黄金屍花

作者:坂本ピエロギ

「ふうっ。いい天気ですね」
 旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・e72630)は緑地の芝生に身を投げ出すと、のんびりと青空を見上げた。
 野暮用の帰りにぶらりと立ち寄った自然公園、そこに都会の煩わしい喧騒や雑踏はない。
 ぽかぽか陽気のお日様に、生い茂る新緑の新鮮な空気、そして青空を漂う白雲。家族連れのピクニックで賑わったであろう園内の緑地も、連休明けの今は静かなものだ。
 折角の機会だ、少し昼寝でもして帰ろうか――。
 欠伸をかみ殺し、嘉内が目を閉じようとした時、その異変は起こった。
「……ん?」
 茂みの奥で、何かが物音を立てているのだ。人間とも動物とも違う『何か』が。
 ガサガサッ。ずずっ、ずずっ。
 嘉内が視線を凝らすと、そこには大きな花の化け物がいた。
「あれは……屍隷兵!?」
 人の背丈を優に超える黄金色の大花。タコの触手めいた根を足代わりに、ずずっ、ずずっと地を這う姿は、その花が地球上の生物ではあり得ない事を示している。
『ギシシッ、ギシシッ……』
 そして今、大花は奇怪な唸り声を上げながら、公園の外を目指して進んでいた。
 正確には公園の外――住宅が密集する市街地の方角を。
(「まずい、このままでは街の人達が……!」)
 嘉内が咄嗟に武器を構えるのと、それに気付いた大花が嘉内に牙を剥いたのは、殆ど同時の出来事だった。
『ギシシィィィッ!!』
「来い屍隷兵! 私が相手だ!」

「旗楽・嘉内さんがデウスエクスと遭遇する未来が予知されました」
 ムッカ・フェローチェ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0293)は発進準備が完了したヘリオンを背に、依頼の説明を始めた。
「残念ながら、予知された未来までの時間は殆ど残されていません。嘉内さんには幾度か連絡を試みましたが、全て失敗に終わりました」
 幸い嘉内はまだ無事のようだが、彼が戦いに巻き込まれる未来を変える事は出来ない。敵の戦闘力は高く、嘉内ひとりで勝利する事は困難だ。
 だが今から現場に急行すれば、嘉内を救出し、敵を撃破する事は可能だとムッカは言う。
「現場は街外れの自然公園にある緑地です。公園にいるのは嘉内さん一人ですので、市民が巻き込まれる恐れはありません」
 敵はアウルムフロースという屍隷兵だ。
 ラテン語で「黄金の花」の名を冠するこの敵は、ラフレシアらしき大花を素体に正体不明の生物を継ぎ合わせたキメラ型の屍隷兵で、花の下から無数の触手を自在に生やし、それらで移動や攻撃を行ってくる。
 アウルムフロースは、他の屍隷兵同様に自我を持たず、造物主であるデウスエクスの命令でグラビティ・チェインを集めるだけの生物兵器だ。如何なる者が如何なる目的でこの敵を造り出したのか、ムッカの予知はそれを明らかにしていない。
 ただ一つ明らかなのは、このままでは嘉内の命が危ないという事だ。
「嘉内さんの身に迫る危機を救えるのは皆さんしかいません。彼を救出し、屍隷兵から街を守るためにも、確実な遂行をお願いします」


参加者
カトレア・ベルローズ(紅薔薇の魔術師・e00568)
ユノー・ソスピタ(守護者・e44852)
副島・二郎(不屈の破片・e56537)
旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・e72630)
藤堂・武光(必殺の赤熱爆裂右拳・e78754)
エレインフィーラ・シュラントッド(翠花白空のサプレション・e79280)
優木・銀華(蒼輝闘士・e79565)

■リプレイ

●一
 番犬の外套を羽織った一群が、自然公園の小道を疾駆する。
 白昼だというのに、遊歩道に落ちた木陰は妙に暗い。強敵との戦いへ赴くケルベロス達の心が、そう感じさせているのかもしれなかった。
「大事な団員に手を出す気なら、容赦はしませんわ……!」
 先頭を走るのは、旅団『*緋兎*』の長であるカトレア・ベルローズ(紅薔薇の魔術師・e00568)だった。
 次第に近づいてくる緑地を見据えると、カトレアは走る速度を一層上げた。
 鯉口を切った『艶刀 紅薔薇』は、敵の血で花を咲かせる時を静かに待っている。
「彼は私達にとっても大事な団員……急いで助けなければな」
 ユノー・ソスピタ(守護者・e44852)もまた、仲間の救出に馳せ参じた一人。
「二人とも、頼りにしているぞ」
 旅団『カナートス・ガーデン』の長の言葉に、団員達は揃って頷いた。
「任せて、団長!」
「地球に来て日も浅い身ですが……同じ旅団員のため、尽力します」
 チーム最年少の少年である藤堂・武光(必殺の赤熱爆裂右拳・e78754)。
 そしてアイスエルフの元軍人、エレインフィーラ・シュラントッド(翠花白空のサプレション・e79280)だ。
 エレインフィーラは遊歩道を矢のように駆けながら、次第に色濃くなる殺気に肌が泡立つのを感じた。
「……近いようですね」
 竜牙兵やオークなど比較にもならない圧倒的な戦闘力。宿縁に寄せられたデウスエクスのプレッシャーは、彼女にとっては初めての経験であり、全く未知の感覚だった。
 だが、苛烈な戦いは元より承知。
(「必ず勝つ。この星で得た、新たな絆を育むために」)
 透明な氷のように固く純粋な信念を、エレインフィーラは瞳に宿す。
「見えました、あそこに……!」
 優木・銀華(蒼輝闘士・e79565)の指さす先、まばゆい光がケルベロスの目を射た。
 ぎらぎらと輝く金色の光。その源たる巨大な屍隷兵に一人で立ち向かわんとする男。
 旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・e72630)の姿が。
『ギシシィィィッ!!』
「来い屍隷兵! 私が相手だ!」
 どうやら、戦いは始まったばかりらしい。
 副島・二郎(不屈の破片・e56537)とギルフォード・アドレウス(咎人・e21730)は、嘉内の背に声をかけながら開けた芝生へと足を踏み入れた。
「無事か旗楽。何やら妙なものに懐かれているようだが」
「おーい、先生。生きてるか?」
 ギルフォードはそのまま嘉内を庇うように、敵の前に立ち塞がる。
 人の背丈を優に超え、下半身の触手で地を這う花型屍隷兵『アウルムフロース』に。
「黄金のラフレシアねェ……。金に統一する辺り、最っ高に趣味悪いな」
「応援が、来てくれた……? ありがとうございます、皆さん!」
 嘉内は飛び上がらんばかりに喜んで、ギルフォードと仲間達に感謝を述べた。
「礼には及びませんわ。団員の危機とあらば、どこまででも駆けつけますわよ!」
「間に合ったようだな。無事で何よりだ、嘉内さん」
 最前列に立ったカトレアとユノーが、嘉内を振り返って頷く。
「旗楽、あの屍隷兵に心当たりは?」
 二郎の問いに、嘉内はかぶりを振る。
 見ず知らずの、全く知らない相手だ――と。
「分かった。あまり被害を広げたくはない、速やかに叩き潰すのが得策だな」
 二郎の理力で輝き始めるフェアリーブーツの光に刺激されたか、アウルムフロースは口から白色の息を漏らし始めた。眼前のケルベロスを、全て敵と認識したらしかった。
「さァてと……身内に手ェ出した時点でもう遠慮はいらねェな?」
 断固たる殲滅の意思を込めた斬霊刀の切先を、屍隷兵へ向けるギルフォード。
 その横で、武光は震えそうになる声を勇気で覆い、名乗りを上げる。
「人に仇なす欲望で造られた、その名も哀れなレブナント。人の命を守るため、そして人の尊厳を守るため!」
 かつては地球で生きていた罪なき生命達。しかし今は、デウスエクスの傀儡となり果てたラフレシア型のキメラに向かって。
「堂々猛る正義……いや……悪の炎を胸に抱き、藤堂・武光、ここに見参っ!」
『ギシィィィィッ!!』
 アウルムフロースの雄叫びが空気を震わすと同時、白色の息が炎へと転じた。

●二
 振動と熱波が同時に、ケルベロスの前衛を襲った。
 ユノーと武光が、エレインフィーラとギルフォードの盾となり、紅蓮の炎に包まれる。
「神々の女王よ、勇壮なる戦士たちに祝福を!」
 己が身を焼かれるのにも構わず、ユノーはマインドリングに祈りを込め、天の光で前衛に保護をもたらした。
 爆発の威力こそ高くないが、火柱のように燃え上がる炎の勢いは凄まじい。放っておけばあっという間に消し炭になってしまう。
「かき消えろ、炎!」
 ユノーと息を合わせてフェアリーブーツで踊る武光。キュアをもたらす花弁のオーラも、しかし燃え盛る炎を消すには至らない。
(「これは……守りに回れば、負ける」)
 そう判断した嘉内の行動は、迅速だった。
 最後列の回復に適したポジションを唯一確保していた彼は、『エメラルドの翼の護り』で生じさせた翼の幻像で、回復と消火、そして攻撃力強化を同時に図る。
「カトレア団長、援護します!」
 嘉内の意図を、カトレアはすぐに察する。
「感謝しますわ嘉内。――アウルムフロース、覚悟!」
 嘉内のナノマシンで実体化した翼を従えたカトレアが、紅薔薇を手にアウルムフロースの間合いへと飛び込んだ。
 迎撃の触手を繰り出すアウルムフロース。だがそれを、翼の援護射撃が弾き飛ばす。
「その身に刻め、葬送の薔薇! バーテクルローズ!」
 鞘から走る、深紅の剣閃。
 人の一人や二人は軽く呑み込めそうなラフレシアの胴が、薔薇の模様に切り刻まれる。
 追撃の刺突を浴び、大量の体液を吐き出して悶えるアウルムフロースに、ギルフォードとエレインフィーラが、嘉内の翼を従えて迫る。
「そのデカい図体を凍らせれば、ちったァ涼しいかもな?」
「手加減はしません。全力です」
 斬霊刀『白刃 不動』に霊体を斬り伏せられ、巨体を覆う氷に悲鳴をあげる屍隷兵。そこへエレインフィーラの刃の如き蹴りが叩き込まれ、氷は更に分厚くなっていく。
 二郎の蹴飛ばす星型オーラに表皮を剥ぎ取られた触手へ、銀華はゲシュタルトグレイブを突き刺した。偃月刀型の得物で屍隷兵の神経を焼き切りながら、銀華がぽつりと呟く。
(「新たな高みを目指せるよう、新たな力、使いこなしていかねば」)
 アイスエルフである銀華は宿縁の敵どころか、デウスエクスとの本格的な戦いに臨むのもこれが初めて。
 ケルベロスとしての経験がまだまだ少ないことを彼女は自覚していた。
 故にこれは銀華にとって、大事な一歩目の戦いだ。
『ギシシィィッ!』
「遅い!」
 銀華を振り払おうとする触手を避け、偃月刀の一閃が傷ついた触手を切り落とした。
 アウルムフロースは怒りの咆哮を上げ、地に降ろした触手で傷を塞ぎ始める。

●三
 大地のグラビティを吸収し、守りに回るアウルムフロース。
 体を覆うBS耐性の保護をギルフォードと銀華がドリルと拳で破壊していく。
「させねェよ。ブッ壊れろ!」
「あと、一撃……!」
 ここで敵に回復のチャンスを与えてはいけない。
 二人の攻撃に続き、重力鎖を込めたカトレアの斬撃が、全ての保護を斬り捨てた。
(「まずは一安心、ですわね」)
 ブレイクが完全成功した幸運に安堵するカトレア。しかしそれも束の間だった。
 さらなる追撃を試みんと二郎の叩きつけるエクスカリバールが、エレインフィーラの振り下ろす竜槌が、惜しくも空を切る。
「避けられたか……」
「残念です。次こそは命中させねば」
 安定して攻撃を当てるには、二人のケルベロスとしての経験は僅かにアウルムフロースに至らないようだった。回避を減じればあるいは成功しただろうが、今のメンバーに足止めのグラビティを使えるケルベロスは一人もいない。
 それを知ってか知らずか、アウルムフロースは溶解液を撒き散らして盛んにケルベロスの保護を剥ぎ取りにかかってくる。
 狙アップのグラビティを使えるのは、カトレア一人のみ。前中衛に分かれた二人にオウガ粒子を散布しても、あれを浴びれば粒子の効果は瞬く間に溶けるだろう。
「ドンマイですよ、二人とも!」
「そうです! このペースでどんどん攻めましょう!」
 フェアリーブーツで戦場を踊って炎を吹き消す武光。そんな彼を嘉内がマインドリングの光で回復して二人を激励する。
 戦いにミスは付き物だ。この位ならば挽回は十分に可能――。
 だが、まさにその時、アウルムフロースが反撃の触手をカトレアへ向けた。
『ギシシシィッ!!』
「危ない!」
 意思を持った蛇のごとく襲い来る触手の群れ。その攻撃からカトレアを庇うユノー。
「負けるものか。必ず皆を守って見せる……!」
 シャウトで捕縛を緩め、戦列へ戻るユノー。その鎧は炎で煤け、息も荒い。
 前列の仲間を庇い続けた影響か、その身は負傷と疲労で蝕まれているようだ。
「回復を手伝おう……攻撃は任せた」
「了解ですわ」
 九尾扇の幻影でユノーの支援に回る二郎。
 それにカトレアは頷くと、エアシューズで屍隷兵めがけて加速した。
「そのまま、焼き尽くして差し上げますわ」
 芝に轍を刻みながら屍隷兵の頭上へ跳躍。摩擦熱を帯びた灼熱の炎で包み込みながらも、しかし屍隷兵の抵抗を止める事は叶わない。
「やれやれ、しぶとい野郎だ。……調子づく前に、ぶっ潰す」
「今日の私は一振りの剣です。その黄金を我が氷で制圧して差し上げます」
 カトレアと挟み込むようにして、ギルフォードは斬霊刀の斬撃で霊体を凍てつかせる。
 そこへ続くのはエレインフィーラの氷の吐息だ。
 太陽のような黄金色の輝きが次第に色を失っていく。効いているようだ。しかし――。
『ギシイィィッ!』
 アウルムフロースは己の深手にもまるで頓着する様子がない。吐き出した可燃性の気体で周囲を炎に包み込む。
 公園の緑を焦がし、ケルベロスの体を焼く苛烈な炎。
 武光は花弁のオーラで必死にそれを消しながら、奇声をあげる黄金屍花を睨み据えた。
 正確には花の茎から生える、人間のものと思しき腕の数々を。
(「よくもこんな……人間をおもちゃみたいに……!」)
 いかなる理由で生み出されたのかも分からない、この屍隷兵の創造者に激しい怒りを抱きながら、武光は踊り続けた。
「必ず……必ず、あなた達をその体から解放するからね!」
『ギシシィィィッ!!』
「させません」
 溶解液を発射しようと前衛に向けた触手の先端を、氷の吐息で凍りつかせる銀華。悲鳴を上げるアウルムフロースとは対照的に、彼女の心は冷静そのものだ。
 かつての自分ならば、もっと大きな傷を与えられたはず――いや。
 小さな感傷を振り切り、銀華は再び攻撃態勢に戻った。かつて程の力は失ったが、いつかはそれすら超えてみせる。
「参りましょう皆様! この戦いに、確実なる勝利を!」
 銀華と、そして3名のクラッシャーが浴びせ続ける攻撃の嵐。ケルベロスが攻撃するたびに身を切り刻む氷。アウルムフロースは根を下ろして回復を試みるが、身を蝕む麻痺効果によってあえなく失敗に終わる。
『ギシシシシィィィッ!!』
「今だ……! 回復します!」
 嘉内のマインドシールドに傷を塞がれたユノーが再び天から光を招き、保護の力で武光と仲間達を包み込んでいく。
 対する屍隷兵は、その体色を黄金色から赤黒い鈍色へと変じさせつつあった。
 決着の時は、近い。

●四
「終わりだ。引導を渡してやろう」
 二郎はエクスカリバールの先端をアウルムフロースの横腹めがけ突き刺した。
 ジグザグに突き破られた傷口が更なる氷に覆われ、ぱりぱりと皮が剥がれていく。
「……さあ、皆」
 二郎の呼びかけに、ユノーが、武光が、嘉内が頷く。
 この好機を逃す手はない。攻撃に転じた回復役の3人は、瀕死のアウルムフロースへ攻めかかった。
「これはお返しだ。受けるといい」
 ユノーの命で槍へと変じ、貫いた傷を毒で汚染するケイオスランサーが、
「秘密結社オリュンポスの名の下に! 私の右拳が烈火と滾るっ、誓いを果たせと火柱爆ぜる! 人の命を守るため、レブナント、可愛そうだけど倒してやるぞ!」
 赤熱化した鉄の義手の甲に発生させた秘密結社のエンブレムを、
「赤熱! オリュンポスッ、エンブレムアタァーック!」
 熱い叫びを乗せた裏拳で叩きつける武光が、
「ふう。33歳最初の敵にしては、随分と厭らしい相手でしたが――」
 照準を合わせたアームドフォートの主砲を一斉発射する嘉内が、
「――これで終わりだ。朽ち果てろ、屍隷兵!」
 アウルムフロースの心臓部を貫き、焼きつけ、吹き飛ばす。
『ギシシシシィィィッ!!』
 武光を拘束せんと飛ばした傷だらけの触手を、銀華の稲妻突きの刺突によって封じられ、エレインフィーラの旋刃脚を叩き込まれる屍隷兵。
 ついにその巨体がぐらりと傾ぎ、地響きを立てて崩れ落ちた。
「覚悟しな……『終末』program起動、 code:『EDA』認証――」
「幕ですわ。せめて最期は美しく散りなさい」
 アウルムフロースの口を鷲掴んだギルフォードの手から、膨大な熱エネルギーが放出された。視界が歪み、死肉を焦がす炎が、火柱となって屍隷兵を灰へ変えていく。
「サア! 敵よ! 劫火に包まれて滅んじまいなぁ!!」
「その身に刻め、葬送の薔薇! バーテクルローズ!」
 黄金の色を失い、炭化した敵を切り裂くカトレアの斬撃。
 最後の一突きを浴びたアウルムフロースの体は灰となって粉々に崩れ去った。
「ふう。嘉内、大事はありませんか?」
「……え? あ、はい!」
 嘉内は屍隷兵の死骸を訝しげに眺めていたが、すぐ我に返ったように仲間達に礼を言って回り始めた。
「皆さん、どうも有難うございます。お陰で命拾いしました」
「水臭い事を言うな。団員の危機に駆けつけるのは、団長として当然の務めだ」
 仲間の無事に頬を綻ばせたユノーは、ふと真顔に戻って嘉内に言う。
「不気味な敵だったな。屍隷兵ということは創り出した者もいるという事か」
「ええ。一体、誰が何のために……」
 嘉内らの活躍により、アウルムフロースによる惨劇は未然に防がれた。
 黒幕の正体が何者で、その目的が何なのか。ふたつの謎が仮に判明するとしても、それはまた別の物語となるだろう。
「皆様、お疲れさまでした。修復を始めますね」
「兵器にされた魂が、あるべき場所に還りますように……」
 抉れた芝生に気力溜めを注ぐ銀華と一緒に、武光は犠牲となった生き物達にそっと謝罪の祈りを捧げると、オーラの花弁で緑地を修復していった。
「私もお手伝いします。雪の力で、新たな母星を癒しましょう」
 真白い吹雪で草木を労わるように癒し、エレインフィーラは仲間達と公園を後にした。
 この地球で生きる意味が出来つつある。その確かな手ごたえを感じながら――。

作者:坂本ピエロギ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年5月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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