マッスルバウト!

作者:okina

●筋肉襲来!
 雲一つ無き、快晴の空。日差しは暖かいが、泳ぐにはまだ早い5月の砂浜。そこには潮干狩りに来た、大勢の人々でごった返していた。
「ん? ……なんだ、アレ」
 その内の一人が、遥か上空に染み出すように現れた、漆黒の渦に気が付き、ぽつりと呟く。
 次の瞬間、漆黒の渦――魔空回廊より飛び出した存在が砂浜の一角に激突した。砂浜が陥没し、水を吸った砂が礫となって、辺りに飛来する。
「フハハハハッ! ここが地球という場所か」
 突如、砂浜に形成されたクレーターから現れたのは、3m越えの巨躯の男。上体は緋色のマントに肩当と革ベルト。下は腰巻、編み上げサンダルのみという剣闘士姿で、覆面は無し。全身これ筋肉と言わんばかりの肉体を惜し気も無く晒し、絶句する潮干狩り客たちへ傲慢に言い放つ。
「さぁ、来るがいい地球人ども。力の限り、抵抗して見せよ。そして、復活した我が筋肉の糧となるがいい!」
 かくして、平和そのものだった砂浜は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

●迎撃出動!
「まずはお集まり頂き、ありがとうございます」
 そう言って、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が集まったケルベロス達に頭を下げる。
「ジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983)さんの予測調査の結果、エインヘリアルによる虐殺事件の予知に成功いたしました」
 今回の相手は過去にアスガルドで重罪を犯した凶悪犯罪者らしく、放置すれば多くの人々の命が無残に奪われるだろう、と彼女は言う。
「現場は潮干狩り場で、大勢の一般人が居ます。敵の目的が虐殺である以上、先に避難させてしまうと、襲撃地点が変更される可能性が高いでしょう。皆さんには一般人に紛れて待機して頂き、敵が出現後に、敵の注意を惹きつつ、手分けして一般人の避難誘導をお願いします」
 一般人に被害が出れば、その恐怖と憎悪によって、地球で活動するエインヘリアルの定命化を遅らせることになる。更に、敵がそれに味を占めれば、第二、第三の虐殺事件が計画される恐れもあった。
「幸い、と言って良いのか分かりませんが……このエインヘリアルは肉弾戦を非常に好む傾向があるようです」
 数名で肉弾戦を挑めば、一般人から意識を逸らせ、避難させるための時間を稼げるだろう、と説明する、セリカ。
「敵の使用武器はバトルオーラ。パワーと耐久力が非常に高く、圧倒的な身体能力で相手をねじ伏せるような戦い方を好むようです。囮になる方々はくれぐれもお気を付けください」
 危険を承知で時間を稼ぐ者達を案じ、彼女は小さな拳を握りしめる。
「アスガルドで凶悪犯罪を起こしていたような、危険なエインヘリアルを地球で野放しにするわけにはいきません。砂浜に集まる人達が、笑顔で明日を迎える為にも……皆さん、どうかよろしくお願いします!」
 そう告げて再び頭を下げるセリカに、集まった一同は力強く頷き、応えを返した。


参加者
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231)
ジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983)
宮口・双牙(軍服を着た金狼・e35290)
エイジ・アルトラングレー(出会いを求める鉄壁戦士・e77269)
グラニテ・ジョグラール(多彩鮮やかに・e79264)
エレインフィーラ・シュラントッド(翠花白空のサプレション・e79280)
 

■リプレイ

●白き砂浜にて
「青い空、温かな日差し、浮かれる男子たち。いいぞ、潮干狩り!」
 こげ茶色の髪に、右眼を通る傷と、ワイルドな顔立ち。ビキニ姿で己の肉体を存分にさらしながら、砂浜の一角にて仁王立ちをするオウガの男は、エイジ・アルトラングレー(出会いを求める鉄壁戦士・e77269)だ。その姿に、潮干狩り客たちが遠巻きに、チラチラと視線を向ける。とはいえ、この後の避難誘導を考えれば、ここで衆目を集めておくのも、悪くは無い。
「向こうが筋肉で来るなら、こっちも筋肉で迎撃よねっ!」
 並び立つのは、レプリカントの若い女性、ジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983)だ。赤いツインテールに輝く笑顔、同じくビキニ姿で、見事なシックスパックを惜し気も無く見せつければ、一般男性陣の視線が釘付けになる。一部、パートナーによって強引に引き剥がされる。暖かい砂浜に局所的に飛び交う、冷たい視線――被害者多数。だが、それも砂浜の醍醐味だ。夏にはまだ早いけど。
「おぅ! デウスエクスによる虐殺を許すわけにはいかねえ、体張って阻止するぞ」
 2人に負けじと、190㎝の長身に『格闘技用トランクス』姿で肉体を誇示するのは、相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)だ。正に格闘家の如き出で立ちは、ちびっ子たちのキラキラした視線を集めている。
「全くだ。体を鍛えるのは、確かに大事な事だがな。鍛えた肉体をどう使うのかも、重要な事だろう」
 燃える炎のような装飾の野戦軍服に身を包み、拳と瞳に地獄の炎を宿したウェアライダーの青年、宮口・双牙(軍服を着た金狼・e35290)が厳かに同意する。
「さすが双牙さん、良いもの持ってますね! どうです、ご一緒に? せめて上だけでも」
 エイジが上腕二頭筋を強調しながら、双牙へ向けてスマイルを浮かべる。肩幅、姿勢、布の張り。服の上からでも、分かる者には分かる事がある。
「…………いや、脱がないからな?」
 目の前の3人の姿に、一瞬だけ、軍服姿の自分が場違いなのでは、という錯覚に襲われかけ、双牙はとっさに頭を振る ―― 問題ない、俺は正常だ。そもそも、全員が全員、視覚に訴えかける必要は無い。視覚に頼らずとも、ひとたび拳を打ち交わせば、分かる者には分かるのだから。
「おおー、すごいなー……力持ちなのかー?」
 双牙達のやり取りに、若いアイスエルフの女性がコテッと首を傾げながら、綿菓子のような口調で話しかけた。白くきめ細かい、粉雪のような髪と肌。緑玉のような瞳に、透き通った氷のような無表情。綺麗なもの、可愛いもの、格好いいもの、素敵なもの、何でもござれの、グラニテ・ジョグラール(多彩鮮やかに・e79264)をもってしても、筋肉美の深淵は理解の及ばない領域らしい。
「そのあたりは人それぞれでしょうね。双牙さんの場合は、その出で立ちから察するに、力ばかりではなく、速度、持久力、柔軟性など、総合的なバランスを重視した鍛え方をされているとお見受けします」
 そう解説するのは、同じアイスエルフの若い女性で、元軍人だという、エレインフィーラ・シュラントッド(翠花白空のサプレション・e79280)だ。白い肌と紫水晶の如き瞳を持ち、長い藍色の髪には混沌の水を宿している。
「さて。このまま歓談といきたい所だが……」
 金色の瞳に、女性と見紛う美貌を持つシャドウエルフの青年、ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231)が虚空に鋭い視線を飛ばしながら、仲間達に告げた。
「残念ながら、時間切れらしい。招かれざる、狼藉物(ろうぜきもの)の登場だ」
 仲間達が空を見上げれば、青空の一角に闇をこぼした様に、漆黒の渦が滲み出る。
「準備はいいか?」
 仲間達に視線を飛ばしつつ、自らも和風アレンジしたケルベロスコート『隠月』から、武装を展開し身に帯びる。
「オッケー、こっちは任せて!」
「そっちは避難誘導、頼んだぞ!」
 敵の足止めに向かう、仲間達の頼もしい返事に、力強く頷き返し。
「よし、行くぞ!」
 ハルの声と共に、7人はそれぞれの戦場へと、駆け出して行った。

●避難誘導
「ここは危険だ! 速やかに避難するんだ!」
 軍服の裾をはためかせ、双牙は呆然とする人々の間を駆け抜けながら、『アルティメットモード』で励まし、避難誘導する仲間の下へ、一般市民たちを送り出す。
「我々はケルベロスです、皆様の避難をサポートします」
 それを引き継ぐのは、エレインフィーラだ。
「落ち着いて、お年寄りや子供たちの避難を手伝ってください」
 彼女を中心に『凛とした風』が吹き抜け、人々は急に姿勢を正し、きびきびと動き出す。
「殺界形成――疾く、去ね」
 他方、現場から距離があり、事態を認識できていない人たちへ、ハルの殺気が放たれた。潮干狩りに夢中で他人の声が届かない子供たち、周囲の喧騒を心の壁で遮り2人だけの世界に浸る恋人たち、ノリと勢いで様子を見に行こうとする野次馬たち、その他諸々の心の中へ『なんとなく居心地が悪いから他所へ移動しよう』という気持ちを醸成。殺気の壁から逃れるように、ぞろぞろと大移動を開始する。
「大丈夫だー! ケルベロスが助けに来たからなー! みんなは慌てず、誰も取り残されないよう、気を付けて避難してくれー! 子供とか、はぐれないようしっかり見てあげてなー!」
 動き出した民衆を先導するのはグラニテだ。『割り込みヴォイス』を駆使して、隅から隅まで声を届け、指示を飛ばす。市民の方もケルベロスを認識すれば、事態を察して避難に協力し始めた。
「……よし、ここは大丈夫」
 辺りに逃げ遅れた人が居ない事を確認し、双牙は一足先に足止め班と合流すべく、踵を返す。
「たしか、筋肉対決をすると言っていたが……」
 少人数で敵と相対する仲間達の安否を気遣いつつ、脳裏に浮かぶは素朴な疑問。
「―― 一体、どうやって勝敗を判断するんだ?」
 僅かに首を傾げつつ、彼は仲間達の下へと駆け出した。

●筋肉対決!
「フハハハハッ! さぁ、来るがいい。復活した我が筋肉の糧としてくれよう!」
 砂浜の一角にクレーターをこしらえ、筋肉エインヘリアルが高らかに宣言する。立ち塞がるのは筋肉自慢の3人のケルベロスだ。
「そうはさせん! 貴様に男子たちの未来を打ち砕かせてなるものか。白い砂浜を血で染めるのはお前の役割だ」
 傷跡の走る右目を僅かに開き、エイジは黒く獰猛な瞳で、真っ直ぐに敵を見据える。
「良い体を持っているようね。でも鍛えたケルベロスの肉体だって凄いわよ?」
 自慢の腹筋を見せつけるように、笑顔で胸を張るジェミ。
「ここはひとつ、筋肉対決と行こうじゃないか!」
 続く泰地がポージングを繰り出し、上半身をアピールする。対抗するように敵もポーズを取り、対する3人もポーズを変えて睨み合う。
「フッ……良かろう。ならば我が筋肉の力を見せてくれる!」
 その言葉に警戒の色を強める3人。だが、相手は3人にクルリと背を向けると、砂浜の一角に突き出た、大岩の周囲の砂を吹き飛ばす。
「ぬぅぅぅおぉぉおぉぉぉぉ!」
 そして、掘り起こした大岩を逆さまに抱え上げ、3人の目の前に突き立てた。
「フ、ッハハハハ……見たか、このパワー! これこそが、選ばれし者の筋肉だ!」
 勝ち誇る筋肉エインヘリアル ―― 呆れて唖然となる2名、ニヤリと笑う1名。
「上等だ、俺に任せろ!」
 獰猛な笑みを浮かべ、大岩に取り付く、エイジ。そのまま苦も無く持ち上げ、腰を落として、安定させる。
「いいぞ、乗れ!」
 その言葉に仲間達2人が我に返った。
「おっけー!」
「よし、見せつけてやれ!」
 ジェミと泰地がエイジの肩を足場に、大岩の上へと駆け上がる。
「な、にィィィっ!?」
 エイジ+大岩の上、巨躯を誇るエインヘリアルの目線より更に高みから、ジェミと泰地がマッスルポーズを見せつける。
「ふっ、余裕、余裕っ! 重さだけなら、1000人載せてもお釣りがくるぜ」
 頼もしい笑みで啖呵を切るエイジ。大岩に仲間2人を乗せてもなお、微塵も揺らがぬ下半身。それもそのはず、彼の種族はオウガ――100トンまで物が持てるという『怪力王者』の持ち主だ。
「ぬぅうぅぅ……まだまだァ! 筋肉とは、パワーだけにあらず!」
 筋肉エインヘリアルが腕を引き、腰を落とす――タックルの姿勢。
「その勝負、乗ったーーっ!」
 ジェミが大岩から飛び降り、腰を落として相対する。
「どちらの筋肉がより『頑健』か……いざ勝負よっ!」
 足場の悪い砂浜を物ともせず、一気に駆け出す両者。瞬く間に距離が無くなり、エインヘリアルの筋肉とレプリカントの筋肉が激突する!
「ぬぅうぅぅっ!?」
 ジェミに下手からかち上げられ、相手の上体がのけぞった。
「ばかな……っ、我が筋肉が押し負けるだと……っ!」
 驚愕の表情を浮かべるエインヘリアル。
「ふふん、あたしの筋肉は砕けない!」
 身を翻して反動を逃がしながら、ジェミが勝どきを上げる。
「……これはもう、勝負ありでいいだろう」
 そこへ姿を現したのは、仲間達の筋肉勝負を見守っていた双牙だ。
「あ、おかえり、双牙さん! どう? 見ててくれた!?」
 対決の疲労も見せずに、ジェミが笑顔で出迎える。
「あぁ……見事だった」
 そして、想像の遥か上空を突き抜ける展開だったな、と心の中で付け加える双牙。そこへ避難誘導を終えた仲間達が続々と駆け付けて来た。
「みんなー、お待たせだぞー! 怪我人いたら、しんこくなー。えんりょはダメだぞー!」
 今回唯一のメディックであるグラニテが、足止め班の状態確認に向かう。
「後顧の憂いは断ちました。足止め、ありがとうございます」
 避難状況の報告と共に、仲間達へ感謝を告げる、エレインフィーラ。
「お、みんな揃ってるな」
「こっちも、ちょうど今、片付いたところだ」
 大岩を邪魔にならない場所へ片付けた、エイジと泰地が仲間達と合流する。
「さぁ、ここからが本番だ。標的エインヘリアルを撃破する」
 実体無き朱光の剣と形無き黒水銀の刃、二刀を手に最前列へと歩み出る、ハル。
「ぬぅぅ……かくなる上は、貴様らのグラビティ・チェインを奪い、今度こそ我が筋肉を完璧に仕上げるまで。さぁ、我が筋肉の糧となれ!」
 ショックから立ち直ったエインヘリアルが、バトルオーラを纏って、ハルに相対する。
「いよいよか……よし、行くぞ!」
 エイジが拳を握りしめ、仲間を庇う為、前へ出る。その言葉に呼応するように、仲間達も一斉に武器を抜き放った。

●力を合わせて
「潰れるがいい!」
 筋肉エインヘリアルの大足が、地を砕く勢いで砂浜を踏みしめる。
「うっわ、でけえ足してるな、お前……!」
 至近距離で衝撃波を浴び、砂まみれになる泰地。
「けどな……オレも足には自信あるぜ!」
 すぐさま泰地は反撃に出た。地を駆け、砂を蹴り、敵顔面へと跳びかかる。
「自慢の足を受けて見な!」
 蹴り砕かん勢いで足裏を叩き込み、ぐりぐりとねじ込んだ。敵の思考に確かな【怒り】を植え付けて行く。
「回復はわたしに任せるのだー」
 仲間の被弾を確認し、グラニテは即座に動き出した。泰地の鍛え上げられた肉体の上を、グラビティで生み出された塗料が縦横無尽に跳ね踊り、カッコいいグラフィティを描き出す。
「っしゃぁ、こいつはいい! 流石だぜ、グラニテ!」
 体内に取り込まれたグラフィティが、疲労を打ち消し、戦闘力を増幅させるのを体感し、泰地が喝采した。
「俺も居るぜぇえぇぇ!」
 ワイルドな笑みを浮かべ、組み付きを仕掛ける、エイジ。守り手として、敵から仲間を守る為。エイジは敵にまとわりついて、その敵意を自分の方へと向けさせた。
「っ、小癪なぁあぁぁ!」
 怒りを露わにした敵の音速を超える拳が絡みつくエイジに襲い掛かる。
「させないよっ!」
 すかさず、そこへジェミが割り込んだ。
「はぁあぁぁ ―― せいっ、やぁあっ!」
 敵の剛腕を鍛え上げた肉体で受け止め、逸らし、弾き返す。守り手の力と防具耐性、二重の防御で被害を最小限に押し留めた。
「ジェミ、すごいな―。その調子だー」
 最前列で壁となる3人へ向けて、グラニテから戦い続ける者達の歌が届く。
「うん、前は任せて! 支援、ありがとね!」
 真っ赤なツインテールを揺らし、笑顔で答える、ジェミ。グラビティを宿す歌が響き渡り、ジェミ達に癒しと守護を与えてゆく。
 被害を減らし、被弾の集中を防ぎ、回復の効率を最大化する布陣で、4人は敵の抵抗を抑え込んだのだ。
「覚悟は問題ありませんか? 制圧させて頂きます」
 顔の左側面に解けない氷を仮面の如く現し、瞬く間に敵に肉迫する、エレインフィーラ。
「『翠花白空』の闘技をとくとお味わいなさい」
 その動きはしなやかにして流麗ながら、その一撃は強烈にして容赦無し。電光石火の蹴りが四肢の急所を的確に貫き、ジャマーの力が敵の行動を幾重にも縛る。
「貴様の筋肉自慢は、所詮ただの自己満足に過ぎん……ならば、此方が負ける道理は無い」
 双牙は地獄化した両腕を突き出し、空中で全身を回転させ、突撃を敢行。
「旋風の如く疾く鋭く、重ねる刃、巨岩を削り、穿ち貫く ―― 旋刃削岩突(スクリュー・パルバライザー)……!」
 強靭な手刀が、手甲に備えられし爪が、研ぎ澄まされた闘気が、傷を刻み、傷口をえぐり、敵を縛る呪縛を増幅させる。
「支え合わぬ力など、脆いだけだ」
 野戦服の裾をひるがえし、愛情も感謝も思いやりも無い、只の暴力など負けはしないと双牙は告げた。
「さぁ、君とは違う力のあり方の前に果てるがいい」
 ハルが領域を展開し、周囲に無数の刀剣が顕現する。
「我が内なる刃は集う。無明を断ち切る刹那の閃き、絶望を切り裂く終わりの剣……! 久遠の刹那(ブレードライズ・エーヴィヒカイト)ッ!!」
「ぬぅッ、お゛ぉ゛お゛ォォォォォ!?」
 顕現した無数の刀剣が、豪雨となって降り注いだ。
「……さよならだ」
 ハルが手にする2つの刃が、刺さった刀剣ごと、敵の巨体を両断する。
「ばッ……か……なァ……っ!?」
 驚愕の表情で己の身体を見つめる、筋肉エインヘリアル。ぱきりと何かが砕ける音が響き、切り裂かれた身体が急速に崩壊しはじめる。
「―― これで幕引きですね。静かにお眠りなさい」
 相手が完全消滅するまで見届けると、エレインフィーラは静かに告げて、武装を収めた。泰地が放った花びらのオーラが辺りを舞い、荒れ果てた砂浜を復元して行く。
「ふぅ、めいっぱい殴り合ってすっきりね。体も温まってせっかくだし、もう少し遊んでいかない?」
 激戦の疲労も痛打も感じさせぬ鮮やかな笑顔で、ジェミが仲間達に誘いかける。
「よぉし ―― なら俺達も潮干狩りだ!」
 エイジが拳を突き上げ、グラニテが興味深そうに、そわそわと首肯する。
「うん、賛成ーーっ!」
 青空に響く、ジェミの声。白い砂浜に、温かい日差しと7人の笑顔が輝いた。

作者:okina 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年5月25日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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