●城ヶ島
ドラゴンの大群が、翼を大きく広げ、城ヶ島から飛び立った。
広大な海を渡って、目指した先は……大阪城であった。
定命化によって、死にかけたドラゴン。
そのドラゴンを守るようにして、仲間のドラゴンが支えるようにして飛ぶ。
限られた時間は、ごくわずか。
それまでに大阪城に向かい、定命化の危機から脱しようとしていた。
●セリカからの依頼
「グランドロン迎撃戦は、ケルベロスの活躍で成功しました」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「しかし、城ヶ島のユグドラシル化が失敗した事で、ドラゴン達は定命化の危機から脱する為、大阪城のユグドラシルに、多くのドラゴンを送り込む作戦の断行を決定したようです。定命化ドラゴンの大阪城への退避作戦は、ドラゴン勢力の命運をかけた大作戦です。現在ドラゴン勢力が用いることのできる最大限の戦力が、この作戦の為に動員されています。この作戦が成功するような事があれば、私達にとって不利な状況になる事は間違いありません」
セリカが険しい表情を浮かべ、ケルベロス達に語っていく。
「逆に言えば、城ヶ島の防衛には、大きな隙が生じています。この隙をつく事で、最小限の戦力で城ヶ島を奪還する事が可能になるでしょう」
それは、ある意味でチャンス。
城ヶ島を制圧する事さえ出来れば、ケルベロス達にとって、有利な状況を作り出す事が出来るだろう。
また大阪城内に固定型魔空回廊を設置すると言う噂もあるため、これを破壊する事なく手に入れる事が出来れば、竜十字島からドラゴンが移動してくることが不可能になるようだ。
更に、固定型魔空回廊を利用すれば、竜十字島に逆侵攻してドラゴンのゲートを破壊する作戦も実行可能になるため、万が一ドラゴンの一部が大阪城に合流するような事があったとしても、ゲートさえ破壊してしまえば、そこから現れるドラゴン達は残党勢力に過ぎない。
そういった意味でも、固定型魔空回廊を手に入れる事が、今作戦の肝と言えた。
「また城ヶ島の戦力は、大阪城に移動する事が困難な空を飛べないドラゴン達と、配下種族であるオークや竜牙兵といった警備戦力で占められています。ただし、状況によっては大阪城に向かったドラゴン勢力が引き返してくる可能性があります。もちろん、あくまで可能性ではありますが、ある程度の覚悟をしておく必要があるでしょう。またケルベロス達が攻めてくる可能性を考え、ドラゴン勢力が固定型魔空回廊の防衛をしている可能性があります。最悪の場合、ドラゴン勢力が自ら固定型魔空回廊を破棄する可能性も捨て切れません」
セリカが険しい表情を浮かべ、いくつかの可能性を口にした。
もちろん、現時点では単なる可能性であって、絶対ではない。
絶対ではないが、充分にあり得る事だった。
「その事を踏まえた上で、城ヶ島への陽動作戦と見せかけて侵攻を行います。少人数のチーム毎に、様々な方法で城ヶ島に潜入・上陸を行って、固定型魔空回廊がある島の中心部へと向かってください。城ヶ島海南神社跡ですが、周囲は焼き払われ、見晴らしがよくなっています」
セリカがテーブルの上に、城ヶ島の地図を置く。
身を隠せる場所がほとんどないため、ドラゴン勢との戦いを回避する事は、困難。
しかし、ケルベロスの狙いが陽動であり、固定型魔空回廊の破壊までは目指していないとドラゴン勢に思わせる事が出来れば、侵攻してきたチームを蹴散らそうとドラゴン達が迎撃に出てくるので、比較的容易に各個撃破が可能になるようだ。
この迎撃戦の中、隠密行動に特化した3チーム程度が、迎撃をすりぬけ、固定型魔空回廊に到達する事ができれば、最善。
後は固定型魔空回廊の防衛に残っていたドラゴン勢を撃破し、魔空回廊を制圧するだけである。
「大阪城に合流したドラゴンが、大阪城内に固定型魔空回廊を設置した場合、竜十字島と大阪城のデウスエクスが自由に行き来できるようになってしまいます。そうなれば、大阪城と竜十字島のどちらかでケルベロスが決戦を挑んだ時、もう片方からの増援が発しえるという事になります。……ですが、その前に城ヶ島を制圧し、固定型魔空回廊を利用して、竜十字島のドラゴンのゲートを破壊できれば状況が一変し、大阪城に合流したドラゴン達も、残党軍に過ぎず、大阪城も孤立無援となるでしょう。そういった意味でも、今後の地球の命運がかかった戦いとなる事は間違いありません。かなり困難な戦いが予想されますが、皆さんよろしくおねがいします」
そして、セリカがケルベロス達に対して、固定型魔空回廊の制圧を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612) |
メリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634) |
クロエ・ランスター(シャドウエルフの巫術士・e01997) |
イピナ・ウィンテール(剣と歌に希望を乗せて・e03513) |
影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244) |
スノードロップ・シングージ(抜けば魂散る絶死の魔刃・e23453) |
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432) |
鞍馬・橘花(乖離人格型ウェアライダー・e34066) |
●城ヶ島上陸作戦ッ!
「大阪を守りに行くんじゃなくて敢えての攻めデスカ。ロックデスネー。まあ、やれることは、きっちりとやりマショ」
スノードロップ・シングージ(抜けば魂散る絶死の魔刃・e23453)は仲間達と共に三崎漁港で小型船を借り、それに乗って城ヶ島漁港に向かっていた。
……出発は夜明け前。
島からの攻撃で、小型船が沈められないように警戒しつつ、息を殺すようにしてケルベロス達は海を渡っていた。
そのため、村雨・ビアンカ(地球人の螺旋忍者・en0020)は、妙にソワソワ。
久しぶりの依頼でテンションが高くなっているのか、今にも叫びそうな雰囲気だった。
「ドラゴン達を引き付けるほど、厳しい戦いになっていくけれど、いずれは竜十字島に挑むことを思えばここで負けてはいられないよね」
そんな空気を察した影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)が、念のため隠密気流を使う。
七奈・七海(旅団管理猫にゃにゃみ・e00308)もオーク達に気づかれないようにするため、出来るだけ身を低くしつつ、隠密気流で仲間達を隠した。
一応、七海達は陽動班として作戦に参加しているため、ある程度は目立つ必要があるものの、このタイミングで目立ってしまったのでは、島に辿り着く前に、撃沈である。
それを防ぐためにも、ここでドラゴン達に気づかれる訳には行かなかった。
「とりあえず、やらなければいけないことは、固定型魔空回廊を破壊放棄させないように混乱を起こし、本命に気づかせないように拘束しつつ、本エリアの制圧……ですか。つくづく、少数精鋭でやる任務じゃないですね……」
そんな中、鞍馬・橘花(乖離人格型ウェアライダー・e34066)が、深い溜息をもらす。
やる事は山積み。
しかも、それを限られた時間でやらなければいけないのだから、考えただけでも頭がパンクしそうである。
「……とは言え、ここから先は敵地です。どこから襲われるか分かりません。皆さん、気を引き締めていきましょう!」
イピナ・ウィンテール(剣と歌に希望を乗せて・e03513)が警告混じりに呟きながら、城ヶ島漁港に小型船を停泊させた。
城ヶ島漁港はオーク達の根城になっているものの、今のところオークの姿はない。
いや、正確には見張りのオークがいるものの、完全に油断をしているのか、居眠りをしているようだった。
「だったら、なるべく足音を立てずに行かないと……」
メリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634)が自分自身に言い聞かせるようにして、抜き足差し足で波止場を歩いていく。
見張りのオークが居眠りしていたとしても、素通りする事が出来る程、警備が手薄という訳ではない。
詰め所には明かりがついており、そこからオーク達の笑い声が響いていた。
この様子では、詰め所で酒盛りでもしているのだろう。
ほろ酔い気分で詰め所から出てきたモヒカン頭のオークと……目が合った。
「て、敵だあああああああああああああ!」
その途端、モヒカン頭のオークが大声を上げ、逃げるようにして詰め所に入っていった。
だが、他のオーク達は、ほろ酔い気分。
何が起こったのか全く分からず、ドタバタとした様子で、何やら喚き散らしていた。
「まあ、私達は囮だから、いっぱい目立って視線を独り占めだよ」
その間にプラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)が漁港にある施設を利用しつつ、オークとの戦闘で有利になるように間合いを取った。
「わざわざ、こんな危ない場所に来る奴がいたとはなッ! だが、ここに来た以上、生きては帰さん!」
指揮官クラスのオークが、殺気立った様子で叫ぶ。
まわりにいたオーク達の中には酔っぱらっている者もいたが、ケルベロスによって仲間を殺された者もいるらしく、何やら殺気立っていた。
「ここはロックなソウルの見せ所なのデス!」
それでも、シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)は怯む事なく、愛用のギターを掻き鳴らす。
それに合わせて、ビアンカもノリノリで、ギターの音に合わせて、陽気にダンシング!
『派手に行くぜ! レッツパーリィ!』
クロエ・ランスター(シャドウエルフの巫術士・e01997)が抱いている兎のぬいぐるみ(クロ)も、ノリノリの腹話術でヤル気満々。
「派手、派手……頑張る」
クロエも何となくヤル気になりつつ、オーク達の気を引くのであった。
●オークの群れ
「あぁん、やっぱり私達じゃ無理ですよ~~っ!」
戦いが始まった途端、メリーナがノリノリな様子で、わざと弱いケルベロスを装った。
それはオーク達を油断させるための作戦であったが、その事に誰ひとり気づかぬまま、オーク達は欲望の権化となって、メリーナの後を追いかけ回していた。
プランもそんな空気を察したのか、わざと苦戦しているような素振りを見せつつ、隙を見てオーク達に攻撃を見切り、ファミリアシュートをぶち当てた。
『だ、駄目だ! コイツら、強すぎる!』
クロもオーバーアクションで、自分達がしくじった事を強調。
「すごく……強い……」
クロエもわざと苦戦しながら、逃げるようにして島の中央に向かう。
「おいおい、そう怖がるなって! 俺達が可愛がってやるからさァ!」
しかし、オーク達はまったく気づいておらず、ゲスな笑みを浮かべてクロエ達の後を追いかけた。
……既に頭の中はヤル事ばかり。
そのため、下半身が本体であるかの如く、暴走気味のようである。
「そういう事をする悪いオークは、御仕置きデース」
即座にスノードロップが間合いを詰め、オーク達のモノをガンガン斬り捨てた。
それはあまりにも手際が良く、スタイリッシュ。
自慢のモノを切断されたオークでさえ、一瞬何が起こったのか分からず、キョトンとした表情を浮かべていた。
だが、大量の血が噴水の如く噴き出したのと同時にすべてを理解したのか、あちこちから悲鳴が上がり始めた。
「テ、テメエだけは……許さねぇ!」
小太りのオークが股間から大量の血を流し、殺気立った様子でスノードロップに襲い掛かっていく。
しかし、その攻撃は虚しく空を切るばかりで、一発も当たらない。
「まぁ、やらなきゃ始まらないことですし、高精度速射(気持ち)で行きますか」
橘花もグラビティ・ジェネレーターで、体内に宿るグラビティエネルギーを変換し、まわりにいたオーク達を引き付けながら、散発的な波状攻撃を仕掛けつつ、指揮官クラスのオークに迫っていった。
「……うぐっ! コイツら、強いのか、弱いのか、よく分からんなッ!」
全身タトゥーのオークが、混乱気味に唇を噛む。
最初は雑魚の寄せ集めだと思っていたものの、実際に戦ってみると、かなり戦いになれているような印象を受けたようである。
それを仲間達に伝えようとしたものの、その場にいたケルベロスの大半が女性達で占められていたため、オーク達の半数以上が自らの欲望を満たす事を優先しているようだった。
(「随分と数が多いけど、ここで確実に数を減らしておかないとね」)
その間もリナがオーク達を牽制しつつ、風魔幻舞刃を発動させ、無数の風刃で相手の身体を斬り裂いた。
「いい加減にヤラせろおおお!」
それでも、オーク達は怯まない。
自らの欲望を満たすため、捨て身の覚悟で特攻状態。
おそらく、この場にいたケルベロスの大半が、男性であった場合は、オーク達もここまで無防備な姿をさらす事は無かっただろう。
オーク達は欲望を優先させるあまり、完全に油断しており、まったく統制も取れていないようだった。
それでも、圧倒的にオーク達の数が多いため、ケルベロス達も傷つき、疲労の色が見えていた。
(「固定型魔空回廊など繋がれてしまったら、この星に未来はない……。これも、まぎれもなく地球の命運をかけた戦いなのですね」)
そんな中、イピナが指揮官クラスのオークに、武功への誘惑を仕掛け、武功を意識させることで注意を引いた。
「お前の首は、随分と価値があるようだな。だが、その前に楽しませてもらおうじゃねえか」
その誘いに乗った指揮官クラスのオークが舌舐めずりをしつつ、ジリジリと間合いを詰めていく。
まわりにいたオーク達も、おこぼれを貰うため、彼に従っているような感じで、同じように距離を縮めていった。
「この状況で欲望を満たそうとするなんて……随分と余裕のようですね」
次の瞬間、七海が隠密気流を解除し、最高のタイミングでオークの横っ面を殴りつけ、奇襲を仕掛ける事に成功した。
「ふ、伏兵……だと!?」
そのため、オーク達はパニック状態。
思わぬ場所から現れたケルベロス達に驚き、冷静な判断力を失っていた。
「落ち着け! 雑魚がいくら束になっても、雑魚だ!」
指揮官クラスのオークが、興奮した様子で叫ぶ。
伏兵が現れた事によって、オークの隊が幾つかに分断され、あちこちで悲鳴が響いた。
「……敵は混乱しているようですね」
その間も、七海は仲間達と連携を取りつつ、オーク達に攻撃を仕掛けていった。
オーク達の大半はケルベロスの戦力を見誤っていたらしく、みんな苦戦を強いられているような感じであった。
「……合流されても困るの」
シエラ・ヒース(旅人・e28490)もオーク達を牽制しつつ、なるべく合流しないように攻撃を仕掛けていった。
「代わりに死の沈黙を与えてやろう」
それに合わせて、ドゥマ・ゲヘナ(獄卒・e33669)がキャバリアランページで敵中央に突っ込み、勢いよくハンマーを振り下ろした。
「……ぐえっ!」
その一撃を食らったオークが間の抜けた声を上げ、崩れ落ちるようにして地面とキスをした。
「始まりの洗礼、踏みにじれ――汝、野生の暴威」
続いて、比良坂・陸也(化け狸・e28489)が【狂える角鹿】を使い、巨大な角を持つ牡鹿の中でも特に凶暴で狂ったように見る者全てに攻撃をしかけてくる危険極まりない存在のエネルギー体を一時召喚し、オーク達を威嚇するようにして叫び声を響かせた。
「コ、コイツら、ただモノじゃねぇ! お前等も油断するんじゃねえぞ!」
その途端、髭面のオークが青ざめた表情を浮かべ、逃げ腰になりながら叫び声を響かせた。
本音を言えば、このまま逃げ出したいところのようだが、彼のプライドがそれを許さなかったようである。
「てめーも穢れてみるか? ああ?」
そんな空気を察した相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)が身体の中心から穢れに満ちたオーラを発生させ、そのまま自らの全身を覆う。
それに合わせて、シエラがステルフリーフを使い、魔法の木の葉を纏わせ、味方のジャマー能力を高めた。
「レッツ、ロックンロール! どんな場所でもボクのロックなソウルは変わらないのデスよー!」
次の瞬間、シィカが詰め所の屋根に立って、ギターをぎゅいんぎゅいんと掻き鳴らし、自らの存在をオーク達にアピール。
何故かビアンカもノリノリで熱唱し、その場がまるでライブステージのようになった。
「ふ、ふざけやがって!」
パンクスタイルのオークが殺気立った様子で、シィカ達のところまで駆け上がっていった。
だが、シィカ達の姿はそこには無く、既に別の場所に移動した後だった。
「奴らの挑発に乗るなッ! これは罠だ!」
ようやく冷静になってきたのか、指揮官クラスのオークが警告混じりに叫ぶ。
……既に隊はバラバラ。
まったく統制が取れていないため、このままでは全滅は必至。
それが分かっているため、指揮官クラスのオークも、何やら苛立っている様子である。
「どうしました? あなたの相手は私です! 目移りしないで、私だけを見てくださいな」
すぐさま、イピナが指揮官クラスのオークを挑発し、少しずつ引き付けるようにして間合いを取った。
「ええい! 目障りな奴め!」
指揮官クラスのオークが半ばヤケになりながら、イピナに攻撃を仕掛けていく。
それとは対照的に、まわりのオーク達に危機感はなく、自らの欲望を満たす事しか頭になかった。
「それなら、気持ち良くしてあげる」
次の瞬間、プランが甘い香りと共に桃色の霧が広げ、強烈な快感でオーク達の思考を桃色に染めた。
「うぐ……これは……!?」
そのため、オーク達は夢心地。
夢にまで見た桃源郷が目の前に広がっていたため、それが偽りである事にも気づかぬまま、恍惚とした表情を浮かべたまま、ビクンビクンと身体を震わせた。
「どんなに数がいたって、この刃で貫いてみせる」
次の瞬間、リナが風魔幻舞刃で、まわりにいたオーク達を仕留めていく。
いまのところ、大阪方面から増援が来る気配はない。
だが、それとは異なる不気味な気配が、こちらに迫っているような感じであった。
「さア、アタシと一緒に踊りマショ!」
スノードロップも魔剣円舞・血祭を発動させ、舞い踊るようにしてオーク達の身体を斬り裂いた。
それと同時にオーク達の大量の血が噴き出し、それで化粧をするようにして、スノードロップの顔を赤く彩られた。
(「――さあ、倒しに来なさい。ドラゴンさん一本釣りです!!」)
その間もメリーナがオーク達から逃げながら、一ヶ所に留まる事無く戦場を駆けまわっていた。
「グオオオオオオオン!」
その呼びかけに応えるようにして、喪亡竜エウロスが空を割る勢いで咆哮を響かせ、ケルベロス達の前に現れた。
●喪亡竜エウロス
「どうやら、罠に掛かって大物が釣れたようですね」
イピナが仲間達を援護しながら、ゴクリと唾を飲み込んだ。
喪亡竜エウロスは自らの力を誇示するようにして、ケルベロス達に攻撃を仕掛けてきた。
だが、ケルベロス達の大半はオークとの戦闘で疲弊しており、ほとんどマトモには戦えないような状況。
そのため、辺りが一瞬にして火の海と化し、今度はケルベロス達が分断された。
『こりゃあ、大物登場だな』
それを目の当たりにしたクロが、ぶるりと身震いした。
「私達……相手……」
クロエもプラズムキャノンを放ち、喪亡竜エウロスを牽制。
その間に仲間達が合流の機会を窺いつつ、喪亡竜エウロスを攻撃しているものの、なかなか思うように行っていないようだった。
「行くぞ、テメエら!」
指揮官クラスのオークも、喪亡竜エウロスが現れた事で強気になっており、自分達の勝利を確信しているような素振りで、まわりにいたオーク達を嗾けた。
「だからと言って、ボク達は負けまセェーン!」
すぐさま、シィカが格好良くギターを掻き鳴らし、ビアンカと連携を取りつつ、スターサンクチュアリを使う。
それと同時に地面に描いた守護星座が光り、まわりにいた仲間達を即座に守護した。
「みんな死にたがりのようだなァ!」
その間に泰地が天空より無数の刀剣を召喚すると、それを戦場に解き放った。
「そんな簡単に触れさせると思う? この身体……安くないよ」
プランも素早い身のこなしで、オーク達の攻撃を避けつつ、ファミリアシュートで反撃した。
その間も仲間達が喪亡竜エウロスと戦いを繰り広げているものの、オークとの戦いで負った傷のせいで、全力を出す事が出来なかった。
「とにかく、オークだけでも倒さねぇと、話にならねぇだろ!」
陸也が喪亡竜エウロスを牽制しつつ、撤退するタイミングを窺った。
オーク達の大半は傷つき、既に虫の息だが、数だけであれば、圧倒的に有利。
だが、喪亡竜エウロスが邪魔をしてくるため、必要以上に時間が掛かっている様子であった。
「お前達だけでも、ここで息の根を止めてやるゥ!」
指揮官クラスのオークが、殺気立った様子で、ケルベロス達に攻撃を仕掛けてきた。
それは散って逝った仲間のためであり、自らのプライドを守るため。
喪亡竜エウロスの加護があれば、絶対に負ける事はないと言う自信からだった。
「さぁ、死というサイクルより逃れ生きておらぬ生命よ。正しきサイクルへ還してやろう」
それでも、ドゥマは臆する事なく、指揮官クラスのオークを引き付けた。
「術式弾装填、目標基部の拘束を試みます」
次の瞬間、橘花が特殊拘束術式付与型徹甲弾を撃ち込み、指揮官クラスのオークにトドメをさした。
「……ぐおっ!」
それは指揮官クラスのオークにとっては、受け入れ難い現実。
しかし、先に肉体が悲鳴を上げ、成す術もなく、血溜まりの中に沈んでいった。
「……やっぱりドラゴンさんは強いですね」
そんな中、メリーナは荒々しく息を吐きながら、逃げるようにして物影に隠れた。
オーク達だけであれば、苦戦を強いられる事はなかったが、喪亡竜エウロスは想像以上に強敵だった。
「ここは一先ず撤退しまショウ!」
ビアンカが危機感を覚え、メリーナに撤退を促した。
このまま戦ったところで、苦戦を強いられる事は必至。
だからと言って死傷者を出しながら、喪亡竜エウロスと戦おうと思う程、無謀な考えをする者はいなかった。
だが、そこで奇跡が起きた。
「後は任せて! 喪亡竜エウロスは私たちが必ず撃破するからねっ!」
撤退を余儀なくされたビアンカ達を援護するようにして姿を現したのは、別の場所から島に上陸した長谷川・わかな(笑顔花まる・e31807)達であった。
わかな達はビアンカ達と入れ替わるようにして、喪亡竜エウロスの行く手を阻み、次々と攻撃を仕掛けていくのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年5月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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