グランドロン迎撃戦~混沌の戦場

作者:baron

 攻性植物のゲートであり、ユグドラシルの一部と化した大阪城。
 この地に5つに砕かれたグランドロンを擁する戦力が、エインヘリアルの第二王女・ハールの招聘に従って集結していた。
 まずはダモクレスの進化を目論む科学者、ジュモー・エレクトリシアン。
 新しき地を約束されたマスタービーストの継承者を自称する乱戦忍軍、ソフィステギア。
 他にも寓話六塔の座を虎視眈々と狙う、第七の魔女・グレーテル。
 そしてハールの直下と言う訳ではないが、同じ女性の地位向上に取り組む、エインヘリアルの第四王女・レリ。
 もちろんハールも含め、グランドロンの欠片の主である彼女達の間に、信頼も友愛も存在しない。
 単に互いに利用し合う利害関係でもって、攻性植物と第二王女ハールを主軸とする同盟を組んだのだ。
 彼女たちの次なる作戦は、定命化の危機に瀕するドラゴンを懐柔して勢力に加える事。
 ハールは多くのデウスエクス勢力を糾合し、今、動き出そうとしていた。


「アイスエルフ救出戦は成功。数百名のアイスエルフと、多数のコギトエルゴスムを救出する事ができました」
 セリカ・リュミエールが緊張した面持ちで、まずは報告を始めた。
「ですが、この作戦時に得られた情報から、第二王女ハールを含む複数の勢力が、分かたれたグランドロンと共に大阪城に集結しようとしている事が判明。
 攻性植物、エインヘリアル、ダモクレス、螺旋忍軍、ドリームイーターの5勢力が大阪城に揃う事になり、これだけでも、非常に危険な状況であるのは間違いありません」
 しかし問題なのは、これだけではなかった。
「攻性植物と第二王女ハールは、『限定的な始まりの萌芽』を引き起こし、ドラゴン勢力の拠点だる『城ヶ島』をユグドラシル化する事で、竜十字島のドラゴン勢力も、自勢力に引き込もうとしている事が予知により判明したのです」
 もしドラゴンまでが一つの勢力に糾合されれば、これまでにない大変な事態に陥るだろう。
 出撃してきたグランドロンを撃退して阻止しなければならない。
「まずグランドロンですが全長200m~500m程度で、歪な形をしています」
 これは、本来一つのグランドロンが5つに砕かれた後、それぞれを補修して使用している為とか。
「グランドロンは市街地に着陸した後、全力でグラビティ・チェインを地中に送り始め、無防備になります。
 このため着陸前に、護衛のデウスエクスが地上に降下。着陸地点の敵を掃討した後に、グランドロンが着陸、護衛のデウスエクスはそのまま、周囲の警備を行います」
 着陸地点については、市街地である事はわかっているが、詳細は不明。
 全域の市民の避難は終わっているので、市街地は無人である。
 無防備になったグランドロンの外壁に、攻撃を集中すれば、外壁を破壊して内部に侵入が可能だ(扉や補修部分など弱い所を狙えば、より少ない攻撃で破壊できる)。
 ただし、グランドロン内部には、コア部分に有力敵と護衛、宝物庫にコギトエルゴスムを守る守備隊などが残っていると思われる。
「攻性植物、エインヘリアル、ドラゴンの3種族が同盟を組むというのは、まさに悪夢というほかありません」
 仕事を請け負う螺旋忍軍はともかく、他の勢力がこれほど集うのは初めてかもしれない。
「大阪城のユグドラシルは攻性植物の本星の一部であるので、その影響範囲内で、定命化の影響が小さくなる……というのは、理屈的には理解できます。
 ハールの狙いはコレを利用して攻性植物だけでなく、ドラゴンの力を借りて、エインヘリアルの王位を簒奪する事で間違いないでしょう」
 だが、悪いことばかりでは無い。
 うまく戦えばグランドロンの撃破や、更なる妖精八種族のコギトエルゴスムの奪取も可能なので大きなチャンスともいえるだろう。
「相手は大戦力ですが、意思が統一されている訳でもありません。場合によっては作戦の選択と戦力の集中が重要になるかもしれません」
 また最後までレリの為に戦おうとする者が、それほど居るとも思えない。
 5つのグランドロンのうち、2つまでは阻止できなくても良い……と考える事も可能だ。
 どの勢力を集中して倒すか、場合によっては足止めで良しとし、今は見逃す事を決めた方が良いかもしれない。
「いずれにせよ作戦はみなさんにお任せします。大阪……いえ世界の未来をお願いいたします」
 セリカはそういて資料を渡すと、ケルベロス達は相談を始めるのであった。


参加者
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
久遠・征夫(意地と鉄火の喧嘩囃子・e07214)
筐・恭志郎(白鞘・e19690)
鍔鳴・奏(あさきゆめみし・e25076)
美津羽・光流(水妖・e29827)
アルシエル・レラジェ(無慈悲なる氷雪の白烏・e39784)
刈安・透希(透音を歌う黒金・e44595)

■リプレイ


「ほんまに来たんか。大がかりな割りに雑な計画やな」
 木々に巻きつく蔦や蛇の様に、美津羽・光流(水妖・e29827)が首をもたげた。
 隠れて居る木陰から視線だけを上に向けて、グランドロンの欠片を眺める。
「ハール王女も猪突猛進タイプかいな。このままなら大してレリ王女と変わらへんな」
「とはいえ、螺旋忍軍相手ですし、気をつけないとですね。俺、正直言うと何度か出し抜かれた事があって」
 光流の言葉に頷きつつも筐・恭志郎(白鞘・e19690)は苦いモノを感じた。
 彼の中を駆け抜けた、螺旋忍者との戦いを思い出。
 奴らには複雑怪奇な優先があり、任務の為に命を掛ける事もあれば、最終目的の為に一見無駄な犠牲になる事もある。
「……いえ! 今度は引っかかりません。落ち着いて、騙されないように。頑張りますよ!」
 ただ勝つだけならば簡単だが、こちらの勝利が奴らの敗北ではないこともあった。
 そんな後ろ向きな考えを追い出そうと、恭志郎は頭を振って気合いを入れて奮起する。
「その意気ですよ。さあ、見つからない様に行きましょう!」
 久遠・征夫(意地と鉄火の喧嘩囃子・e07214)は友人を励ましつつ、螺旋忍軍に見つからない様に森陰に隠れて歩きだした。
「ええ、そうしましょう。地図によるとこのルートが近いみたいですね」
「なら私が案内しますよ」
 恭志郎が地図に自分達の位置を表示すると、征夫は森と化した街を案内し始める。
 草木が分かたれた道をケルベロス達は進み、グランドロンが降下しようとしている場所へと向かった。

 宝物庫を兼ねた要塞グランドロン。
 その一部が今まさに地上に降り立とうとしているのが見える。
「見えてきたデース。NINJYAが先行してるのですカネ?」
 シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)はグランドロンが一機に降りて来ず、適当な所でホバリングするのを見て、ヘリオンの様だと感じた。
 そう、ヘリオンであれば今頃は何かが降下して居る所だ。
 目を細めて可能な限り遠くを眺めると、先触れとして人や獣が降りて居るのが見える。
 特徴的な半人半馬はまだ見えないので、居ないか、居てもグランドロンが着地してからだろう。
「もう少し、配置が決まるまで待つのデスヨネ?」
「せやな。タイマー合わせながら待とか」
 シィカが振り向くと光流たちは時計をいじり、アラームを設定して居た。
 これから少ない戦力で敵基地に挑む為、最新の警戒と、綿密な時間調整を行う。
 自分達が護衛を引き剥がし、その間に突入班がグランドロンに攻め込む手はずである。
「そろそろ良いですカネ? それでは今日も元気にロックに! ケルベロスライブ、スタートデス! イェェェェイ!!」
「それじゃあいっちょ、派手に行きますか!」
 そしてズズンという地響きがした時、シィカは飛び出して周囲を見渡せる場所へ。
 征夫の言葉に気を良くして、シィカはまるでコンサートをするかの如く、ギターをかき鳴らしたのである。
「派手に……派手になー。そういうのってリズは得意だっけ?」
「派手かどうかはわからないがドーンと任せろ!」
 鍔鳴・奏(あさきゆめみし・e25076)は隠れていた木陰から完全に飛び出し、リーズレット・ヴィッセンシャフト(迷いの森・e02234)と並走した。
 首を傾げる彼女の答にならない応えに相槌を打ち合いながら、陽動を掛ける為に敵の元に向かう。
「先に行くぞ」
 奏はこちらに向かってきたり、懐へ手を伸ばした螺旋忍軍を発見。
 相手の動きを止める為に、仲間達に先駆けて抜刀した。
「任せたけど、もたもたしてると獲物が居なくなるかもね」
 リーズレットは小さく翼を広げて低く飛ぶと、一瞬だけ奏の前に出て微笑んだ。
 そして攻撃を始める仲間達に続いて、戦場を彩り始めたのである。


 こうしてケルベロスと螺旋忍者の戦いが幕を開けた。
 二班が陽動を務め、相手の護衛に穴を開ける様に拡がって行く。
「まずは成功……かな? あとは内部潜入班のみんなが無事に帰ってこられるように此処を確保しないと」
 刈安・透希(透音を歌う黒金・e44595)はみんなが無事である様に、祈りを捧げる歌を唄う。
 それは世界を揺らし、戦場を揺らし、こちらを阻もうとする螺旋忍者を揺らす。
「まだだ。陣形に穴を開けても、グランドロンに穴を開けた訳じゃない。次に行くぞ」
「せやな。ここに居ったのを陽動班みんなで倒しただけや、キッツイのはここからやで」
 アルシエル・レラジェ(無慈悲なる氷雪の白烏・e39784)は光流の言葉に頷いて、天に腕を掲げた。
 先ほど解き放った鎖が渦を巻き、相互に重力で連結し始める。
「デウスエクスのやりたいようにはさせない」
「マスタービーストやら正直何なんかわからへんけど、螺旋忍軍の奴らの思う通りにはさせたらん」
 透希が新しい歌を紡ぎ始めると、光流は指先にからまる白い紐を解いて幻影の花を散らし、花弁の刃で踊る様に切り割いて行く。
 ケルベロス達を手強しと見たのか、伝令が飛び、あるいは増援がこちらにやって来る。
『アオーン!』
「ちっ。新手か」
 普段のアルシエルと違い、今日の彼は荒れて居た。
 いや、正確にはエインヘリアルに関与したことのあるヴァルキュリアだからこそ、妖精種族を救う作戦に失敗したくないという思いで一杯なのだ。
 嵐の上に乗った獣型螺旋忍軍を見て、舌打ちを入れる。
「だが今の所は、予定通りだと思っておくほか無いな。もう数枚結界を張っておこう」
 とはいえソレは焦りにつながる感情だ。
 アルシエルは冷静であろうと努力し、自分のやるべき役割へ集中しようとしていた。
 戦場を覆う重力の鎖は、彼の心を現す唯一の昂りなのかもしれない。

 息を吐く間も無く数人の敵が。これだけなら……と思って居ると陰から窺う影が幾つか。
 人間型も居れば、獣型にアンドロイドらしき連中も居る。
 いずれにも共通するのはあの白い仮面で、様々な勢力に入り込んで居たことが窺えた。
「早めのアンコールとは気が早いデース! リズムに乗って最後まで踊り明かすデスヨ!」
 シィカは星剣を手近な木に突き刺すと、マイクの様に柄と向かいあった。
 そして声からグラビティを叩き込み、またたく輝きでリズムを作りあげる。
 それは緒戦で傷付いた仲間たちの体を癒し、連戦に向かいあう為だ。
『推参! ここは抜かせぬ』
「お代わりか。さっきのは数で押したから物足りなかったが、今度は向こうの方が数が多い。気をつけろよ」
 さきまでは近くに他の班が居たが、戦力として期待し過ぎる訳にも行かない。
 リーズレットは数が来る前に叩き潰そうと、懐から薔薇をした氷を取り出した。
 そして薔薇から吹雪を放ち、螺旋忍軍たちを牽制する。
「問題無いですよ。このまま抑えておけます」
「同じく。向こうは俺とモラで……。あっそうだ」
 恭志郎と奏はあちこちから湧き出る、無数の螺旋忍者に向かっていく。
 先ほど同じく闘気を別に忍者に放った恭志郎は、刀を構えて迎撃に向かう。
 彼とは反対側を抑えようとした奏は、すれ違い様にリーズレットへ声をかけた。
「倒れなかったら何かご褒美をくれっ」
「そうだな。頑張ったらご褒美と相場が決まっているからな!」
 奏は箱竜のモラと共に敵を喰い留めながら、無事に帰れるように、おまじないを口にした。
 それは生きて帰る為のおまじない。生きて帰ったらリーズレットと共に楽しい日々を送ろうと約束して、湧きあがる暖かい気持ちをグラビティに変えて服や鎧に宿して行く。
「征君、そっちに抜けました!」
「こっちで何とかする! 凍てつけ、鳴龍っ!」
 恭志郎の声に反応して、征夫は抜け出して来る敵を迎撃する。
 咄嗟に氷のブレスを吹き付けて、同じ場所に刀を突き込んだ。そのままグラビティで冷気を固定して、大旋回。
 氷の刃が尾の様に周辺へ広がって行く。
「こんなに接近されるなんて少し離れ過ぎかな? もうちょっと距離を維持して場合によっては共闘しないと危険かも」
『馬鹿な。我が影が見抜かれただと!?』
 透希は歌によって戦いの経験を継続し、螺旋忍軍の本体を突きとめた。
 分身たちが霧散し、幻影が砕け散る!
「そこだ!」
 アルシエルはすかさず銃を握り締め、本体に向けて速射したのである。
 こうして戦いは佳境に向かっていく。


 戦いの天秤は、ある時から傾向き始めた。
 その事に気が付いた時、嫌な汗が流れて行くのを感じる。
「これは……マズイですよ」
「まさか囲まれたんか? そういやセントール見とらんが……」
 壁役である恭志郎が上げた声に、光流は思わず周囲を見渡した。
 視界を塞ぐ敵に二刀を振るって排除し、少しでも観察できる位置に移動する。
 四本足のセントールや、獣型の螺旋忍者ならばそういった速攻も可能そうだが……。
「逆です。連中、俺達を狙ってません。みんなグランドロンの方に……」
「いかん、食い留めなければっ。東方より来たれ、青龍」
 恭志郎の言葉が終わるや否や、アルシエルは要債に向けて銃を向けた。
 銃は呪に通じる。
 呪いを載せた弾丸を四方に撃ち込み、その中央に居た螺旋忍軍へ向けて碧鱗の龍を向かわせる。
『貴様はそこで死ね』
『仕方あるまい。了解した』
「ぜんぜんロックじゃないデス!」
 シィカは驚きと怒りのあまり、思わず昭和な時代のロッカーの真似をしてしまいそうになった。
 だが駄目だ、今こことでギターを叩きつける訳にはいかない。
 というか螺旋忍軍の為なんかに、ギター壊すなんて絶対ヤダー。そんな思いを歌にして叩きつけるのであった(回復だから味方にだけどね)。
「何とかして追いつきましょう」
 恭志郎は闘気を刃に載せ、下がる螺旋忍者を追って行く。
 ただし仲間とペースを合わせ、決して味方を狙わせないように射線は塞いでおいた。
「だ、そうだ。ここから忙しいぞ」
「誰一人として欠けさせないのが役目でね」
 リーズレットは周囲の色を再び染め上げ薙ぎ払う。
 流体金属で拳を覆いながら、奏はその下を駆け抜けた。
 蹴散らしながら仲間と共に少しずつ進軍。
「そこを退け!」
 征夫は追いつかせまいと邪魔をする敵を切り割き、道を切り拓いた。
「しかし、いつのまに……ちゃんと確認して居た筈なのに。忍者だから? いや、そんな筈は……」
「判りません。ですが、嫌な予感がします。可能な限り追い掛けましょう」
 透希は自分が少しずつ苛立って居るのを感じた。
 恭志郎らと共に何人かが観察して対処して居た筈なのに、囲まれたのだろうか?

 その答えはこの時点では判らない。
 なぜならば、ソレは策謀ではないからだ。
 ケルベロスが成功したがゆえに、『螺旋忍軍では無く』レリが成功しなかったがゆえにこの時代は起きたのである。


 徐々に別班の仲間達が見えてくるが、螺旋忍軍に囲まれてはいなかった。
 グランドロンの壁には穴も空いているし、もしや無事に撃退したのだろうか?
 それとも敵の一部も中に入り、仕方無く足止めに残った班が居るのだろうか?
「やったか……」
「いえ。残念ながら違います。この様子はおそらく……」
 恭志郎は疲れたのか、近くの壁に手を当ててうなだれて居る。
 そう思った。
 だが、彼はこんな所で疲れるほどヤワではないし、残念ながら敵を蹴散らして居た訳ではない。
「連中……勝つ事を諦めて逃げる気なんですっ! グランドロンが動いて居ます」
「なん……だと」
「うそ……でショ。NINJYA汚ないデース!」
 思わずタイマーを見返す者も出た。
 まだまだ時間に余裕があるどころか、作戦半ばにして螺旋忍軍は逃げ出したのである。
 潔ぎのよい逃げ足っぷりに、勝ったにも関わらず悔しくなってしまう。
「馬鹿な。連中作戦を真面目に遂行しようという気が無いのか? これでは回収する事もできん」
「まだだ! 付け焼き刃の同盟に私達は負けない……負けられない!……目を逸らすな、私は、私達は此処にいる」
 アルシエルはギリギリと唇を噛むが、透希は声を張り上げて唄い始めた。
 自分が自分である為に、揺らぐことのない意思を声に載せたのである。
「せやな。もっと壊せば止まるかもしれんし、最悪、突入班が脱出する時間だけでも稼ごか。西の果て、最果ての栲縄よ。訪れて繋げ。貴きも卑しきも、等しく底の水沫なれ」
 光流は掲げた右手周辺から、蔓巻線を描いて空間を切り裂く。
 世界に接続したことを示す白い縄が現われて、水飛沫が波となり、忍者たちを押し流して行った。
「そうだな。諦める訳にはいかん」
「そうですね。我々が諦めては頑張ってる班も援護を無くして居舞います」
 アルシエルは防衛のために下がる敵を撃ち、恭志郎はそいつを抑えるために刀を振り下ろす。
「勝ってるのに焦る必要があるとは……最近はシリアスばっかりだなー。倒れるまで戦わないのは助かるけど」
「そんな顔をするな。十分にカッコよかったぞ?」
 奏が暗黒の太陽を呼び出して相手の動きを止めに掛ると、リーズレットも距離を詰める為に歩き出しながら、近くの壁を叩いた。
「我が生み出すは青藍の薔薇 常闇より出し無数の薔薇よ、鋭い棘で彼の者を切り刻み、その蔦で薙ぎ、払い束縛せよ」
 ビリビリとした振動を感じながら、なるほどと呟いて、壁から青藍の薔薇が這い出させた。
 蔦は鞭のように棘は飛び道具のように建物を這い、立ち塞がる相手を拘束する。
 敵を中心に薔薇の花が咲き誇っている姿は、見た目だけならば美しいのは皮肉だろうか。
「リズこそカッコいい上に綺麗だよ」
 奏はそう言って、グランドロンの壁ごと残りの忍者たちを掃射する。
 仲間達もそれに習い少しでも敵を打ち倒し、グランドロンの破壊や仲間の脱出を助けようとした。
「くそっ。まさか敵が一枚岩でない事態というのが、マイナスに働くとはな!」
「ケルベロスが有利になっただけで逃げ出すとはね。こういう時は相手を叱りたくなるな」
 普段は声を荒らげないという意味では、征夫や透希も似た様なものだった。
 しかし今日だけは、途中から怒鳴りっぱなしだ。
 グランドロンの侵攻と陰謀を撃退して任務に成功しはしたが、破壊まで至って居ない。
 ケルベロス手強しと見た螺旋忍軍は、レリなんかの為に最後まで付き合えないと、逃走しただけである。
「次はリベンジデース」
「負けてるわけじゃないが……いや、そうだな次は気持ち良く勝ちたい物だ」
 悔しがりながら治療を始めるシィカに透希は頷いた。
 苦い勝利を噛みしめながら、ケルベロス達は再戦での勝利を誓うのである。

作者:baron 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年5月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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