城ヶ島浸透作戦~城ヶ島を奪還せよ!

作者:なちゅい

●ドラゴン、城ヶ島から飛び立つ
 空を飛ぶ多数のドラゴン達。
 それらの大群が城ヶ島から海に向けて、飛び立っていく。
 究極の戦闘種族とあって、その姿は実に悠然として雄々しい。
 ……と思いきや、彼ら取り巻く現状は非常に厳しい。
 定命化で死の淵にいるドラゴン達だ。互いに庇い合って飛ぶ姿も少なくはない。
 彼らが向かう先は……、攻性植物達が支配する大阪城だ。

●城ヶ島浸透作戦
 ヘリポートで、新たな作戦の説明が始まっている。
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)もまた、集まるケルベロス達へと説明を始めていた。
「グランドロン迎撃戦の成功、喜ばしいことだね」
 彼女はまず、先の作戦の参加者の活躍を喜ぶ。
 ただ、その結果、城ヶ島のユグドラシル化が失敗した事で、ドラゴン達は定命化の危機から脱する為、大阪城のユグドラシルに多くのドラゴンを送り込む作戦の断行を決定したようだ。

 定命化ドラゴンの大阪城への退避作戦は、ドラゴン勢力の命運をかけた大作戦だ。
 現在ドラゴン勢力が用いることのできる最大限の戦力が、この作戦の為に動員されている。
 いずれは、大阪城へと拠点を移すことも考えているのかもしれない。
「つまり、城ヶ島の防衛には、大きな隙ができているんだ」
 この隙をつく事で、最小限の戦力で城ヶ島を奪還が可能になると推察されている。
 今回の目的は『城ヶ島を制圧』し、かつ『固定型魔空回廊を破壊されずに手に入れる』事だ。
 固定型魔空回廊はドラゴンが移動可能な特別な魔空回廊だが、移動できるドラゴンは1度に1体づつに過ぎない。
 だから、城ヶ島側の出口を制圧してしまえば、竜十字島からドラゴンが移動してくることが不可能になる。
 更に、固定型魔空回廊を利用すれば、竜十字島に逆侵攻してドラゴンのゲートを破壊する作戦も実行できる。
「ドラゴンの一部が大阪城に合流したとしても、ドラゴンのゲートを破壊してしまえば、そのドラゴン達は『残党勢力』に過ぎないからね。危険度は大きく下がるよ」
 まさに、肉を切らせて骨を断つ作戦と言える。

 今回の作戦は、ドラゴン側の隙をついた作戦だが、先にドラゴン側の戦略を踏まえておきたい。
「まず、大阪城へ向かったドラゴン勢力が引き返してくる可能性だけど……」
 ドラゴン勢力は大阪城に向かったドラゴンの護衛部隊を撤退させる為に、ケルベロス達が城ヶ島に対して陽動攻撃を行ってくる事を予測している。
 この為、ケルベロスの攻撃が行われても、出発したドラゴンが城ヶ島に戻って来る事はない。
「次に、固定型魔空回廊の防衛だね」
 ドラゴン勢力は、ケルベロスが少数精鋭のチームによって固定型魔空回廊の破壊を目指した、潜入作戦を行ってくる可能性を想定している。
 固定魔空回廊の設置には多大な労力が必要となる。
 このことから、大阪城に新たな固定型魔空回廊を設置されるまでは、城ヶ島の固定型魔空回廊を失いたく無いと考えており、その防衛を行う。
「最後に固定型魔空回廊の破棄、だね」
 ケルベロスの目的が固定型魔空回廊の制圧による「竜十字島への逆侵攻」であると気づかれた場合、ドラゴンは自ら固定型魔空回廊を破壊して破棄する危険性もある。

 以上を踏まえ、ケルベロスとしてはこれから、城ケ島への陽動作戦と見せかけて侵攻を行う。
「少人数のチーム毎に、様々な方法で城ヶ島に潜入・上陸を行って、固定型魔空回廊がある島の中心部へと向かってほしい」
 城ヶ島海南神社跡の周囲は焼き払われ、ドラゴンが活動しやすいよう見晴らしはよくなっている。
 ケルベロスの狙いが陽動であり、固定型魔空回廊の破壊までは目指していないと見せかける事ができれば、侵攻してきたチームを蹴散らそうとドラゴン達が迎撃に出てくるので、比較的容易に各個撃破が可能になる。
「この迎撃戦の中、隠密行動に特化した3チーム程度が迎撃をすり抜け、固定型魔空回廊に到達する事ができれば最善だね」
 この場合は、固定型魔空回廊の防衛に残っていたドラゴンを撃破し、魔空回廊を制圧を目指してほしい。
 固定型魔空回廊を制圧できれば、竜十字島の増援を阻止できるので、残る敵を掃討すれば、城ヶ島の奪還が完了する。

 隠密チームによる制圧が行えなかった場合は、魔空回廊を防衛しようと集結するドラゴン達と、異変を知って竜十字島から増援で現れるドラゴン達を相手取って、決戦を行う事になる。
 決戦時、ドラゴン達は『固定型魔空回廊』を防衛しようとするが、ケルベロスの真の目的に気づいてしまうと、魔空回廊の破壊に方針を転換する危険がある。
「ケルベロスの目的が『固定型魔空回廊の破壊』であると誤解させたまま、敵を排除する必要があるよ」
 魔空回廊を制圧するか、魔空回廊が破壊されると、竜十字島からの増援が無くなる為、残る敵を掃討すれば城ヶ島の奪還は成功となる。

 一通り作戦の説明をしたリーゼリットはさらに続ける。
「もし、大阪城に合流したドラゴンが大阪城内に固定型魔空回廊を設置したら、竜十字島と大阪城のデウスエクスが自由に行き来できるようになるよ」
 そうなれば、大阪城と竜十字島のどちらかでケルベロスが決戦を挑んだ時、もう片方からの増援が送られてくるということだ。
 だが、その前に城ヶ島を制圧し、固定型魔空回廊を利用して、竜十字島のドラゴンのゲートを破壊できれば、状況は逆転する。
 ドラゴンのゲートを破壊できれば、大阪城に合流したドラゴンも残党でしかなくなる。大阪城も孤立無援の状況となるだろう。
「今後の戦局を動かす大切な戦いとなるよ」
 ――どうか、作戦の参加を。
 リーゼリットはケルベロス達へとそう呼びかけ、彼らの活躍に期待を寄せるのである。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)
浦葉・響花(未完の歌姫・e03196)
夜陣・碧人(影灯篭・e05022)
ヒメ・シェナンドアー(白刃・e12330)
ルベウス・アルマンド(紅い宝石の魔術師・e27820)
エトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)
ヴィクトル・ヴェルマン(ネズミ機兵・e44135)

■リプレイ

●城ヶ島、上陸
「今回は小型船で陽動か」
 眼鏡着用の妖精術士、夜陣・碧人(影灯篭・e05022)は以前の強行調査と制圧戦を思い出す。
 あの時は潜入するにも水陸両用車を使ったものだが、今回は小型船での陽動だ。
「まあ、海竜が居ないのなら好都合」
 あれから数々の戦いを潜り抜け、少しは竜にも太刀打ちできるようになったろうかと、碧人は竜の鱗を握りながら思う。
「ドラゴン勢力も運のツキが来たか……?」
 クマネズミの獣人、ヴィクトル・ヴェルマン(ネズミ機兵・e44135)は作戦前に、仲間から離れて葉巻を吹かし、近づいてくる城ヶ島を見つめる。

 島の北西、渡し船「わたしろ」の発着所付近。
 そこから上陸するメンバー達は思ったより他チームと距離が開き、視認できなくなったことを悟る。
「随分と島の生態が変わったわね」
 人型で黒豹の耳を隠す浦葉・響花(未完の歌姫・e03196)は滑りにくい靴で上陸する。
 彼女もまた制圧戦に参加していたようだが、その時と生息する動植物に違いを感じていたようだ。
「竜たちのねぐらに攻め入る……ですカ。慎重に参りまショウ」
 ヴィクトルの叫びを受け、蒼穹の髪を持つ時計師、エトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)がやや目立つ白の裾の長いコートを翻しつつ、仲間達へと注意を促す。
 早速、エトヴァは持参品を広げる。
 ジャミングの影響か無線やアイズフォンは繋がらないようだが、地図と方位磁石を使って進めそうだとエトヴァは確認していた。
「虎穴にならぬー、竜島に入らずんば回廊を得ずですわねぇー」
 おっとりした態度のフラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)も「うまくいくように懸命に頑張りましょうー」と仲間達を鼓舞する。
 この戦いに臨む気概もメンバーそれぞれ。
「単なる陽動で済めばいいのだけれど……」
 赤いウェーブヘアにスノーフレークの花を咲かせたルベウス・アルマンド(紅い宝石の魔術師・e27820)は作戦の通りに済むようにと本音をのぞかせる。
「ボレアースとは今回戦えれば、戦争除いても3度目。是非とも決着付けたいところ……!」
 一方で、のんびりした口調をした人派ドラゴニアンノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)は、部隊長との戦いを望んでいる。
 こちらに向かってくれば、それも叶うかもしれないが果たして……。
「純粋に立場の違いとはいえ、それでも叶えさせるわけにはいかない」
 白夜の姫衣の姿でこの作戦に臨む、ヒメ・シェナンドアー(白刃・e12330)は、落ち着いた様子でさらに一言。
「申し訳無いけど、この場は斬り開かせて貰うわ」
 ドラゴン達からこの島を取り戻す。その目的を皆で確認し合って。
「島周辺の生物の為にも、一刻も早く絶望の島ドラゴンランドを閉鎖するのよ」
 人間だけの為だけでなく、ドラゴンから逃れた動物達の為にもこの島を取り戻すと、響花は意気込む。
「ともあれ、やるべき事をやるまで。これはワンランク上のひと勝負だ!」
 葉巻の火を消したヴィクトルも城ヶ島の土を踏み、チームメンバーと共に陽動作戦を開始するのである。

●敵の誘き寄せを
 上陸はしたものの、現状敵影を確認することができない。
 メンバー達は陽動の為にも、島の中央を目指す素振りを見せながら敵をおびき寄せることとなるが、まずは手頃な敵を発見したいところ。
 双眼鏡を持つヴィクトル、響花は索敵をしながら歩く。
 メンバー達は市街地に向かうことになる。
「見晴らしの良い所を選んで進軍したいわね」
 響花がそんな要望を口にする。
 陽動するからには目立つに越したことはないが、敵の奇襲は避けたい為、曲がり角や暗がりとなる場所を十分に警戒する。
 碧人は索敵をしながらも、溺愛するほど仔竜フレア。
 フレアは竜の気配を感じ、知っている竜がいるのではと複雑な態度をとっている。
 碧人も竜との共存を願っているのだが……。
(「彼らに拮抗できるだけの力が無いと、夢物語でしか無いのだろう」)
 ドラゴン達は何を思い、今を生きているのか分からない。
 だが、現状は地球で定命化して生きる種族からすれば、倒すべき敵であるのは間違いない。
 埒が明かぬと考えたルベウスは遮蔽物を利用し、闇を纏いながら低空を調査して敵を捜索する。
 あまり変則的な飛行は酔ってしまうらしく、できるなら、先に敵を発見したいとルベウスは考える。
 ノーフィアはそんなルベウスよりも高く飛び、索敵を行う。
「見つかる可能性あるけど、敵を引きつけるのがお仕事だし」
 むしろ、このくらいが都合よいとすら考え、彼女は空を羽ばたく。
 そのノーフィアとほぼ同時に、建物内から姿を現す集団をメンバー達は発見する。
「「ブヒイイイ……」」
 集まってきたのは、豚人間オークの群れ。
 部隊長討伐を目指すメンバーからすれば、外れではあるが、こいつらもドラゴン勢力の尖兵には違いない。
「ようやく、お仕事ができそうですネ」
 釣られてきたオークどもを目にした彼は相手の配置を冷静に確認し、氷結輪を手にして迎え撃つ。
「面倒な相手に当たったわね」
 ヒメは乙女であるが故に、その相手に冷ややかな視線を向け、両手に斬霊刀を握る。
 今回、ヒメはチームの盾役だ。それにもかかわらず、汚らわしきオークをその身で止めねばならぬとは。運が悪いという他ない。
 同じく、敵を確認したフラッタリーは、前頭葉の地獄を活性化させる。
 サークレットを展開させた彼女は金色の瞳を開眼させ、額に隠していた銃痕から地獄を迸らせる。
 そして、彼女は徐々に狂った笑いを浮かべ始めていた。
「「ブヒイイイイイイッ!!」」
 オークどもも、今回はドラゴンが見ている状況もあってか、やや本気モード。唸り声や叫び声を上げ、上陸してきたケルベロス達を男女構わず締め上げようと触手を伸ばしてくるのだった。

●目立つように陽動を
 ドラゴン討伐に当たったつもりが、オークの群れと出くわした一行。
 ともあれ、陽動班として役目を果たす為にも、荒々しく討伐してドラゴンの気を引きたいところ。
「仕方ないわね」
 腹をくくったヒメは両手に魔動機刀を手に身構え、ドローンを飛ばしていく。
 オークは触手を伸ばしてくるが、ヒメはできる限りそれをドローンや両手の刃で迎撃していく。
 上陸地点からさほど離れていない場所に詰めていたわりに、すぐに出てこなかったところをみるとさほど重要な場所ではないのだろう。
 ならばこそ、攻略班の為にも部隊長を引き寄せたいところ。
「掲ゲ摩セウ、煌々ト」
 フラッタリーもまた盾となるが、豹変した彼女は狂った笑いを浮かべていた。
 力を注ぎこんだ炎の火種を、フラッタリーは鉄塊剣『野干吼』へと宿して。
「種子ヨリ紡ギ出シtAル絢爛ニテ、全テgA解カレ綻ビマスヨウ。紗ァ、貴方ヘ業火ノ花束ヲ!!」
 敵陣へと振るわれるフラッタリーの刃。叩きこまれたオークが爆発によって爆ぜ飛んでいた。
 燃え上がる炎は花火のように広がり、徐々に敵陣を炎で包み込む。
 胸に埋まる赤い宝石状の魔術回路を煌めかせながら、ルベウスがオウガ粒子を飛ばして援護すると、ヴィクトルが後方を振り返って。
「ルベウスの嬢さん、支援感謝だ」
 前線で群がるオーク目掛け、ヴィクトルは絶対零度手榴弾を投げつけ、オークを纏めて凍り付かしていく。
「もっと、派手に戦うべきですカネ」
 エトヴァは時折、他班を気にかけながらも、氷結輪を高速回転させて冷気の嵐を巻き起こす。
 それが一気にオーク達へと浴びせかかり、一層敵陣を凍らせていく。
「出てこいドラゴンッ! わたしとやりあおう!」
 陽動作戦ではあるが、ノーフィアは本心から有力敵との戦いを望む。
 とはいえ、群がるオークは厄介、というより面倒な相手。何せ、女と知れば無節操に襲い来る連中なのだ。
 そんな敵の前に出た箱竜のペレが触手を受け止めながらも、蒼炎の属性注入で仲間達を援護してくれる。
「よっしペレ、あっちは任せた」
 そんな信頼する相棒と拳を突き合せた彼女は、魔杖鞘『龍の顎門』で手前の敵から超重の一撃を叩きつけていく。
 汚らわしき触手から仲間を守るべく、響花は祝詞呪文を唱え始めて。
「漂うモノ達よ……我の元に集い皆を救え」
 彼女はこの場へと霊魂を呼び寄せようとするのだが、どうやら悪霊を呼び寄せてしまったらしい。
(「効果は同じだから、問題無いわ。多分……」)
 仲間達の耐性を上げてくれるのは間違いないからと、響花は黙ったまま仲間達へと回復支援を続けることにしていた。
 そのそばでは、メディックとして位置取っている箱竜フレアが積極的に陽属性のブレスを吹きかけ、凍り付いたオークを1体ずつ倒していく。
 主の碧人はそんな可愛らしいフレアの姿に目を細めつつ、無数の黒鎖をオークどもへと放出し、その太った体を触手ごと縛り付けていく。
「多少、派手目で問題ありませんね」
 碧人もまたブラックウィザードとしての力を遺憾なく発揮し、オークどもへとぶつけて撃破していく。
 一通り支援を終えたルベルスもまた胸の石に光を帯びさせながら、魔術を使う。
 オウガメタルを媒介にし、空に描くは黒い太陽。
 輝く黒い光がオーク達の動きを止め、その身を焼き焦がす。
 オークも触手で応戦するもののケルベロスの勢いには敵わず、数を減らしていく。
 だが、交戦するメンバー達の近くへと小さな地響きが近づいて。
「ここからが本番ね」
 オーク相手に辟易としていたヒメが小さく口角を吊り上げる。
 彼女達の視界に現れたのは、地を這い、闊歩するドラゴン達だった。

●島を支配するモノ達
 この場の戦いを嗅ぎつけ、現れるこの地の防衛戦力となっているドラゴン達。
 城ヶ島に残るドラゴンは飛ぶことができぬ個体が多いとあって、それらも例に漏れずに四つ足のトカゲを思わせる姿や、2本の首を持つ者、地面から姿を現す地竜など、翼を持たぬ者ばかりだ。
 残念ながら、魔竜や部隊長らしき者の姿がないことに、ノーフィアはいささか落胆した様子。
 逆に、安堵の息を漏らすルベウスは素早く戦況を先読みしつつ、後方から仲間達の援護の為にと再びオウガ粒子を飛ばす。
 響花も地面に鎖で魔方陣を描いて、仲間達の回復。手早く態勢を整え直してドラゴンを迎え撃つ。
「溢レヨ煉獄。焔ノ色ニTE竜之終ヲ顕セ。差ア、野干吼ヨ煌々ト号ケ」
 フラッタリーは一層狂気を感じさせながら、地獄の炎を舞わせて相手へと切りかかっていく。
 一方、ドラゴン達は暴れ狂いながらも大地を揺さぶりながらケルベロス目掛けて食らいつき、爪を振るう。
 中にはもはや、自我を失った哀れな個体もいるのだろう。
「それでも、負けるわけにはいかない」
 その身にドラゴンの牙を突き立てられながらも、ヒメはドローンの助けを受けて傷を癒やしつつ、両手の『緋雨』と『緑麗』でドラゴンの硬い鱗を切り裂き、傷を与えていく。
 一見、ただ向かい来る敵を裂くだけに見えて、ヒメは計算された一撃を浴びせ、敵が攻撃するタイミングで大きく傷が開いてしまっていた。
 ただ、前線メンバーも複数のドラゴンが相手では、戦線を持たせるだけでも厳しい。
 響花は輝くエネルギー球を傷つく仲間に飛ばし、倒れぬようにとサポートを続けていく。

 しばらくの間、竜と猟犬の交戦が繰り広げられるが、その膠着状態も長くは続かない。
 敵の攻撃が激しくなってきた為、箱竜フレアが回復に回る中、碧人は目の前、火力となる地竜を攻め立てる。
 投げつけた『鱗剥ぎの杖』で敵が怯み、仲間達が畳みかける中、碧人は竜語を紡ぐ。
「煌ける星、全てを照らせ、全てを焦がせ!」
 彼はフレアの力を借り、周囲へと煌めく星を生み出し、その光で地竜の体を灼いていく。
 抵抗していた地竜だったが、強い光に照らされた地竜は目を眩ませ、ついにはへばりつくように倒れてしまう。
 そいつへと近づく碧人は、傍らに落ちていた鱗を1枚回収していた。
 1体が倒れても、安心はできない。
 長引く戦いの中、ルベウスは熱を帯びる胸の石に痛みを感じるが、表情に出すことなく、呪銭『混世魔王』を鞭状にして立ち塞がる地を這うトカゲの様なドラゴンを締め上げる。
 増援が現れる様子はないが、極力陽動に見えるようにとエトヴァは歌唱スタイルをとり、声なき高周波を発していく。
 グラビティ『Jamming-MIX』。
 ドラゴンであれば、人間の可聴域を超える音も聞き分けることができる。
 エトヴァの即興曲を聞いたことで、トカゲ竜は体を硬直させ、うまく動けなくなっていたようだ。
 そいつ目掛け、ヴィクトルが距離を詰める。
「Take Zis!!」
 亡き兄の詩集を名付けたガジェット『Blitz Falka』を重火器へと変形させたヴィクトルは、捕捉したドラゴン目掛けて一斉掃射を浴びせかけていく。
 全身を穿たれたそいつは煙を上げて地面へと突っ伏し、動かなくなってしまった。
 残る双頭竜は、フラッタリーが抑え続ける。
 狂った笑みを浮かべ、『野干吼』を撫でて地獄の炎を浴びせかけてくる彼女には、ドラゴンでさえもプレッシャーを感じていたことだろう。
 フラッタリーの炎に身を焦がす双頭竜は、2つの頭で交互にフラッタリーの体を食らおうと噛みついてきた。
 しかしながら、箱竜ペレが強引に割り込みつつ、蒼炎を注入して癒やしに当たってくれる。
「黒曜牙竜のノーフィアより名もなき双頭の竜へ。剣と月の祝福を」
 双頭竜へと、魔杖鞘『龍の顎門』で殴打を浴びせかけていたノーフィア。
 せめてこの竜に名誉ある最後をと、彼女は空中に描く立体魔方陣から漆黒の球体を生成して。
「終幕だ! その身、その威にその魂! その悉くを喰い砕く!」
 瞬時に球体内部へと双頭竜を引き寄せ、その体を圧壊していく。
 けたたましく響く竜の叫び声。
 それが止み、球体が姿を消すと、そこには体を引きちぎられた双頭竜の死骸が残されていたのだった。

●完全に城ヶ島を取り戻すまで
 襲い来るドラゴンを討伐していくケルベロス達。
 そんな中、彼らの耳に届く、ドラゴンの叫び声。
 それは、『魔竜デス・グランデリオンの断末魔』に違いないだろう。
 一戦を終え、エトヴァがオウガ粒子を飛ばし、仲間の回復に当たりながら一言。
「どこかのチームが魔空回廊を確保したようですネ」
「くー、残念っ。ボレアースは討ち取られたのかな……」
 ノーフィアは悔しそうに呟く。
 魔竜が倒されたのであれば、部隊長もどこかのチームが倒したと考えるのが自然だろう。
 とはいえ、まだ残っているドラゴンがいる。
 他チームと合流しつつ残存勢力を討伐し、島からドラゴンを一掃したいところだ。
「後で、清めの塩を撒きますね」
 祝詞で呼び寄せた霊を感じつつ、響花は仲間達と残るドラゴンへと向かうのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年5月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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