グランドロン迎撃戦~望み叶え給へ

作者:神南深紅

●敵地大阪城
 もはやかつての面影はない。攻性植物のゲートであり、ユグドラシルの一部と化した大阪城はこの地球でありながら、まるで治外法権の領域であるかのように変貌を遂げている。
 その様に変わり果てた大阪城に、リザレクト・ジェネシスの戦いで5つに砕かれたグランドロンが、エインヘリアルの第二王女・ハールの招聘に従って集結していた。

 ダモクレスの進化を目論む科学者、ジュモー・エレクトリシアン。
 マスタービーストの継承者を自称する乱戦忍軍、ソフィステギア。
 寓話六塔の座を虎視眈々と狙う、第七の魔女・グレーテル。
 女性の地位向上に取り組む、エインヘリアルの第四王女・レリ。

 第二王女ハールも含め、グランドロンの欠片の主である彼女達の間に、信頼も友愛も存在しない。ただ、叶えたい願いのために互いに利用し合う利害関係でもって、彼女たちは、攻性植物と第二王女ハールを主軸とする同盟を組むに至ったのだ。
 彼女たちの次なる作戦は、定命化の危機に瀕するドラゴンを懐柔して勢力に加える事。ドラゴンの勢力が加われば、この戦いの趨勢はガラリと変わってくるはずだ。
 多くのデウスエクス勢力を糾合した、大作戦が、今、動き出そうとしていた。

●新たなる予兆
「アイスエルフ救出戦は成功し、数百名のアイスエルフと、それよりも多数のアイスエルフのコギトエルゴスムを救出する事が出来た、人助けとしても戦力増強としても、これ以上ない戦果であったな。ありがとう」
 ヴォルヴァ・ヴォルドン(ドワーフのヘリオライダー・en0093)は軽く頭を下げる。しかしすぐに顔を上げ話を続ける。
「しかしこの作戦のさなか、重大な情報が得られた。第二王女ハールを含む複数の勢力が、グランドロンと共に大阪城に集結しようとしているのだ。攻性植物、エインヘリアル、ダモクレス、螺旋忍軍、ドリームイーターの5勢力が大阪城に揃うとは、危険極まりないが、群れるには理由がある。攻性植物と第二王女ハールは、『限定的な始まりの萌芽』を引き起こし、ドラゴン勢力の拠点である『城ヶ島』をユグドラシル化し、竜十字島のドラゴン勢力を無理やりにでも仲間に取り込もうとしておるのだ」
 もしドラゴンまでが一つの勢力に糾合されれば敵の力は計り知れないものとなる。阻止するには、ユグドラシルの根の進路にグラビティチェインを放出しようと出撃してきた5つグランドロンを最低でも3箇所で撃退する必要がある。
「現在のグランドロンは5つに引き裂かれたゆえに歪な形をしていて、その5つが5箇所に飛来する。だいたい全長200〜500メートルほどだろう。着陸すれば無防備になるので、先遣の者たちがその場所を整地し無人にしてからグランドロンを呼びそのまま護衛になるはずだ」
 着陸地点は奈良、伊勢、浜松、静岡、熱海の市街地である事以外不明。全域の市民の避難は終わっているので、市街地は無人である。
「グランドロンの外壁に攻撃を集中すれば破壊し内部に侵入が可能だ。突破しやすい場所があればそこから侵入してほしい。内部には、コア部分に有力敵と護衛、宝物庫にコギトエルゴスムを守る守備隊などが残っていると思われる」
 説明するヴォルヴァの表情は硬い。
「あいも変わらず厳しい戦いになるのだろうが、うまくすればグランドロンの撃破や、更なる妖精八種族のコギトエルゴスムの奪取も可能である。ピンチはチャンスと古来よりいうではないか。諸君らの奮闘に期待するのである、よ」
 ヴォルヴァは彼らの勝利を確信するかのように淡く微笑んだ。


参加者
ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)
セレナ・アデュラリア(白銀の戦乙女・e01887)
相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889)
瀬戸口・灰(忘れじの・e04992)
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)
リリー・リーゼンフェルト(耀星爛舞・e11348)
霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388)
カヘル・イルヴァータル(老ガンランナー・e34339)

■リプレイ

●戦場は熱海
 海岸線のすぐそこにまで山が迫っている。ごくわずかな平地だけでは足りるはずもなく、急な斜面の遥か上まで大小さまざまな住宅やホテル、旅館がひしめき合っている。そんな場所にグランドロンが降下してくるのだ。下敷きになって押しつぶされた建造物は1つ2つではない。
「城ヶ島のユグドラシル化とは思いきったことするのう。なるほどやることがガサツじゃわい」
 ごく普通の人々の生活などお構いなしに飛来し既存の建物をなぎ倒して着地したグランドロンをカヘル・イルヴァータル(老ガンランナー・e34339)は苦々しく思うのか、いつもの飄々とした様子はなく瞳には悲し気な色が揺れる。
「気合入ってんのは分かるが、こっちも外来種の雑草が勝手に根を伸ばすの黙って見てるつもりもねえんでな。行くぜ」
 上空からグランドロンの様子を一瞥した相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889)は迷いのない動きで急降下に転じる。竜鳴を砲撃可能な形に変化させ、竜砲弾を真下に向かって放ってゆく。グランドロンの弱点は上から見ただけではわからないが、この作戦には時間の制約がある。行動する先にしか活路はない。もちろん、テレビウム『マンデリン』も一緒で禍々しい鈍器を握って落下し殴っている。
「敵だ! ケルベロス共だ!」
「絶対に守るのだ!」
「我らが身命を賭すのは今ぞ!」
 竜人の攻撃が戦闘開始の合図になったかのように、哨戒していたドラゴンとオークの部隊が接近してくる。
「敵が接近。最も近いドラゴンはすぐに射程に入るよ。他、ドラゴンとオーク数不明だよ」
 辺りの警戒をしていた霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388)が少ない言葉に情報を詰め込み皆に伝える。ドラゴンたちは定命化がかなり進んでいるのか精彩を欠いているが、それでも防御を捨てたかのようにただ突進してくるドラゴン族には迫力がある。
「まずは迫りくる敵を倒すしかないか。ならば、容赦はしない」
 堅牢に見えるグランドロンの外壁を攻略しながらドラゴンやオークたちを倒すのは厳しいと判断したソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)は迫る敵へと身をひるがえし、長く清しい髪をなびかせ喰霊刀 を抜く。空間さえ切り裂きそうな斬撃がドラゴンの分厚い鱗の肌を割き、その傷口から力を奪う。
「ぐ、ううっ」
 身構えたはずのドラゴンの大きな口から呻きが漏れる。
「おっと、もう始まってしもうたか。あわてろ、あわてろ」
 と、口で言いながらもカヘルは前で戦う者たちの背後に極彩色の爆弾を炸裂させる。その爆風が味方の心を高揚させると知っているのだ。もちろん、こっそり30分タイマーを始動させるのも忘れない。彼の半身たるボクスドラゴンは呻き声を発したドラゴンへと果敢にタックルをぶちかましている。
「アタシ達は絶対に負けないわ。だってここまでドラゴンを追い詰めたんだから!」
 今はまだグランドロンのどこを責めたら攻略の大穴を穿つことが出来るのかわからない。その内部へ侵攻したい誘惑を無理やり振り払い、リリー・リーゼンフェルト(耀星爛舞・e11348)の攻撃はまだこの場に到達していない大柄のオークへと螺旋を描いて飛びその身体を凍結させる。
「わ、いつもよりも効いてる感じだよ」
「じゃ、わたしも思いっきり押しちゃうね」
 一体だけ突出し先行したドラゴンの後方から敵が迫り、ちさは手の中のスイッチを躊躇なく押した。その瞬間、戦場のあちこちから爆発が巻き起こる。ウイングキャット『エクレア』もスナイパーのポジションでキャットリングを使い、爆発でのたうつオークを撃つ。
 セレナ・アデュラリア(白銀の戦乙女・e01887)は名剣『星月夜』を掲げて言う。
「我が名はセレナ・アデュラリア! 騎士の名にかけて全力で戦いましょう!」
 高らかにそう宣言すると剣を振るう。
「奥義、銀閃月!」
 その閃光の残像は夜空に浮かぶ月かと思う頃にはもう敵の急所へと深く早く一撃は突き刺さっている。ドラゴンの硬い鱗の境目から抜き放たれた剣はドラゴンの血にまみれ、セレナが鋭く振るとその血が地面を濡らしてゆく。声もなくドラゴンは倒れた。生死は不明だがもう戦う力は残されていないようだ。
「ドラゴン相手だ。気合は入れるが倒されないことも大事だと思わないか? 俺は思うね」
 戦いの序盤に瀬戸口・灰(忘れじの・e04992)したのは全身の装甲からまぶしく輝くオウガの粒子を解放し、主に後方で戦う仲間たちの感覚を超感覚を目覚めさせることだった。それにより治癒だけではなく戦闘の感覚が鋭敏になる。ほぼ同時にウイングキャット『夜朱』の放つ清浄の翼が前衛へと治癒と耐性の力となる。
「リチウム・ナトリウム・銅・リン・カリウム、5色の炎が混じりて敵軍を焼き尽くす渦となるのじゃ……なお、これは魔法ではないのじゃ」
 ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)は理科の授業で実験に使う物質の名を挙げ、炎色反応を示す5つの金属を空に投げる。
「扱いの難しい物質もあるのじゃから、ケルベロスでない良い子たちは持ち出したりマネしたりしてはダメなのじゃ!」
 竜人のテレビウムを通じて視聴者に語るかのようにウィゼは戒めを言葉にしつつ、火炎放射器で炎を敵へと放出する。
「その注意事項は必須な行動なのだろうか? ウィゼ」
 どうにも喫緊の課題とは判断できなかったソロは硬い表情のまま真摯に尋ねる。一瞬、虚を突かれたかのようにぐっと言葉を呑んだウィゼだが次の瞬間大きくうなづく。
「当たり前じゃ。このように危険な行為、あたしのマネして怪我でもされたら色々困るではないか!」
「そうか」
「ソロ、こだわるんじゃねぇ! 今は戦いに集中しろ! てめぇもだぞ」
 語気荒く噛みつくように叫ぶ竜人の声がソロとウィゼの声を凌駕し、会話を強引に途切れさせる。動きの鈍かった敵の第2陣は足並みの統率こそ乱れていたが、こちらに向かって突進している。今も間近に迫ったドラゴンの炎のブレスと氷のブレスが前衛に位置するリリーと灰を襲い、セレナとソロも問答無用に巻き込まれて全力で防御の姿勢を取るしかない。さらに毒と雷のブレスとが4人を襲う。ドラゴンたちの隙間からは走り寄るオークたちの姿が見えるが速度は鈍い。
「どっちにしろこっちも時間はねぇんだから最速でやるしかねぇぞ!」
 グランドロンが熱海の大地に十分なグラビティ・チェインを注ぎ込むのに必要な時間はおよそ30分。阻止しなければ城ケ島がユグドラシルと化す。
「ちょうどいい。やられるために来てくれたんなら、おもてなし、しねぇとだよなぁ?」
 髑髏の仮面で竜人の表情は見えないが、全身から焦燥と戦意の高揚が沸き立つ様にあふれ出る。太い竜の尻尾を振るい、接近してきたばかりのドラゴンたちをまとめて遠慮なく薙ぎ払う。ブレスを吐いたばかりで態勢を取るのが遅れたドラゴンたちは面白いように倒されてゆく。テレビウムは閃光で迫るオークたちへ牽制を放つ。
「その通りだ。ダモクレスがいないのは残念だがドラゴンたちにも借りがある」
 冷静に竜人の攻撃で倒れたドラゴンたちを見据えたソロは最もダメージが大きそうな1体めがけて飛ぶ。肘から先をドリルの様に回転させ、威力をさらにさらに強く鋭くさせた一撃を放つ。全身が一振りの武器であるかのようなソロの身体ごと、攻撃がドラゴンに突き刺さる。硬い表皮が裂け、血潮がけぶり、引き抜かれたソロの腕とともに大量の血が噴出する。
「ぎゃああぁぁ!」
 ドラゴンの絶叫が響く。定命化に向かうとはいえ、頑強な存在であるはずのドラゴンの悲鳴は同族にもオークたちにも戦慄を抱かせる。一瞬の逡巡、それでも敵は引かない、逃げない。
「わしらも先を急ぐでなぁ。正直、おぬしらに関わっている暇がないんじゃよ」
 頑是ない幼子を諭すかのようにカヘルはいいつつ、先ほどと同じ爆発を今度は味方後衛の背後で炸裂させる。戦場とは思えないほどの鮮やかで色とりどりの爆煙があがる。
「そっちはよろしくなぁ」
 カヘルの相棒であるボクスドラゴンは属性インストールをオークへ向かってぶっ放す。
「応じ来られよ」
 リリーが詠唱を開始する。紅の瞳が見つめるのは遥かなる過去と未来、そして今。
「外なる螺旋と内なる神歌に導かれ、その威光を以て破壊と焦燥を与えん」
 歌い継がれた歌は秘伝によって強化され、活性されたグラビティチェインが荒れ狂う磁気嵐を解き放つ。絶叫を放って倒れたドラゴンの真横にいた炎を吐くドラゴンが磁気嵐に捕まり、身動きも取れない。
「私もこの戦いにきたからには誰が相手だろうと勝って帰りますの、ね、エクレア」
 輝く流星の煌めきと母なる地球の重力を宿した飛び蹴りを精彩を欠くドラゴンに決めたちさは反転して後方へと跳び、半身であるエクレアは鋭い猫の爪で同じドラゴンの鼻づらに傷をしるしてゆく。
「退かぬのならば倒します!」
 ゆるぎない決意を込めてセレナは愛剣を振るう。そこに込められた星座のオーラがブレスを放ったドラゴンたちへと襲い掛かる。また1体のドラゴンが耐え切れずに地響きを立てて倒れ込んだ。
「夜朱、そっちは頼む。俺は敵を……」
 夜朱の翼が送る浄化の風がブレスに侵された灰を含めた前衛の傷を癒し、当の灰はその身まとうオウガメタルを『鋼の鬼』と変えて拳を繰り出す。硬いドラゴンの鱗を粉砕し、拳が身体に突き通る。
「ぐっああああ」
 新たな悲鳴がドラゴンの喉から響き、新たな血潮が粉々になったアスファルトを染めてゆく。さらにウィゼがガジェットを『鋼鞭形態』に変形させ、縦横無尽に敵群を打ち据えてゆく。
「本当ならばこの力はグランドロンの外壁攻略に使うはずじゃったが、しようがない」
 はなはだ遺憾だ、という思いも込めてウィゼは思いっきり鞭を振るう。ドラゴンたちの背後に迫っていたオークは自慢の触手を振るう間もなくウィゼの鞭に翻弄される。
「これはかなわん!」
「いや、しかし退けぬぞ」
「女がいる。命令もだ」
 傷からだらだらと血を流しながらもオークの戦意も衰えない。
「不気味よのぉ」
 心底気持ち悪そうにウィゼが言う。

●騎士襲来
 ごく普通の戦闘ならばとっくに敵は撤退していただろう。それほど、今、定命化の過渡期にあるドラゴンたちは弱っていたし、ケルベロス達は強かった。しかし、追い詰められても敵は諦めない。屠られた仲間の屍を乗り越えケルベロス達に向かってくる。全滅覚悟でグランドロンを守るつもりなのだろう。
「ドラゴンどもよ。大事な温泉地を蹂躙した罪、万死に値するのじゃ」
 ウィゼはブラックスライムを捕食モードに変形し、グランドロンの外壁を背にしたオーク1体を丸呑みにする。
「いい加減に朽ち果てろぉ!」
 竜人は手にした竜鳴を振るい超重の攻撃を放つ。命が持つ全ての未来を奪うことで凍結させる無慈悲な一撃が弱ったドラゴンの命を絶つ。
「させません」
 どこからともなく聞こえた凛とした声と剣から放たれたオーラの光がわずかに竜人の攻撃を相殺する。倒れたドラゴンはまだ絶命していない。
「誰だぁ! 邪魔をしたのは?!」
 攻撃が飛んできた方向へと顔を挙げた竜人が、そしてケルベロス達が見たのは……第四王女の白百合騎士団だった。
「何故、来た。戻れ、グランドロンへ」
 瀕死のドラゴンは苦しく荒い息のまま言う。
「助けられたドラゴンに文句を言われるとは切ないな」
 油断なく新手であるエインヘリアルの女騎士たちを見つめ、灰は誰にいうともなくつぶやく。
「我、ら……は有効に使い棄てよ。ほどなく死ぬ身、なのだ」
「いいえ!」
 ドラゴンの言葉を騎士は強く遮った。
「これは定命化に苦しむドラゴンを救うための作戦です。ならば、私達は……レリ王女は、あなたを棄てたりはいたしません」
 白百合騎士団は壊滅寸前だったドラゴンとオークを守るようにケルベロス達との間に割って入ろうと隊列を変化させる。
「戦場を都合よく布陣させるほど甘くはない」
 ソロの動きのほうが粛々と凛々しいがバカ正直に移動してゆく騎士団よりも早い。もっとも手近で動きの鈍い、無防備な騎士の真横からソロが突進する。
「はっ」
「遅い」
 ギアブレード【天】は美しい軌跡を描いて騎士を斬る。呪詛をはらんだその攻撃は胴を薙ぎ、一撃で敵を真っ二つに切り裂いた。血がしぶき、上と下とに分かれた身体が一瞬遅れて地面に落ちる。
「何?」
 驚愕する騎士団、そしてドラゴン。その隙を見逃すほどケルベロス達は甘くない。カヘルの卓越した技量からなる一撃とボクスドラゴンが放った攻撃がかろうじて生き長らえていたドラゴンを屠る。
「援軍など来ても結果は変わらんじゃろう。ただ、ちぃとばかり時間が後になるだけじゃが、今のわしらはその時間が惜しいのじゃった!」
 カヘルは頭を抱えてジタバタする。タイマーを持つ彼には正確な時間がわかるだけに胸を焼く焦燥感から無縁とはなれない。
「しぶといドラゴンとオークだけでも面倒だったのに、白百合騎士団って……敵もこの作戦成功に必死って事?」
 リリーが放った氷結の螺旋は巧みに騎士達の横をすり抜け、確実に弱り切ったオークを倒す。
「ドラゴンと初めて意見が合ったけど、来てほしくなかったよ」
 魅力と魅惑だけで出来たようなちさのピンク色の瞳が怨ずる様に騎士たちを睨め付け、桜色の爪が彩る指先がスイッチを押す。その瞬間、騎士達は見えない地雷を踏み皆まとめて爆破に巻き込まれてゆく。
「ホワイトナイトにはさせないよ」
 エクレアもキャットリングで部隊長らしい騎士の腕へと跳びかかる。
「貴女方も王女の目の届かない場所で笑って死んでゆくつもりなのですか! あの者の様に」
 白百合騎士団の出現にセレナの心は強く震える。自らも騎士ゆえに騎士の戦いも生き様の理解できる。出来るからこそ死に急いで欲しくないと心の奥がさざ波の様に揺らめき続ける。
「王女の命に死すは騎士の本懐」
 騎士と騎士、剣と剣、一撃と一撃が交わり打ち合い、リィィンと澄み切った音が鳴る。そのセレナの背後からのしかかろうとするオークの頭部を灰の拳がめり込んだ。破壊された頭部が液体をまき散らしながら破裂し、ゆっくりと胴体が崩れ落ちる。
「そういうのを無理に止めはしないが、無粋な敵は俺が倒してしまって構わないよな」
 あえて軽く言う灰にセレナは小さくうなずくようなしぐさをする。その間にも夜朱の治癒がセレナの傷を浄化する。

 刻々と時間だけが過ぎてゆく。オークもドラゴンも、新手の騎士達とでさえも優位に戦い多くを倒した。だが、死をも恐れず捨て石となる覚悟で戦う彼らを突破するには戦力が足りない。
 無常にもタイマーが鳴り響く。ケルベロス達も生き残った敵も撤退し、熱海の攻防は幕を下ろした。

作者:神南深紅 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年5月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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