グランドロン迎撃戦~繋がりを断つ為に

作者:幾夜緋琉

●グランドロン迎撃戦~繋がりを断つ為に
 攻性植物のゲートであり、ユグドラシルの一部と化す大阪城。
 この地に今、リザレクト・ジェネシスの戦いにより五つに砕かれたグランドロンらが、エインヘリアルが第二王女・ハールの招聘により、集結していた。
 ダモクレスの進化を目論みし科学者『ジュモー・エレクトリシアン』。
 マスタービーストの継承者を自称する螺旋忍軍『ソフィステギア』。
 萬話六塔の座を虎視眈々と狙いし第七の魔女『グレーテル』。
 そして、女性の地位向上に取り組みしエインヘリアルの第四王女『レリ』。
 ハールを含めた、グランドロンの欠片の主である彼女達の間には、信頼も友愛も存在はしない。
 しかし、互いに利用し合う利害関係で以て、彼女達は攻性植物と第二王女ッハールを主軸とする同盟を組むに至る。
 ……彼女達の次なる作戦、定命化の危機に瀕するドラゴンを懐柔し、その勢力へ加える事。
 多くのデウスエクス勢力を糾合した大作戦が、今、動きだそうとしていた。

「皆さん、集まって頂けた様ですね?」
 と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロスの方を向くと。
「先日のアイスエルフ救出戦、皆様のお陰で成功致しました。数百名のアイスエルフの方々と、それよりも多くのアイスエルフのコギトエルゴスムを救出する事が出来ました」
「ですが……この作戦時に得られた情報より、第二王女ハールを含む複数勢力が、グランドロンと共に大阪城へ集結しようとしている事が判明したのです」
 一度瞑目、そして。
「……攻性植物、エインヘリアル、ダモクレス、螺旋忍軍、そしてドリームイーターの五勢力が大阪城へ揃う事となれば、これは非常に危険な状況であるのは間違いありません」
「ですが……これだけではない様なのです。攻性植物と、第二王女ハールは『限定的な始まるの萌芽』を引き起こした様で、ドラゴン勢力の拠点である『城ヶ島』をユグドラシル化する事により、竜十字島のドラゴン勢力をも、自勢力へと引き込もうとしているのが、予知により判明しました」
「もし……ドラゴンまでが一つの勢力に糾合されてしまうと、大変な事態に陥るのは間違いありません。皆様には、この出撃してきたグランドロンを撃退し、その事態を阻止してきて頂きたいのです」
 そして、更にセリカは、詳しい状況を説明する。
「出撃してきたグランドロンは、それぞれ特定地域に向かい、グラビティ・チェインを地中に注ぎ込んでいる様です。このグラビティ・チェインの注入は、30分以上同じ場所に留まり、作業を行う必要があります」
「五つに砕かれた、そのグランドロンの出撃場所は奈良、伊勢、浜松、静岡、熱海の五箇所です。この五箇所の内、三箇所以上で作戦が成功してしまうと、城ヶ島のユグドラシル化が成立してしまいます。つまり、五箇所中3箇所以上を撃破、撤退させる必要があります」
「グランドロン自体は、全長200から500メートルほどの歪な形をしている様です。市街地に着陸し、グラビティ・チェインを地中へ送る体勢になると、無防備な状態へと陥ります」
「なので、グランドロンは着陸前に護衛のデウスエクスが先に降下し、着陸地点の敵を掃討の後、グランドロンが着陸する事になります。護衛達は、そのまま周囲の警備を行い、作戦完了に向けて動きます」
「着陸地点は市街地ですが、詳しくは分かりません。ですが、街の方々の避難は事前に済ませており、市街地は無人の状況となります」
「成功させるだけならば、作戦開始後30分以内に撤退させれば充分です。ですが、グランドロンの宝物庫には、妖精八種族のコギトエルゴスムがある様なので、これを救出する事が出来れば、新たな種族を仲間とする事が出来るかもしれません」
「又、その地のグランドロンを制圧、撃破する事が出来れば、妖精八種族を救出した上で、有力な敵を撃破する事も可能です。その為には、無防備なグランドロンの外壁に攻撃を集中させ、外壁を破壊する事が必要になると思います」
 そして、最期にセリカは。
「攻性植物、エインヘリアル、ドラゴンの3種族が同盟を組んでしまうのは、まさに悪夢と言えます……その様な事態は、絶対に避けなければなりません。どうか皆さんの力で、この悪夢を防いで下さい。宜しくお願いします」
 と、頭を下げた。


参加者
本山・葵(ユートレマジャポニカ・e04016)
皇・絶華(影月・e04491)
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)
レナ・フォルトゥス(森羅万象爆裂魔人・e05306)
レイシア・アクエリアス(穿つ雪兎・e10451)
リビィ・アークウィンド(緑光の空翼騎士・e27563)

■リプレイ

●地上へ続く糸
 奈良県某所、市街地。
 上空に姿を現わした巨大グランドロン。
「……これは……すごい闘いになりそう……」
 と、上空を見上げながら、ぽつりと呟くレイシア・アクエリアス(穿つ雪兎・e10451)。
 その大きさは、数百メートルという巨躯。
 それを見上げたレナ・フォルトゥス(森羅万象爆裂魔人・e05306)も。
「そうね……コイツラを何とかしないといけないところですわね」
 と、肩を竦めてしまう。
 正しく……上空を進むグランドロンの偉容に、少し圧倒されそうになってしまうもの。
 ただ、周囲の一般人達は避難済み、既にそこはゴーストタウンとなっている。
 でも、ここを守りきらなければ……街に大きな被害が出てしまうだろう。
 そして、この街を守るために、奈良の街に集まりしケルベロス達は、3班。
「本当、頼もしい方々が集結しましたね。これならば、きっと上手く行きますよ!」
 と、拳をぎゅっと握りしめた本山・葵(ユートレマジャポニカ・e04016)。
 そして、レイシアとコクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)も。
「……いつも都市のミッションでやってる通り、戦い続ければ問題ない……」
「うむ。中々の難事だが、この程度……賢者であるワシが怯むわけにはいくまい」
 と頷き、覚悟を決める。
 そして皇・絶華(影月・e04491)は、そんな仲間達を見渡してから。
「そうだな。一人一人は一騎当千……ならば、私は役目を果たすのみだ」
 と、仲間達の力を信じよう、と拳を握りしめる。
 そして……グランドロンは場所を定め、奈良市街地の上で停止。
 その動きを止めたグランドロンから、掃討部隊がパラパラ、と出現開始。
 それを見た他班の仲間達が、それを迎撃の合図として攻撃開始。
 そしてリビィ・アークウィンド(緑光の空翼騎士・e27563)が。
「我が身は盾であり、剣……さぁ、始めましょう」
 と、リビィが両肩のウェポンラック機能付きショルダーシールドからバスターソードを一本ずつ抜いて、構えると。
「では……皆さん、頑張りましょうね!」
 そう葵が仲間達を鼓舞し、ケルベロス達は一気にグランドロンに攻撃を開始するのであった。

●空からの錨
 そして、奈良県市街地上空に浮かぶグランドロンは、周囲の状況を確認……そして、行動開始。
 其処から姿を現わしたのは、掃討部隊の『フェーミナ騎士団』と、攻性植物、及びメリュジーヌ。
 彼女らはグランドロンから次々と降下を始める……対しケルベロス達も、掃討部隊を討ち倒そうと、迎撃を開始する。
 グランドロンを降下させようとする一派と降下させまいとする一派……そんな敵の動きに、レイシアはふと。
「……ドラゴンと一体化したら、強そう……強そう……」
 と、ぽつり呟く。
 そして、レイシアはその手のバスターライフルを構える。
 最大限にパワーを充填したライフルの引き金を引くと……グランドロンから降下し、向かってくる敵陣へ強力なバスタービームを掃射する。
『……っ……』
 その一射を、唇を噛みしめる。
 どうにかその攻撃を受け、耐えるフェーミナ騎士団。
 そして耐える彼女達に、更にレナが追撃する。
「行くわよ!! ファイアボール!!」
 そう、遠距離から『ファイアボール・オーヴァードライブ』で炎弾を放つと……焔で彼女達の体を燃え上がらせる。
 そんなスナイパー二人の攻撃に続いて、敵の真っ正面に立ち塞がる様に進み出たのはリビィ。
「さぁ……行きます!」
 ぐっと拳を握りしめながら気合いを入れ、光の翼を展開。
 輝く光の翼で、掃討部隊の注意をこちらに惹きつけつつ、それと同時に己を含む前衛陣にヒールドローンを展開し、盾アップ効果を付与する。
「リビィ、感謝する!」
 強化を受けたコクマは、感謝をちょっとぶっきらぼうに伝えつつ、キッ、と掃討部隊を見据えてターゲッティング。
 そして、グランドロンからまだ出てくる敵陣に対し、フォートレスキャノンを仕掛ける。
 更に絶華もスターゲイザーを敵陣前衛に一蹴し、足止めを行っていく。
 ……そして、最後に残った葵が。
「みなさん、治療は大丈夫ですか? いつでも言って下さいね!」
 と、回復をアピール。
 仲間達の体力の減り具合を見た上で、現時点では復不要と判断した葵は、マルチプルミサイルで追撃する。
 そして、ケルベロス達の攻撃が一巡した所で、掃討部隊の反撃が始まる。
『いいでしょう……貴方達の妨害に負けたりしません!』
 と、フェーミナ騎士団の一人が、決意と共にケルベロス達へ戦線布告。
 徒党を組み、攻性植物を先陣に立たせて攻撃を開始。
 更にフェーミナ騎士団達は、一歩下がった所から多段に攻撃を嗾けていく。
 それらの攻撃を、唇を噛みしめながら耐えきる絶華。
「っ……中々これは、厳しいな……」
 いや、絶華だけではない。
 リビィも、コクマも……勿論、別の班の仲間達も、敵陣の攻撃を分散し、受け止めている。
 その猛攻で、ケルベロス達には中々のダメージとなってはいるが……まだまだ耐えきれる程度ですむ。
 そして……敵陣の猛攻をどうにか耐えきった、次の刻。
 敵を威嚇する様に、レナのシャドウリッパーで斬りかかり、レイシアのバスターライフルを掃射する。
 その攻撃を真っ正面から当てるのではなく、あくまでも敵を牽制し、仲間達の攻撃を通しやすくする為の射撃で撃つ。
 その攻撃を、鬱陶しそうに、攻撃をギリギリ回避するフェーミナ騎士団。
 更にリビィが。
「私の光の刃は、一味違いますよ。さぁ、勝負ですっ!」
 と、『光翼粒子斬』で攻性植物一体を一刀両断にぶった切り、更に斬り込んでいく様にして絶華が螺旋氷縛波を放つ。
 そしてコクマは。
「我が刃に宿るは光<スキン>を喰らいし魔狼の牙!その牙が齎すは光亡き夜の訪れなり!」
 『月薙ぎ』の一閃で、間近の『フェーミナ騎士団』の一体へ渾身の一撃を食らわせる。
 確かな手応えで、かなりの大ダメージを受けた彼女……だが、一端後陣へ下がる。
 更に、彼女達のチームワークで、他の仲間達がそれをカバーする様に動き、彼女自身は回復を行う。
 そして、反撃開始。
 早々に攻性植物一体が仕留められた為、ケルベロス達は強敵である、と判断した模様。
『いい、油断しちゃいけないわよ!』
 と、仲間達を鼓舞する。
 鼓舞されたフェーミナ騎士団は、前衛、後衛の配置に分かれた上で、攻性植物の攻撃と合わせる様にして攻撃。
 そして……敵陣の猛攻が繰り出され、中々のダメージを受けたケルベロス。
 流石に、体力はかなり危険な領域まで陥る……が。
「さぁ、どんどん治療しますよ! ナノマシン展開、ブーストを開始します!」
 と、葵は攻撃を捨て『リジェネレイトブースター』を発動。
 絶華、コクマ、リビィらを回復し、戦線を確保する。
 そして、三刻目……四刻目、と時は刻々と経過していく。
 ……最初の内は、ケルベロス達が優位に戦況を進めていたのだが……次々とグランドロンから現れる掃討部隊の加勢は止まることはない。
 更に言えば、グランドロンは空から降下する気配は無く、空に浮かんだまま。
「っ……奴ら、オレ達が全滅しない限り、地上に降りてこないつもりか!?」
 と絶華は叫ぶものの、その声はグランドロンに届くことはない。
 いや……恐らくではあるが、グランドロンから様子を伺っていた彼女達は、これ以上ケルベロスの追撃者は居ない、という事に薄々感づいたのかもしれない。
 故に、今此処に居るケルベロス達を全て倒す事で、グランドロン降下の舞台を整えよう……という事なのだろう。
「仕方ない……リビィ! 合わせるぞ!」
 と、コクマはリビィに合図を送ると。
「分かりました……!」
 こくりと頷き、コクマの横に立つリビィ。
 ……息を合わせ、現れる掃討部隊を一人、いや、一匹でも多く倒す為に。
 レナとレイシアが足止め攻撃で対抗し、更に絶華が。
「我が武技と精霊魔導の競演……特と味わい散るがいい」
 『蒼銀乱舞』で確実に弱った相手を一体ずつ倒す。
 しかし……敵陣はかなりの数となり、かなり厳しい状況であるのは変わらない。
 葵の回復に加え、リビィのヒールドローン、レイシアのルナティックヒールで回復に回る。
 流石に攻撃の手数が減ることとなり……敵を抑えるので精一杯。
 ……そして、戦闘を仕掛けてから数刻が経過した、その時。
 グランドロンから現れた、フェーミナ騎士団の一団。
 今迄のフェーミナ騎士団と姿形は似ているが……明らかにその武器、防具はランクアップしている。
 そして、彼女達が先鋒となったフェーミナ騎士団と合流すると……。
『私達の邪魔をするな!!』
 と、渾身の一閃を叩きつける。
 その一閃は、ディフェンダーのリビィを以てしても、一撃で戦闘不能に陥る程の大怪我。
「っ……リビィ、大丈夫か!」
 とコクマの言葉にこくり、と頷くも……その腕を上げるので精一杯。
 更に、別のフェーミナ騎士団の一人が大きく剣を振り薙ぐ。
 風を斬り裂く鎌鼬のごとく、風の刃が辺りを斬り裂き……身を守る防具も、その一撃に大きな傷が付いてしまう。
「これは……不味い。仕方ない……撤退するぞ!」
 絶華の言葉……周りに居た仲間達も、明らかに実力が上のフェーミナ騎士団達に太刀打ちは不可能だと判断し、次々と其の場から撤退を開始。
 そして絶華は仲間達の最後尾につけ、仲間達を逃しながら、フェーミナ騎士団の攻撃をギリギリの所で回避。
 ……フェーミナ騎士団は、最初は追撃してくるものの……グランドロン降下ポイントの周囲からケルベロス達が撤退するまで追い立てた後……そこを守る様に配置へと付く。
 手負いのケルベロス達は、もう一度反旗を翻す事は出来ず……唇を噛みしめながら、奈良の市街地を後にするのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:リビィ・アークウィンド(緑翼の妖精騎士・e27563) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年5月2日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。