石化した女性ってサイコー!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所:教会跡
「まさか、この場所を突き止められてしまうとは……。なかなか、やりますね」
 石化した女性ってサイコー明王が、悔しそうに拳を震わせた。
 廃墟と化した教会であれば、ケルベロス達にバレる事なく、自らの欲望を満たす事が出来ると思っていた分、石化した女性ってサイコー明王のショックは大きかった。
「その割には、動揺していないように見えますが……」
 シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)が、警戒心をあらわにした。
 ハッキリとした事は言えないが、何か……嫌な予感がする。
「それはそうでしょう! あなたのように美しい方を石化させる事が出来るんですから……!」
 次の瞬間、石化した女性ってサイコー明王が不気味な笑みを浮かべ、メデューサの盾を高々と掲げるのであった。

●セリカからの依頼
「シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)さんが、宿敵であるデウスエクスの襲撃を受けることが予知されました。急いで連絡を取ろうとしたのですが、連絡をつけることは出来ませんでした。一刻の猶予もありません。シフカさんが無事なうちに、なんとか救援に向かってください」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「シフカさんが相手にしているのは、石化した女性ってサイコー明王という名のビルシャナです」
 セリカが詳しい説明をしつつ、ケルベロス達に資料を配っていく。
「石化した女性ってサイコー明王は強力な石化術を得意としており、石化した女性こそ、最も美しいと信じているようです。そのため、気に入った女性を石化させ、活動拠点に連れ帰っているという噂です。そのため、シフカさんを石化させ、絶対よく目立つ場所に飾るつもりでいるようです。そういった意味でも、シフカさんに危険が及ぶ事は確実なので、手遅れになる前に手を打ってください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。


参加者
彼岸花・深未(サキュバスの鹵獲術士・e01205)
セフィリア・フィオーネ(氷結の天使・e02407)
佐々塚・ささな(やりたいほうだい・e07131)
レイシア・アクエリアス(穿つ雪兎・e10451)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
神崎・まとい(地球人の刀剣士・e23766)
アンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)
ルストール・シブル(機動防壁という名の変態・e48021)

■リプレイ

●教会跡
「これまたシフカさんらしい宿敵と言うか……何というか……」
 アンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)は仲間達と共に、石化した女性ってサイコー明王が拠点にしている教会跡にやってきた。
 この教会は以前まで沢山の信者で溢れかえっていたが、経済的な理由で閉鎖を余儀なくされたらしく、今は廃墟となって朽ち果てていた。
 石化した女性ってサイコー明王は、そこを拠点にして女性達を石化させていたらしく、敷地内にも被害に遭ったと思しき女性の石像が飾られていた。
「……れいしあ、氷にした獲物を飾るの、綺麗で……好き……だけど……みんな石にされたら、困る……」
 レイシア・アクエリアス(穿つ雪兎・e10451)も複雑な気持ちになりつつ、敷地内を歩いていく。
 もしかすると、敷地内にある石像のうち何体かは石化された女性でなく、本物の石像かも知れない。
 だが、現時点ではそれを調べるだけの余裕が無いため、石化した女性ってサイコー明王を倒した後になる事だろう。
「女性を石化させるなんて悪趣味な……!」
 そんな中、彼岸花・深未(サキュバスの鹵獲術士・e01205)が嫌悪感をあらわにしながら、教会跡に足を踏み入れた。
「なんですと! それは聞き捨てなりませんねェ! いいですか! 石化した女性と言うのは、未来永劫、美しいまま。永遠に老いる事はありません。それ故に至高ッ! 素晴らしいモノなのです!」
 その途端、石化した女性ってサイコー明王が両目をカッと見開き、石化した女性の素晴らしさについて延々と語っていく。
 おそらく、自分の芸術を否定された事に対して、腹を立てているのだろう。
 石化した女性ってサイコー明王の背後には、シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)の石像が飾られており、彼女を見本にしてその素晴らしさを語っていた。
「なるほど……って、ホラーだよ! 石化した女性が美しいって言うのなら、自作の石像で我慢すればいいのに……!」
 佐々塚・ささな(やりたいほうだい・e07131)が、思わずツッコミを入れる。
「お前は何も分かっちゃいない! 石像を作るのに、どれだけの時間が掛かると思っているんだ!? ハッキリ言って面倒だ! それに比べて、石化は一瞬! これほど素晴らしい事はないだろう!」
 石化した女性ってサイコー明王が、逆ギレ気味に叫ぶ。
 手間よりも、利便性を優先したのか、完全に開き直っており、『何か問題でも……?』と言わんばかりにドヤ顔であった。
「それにしても、石化した女性が至高とは変わった趣味じゃな。まぁ、わしも人の事は言えぬがのぅ。守るべき者がいるなら、わしは盾となるだけじゃ」
 ルストール・シブル(機動防壁という名の変態・e48021)が、警戒した様子で間合いを取った。
 いまのところ、石化した女性ってサイコー明王は、リラックスムード。
 なるべく平和的に物事を解決しようと思っているのか、メデューサの盾が後ろにしたまま置かれていた。
「別に理解してもらおうとは思っていません。私の趣味は高等過ぎて、下民には理解する事が出来ないようですからね」
 石化した女性ってサイコー明王が上から目線で、ケルベロス達に言い返した。
 この様子では、自分の趣味が理解されないのは、まわりの美意識が低いためだと思い込んでいるのだろう。
 これ以上、語り合っても時間の無駄と言わんばかりに、やれやれムード。
「まあ、石化した女性が最も美しい……その気持ちは分からなくもありませんが……。私も美術品は好きですしね。それはそれとして人間を石化させるのは良くないですが……」
 次の瞬間、神崎・まとい(地球人の刀剣士・e23766)が不意打ち気味に、石化した女性ってサイコー明王に斬りかかった。
「おやおや、行けませんねぇ、暴力は……。これでも、私は平和主義者ですからね。ここは穏便に……石化してもらいましょうか。ただし、私の基準に満たなかった石像は、問答無用で壊しますから、ご了承くださいませ」
 即座に石化した女性ってサイコー明王が後ろに飛び退き、物凄くイイ笑顔を浮かべて、メデューサの盾を手に取った。
 戦うのであれば、イイ頃合い。
 そんな空気を察したのか、石化した女性ってサイコー明王に迷いはなかった。
「とりあえず、シフカさんは元に戻させていただきます」
 その間に、セフィリア・フィオーネ(氷結の天使・e02407)がオラトリオヴェールを使い、シフカの石化を解除した。
「き、き、貴様ァァァァァァァァァァァ! よくも俺の芸術を! テメエだけは絶対に許さねぇ!」
 その途端、石化した女性ってサイコー明王が、殺気立った様子で叫び声を響かせた。
 まるで自分のすべてを否定されたような感覚に陥っているのか、先程とは異なり言葉遣いも汚くなっていた。
「……芸術ですか。その気持ちは分りませんが、そういう性癖には正直とても興味があります。石化した人の肌を、手や頬で触れてみたいと思っていますから……」
 その隙をつくようにして、シフカが石化した女性ってサイコー明王から離れていった。

●石化した仲間達
「なるほど、石化されるよりも、石化された仲間に興味があるという訳か。ならば、その望み……叶えてやろう! ただし、お前も後で石化する事が条件だがなッ!」
 石化した女性ってサイコー明王が不気味な笑みを浮かべ、メデューサの盾を高々と掲げ、ケルベロスめがけて光線を放った。
 どうやら、この光線を浴びる事によって、対象が石化してしまうようである。
「まさか、同じ手が通じるとでも……? 何はともあれ、戦闘準備完了しました。……では行きましょうか」
 その間にシフカが両腕に鎖を巻き、メデューサの盾から放たれた光線を避けた。
「おやおや、素直ではありませんねぇ。石化をすれば、何も考える必要も無いのに……」
 石化した女性ってサイコー明王が再び口調を元に戻し、再びメデューサの盾を高々と掲げた。
「なら……戦うだけだよ!」
 すぐさま、ささなが目立つようにして思わせぶりにポーズを決め、石化した女性ってサイコー明王に轟竜砲を撃ち込んだ。
 その拍子に石化した女性ってサイコー明王がバランスを崩し、メデューサの盾から放たれた光線が、まったく関係ないモノを石化した。
「みんな、光線に気をつけて!」
 ささなが仲間達に警告しながら、石化した女性ってサイコー明王の注意を引いた。
「いつまでも、逃げ切れると思わないでくださいね」
 石化した女性ってサイコー明王がサディスティックな笑みを浮かべ、再びメデューサの盾を掲げようとした。
「逃げ切る……? その必要はありませんね。このまま倒すつもりですから……」
 その間に、まといが間合いを詰め、石化した女性ってサイコー明王にスターゲイザーを炸裂させた。
 それに合わせてレイシアも遮蔽物で身を隠しつつ、フロストレーザーで石化した女性ってサイコー明王を攻撃ッ!
「私を倒す? 面白い事を言いますね! その前にみんな石化すると思いますが……」
 石化した女性ってサイコー明王も傷口を庇いつつ、メデューサの盾を掲げて、ケルベロス達に攻撃を仕掛けていった。
 だが、光線の狙いは次第に制度が増しており、ケルベロス達にとって脅威になりつつあった。
「じゃが、石化させても、そのうちの何体かは壊すのじゃろう? まさか、体型で選り好みする訳ではなかろうな?」
 ルストールが皮肉混じりに呟きながら、石化した女性ってサイコー明王に組み付き、纏わりつくようにして注意を引いた。
「ほっほっほっ! これは面白い。ご安心ください。あなたのようなヒトは、逆に大好物です」
 石化した女性ってサイコー明王がニンマリと笑い、催眠によってルストールに屈辱的なポーズを取らせた。
「こ、これは……!?」
 それに驚いたルストールが興奮した様子で、荒々しく息を吐いた。
 その間も石化した女性ってサイコー明王が舐めるような視線を送ってきたため、だんだんイケナイ気持ちになってきた。
「ほっほっほっ! イイですね、イイですね! ほら、もっと大胆に! もっと激しく!」
 石化した女性ってサイコー明王もハイテンションで指揮棒を振るうようにして、ルストールに指示を出していく。
「が、我慢出来ないのじゃ……!」
 それに応えるようにして、ルストールが興奮した様子で服を脱ぎ捨て、裸体を隅々まで観察できるようなポーズを取った。
「さて……それでは、石になってもらいましょうか」
 石化した女性ってサイコー明王が再びニンマリとした笑みを浮かべ、メデューサの盾を高々と掲げた。
 それと同時にメデューサの目が光り、今までの中で一番極太の光線が、ケルベロスめがけて放たれた。
「あ、危ない……」
 すぐさま、セフィリアがルストールを庇ったものの、光線は二人の身体を包み込み、少しずつ身体を石に変えていく。
「……綺麗……」
 その姿にレイシアが心を奪われ、同じように光線を浴びて、身体が石化し始めた。
「確かに石化した女性って美しいかも……」
 まといも石化した仲間に心を奪われていたが、自分自身の身体も、石に変わっていた。
「な、何とかして、身体を……」
 ささなの身体も同様に石化が始まり、半ばパニックに陥った様子で、強引に身体を動かそうとした。
 しかし、身体はまったく動かず、逆に石化を早める結果となった。
「ほぇ……」
 レイシアも武器を構えたまま、呆気にとられた様子で石化し、前のめりにゴトンと倒れて動かなくなった。
「なかなか肌触りがいいんですね……。確かに、これなら癖になってしまうのも、無理がないかも知れませんが……」
 そんな中、シフカが石化した仲間達の全身を撫で回し、石化した女性ってサイコー明王の気持ちを何となく理解した。
「……おや? 当たっていませんでしたか。これは失礼しました」
 それに気づいた石化した女性ってサイコー明王が、メデューサの盾を掲げ、シフカを攻撃ッ!
「シフカさん、危ない……!」
 間一髪で深未がシフカを庇ったものの、彼女を守る事が出来ず、二人とも石化していった。
「おお、これはイイ! まるで女神の共演だ!」
 石化した女性ってサイコー明王も大満足な様子で、石化したふたりを眺める。
「いや、これは全然ダメですね」
 だか、アンヴァルは全く納得しておらず、ゴッドグラフィティで石化したシフカの髪を金色に塗ったり、タイツやヘソまわりを肌色に塗ったり、半袖をノースリーブに変えたりして、芸術性を爆上げした。
「き、貴様、よくも私の芸術をおおおおおおおおおおお!」
 これには石化した女性ってサイコー明王も腹を立て、殺気立った様子でアンヴァルを追いかけ回すのであった。

●偽りの石化
「そんなに怒る事もないと思うんですが……。安心してください、みんな着てますよ?」
 アンヴァルが石化した女性ってサイコー明王を煽りつつ、仲間達にフローレスフラワーズを掛けていく。
 どうやら、石化した仲間の一部は、催眠によってそう思い込んでいただけらしく、元に戻す事は容易であった。
「ば、馬鹿なっ!?」
 石化した女性ってサイコー明王が、信じられない様子で叫ぶ。
「こっちは色々と慣れていますからね」
 すぐさま、深未がシフカを守るようにして陣取ったまま、サキュバスミストを展開した。
「……破壊します」
 その間に、まといが武器に光の刃を纏わせ、石化した女性ってサイコー明王の懐に潜り込み、メデューサの盾を木っ端微塵に破壊した。
「わ、私の盾があああああああああああああ!」
 石化した女性って現実を受け入れる事が出来ず、ガタガタと身体を震わせた。
「……お返し……氷漬けにした獲物にしてあげる……」
 その隙をつくようにして、レイシアがアイスエイジインパクトを仕掛けた。
「全てを凍てつかせる氷よ、彼のものに絶対の終焉をもたらせ」
 それに合わせて、セフィリアが強力な冷気を放ち、溶けることなき氷の棺に石化した女性ってサイコー明王を閉じ込めた。
「鎖陣渦巻き、闇は去り、後に残るは骸のみ……と」
 次の瞬間、シフカが大量の鎖を操り、石化した女性ってサイコー明王のまわりをドームのように覆いつくし、あちこちから鎖を飛ばしてトドメをさした。
「お、終わった……?」
 ささなが未だに消えぬ違和感に戸惑いつつ、自分の指を動かした。
 しばらくすれば、慣れそうな感覚がするものの、まるで全身が凝っているような錯覚に襲われた。
「……皆さん、大丈夫ですか?」
 そんな中、深未が心配した様子で、仲間達に声を掛ける。
 個人的に石化がどんな風だったのか、シフカに聞いてみたいところだが、当の本人は観音像を拾い上げ、何やら物思いに更けていた。
「……何やら酷い目に遭ったのじゃ」
 ルストールが疲れた様子で、その場にぺたんと座り込む。
 何やら新しい世界の扉を開いてしまったような気もするが、なかなか同じようなシチュエーションを再現するのは難しそうだ。
「石化して連れ込まれちゃった人達がいるかもしれません。一応捜索しておきましょう」
 そう言って、まといが他にも被害者がいないか探すため、奥の部屋を調べに行った。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年5月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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