひるんだかのように見えたパンダモクレスの顎のあたりが急に開き、光線を発射した!
「あちちちっ! ちょっとここ戦いにくいのだ!!」
 エネルギーをその身で受けながら、千が足場の悪さを訴える。確かに物置になったそこは狭い。ガラクタを跳ね飛ばしながら全員で駆け出すと、パンダモクレスも追いかけてきた。
「足が速いです、想像してたのと違うです~、なら後衛に耐性付けるです!」
 イッパイアッテナが前衛に付けたのと同じ黄金の果実を、今度はマロンが後衛に付与する。
「刻印『蛇』。さあ捕まえておいで」
 ジェミが指を躍らせると、空中に蛇が描かれ、パンダモクレスを足止めした!
「貴方の運命をお守りします!!」
 沙耶の示した運命が女帝の愛の力により、前衛に盾を付与した。
「ここなら千も思い切り暴れられるのだ!」
「施設の持ち主さん、パンダ大好きだったんだな」
 翼を広げた千が旋刃脚を見舞う! これまた翼を広げた吾連がドラゴンの幻影を放ちながら周りを見回す。たしかにパンダモチーフのものが多い。
「じゃあこれ以上パンダに悪さなんかさせてらんねーよな! 固い奴には威力を高めるだけだ! 悪鬼羅刹紋!」
 小獅が悪鬼羅刹紋で自分を底上げした。これからの戦いに備えてだ。

●パンダンサブル
「沙耶さん! 前列をお願いできますか?」
「お任せ下さい!」
 先程攻撃を受けた千の回復を早くするため、イッパイアッテナが前衛の回復と盾付与を沙耶に依頼し、自分はヒールドローンを後衛に飛ばす。
 そんな中、ザラキがエクトプラズムを武器に変え。石化を試みた。
『パンダこりゃーっ!!』
 くるくると踊るように入れ替わるケルベロス達に、パンダモクレスの飾りのはずの前足が突然むきっとパンプアップし、肘から先をドリルのように回転させ、前衛に躍りかかる!
「なんダァ? さしずめパンダアップってとこかヨ! しゃらくせえナァ!!」
 神月の蹴りがドリルに横合いから炸裂し、お互いパァンと音を立てて相殺された!!
「イッパイアッテナさん! 沙耶さん、人ばかり守って守りが薄くなっちゃってるのです。私、黄金の果実を差し上げますなのです!」
 マロンがイッパイアッテナに意思確認をし、中衛の沙耶に耐性を付与する。
「よくわからないけど、絶対本来こういうものではなかった気がするな」
 剣呑に変化するパンダを見て、100円パンダがわからなくなったジェミがルーンを発動させ、ルーンアックス八重桐を振り下ろした。
「ちょーーーーーーあーーーーーーー!!!!!」
 後ろに回り込んだ千が指天殺で石化を重ねる。
「千ナイス! こっちは足止めだ!!」
 吾連が流星の煌きと重力を乗せた蹴りでパンダの機動力を奪った。
「オラオラァ!如意棒でぶった切ってやらァ!! 行くぜ、火尖槍!!」
 如意棒に宿した炎で作った穂先と石突で出来た火尖槍による小獅の追撃がパンダモクレスを斬りつける!
 戦いはまだまだ続く。

●パンダフィナーレ
 激しい攻防戦が続いた。
「大地の力を今ここに――顕れ出でよ!」
「ゆるやかティーブレイクなのです!」
 イッパイアッテナとマロンが傷を負った仲間を治癒して回る。その間にザラキが愚者の黄金をばらまいていた。
『パンダこりゃーーーーーーー!!!!!』
 その時、パンダモクレスの体のあちこちから小さなハッチが開き、ミサイルポッドが大量射出された!
『パンダ パンダ パンダこりゃ あっちの山からパンダこりゃ 笹 竹 もりもり 腹いっぱい 明日も元気に パンダこりゃ ほーいほーい やっぱりなあ』
 軽快な電子音と共にパンダこりゃの歌が流れ、前衛にミサイルの雨が降り注ぐ。
 連続して起こる爆発を神月と小獅を千とザラキが守り、さらに千を吾連が守る!!
「ぐあっ!」
「吾連!」
 爆発を受けた吾連が吹っ飛び、千が駆け寄っていく。
「やりやがったナ!? 知らねーんなら教えてやるヨ、あたしってばサイキョーなんだゼ!」
 庇われた神月は拳を胸の前でガンと打ち付け己を鼓舞し、相手に突っ込んで熱い情熱と誇りを載せた打撃を放つ!!
『パンダこりゃあ!!』
 追撃に、思わず声を上げるパンダモクレス。
「効いている感じがする! 今のタイミングなら追撃で攻めるがいいのかもしれない!」
 ジェミが足止めをしながら吾連を助け起こす千にアドバイスをした。
「唸れ!らいおん丸!」
 千はやる気をみなぎらせたらいおん丸の幻影を召喚!! 拳を覆わせて重いパンチを放つ!!
「吾連さん、大丈夫ですか?」
「くっ……効いてるぞ千! ――常夜で眠れ」
 沙耶に回復してもらった吾連は立ち上がり、フクロウの幻影をパンダモクレスに向かって解き放った。ジグザグの効果により、今までの効果が重ねられ、パンダモクレスの動きを鈍らせる!
「もらったーっ!!!」
 パンダモクレスの鈍りを見逃すことなく、小獅はバトルガントレットに力を込めて、魂を喰らう降魔の一撃を見舞った!!
『やっぱりなあーーーーーーっ!!!!!!』
 断末魔の叫びを上げると、パンダモクレスは大爆発を起こした。それはあたかも、ヒーローショーのクライマックスのようだった。
 戦いは終わった!!

●かつて楽しかった場所にて
「パンダさんお疲れ様です、今までいっぱい働いてきたのですからもう休んでいいんですよ」
「ごめんなパンダさん……現役の時にお会い出来てたら千のドリフトを披露させられたのに……残念なのである」
「えっ、運転するようなものだったんですか? 乗ってみたかった……パンダさん……安らかに眠れ……」
 戦闘終わって作戦終了の連絡を済ませ、壊れた廃墟をみんなでヒールして回った。パンダモクレスはぎゃりぎゃりとかなりアクティブに移動していたので奇しくも廃墟探検の様相を呈している。沙耶と一緒に祈っていた千の話を聞いて100円パンダがどういうものなのかやっと察しがついたジェミは残念そうにした。
「この廃墟……賑わっていた頃はどんな感じだったのでしょうか。今はとても静か。でも、今にも家族連れや子供達の明るい声が聞こえて来そうです。今度は平和なパンダさんと会いたいですね」
「ま、こんなに寂れちまっても思い出の場所な奴らもいるだろうしよ」
 そんな二人を見てマロンはかつて楽しかった場所に思いを馳せる。小獅のセンチメンタルは戦闘後も続行中のようだ。
「マッピングは千にお任せするね。パンダいっぱいで可愛い場所だなあ、ちっちゃいメリーゴーランドもパンダだ」
「パンダ……パンダ……パンダこりゃ……耳に残るねどうも」
 吾連のパンダ、という単語を聞いて神月はつい鼻歌を歌ってしまった。
「さて、あらかたヒールできたようですね。ここらで休憩にしませんか」
 イッパイアッテナが広場にレジャーシートを広げ、廃墟ピクニックが始まった。

●ごはんもりもり腹いっぱい、明日も元気だパンダこりゃ
「千のかんたんおべんとセットクッキング! パンダおにぎりさんのでっきあがりなのだ!」
「ははあ、これは可愛いですねえ! 食べるのがもったいないです」
 千がかわいいお弁当セットでパンダを象ったおにぎりを作ってみんなに配る。イッパイアッテナは微笑ましさに目を丸くした。
「パンダおにぎり可愛いね、俺も冷たいほうじ茶を持ってきたからおにぎりと一緒にどうぞ」
「目一杯動いたんダ、たっぷり食おうゼ。あたし特性点心弁当、春巻き、シューマイ、成人してる奴には酒もあるゾ、飲メ飲メ」
 吾連はほうじ茶を、神月も華やかで豪華な点心が詰められた弁当を広げる。
「へへっ、俺は中華まんと胡麻団子を作ってきたぜ。バーベキューセットがそこにあったからちょっと温めさせてもらっちまおう!」
 小獅が如意棒で火を起こし、温かいご飯の予感に一同のテンションもあがる。
「バナナとワッフルとモンブランを用意して来ましたです、宜しかったら皆さんでどうぞです」
「僕はデザートにイチゴを持ってきました。宜しければどうぞ!」
 マロンのお菓子とジェミのイチゴに年少組も大喜びだ。
「……吾連、冒険にはグルメも欠かせないのではなかろうか。群馬か。ひもかわうどん、鶏めし弁当もステキ……」
「だね、冒険にはご飯が欠かせないよね! うどんに鶏めし……千、今おにぎり食べてるのに結構がっつり行くつもりなんだね」
 おにぎりをもぐもぐ食べながら、ふんふんと超真剣に冒険手帳をチェックする千と吾連。群馬のご当地グルメが気になって仕方ない様子だ。
「群馬といえば私は焼きまんじゅうを推しますね」
「ご当地グルメですか?群馬ではカツがおいしいらしいです。ソースかつ丼、かつサンド、メンチカツとかですね」
「ふぉ、かつ丼や焼きまんじゅうもいいな!」
 イッパイアッテナと沙耶が知っているご当地グルメ情報を千に教えてあげる。
「ちょっと待っててね、焼きまんじゅうなら近くに売ってるところあるね……こんにゃく生産量一位だって!?」
「おーい! 熱いの行くぞ! 冷める前に食ってくれよな!」
 アイズフォンでジェミが調べてくれたので、これから行こうと大盛り上りしているところに小獅があったかい点心を持ってきた。
「おっ、ご苦労ご苦労! 生活力あるなァ! ポイント高いゼ!」
 神月の肉食系絡みが炸裂したところで宴もたけなわ、それはまるでこの施設が賑わっていたころのような楽しい雰囲気なのだった。

作者:星野ユキヒロ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年5月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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