ミッション破壊作戦~増殖の歯車

作者:坂本ピエロギ

「グラディウスの使用が可能になりました。これより、ミッション破壊作戦を行います」
 ヘリポートに集まったケルベロスにムッカ・フェローチェ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0293)は一礼すると、依頼の概要を話し始めた。
「本作戦の目標は、デウスエクスが地球侵略の拠点として用いる強襲型魔空回廊を強襲し、これに損害を与える事です。回廊の破壊に成功すれば、それを有する種族との最終決戦勝率が上昇します」
 今回実施される作戦では、ダモクレスのミッション地域が対象となる。
 昨年6月に別子銅山の回廊が破壊されて以降、彼らは拠点を1つも失陥する事なく、侵略の手を伸ばし続けている。
 クロム・レックの陥落や終末機功大戦の敗北で痛手を受けたとはいえ、ダモクレスの勢力は今なお健在だ。かつての勢いを彼らが取り戻さぬよう、少しでも損害を与えておきたい。
「強襲型魔空回廊は、ミッション地域の中枢にあります。周辺は敵の精鋭部隊が守りを固めていますので、現地上空までは私のヘリオンでお送りしますね」
 現場上空に到着した後、ケルベロスは魔空回廊のバリアへと降下。グラビティを極限まで高めた状態で、魂の叫びをグラディウスに込め、バリア目掛けて一撃を叩きつける。
 グラディウスは所有者の魂の叫びに応じて、雷光と爆炎を生じさせる力を持つ。これにより行われた攻撃は、魔空回廊やその周辺に展開するデウスエクスの精鋭部隊を無差別に攻撃できるのだ。
「グラディウスが与えたダメージは回廊に蓄積され、いかなる方法を用いても修復できません。最大でも10回程度の降下を行えば、どの回廊も確実に破壊できる計算です」
 攻撃が完了した後、魔空回廊の周囲はグラディウスの力によってスモークに覆われる。このスモークが完全に晴れるまでは、一帯の敵をある程度まで無力化することが可能だ。
 ただし、回廊を守護するデウスエクスには飛びぬけて強い個体がおり、この敵を無力化することは出来ない。この敵は、ケルベロスがミッション地域を脱出する前に必ず攻撃を仕掛けてくるので、撤退時に戦闘が発生することは不可避と考えた方が良い。
「戦闘が発生した場合は、スモークが切れる前に撃破するようにして下さい。万が一、時間切れとなってスモークが完全に晴れてしまうと、回廊周辺を守護する精鋭部隊が反撃の態勢を整えてしまい、領域を離脱することは出来ません。そうなれば作戦は失敗です」
 この場合は、暴走か降伏以外に助かる方法はない。
 仮に敵に囚われれば、グラディウスを敵に奪われる可能性もある。それは強襲型魔空回廊を攻撃する武器を、ケルベロスが永久に欠くことを意味するのだ。
 故にこの作戦では、グラディウスを持ち帰ることも決して忘れてはならない。
「回廊を有するダモクレスは、強力な敵が多く揃っています。彼らが支配する地を解放できるのは、皆さんしかいません」
 ムッカはそう言って、再び小さく一礼した。
「ゴッドスピード、ケルベロス。貴方達の勝利と健闘を祈ります」


参加者
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
ウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)
ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)
アルベルト・ディートリヒ(昼行灯と呼ばれて・e65950)
フレデリ・アルフォンス(ウィッチドクターで甲冑騎士・e69627)
旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・e72630)
フレイア・アダマス(銀髪紅眼の復讐者・e72691)
グラニテ・ジョグラール(多彩鮮やかに・e79264)

■リプレイ

●一
 ケルベロスを乗せて、ヘリオンは一路空を行く。
 目的地は埼玉県狭山市、リンカネーション・トラックンの魔空回廊だ。
「トラックに轢かれて異世界転生……良く聞く話だけどさぁ」
 旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・e72630)は窓越しに外を眺めると、辟易した様子で深い溜息をついた。
「いくら何でも、これはいろいろと酷すぎるだろう……」
 眼下に広がる狭山の景色は、どこまでも続く一面の瓦礫と廃墟だった。市街地を我が物顔で行き来するのは、轢殺した者を強引に『転生』させるトラックンだけだ。
「前回の戦いから2か月……ついに再戦の機が訪れたな」
 次第に近づく回廊を睨み、フレイア・アダマス(銀髪紅眼の復讐者・e72691)が呟いた。
 あれを破壊しない限り、トラックンはこれからも人々を転生させ続けるだろう。
 無論、そんな事を許す気は毛頭ない。フレイアにも、仲間達にもだ。
「今度こそ、終わらせてやる」
 勝利への執念を燃やすフレイアの向かいでは、アルベルト・ディートリヒ(昼行灯と呼ばれて・e65950)とグラニテ・ジョグラール(多彩鮮やかに・e79264)が、狭山のことで会話を交わしている。
「狭山は茶葉の産地でな。グラニテは、茶を飲んだ事は?」
「紅茶なら、あるよー! 桜をブレンドしたのも美味しかったー!」
 アルベルトはフレイアと同じく二回目組の参加者。日本文化に造詣が深い彼は、日本茶の産地である狭山の奪還を誓っているようだ。
 一方アイスエルフのグラニテにとって、ミッション破壊作戦は初経験。好奇心の赴くまま地球のあらゆるものに興味を示す彼女も、緑色の瞳を右に左にと動かすだけで、今はすこし遠慮気味だ。
 そんな二人の向かいでは、ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)が離脱経路の最終確認を行っていた。
「現場は平坦な市街地。大きな建物は軒並み壊され、移動困難な場所は皆無です」
「分かった。迷う心配がないのは有難いね」
 地図に目を落としたウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)は、トラックンがもたらした被害の甚大さを嫌でも理解せざるを得ない。
 ビル、民家、学校、商店街――今までにどれ程の人々が犠牲となったのだろう。どれ程の人々が涙を呑んだのだろう。
(「……必ず、この地を取り戻す」)
 それから数分ほど飛んだ頃だろうか。降下ポイントの到着を告げるブザーが鳴り響くと、ウリルはハッチへ歩き出した。
「いよいよだね。皆よろしく」
「こちらこそ。奴らの天下を今日で終わらせようぜ」
 隣を歩くフレデリ・アルフォンス(ウィッチドクターで甲冑騎士・e69627)も、開いていくハッチの先を見つめながら、静かに頷いた。
 たとえ街が荒れ果ててしまおうとも、人が戻れば再興は出来る。
 自分達はただ、ケルベロスの仕事をするのみだ。あの転生トラックもどきを、街から一掃するという仕事を。
「レッツ、ロックンロール!」
 仲間達の戦意を奮い立たせるように、シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)がギターをかき鳴らす。
「さあ! ボクの、ボク達のロック魂を全身でぶつけるのデス!」
「ああ。この戦い、必ず勝つ!」
 グラディウスを握ったアルベルトを先頭に、ケルベロス達が大空へ身を躍らせていく。
 狭山の地を、再び人類の手に取り戻すために――。

●二
 鎮座する魔空回廊が、ケルベロスの眼前に迫る。
 アルベルトは怯む事無く、振りかぶったグラディウスを一思いに振り下ろした。
「日本の素晴らしい茶葉を踏み躙り、そのうえ作り手の命と魂を弄びやがって!」
 バリアが明滅し、青い空に衝撃が走る。
 鈴なりの爆炎が彼岸花のような赤い軌跡を描いて降り注ぎ、襲撃を察知したトラックンを飲み込み始めた。
「砕け散れ、このポンコツトラックどもめ!」
「人の命も、生活の糧も、何もかも台無しに……許さんぞ!」
 フレデリもまた憤怒の形相で回廊を睨み、グラディウスをバリアに突き刺した。
 かつて異国で民を守る立場にあったフレデリは思う。
 もしも自分の母国が、奴らに攻め込まれたなら。騎士団の皆が、若い夫婦が、子供達が、あんなふざけた見た目のクズ鉄に『転生』させられたなら――。
「トラックンよ。魂を冒涜した罪の重さ、思い知れ!」
 絶対に此処を破壊してみせる。
 そんな決意を込めたフレデリの叫びは残らず雷光に変わり、魔空回廊へと降り注いだ。
 傲然とそびえ立つ回廊の外郭が、フレデリの雷を浴びて崩れていく。トラックンは必死に逃げ回るがグラディウスの前には無力。ただ攻撃を浴びて、屍を晒すしかない。
 ウリルはその光景を見下ろしながら、グラディウスに魂の叫びを込めた。
「緑多く広がっていた景色を、人々の生活を蹂躙し、破壊行動を繰り返すとは……」
 もうこれ以上、好きにはさせない。甦るたび、スクラップにしてやる。
 来たるべき破壊の時のため、ただ礎の一人として爪痕を刻むのみ――。
「この地を返してもらおうか!」
 静かで、固く、そして熱い決意が特大の雷に変じ、回廊を射抜いた。
 4番目に降下してきたシィカはギュインとギターをかき鳴らし、怒りも露わに吼える。
「なにが転生デスか! それはただの拉致・改造っていうのデス!」
 何もかもなっていない……シィカはそんな態度を隠すことなく不敵に笑った。
 己のロック魂を、残らずやつらにぶつけてやる。このグラディウスで。
「やってることもネーミングセンスもノーロック! まったくロックがないのデス!」
 平和な日常を取り戻すため、叫びをそのまま歌声に変えて、シィカは叫びを込める。
 転生など不要。何故ならシィカのロック魂は――。
「永遠に! 不滅だからデェェェス!! ロックンロール!!」
 ステージのスポットライトの如き光が、グラディウスから溢れ出た。光はシィカの叫びの完全な延長として爆炎に変じ、残らず回廊に降り注いでいく。
 回廊に降り注いだ攻撃は、これで4度。
 スモークが覆い始めたバリアの向こうへ、降下したフレイアが更なる一撃を加えた。
「再びこの機会が訪れるのを待っていたぞ、リンカネーション・トラックン!」
 彼女がグラディウスに込める思いは、怒り。
 罪なき人々を轢殺し、その躯を弄ぶダモクレスへの憤りだ。
「私の憤怒を伝えろ、グラディウス! 今度こそ、ここに至る道路を全面通行止めにしてやろう!」
 一際大きな雷光が回廊に降り注ぎ、土煙が派手に舞い上がる。
 スモークの中から折り重なって聞こえるトラックンの断末魔は、回廊が受けている被害の大きさを雄弁に物語るものだ。
 ジュスティシアと嘉内も、それに負けじと魂の叫びを込めていく。
「日々を生きる人の命も、彼らが大切に育てた茶葉も、踏み躙るなんて許せません!」
「転生と言うのは……もっと夢と希望と浪漫に満ちているべきなんだよ!」
 嘉内は熱い思いを込めて語った。転生というのは、人生に疲れた人が、あんな人生を送りたいと羨ましく思える、そんな夢と希望に満ちたものなのだと。
 だというのに――。
「転生先がダモクレス限定なんて、笑い話にもなりやしない! 何よりも……」
 無辜の人々を殺して回る、お前達が許せない。
 嘉内は逃げ惑うトラックンを逃すまいと、振り絞るような大声で魂の叫びをグラディウスへと注ぎ込む。
「貴様らの非道、蛮行……今ここで終わらせる!」
「トラックン! その所業も、今日で終わりです!」
 嘉内に続き、ジュスティシアも叫びを込めた。
 殺し、奪い、利用する。ふざけた姿で鬼の如き行為をくり返すトラックンを破壊せんと、己が怒りを剣へと注ぐ。
 この地に再び、平和とお茶を取り戻す。そんな決意を共に込めて。
「とことんスクラップにしてやりましょう! 二度と転生出来なくなるまで!」
 回廊を包む、7度目の爆発。
 そこへ最後の1人が降下してきた。グラニテだ。
「生まれ変わり……例え本当にそうであっても、そうでなくても……」
 グラニテは鼓膜を揺さぶる爆音と、空気を震わす衝撃波に耐えながら、ほんの一瞬の逡巡の後、手中のグラディウスをバリアへ突き刺した。
「みんなが生きたいのは今なんだー! それを勝手に終わらせようなんて、そんな身勝手は許さないぞー!」
 地球の一員となって、ケルベロスとなって、生命の生と死に触れて――今まで知り合った仲間達と、地球の人々の顔を一人一人思い返しながら、グラニテは言葉を紡ぐ。
 地球で生きて戦い、そして得た生と死の意味、自分が生きる理由。その全てを。
「生きるってことはきっと、自分にとって素敵な何かを見つけるための旅だから。見つけたんだよって、もう満足だよって!」
 そして。
 グラニテが放った最後の叫びが――。
「そう決めていいのも、誰でもない。自分だけ、なんだからなー!」
 一際大きな爆炎と化して、静かに回廊の奥へと吸い込まれて――。
「――!!」
 大きな大きな、大輪の花を咲かせた。
 支えを失った回廊がゆっくりと傾き始め、音を立てて崩れ去っていく。
「やったぞ……!」
「ああ。ざまあみろだ、ポンコツどもめ!」
 フレイアとアルベルトは着地するや破壊された回廊を凝視して、グッと拳を握った。残るケルベロス達も、次々に着地して二人の元へ合流して来る。
「ロックンロール! ボク達の勝利なのデース!」
「次は領域の離脱ですね。行きましょう、皆さん!」
 狭山の隅々まで響くような激しい音色を奏で、勝利を告げるシィカ。
 離脱を呼び掛ける嘉内を先頭に、すぐさま8人は行動を開始した。

●三
 ひび割れたアスファルトを蹴って、ケルベロスは撤退経路を一直線に駆ける。
 そして脱出までの道を半ばを超えたとき――そいつは現れた。
『トラックウゥゥゥゥン!!』
「来たな……!」
 金切声のようなスキール音を立て、嘉内達の真正面から迫る殺人トラック。
 リンカネーション・トラックンである。
「今までの所業の報いを与えてやる、トラックン! 物言わぬ鉄クズに転生しろ!」
 隊列の先頭で、嘉内が鎧装から『エメラルドの翼』を発動しながら叫んだ。
 戦闘は避けられない。もとより避ける気もなかった。
 トラックンは回廊を失い怒り狂っているのか、砲弾のごとき勢いでスモークを突き破って突っ込んで来る。
 ウリルを庇い吹き飛んだシィカは一息で跳び起き、挑発するように弦を爪弾いた。
「ふふん。こんなもんじゃ、ボクのロックなソウルは揺るがないのデスよー!」
「オウガメタル展開! 皆、奴を廃車にしてやれ!」
 オウガ粒子を散布し、前衛の身体能力を強化するアルベルト。その隣でシィカがギターをギュギュンとかき鳴らす。
「レッツ、ロックンロール! ドラゴンライブ……スタート!!」
 両隣に現れるドラゴニアンの少女達。キーボードとドラムに乗ったシィカの歌声が、味方の心を奮い立たせる。
 ミッション破壊作戦の戦いはスモークが晴れるまでの勝負だ。威力を底上げし、1秒でも早く決着を図らねばならない。
「受けなさい!」
 ジュスティシアが倒壊した家屋へと飛び移り、流星蹴りを敵の眉間に見舞った。
 トラックンは車体を落とし、ホイールの盾で蹴りを受ける。その守りは固く、蹴りが直撃しても微動だにしない。
「ディフェンダーですか……厄介ですね」
「長引かせている時間はない。速攻で叩き潰すぞ!」
 フレデリは九尾扇を振りかざし、攻撃の機を示した。
 破剣の力を得たウリルはフレイアと共に、コンテナシールドで守りを固めるトラックンへ牙を剥いて襲い掛かる。
「トラックン、覚悟!」
「行くぞゴルトザイン。奴の息の根を止める」
 クラッシャーとスナイパー、火力を担う二人の攻撃は強烈だった。
 ウリルの蹴りを浴びて炎上し、フレイアの砲撃を浴びてシャフトが曲がり、さらにそこへ金色の属性ブレスが、嘉内の自律攻撃兵器が、集中砲火でトラックンの体力を奪う。
「貴様には、転生さえも許さんよ。その魂、残らず私の復讐の糧として食らい尽くす!」
「そうだー! 手加減しないぞー!」
 掌に生成したグラニテの氷柱が、トラックンの眉間に突き刺さった。円らな目が書かれたフロントガラスが真っ白な霜に覆われる。
 しかし敵とて回廊を守る強化版。この程度で倒れる相手ではない。回転するホイールで、巨体から繰り出す体当たりで、ケルベロスの体力を容赦なく奪っていく。
「ボクらは止まらず、駆け抜けるデス! 邪魔するならブッ飛ばすまでデース!」
 シィカは口元の血を拭い、負けじと音速の拳を叩きつけた。
 バキッ、という鈍い音を立ててへし折れるサイドミラー。フレデリのオウガ粒子を浴びたアルベルトが、パイルバンカーの刺突で車体の真横を貫く。
「今までの報い、受けなさい!」
 そこへジュスティシアの『クルエルティ・ショット』が発射された。
 弾が狙うは嘉内が開けた荷台の穴。構造的弱点を見抜き穿った、トラックンの急所だ。
 ホローポイント弾がトラックンの体内へとめり込み、キノコ型に変形したグラビティ弾がトラックの内部機構を滅茶苦茶に破壊する。
 原形を留めぬ程にダメージを負ったトラックンは、まさにスクラップ寸前だ。最後の執念でウリルへ繰り出した突進も、アルベルトに庇われて無為に終わる。
「どうやら、転生させる事は叶わなかったようだな」
「終わりだトラックン――もう逃がさない」
 ウリルの契約が具現化した鎖が、トラックンを絡め取った。その頭上を、グラニテが描く夜空が覆っていく。
「きらきら煌めく夜の中で、ひときわ輝くもの――」
 同化していく意識の中、トラックンが天に見たもの。
 それは彼を圧し潰さんと降る、巨大な流星だ。
「ほら、きみにもきっと見えるはずだよー。だって、あれは」
 全身から黒煙を吹き出すトラックン。そのボディをフレイアの攻性植物の蔦が絡め捕り、滅茶苦茶に引き千切る。
 それが、とどめだった。
「終わりだ!」
『ト……トラックゥゥゥン!!』
 断末魔の絶叫を上げ爆発するトラックンを背に、再び駆け出すケルベロス。
 8人が領域を離脱したのは、それから程なくの事だった。

●四
「重傷者、紛失グラディウス、共にありません。作戦成功です」
「完全勝利なのデス! お疲れ様デース!」
 ジュスティシアの報告に、シィカは即興演奏で喜びを表した。
 一方フレイアは、静かに犠牲者達の冥福を祈る。
(「遅くなってすまない。安らかに眠ってくれ」)
 見上げる空に雲はなく、一面の青色がどこまでも続いている。彼らの魂も、きっと天へと届いたに違いない、そう思えた。
「勝ったなー! 帰りに茶畑とか見ていきたいなー!」
 普段の調子を取り戻し、絵筆をぶんぶんと振るグラニテ。未だ見ぬ世界に、彼女は早くも興味津々の様子だ。
「では、帰還しましょうか」
 支度を終えたジュスティシアに頷いて、ケルベロス達は帰途に就く。
 いつか狭山の地が、再び平和な街に復興する事を願いながら――。

作者:坂本ピエロギ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年5月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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