●大阪城
ユグドラシルの一部と化した大阪城は、攻性植物のゲートでもある。
この地に、リザレクト・ジェネシスの戦いで5つに砕かれたグランドロンが、エインヘリアルの第二王女・ハールの招聘に従って集結していた。
ダモクレスの進化を目論む科学者、ジュモー・エレクトリシアン。
マスタービーストの継承者を自称する乱戦忍軍、ソフィステギア。
寓話六塔の座を虎視眈々と狙う、第七の魔女・グレーテル。
そして、女性の地位向上に取り組む、エインヘリアルの第四王女・レリ。
ハールも含め、グランドロンの欠片の主である彼女達の間に、信頼も友愛も存在しない。
ただ、互いに利用し合う利害関係でもって、彼女たちは、攻性植物と第二王女ハールを主軸とする同盟を組むに至った。
彼女たちの次なる作戦は、定命化の危機に瀕するドラゴンを懐柔して勢力に加える事。
多くのデウスエクス勢力を糾合した、大作戦が、今、動き出そうとしていた。
●セリカからの依頼
「アイスエルフ救出戦は成功し、数百名のアイスエルフと、それよりも多数のアイスエルフのコギトエルゴスムを救出する事ができました。しかし、この作戦時に得られた情報から、第二王女ハールを含む複数の勢力が、グランドロンと共に大阪城に集結しようとしている事が判明しました。攻性植物、エインヘリアル、ダモクレス、螺旋忍軍、ドリームイーターの5勢力が大阪城に揃う事になり、これだけでも、非常に危険な状況であるのは間違いないでしょう。しかし、これだけではありません。攻性植物と第二王女ハールは、『限定的な始まりの萌芽』を引き起こし、ドラゴン勢力の拠点だる『城ヶ島』をユグドラシル化する事で、竜十字島のドラゴン勢力も、自勢力に引き込もうとしている事が予知により判明したのです。もし、ドラゴンまでが一つの勢力に糾合されれば、大変な事態に陥るので、出撃してきたグランドロンを撃退して、阻止しなければなりません」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
●グランドロンと戦場について
「グランドロンは全長200m~500m程度で、歪な形をしています。これは、本来一つのグランドロンが5つに砕かれた後、それぞれを補修して使用しているからです。グランドロンは市街地に着陸した後、全力でグラビティ・チェインを地中に送っている間は無防備になります。そのため、着陸前に護衛のデウスエクスが地上に降下し、着陸地点の敵を掃討した後、グランドロンが着陸するような流れになっています。着陸地点については、市街地である事はわかっていますが、それ以外の事は何も分かっていません。ただし、既に市民の避難が終わっているので、市街地は無人です。また無防備になったグランドロンの外壁に、攻撃を集中すれば、外壁を破壊して内部に侵入が可能になります。グランドロン内部には、コア部分に有力敵と護衛、宝物庫にコギトエルゴスムを守る守備隊などが残っていると思われます」
セリカが詳しい説明をしながら、ケルベロス達に資料を配っていく。
グランドロンの攻略は、決して楽なモノではない。
中途半端な気持ちで挑めば、返り討ちに遭うだけでなく敵勢力の拡大にも繋がる事だろう。
そうなれば、苦戦を強いられる事は間違いないため、何としてもここで手を打つ必要があった。
「攻性植物、エインヘリアル、ドラゴンの3種族が同盟を組むというのは、まさに悪夢……。大阪城のユグドラシルは攻性植物の本星の一部であるので、その影響範囲内で、定命化の影響が小さくなる……というのは、理屈的には理解できると思います。ハールの狙いは、攻性植物やドラゴンの力を借りて、エインヘリアルの王位を簒奪する事で間違いありません。……ですが、うまく戦えば、グランドロンの撃破や、更なる妖精八種族のコギトエルゴスムの奪取も可能であるので、大きなチャンスとも言いえるでしょう。5つのグランドロンのうち、2つまでは阻止できなくても良いと考えると、戦力の選択と集中が重要になるかもしれません。とにかく、グランドロンの撃破を目指し、頑張ってください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、グランドロンの撃破を依頼するのであった。
参加者 | |
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ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542) |
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716) |
半沢・寝猫(天声・e06672) |
ワーブ・シートン(とんでも田舎系灰色熊・e14774) |
エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455) |
有馬・ナオ(氷の巫女見習い・e79281) |
●浜松:ドリームイーター軍
「うう、とても緊張していましゅ。帰ったら日本の美味しいお菓子を食べまくりたいでしゅ」
有馬・ナオ(氷の巫女見習い・e79281)は緊張した様子で、今回の作戦に参加していた。
それも、そのはず。
ナオにとって、今回が初依頼。
そんな状況で気持ちを落ち着かせるのは、無理に等しい事。
だからと言って、ここでオロオロしていたのでは、仲間達の足を引っ張ってしまう。
それだけは何としても避けたいため、掌に『人』の字を書きまくって、飲みまくりであった。
「確かに……緊張しますね。と言うか、気分が……」
一方、半沢・寝猫(天声・e06672)は久しぶりの依頼で空酔いしつつ、青ざめた表情を浮かべていた。
まるで地面に気持ちだけ持っていかれるような感覚に襲われつつ、口元を押さえて、あっちにふらり、こっちにふらり。
ドリームイーター達との戦闘が始まるまでは何とかしたいところだが、そうもいかないのが現実のようである。
こんな事になるのであれば、酔い止めの薬でも飲んでおけば良かったのかも知れないが、いまさら何を考えたところで後の祭りであった。
「まあ、せっかく浜松来たんだから、鰻と餃子と銘店の特製ハンバーグ食べて帰りたいな。そのためにも皆、無事できちんとお仕事終わらせないとだね」
そんな中、エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)が潜入班に参加した義姉と兄に別れを告げ、グランドロンの着地地点を絞り込むため、望遠鏡を覗き込んでいた。
グランドロンがかなり巨大な事もあり、着陸地点を絞り込むのは、それほど難しい事ではなかった。
むしろ、問題は、その先……。
グランドロンが着陸した後、いかに迅速な行動をするかが、重要であった。
「ええ……、面倒な事になる前に終わらせましょう」
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)が物陰に隠れ、警戒した様子で辺りの様子を窺った。
浜松のドリームイーター軍は、寓話六塔戦争の残党軍で構成されており、グランドロンが着陸したのと同時に、その周辺にいる敵を掃討する事になっている。
そのため、ドリームイーター達の注意を引くのであれば、グランドロンが着陸したタイミングを見計らって、行動を起こす必要があった。
(「……みんな、無事かな」)
その間もピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)は隠密気流を使いつつ、別の班で行動をしている仲間達に想いを馳せた。
仲間達が何処にいるのか分からないが、同じような気持ちでいるはず。
そんな仲間達のためにも、ここで失敗する訳には行かない。
自分達が、より多くのドリームイーターを引きつけ、仲間達が潜入する機会を作らなければいけないのだから……。
「……大丈夫! おいらの右腕でひとひねりですよぅ」
そんな空気を察したワーブ・シートン(とんでも田舎系灰色熊・e14774)が、自分の胸をドンと叩く。
幾ら相手がドリームイーターとは言え、精鋭部隊ではなく、残党を相手にする事になるのだから、それほど苦戦をする事もないだろう。
むしろ、油断さえしなければ、必ず倒す事が出来る相手であった。
「……!」
次の瞬間、グランドロンが轟音を響かせ、市街地にドシンと着陸した。
それと同時に大量の土煙が舞い上がり、沢山のドリームイーターが地上に放たれた。
(「そろそろ……かな」)
そのタイミングでピジョンが勢いよく法螺貝を吹き鳴らし、この場所に自分達がいる事をドリームイーター達にアピールした。
「な、なんだ、何があった!」
途端にドリームイーター達が騒ぎ始め、警戒した様子で辺りをソワソワと見回した。
「こんにちは、ケルベロスでーす。悪い子にお仕置きしにきたよ~」
それに合わせて、エヴァリーナが派手に花火を打ち上げ、ドリームイーターの注意を自分達に向けるのであった。
●寓話六塔戦争の残党軍
「まさか、こんなところまでケルベロス達が来ていたとは……」
赤い頭巾を被ったドリームイーターが、警戒した様子で鍵状の武器を握り締めた。
彼らにとってケルベロスが襲撃を仕掛けてくるのは、想定の範囲内。
それ故に、ある程度は警戒をしていたようだが、その予想を上回るほど近くまで接近されていたため、殺気が爆発的に膨らみ、まるで刃物の如く鋭くなっていた。
そして、その視線の先にいたのは、酒瓶片手にフラつく酔っ払い。
いや、寝猫であった。
実際には、酒酔いではなく、空酔いだったりするのだが、リバースしそうな状況的には、どちらも同じ。
しかも、遠目からでも分かるほど、顔面ブルー。
それに気づいたドリームイーター達が、モーセの海割りの如く勢いで、次々と道を開けていった。
だが、赤い頭巾を被ったドリームイーターだけは違っていた。
まったく警戒を解く事なく、寝猫をジロリと睨みつけていた。
それは寝猫がケルベロスである事を理解していたため……。
「何をしているッ! こいつはケルベロスだ! 殺せ! 殺してしまえ!」
モザイク状の頭をしたドリームイーターが、寝猫めがけて鍵状の武器を振り下ろした。
しかし、その攻撃は寸前のところで避けられ、鍵状の武器がアスファルトの地面にめり込んだ。
「主婦の力を舐めたらあかんで」
その途端、寝猫がキリリとした表情を浮かべ、持っていた酒瓶にグラビティの力を込めて、モザイク状の頭をしたドリームイーターに叩きつけた。
「グギャアアアアアアアアアアア!」
これにはモザイク状の頭をしたドリームイーターも驚き、悲鳴を上げながら激しくグラリとヨロめいた。
「ヒャッハー! 頭がトマトだ!」
背中にモザイクを生やしたドリームイーターが、上機嫌な様子で能天気に笑う。
モザイク状の頭をしたドリームイーターは、歪んだおでこを押さえて、悔しそうに歯軋り。
だが、言葉を紡ぐ余裕は……ない!
「思ったよりも集まったようだね」
そんな中、エヴァリーナが物影から現れ、ドリームイーター達に視線を送る。
見た感じ、厄介なのは、6体程度。
それ以外は雑魚もしくは、そこそこ強いレベルの敵。
だからと言って、油断をして戦えば、数で押されて苦戦を強いられそうな感じであった。
「まぁ、ほとんど雑魚のようだけどねぇ」
ワーブが皮肉混じりに呟きながら、右手と鋭い爪に力とグラビティを一点集中させ、傍にいたドリームイーターの身体を貫いた。
「うが……がはっ!」
その一撃を食らったドリームイーターは、驚いた様子で目をパチクリさせ、血反吐を吐いて崩れ落ちた。
「雑魚とは聞き捨てならねぇな!」
片目がモザイク化したドリームイーターが、指の関節を鳴らしながらワーブを睨む。
「だったら、俺はコイツを戴くとするか!」
クマのように巨大なドリームイーターもモザイク化した腹を撫で、ナオを見つめて舌舐めずり。
「近寄るなでしゅ!」
すぐさま、ナオが轟竜砲を撃ち込み、クマのように巨大なドリームイーターを攻撃ッ!
「かゆい、かゆい!」
しかし、クマのように巨大なドリームイーターは……無傷。
まるで蚊に刺されたかの如く、モザイク化した腹を撫でた。
「それなら、ほら……敵さん、こっちだ!」
ピジョンがドリームイーターを挑発するようにして、小馬鹿にした態度を取った。
「ならば、望み通り……殺してやろう!」
腹がモザイク化したクマのように大きなドリームイーターが、ケモノの如く吠えてピジョン達に突っ込んでいった。
そこに躊躇いはなく、ピジョンを弾き飛ばし、ブロック塀に叩きつける勢いで突っ込んできた。
「そんな事を言っていられるのも、今のうちだけだよ」
その間に、かぐらが死角に回り込み、雷の霊力を帯びた武器で、神速の突きを繰り出した。
「だったら、アタシが相手にしてあげるわ!」
次の瞬間、両胸にモザイクが掛かったドリームイーターが高笑いを響かせ、鍵状の武器でかぐらの攻撃を弾く。
「それじゃ、俺も遊んでもらおうかねぇ」
そう言って片目がモザイク化したドリームイーターが、不気味な笑みを浮かべるのであった。
●命懸けの戦い
「フォートレスキャノン これ、使うの久しぶりね……」
かぐらが間合いを取りつつ、両胸にモザイクが掛かったドリームイーターにグランドランにフォートレスキャノンを撃ち込んだ。
「ちょっ、ちょっと待ちなさい! そんな攻撃、避けられる訳が……いやああああああああああああああああああ!」
それと同時に、両胸にモザイクが掛かったドリームイーターの身体に風穴が開き、どす黒い血溜まりの中に沈んでいった。
「さあ縫い止めろ、銀の針よ」
続いて、ピジョンが銀色にキラキラと光る針と糸を魔法で生み出し、背中にモザイクを生やしたドリームイーターを足止めした。
それに合わせて、テレビウムのマギーが勢いよく飛び上がり、背中にモザイクを生やしたドリームイーターの頭をかち割った。
続いて、寝猫が阿頼耶識を具現化した曼荼羅型の後光から光線を放ち、襲い掛かってきたドリームイーターを消滅させた。
「さすが……吠えるだけはあるな。だが、これで終わり。お遊びはここまでだ!」
次の瞬間、片目がモザイク化したドリームイーターが間合いを詰め、ワーブに殴りかかってきた。
「正面から攻撃を仕掛けてくるなんて、よほど自信があるって事だよねぇ。でも、それが……命取りだよぉ……」
それを迎え撃つようにしてワーブが、真正面から獣撃拳を叩き込み、片目がモザイク化したドリームイーターの身体を貫いた。
「う、嘘だろ……」
片目がモザイクと化したドリームイーターが信じられない様子でワーブを見つめ、ガックリと崩れ落ちた。
「……ウチらを甘く見過ぎたようやな」
その間に、寝猫が星座の重力を剣に宿し、あらゆる守護を無効化する重い斬撃を放って、モザイク状の頭をしたドリームイーターを一刀両断!
「成功したかな……?」
そんな中、ピジョンが爆音に気づき、グランドロンが着陸した方向を見つめた。
グランドロンは再び浮上を開始しており、動揺したドリームイーター達が撤退を始めていた。
「……どうやら、そのようでしゅね」
ナオがクマのように巨大なドリームイーターの攻撃を避け、ホッとした様子で溜息をもらす。
「テメェ、何を……ま、まさか!」
クマのように巨大なドリームイーターも、そこで事態の深刻さに気付く。
「……此処は退くぞ」
赤い頭巾を被ったドリームイーターも、身の危険を感じて、仲間達に撤退を促した。
「お、覚えていろよ!」
クマのように巨大なドリームイーターが捨て台詞を残し、他のドリームイーター達と一緒に逃げていく。
「それじゃ、最後にもう一発……派手に行くよ!」
そう言ってエヴァリーナが他の班にドリームイーターが撤退した事を伝えるため、もう一度打ち上げ花火を上げるのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年5月2日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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