グランドロン迎撃戦~我欲渦巻く五方面作戦

作者:質種剰

●集まったグランドロン
 大阪城。
 今や攻性植物のゲートでもあり、ユグドラシルの一部と化したこの地に、リザレクト・ジェネシスの戦いで5つに砕かれた筈のグランドロンが、集結していた。
 エインヘリアルの第二王女・ハールの招聘である。
 それに応じたのが、ダモクレスの進化を目論む科学者、ジュモー・エレクトリシアン。
 マスタービーストの継承者を自称する螺旋忍軍、ソフィステギア。
 寓話六塔の座を虎視眈々と狙っている、第七の魔女・グレーテル。
 そして、女性の地位向上に取り組む、エインヘリアルの第四王女・レリ。
 彼女らを呼び出したハールも含めて、グランドロンの欠片の主達の間に、信頼や友愛などは微塵も存在しない。
 ただ、互いに利用し合うだけの利害関係でもって、彼女たちは、攻性植物と第二王女ハールを主軸とする同盟を組むに至った。
 彼女達の次なる作戦は、定命化の危機に瀕するドラゴンを懐柔してその勢力に加える事。
 多くのデウスエクス勢力を糾合した大作戦が、今まさに動き出そうとしていた。


「皆さん、アイスエルフ救出戦、ほんとにお疲れ様でした」
 小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が、ケルベロス達を労ってから説明を始める。
「作戦は無事に成功し、数百名のアイスエルフと、さらに多くのアイスエルフのコギトエルゴスムを救出できたであります」
 しかし、この作戦時に得られた情報から、第二王女ハールを含む複数の勢力がグランドロンと共に大阪城へ集結せんとしている事も判明した。
「攻性植物、エインヘリアル、ダモクレス、螺旋忍軍、ドリームイーターの5勢力が大阪城に揃う事となり、これだけでも非常に危険な状況であるのは間違いないであります……」
 それだけではない。
「攻性植物と第二王女ハールは『限定的な始まりの萌芽』を引き起こし、ドラゴン勢力の拠点だる『城ヶ島』をユグドラシル化する事で、竜十字島のドラゴン勢力をも自勢力へ引き込もうとしているのであります」
 もしも、ドラゴンまでが一つの勢力へ糾合されれば大変な事態に陥るため、出撃してきたグランドロンを必ずや撃退して、城ヶ島のユグドラシル化を阻止しなければならない。
「定命化の危機に瀕している筈のドラゴン達が、他勢力の影響によって定命化を克服されてしまっては、目も当てられないでありますから……」
 かけらはそう補足した。
「敵の作戦は、大阪城から城ヶ島までの根の通り道へ莫大なグラビティ・チェインを注ぎ込み、そのエネルギーでユグドラシルの根を成長させ、導かなければならないようであります」
 第二王女は『5つに分かれたグランドロン』を利用して、この莫大なグラビティ・チェインを注ぎ込む事を計画している。
「グランドロンを確保した5勢力は、それぞれ、特定の地点へグランドロンを出撃させて、グラビティ・チェインを地中に注ぎ込むであります」
 充分なグラビティ・チェインを注ぎ込むには、30分以上その場に留まって作業を行う必要があるらしい。
「奈良にはメリュジーヌを従える第二王女軍が、伊勢へはグランドロンを従えたダモクレス軍、浜松へはティターニア達を引き連れたドリームイーター軍、静岡はセントールらを連れた螺旋忍軍……そして、熱海へ第四王女軍とドラゴン達の連合軍が向かうようでありますね」
 5箇所のグランドロンのうち、3か所以上で作戦が成功すれば、城ヶ島のユグドラシル化は成立してしまうという。
「そこで、皆さんには奈良、伊勢、浜松、静岡、熱海の5箇所に現れるグランドロンの3つ以上を、撃破・撤退させていただきたいのであります」
 作戦を成功させるだけならば、作戦開始後30分以内に撤退させれば充分だが、グランドロンの宝物庫へ忍び込んで妖精八種族のコギトエルゴスムを救出する事ができれば、新たな種族を仲間にできるかもしれない。
「さらに、その地のグランドロンを制圧、撃破できれば、妖精八種族を救出した上に、有力敵を撃破する事も夢ではないかもしれませんね」
 そこまで説明を終えると、かけらは皆を彼女なりに激励すべく、持論を語る。
「大阪城のユグドラシルは攻性植物の本星の一部でありますから、その影響範囲内なら定命化の影響が小さくなる……理屈として理解できますが、それだけに攻性植物、エインヘリアル、ドラゴンの3種族が同盟を組むというのは、まさに悪夢でありましょう」
 だが、上手く戦えば、グランドロンの撃破やさらなる妖精八種族のコギトエルゴスムの奪取も可能なため、大きなチャンスともいえる。
「5つのグランドロンのうち、2つまでは阻止できなくても良いと考えるなら、戦力の選択と集中が重要になるかもしれないでありますね」


参加者
不知火・梓(酔虎・e00528)
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)
円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)
死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)

■リプレイ


 奈良県の市街地。
 ケルベロス達3班計20人は、メリュジーヌを従える第二王女ハール軍が動かすグランドロンを迎撃すべく、同地を訪れていた。
 まずは、上空に留まっているグランドロンから続々と降下してきた護衛のデウスエクス達を殲滅しなければならない。
 『フェーミナ騎士団』のエインヘリアルと竹の攻性植物、メリュジーヌの群れだが、それぞれ前衛中衛後衛バランスの良い編成のようだ。
「露払い部隊の掃討……もし宝物庫のコギトエルゴスムを回収するなら、ここで挫けるわけにはいきませんね……」
 覚悟を決めて敵陣へ突っ込んでいくのは、イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)。
 流れるような銀髪に咲いた桜の花が温かみを添える、清らかな雰囲気のオラトリオの女性だ。
「銀天剣、イリス・フルーリア―――参ります!」
 イリスはバッと突き出した華奢な手のひらから、『ドラゴンの幻影』を放つ。
「灼き尽くせ、龍の焔!」
 牙を剥いて荒れ狂う炎がバンブージェネラルを一飲みにし、焼き捨てる勢いで燃え盛った。
「見せて貰おうじゃありませんか……第2王女の性能とやらを」
 次いで、死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)が、どこぞの政治家の御曹司のようなセリフを吐きつつ臨戦態勢に入る。
 長い黒髪と虚ろな紅い瞳がアンニュイな空気を漂わせる、どこにでもいそうなごく普通の女の子、もといブラックウィザード。
「闇の力……」
 刃蓙理は早速、地の底に溜まった呪いの泥と何者にもなれず燃え尽きた灰から禍々しい渦を創り出す。
 暗黒面に満ち満ちた見た目に反して、渦は後衛陣の操る攻撃グラビティの効き目を強化してくれた。
「これだけの部隊を用意して……ただで帰れるなんて、思わないことだよ」
 シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)は、護衛部隊の数の多さへも怯む事なく、闘志を奮い立たせている。
 蒼いロングヘアと大きな瞳が明るく元気な印象を与える、シャドウエルフの鹵獲術士。
 やはり、左手薬指に嵌めた約束の指輪——大切な恋人とかわしたプロミスリングが、シルの精神的な支柱となっているのだろう。
(「大丈夫、これがあるからわたしは戦えるっ!」)
 気合いの入った面持ちで地面を蹴りつけ、高々と跳躍するシル。
「お代は……要塞で支払ってもらうからっ!」
 白銀戦靴『シルフィード・シューズ』を履いた爪先で棚引く光の尾と重力宿りし飛び蹴りを炸裂させ、フェーミナ騎士団員の機動力を奪った。
 一方。
「もうすぐ多くの奴が楽しみにしてる連休だっつーのに、相変わらず傍迷惑な奴らだなぁ」
 不知火・梓(酔虎・e00528)は、流石普通のおっさんらしく、生活感の溢れるセリフで今の非常事態を嘆いてみせた。
 いつも依頼の時は煙草代わりの長楊枝を銜えている、出っ張ってきたお腹や加齢臭が自分でも気になるおっさん刀剣士だ。
 梓は早々に長楊枝を吐き捨てて戦闘へ意識を切り替えるや、長期戦を見越して自軍の強化を優先。
「こんな奴らの好きにさせる訳にゃぁいかねぇ。きっちりと目論見を潰して、お引き取り願うかね」
 小型治療無人機の群れを指揮して、前衛陣の守りを固めさせた。
 さて。
 ——ドサァッ!
 相変わらずヘリオンから蹴落とされる形で降下してきたのは、日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)。
 自分の好みか小檻へ気を遣ったマンネリ打開策かは知らないが、この日はおっぱいダイブでなく背後から忍び寄って胸を揉みしだいた模様。
「……妙に攻性植物寄りの作戦な気がするけど、ハールかその関係者は攻性植物に洗脳か侵略寄生でもされているんじゃないだろうな……?」
「何やってるんだが……」
 本人は何事もなかったかのように立ち上がるや、至って真面目な顔で第2王女軍の内情を推察するも、何が起きたか察したシルに白い目で見られていた。
「出来れば降下を諦めてお帰り願いたいんだけどな……」
 ともあれ、蒼眞は一番距離が近い降下部隊の先鋒メリュジーヌへ向かって、斬霊刀を手に斬りかかる。
 幻惑を齎す桜吹雪を撒き散らしながら、メリュジーヌの群れ全員へ一刀で鋭い痛みを与えた。
「すぐにあの世へ送ってやろう!」
 フェーミナ騎士団のエインヘリアルは長い槍を高速で回転させ、ケルベロスの前衛陣を薙ぎ払うかの如く斬りつけてくる。
「…………」
 その背後からは、バンブーガンソルジャーが散弾銃を乱射してきた。
「おっと」
 回転斬撃の痛みに耐えながら、梓は背中でイリスを庇い、進んで制圧射撃の的になっていた。
 他方。
「……あわよくばでもドラゴン勢力と同盟を結びたいのが本心なら、レリと白百合騎士団を、オークが居るドラゴン勢力の部隊と同じ熱海に配置するのは変よね……」
 円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)は、レリの男性アイスエルフに対する酷い仕打ちを思い返してか、ハールの行動へ疑いの眼差しを向けていた。
「共闘どころか、下手をするとオーク共に攻撃をし始めるわよ、レリたちは。そうなればどのみち同盟は無に帰すのに。……ドラゴンとの同盟は最初から失敗前提で、別の目論見がハールにはある……?」
 レリの女尊男卑にも等しい男に対する嫌悪感を考えての想像だろうが、そんな個人の主義主張から仲間割れをすると半ば本気で信じていそうなキアリ。
 しかし、実際はレリ王女も配下の白百合騎士団も、ハールからの勅命——定命化に苦しむドラゴンを救う為という表向きの建前——を、本当に信じきって愚直に戦っていたようだ。
 なればこそ、結果的にドラゴン勢力の信頼を得る事にも繋がり、ハールの采配は失敗前提どころか見事な成功例と言えるだろう。
「……いくわ。覚悟して」
 今回は『スナイパー』として火力の底上げを自ら担ったキアリが、螺旋手裏剣を投げつける。
 手裏剣は螺旋の軌跡を描いてメリュジーヌへ突き刺さり、蠱惑的な薄衣をその螺旋力で破壊した。
 オルトロスのアロンも主の意志に忠実にパイロキネシスで攻撃、バンブーランスソルジャーの体力を削っている。
「手を広げ過ぎと言うか、手段を選ばないというか、お互いの思惑入り乱れ過ぎやないですか」
 ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)はいつもの笑顔に見える表情で、静かに的を射た呟きを洩らす。
 彼女としてはグランドロン側の多数の勢力について言ったつもりかもしれないが、手を広げ過ぎという指摘は、結局5箇所全部へ戦力を分散してしまったケルベロス達にも当て嵌まる。
「さて、出来る限りのことをしましょうか」
 意識へ忍び寄る暗雲を振り払いつつ、ルドラの子供達を構えるラーナ。
 魔術切開とショック打撃を交えた強引な緊急手術を行って、梓の負った怪我をしっかりと治療した。
(「鹿可愛かったし、それに避難してる人達も早く帰りたいだろうから……」)
 以前プライベートな旅行で訪れたという奈良の風物を思い返すと共に、彼の地に暮らす人々を慮っているのは、マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)。
 ちなみにシャーマンズゴーストのアロアロは、臆病な性格故か大きな作戦を前に緊張してガタガタ震えていた。
「他の地域にも大切な人達が向かってる、ワタシも頑張らないと」
 そう自らを奮い立たせると、マヒナはフェアリーブーツを履いた足を大きく後ろへ振り上げる。
 勢いのついた足先から理力の籠った星型のオーラが蹴り飛ばされ、フェーミナ騎士団員に命中、胸部装甲を突き破ってダメージを与えた。
 アロアロは物言わずとも真摯な祈りを捧げて、梓の体力を回復させた。


 第2王女軍のフェーミナ騎士団エインヘリアル、彼女らに従う攻性植物とメリュジーヌ部隊……複数のデウスエクスが入り乱れて戦う中、ケルベロスら3チームは、緒戦こそ有利に立ち回っているように見えた。
 だが、『護衛のデウスエクスが着陸地点の敵を掃討しない限りグランドロンは着陸しないい』為、護衛部隊はグランドロンの直接的な警備に煩わされる事なく、戦力を集中してケルベロスを潰しに来られる強みがある。
 そのせいか、フェーミナ騎士団やメリュジーヌは互いの意思疎通もスムーズで、攻撃対象を統一しているように見えた。
「鋭ッ!」
 フェーミナ騎士団員は、2本の槍から無数の突きを繰り出し、キアリを庇った梓へ決して浅くない怪我を負わせている。
「蹴り貫きますっ!」
 イリスは敵陣目掛けて果敢に飛び掛かり、星駆ける白銀を履いた足を勢い良く突き出す。
 流星の煌めき眩い跳び蹴りが重く炸裂し、の平衡感覚を打ち砕いた。
「はじめまして。……あなたの目的は?」
 と、メリュジーヌへ問いかけるのは刃蓙理。
「はじめまして。同じ妖精八種族なのに面白い事を訊くのね」
 メリュジーヌは妖艶な微笑を浮かべるも、教える義理は無いとばかりに毒のオーラ溢れる蛇の尾で、バシバシとひっぱたいてきた。
 刃蓙理は頬が腫れ上がっても気にも留めず、邪聖魂ネクロマンサーを掲げて反撃。
 熱を持たぬ『水晶の炎』を噴射して、メリュジーヌの褐色の肌を容赦なく斬り刻んだ。
「はぅ、もしかしなくても多勢に無勢ってやつかな……?」
 段々と自分達の置かれた状況を把握し始めたシルだが、怯む事なく黄龍の心魂に覆われた拳で殴りかかる。
 音速を超える拳は正確にバンブージェネラルを捉え、強い衝撃波を浴びせて吹っ飛ばした。
「斬り結ぶ 太刀の下こそ 地獄なれ 踏み込みゆかば 後は極楽、ってな」
 Gelegenheitの刀身に空の霊力を纏わせて、フェーミナ騎士団員へ斬りかかるのは梓。
 フォーチュンスターを喰らった際の傷を正確に斬り広げ、より一層悪化させた。
(「メリュジーヌ達にハールに従う理由があるのなら尚更、ハールが来ているこの状況で、簡単に降伏したり戦闘を放棄したりするとは思えないな……」)
 蒼眞は斬霊刀を閃かせて、卓越した技量に至った剣戟を繰り出す合間にも、頭を冷静に働かせていた。
 彼の推測は尤もである。今回、8人は『メリュジーヌへ出来るだけトドメを刺さずに降伏勧告をする』という作戦を掲げていたが、例えメリュジーヌ1体を瀕死に追い込んだところで、他の同族やフェーミナ騎士団、竹の攻性植物が健在な状況下なのに降伏させられるとは到底思えない。
 降伏勧告と同時にメリュジーヌの命の保証ぐらいしないと、裏切った瞬間に背後から撃たれかねない状況なのである——その点において、白百合騎士団を全滅させた上で説得に挑んだアイスエルフ戦とは根本的に違う。
 そしてデウスエクスであるメリュジーヌは当然その可能性に気づいているから、どうせ味方に撃たれるならと最初から命を賭してケルベロスらへ一矢報いるべく、攻撃をやめないのだった。
 即ち、キアリの言う『現実的な生命の危機』を意識した結果、戦場に立っているメリュジーヌ達は皆、ハール軍として戦い続ける事を当然ながら選んだのだ。
「今降伏したら命だけは助けてあげるわ」
 故に、キアリが追い詰めたメリュジーヌへ語りかけるも、悉くスルーされて、
「なら仕方ないわね……」
 ドラゴニックハンマーから竜砲弾をぶっ放して引導を渡すしかなかった。
「これだけ回復に専念するのも久しぶりですね……」
 ラーナはルドラの子供達を振りかざして、杖の先端から生んだ雷で壁を構築。
 前衛陣の異常耐性を高めると共に、彼らの怪我を治癒した。
「頭上注意、だよ?」
 ヤシの木の幻影を作り出し、バンブーガンソルジャーの頭上へココナッツを落下させるのはマヒナ。
 ゴツゴツッ!!
 景気良く一度に複数落っことして、見た目のみならず相当痛そうな音を立てたが、残念ながらトドメを刺すまでには至らない。
 アロアロは変わらず祈りを繰り返して、味方の回復に努めていた。


 ただでさえ総数の少ない3チームが、掃討部隊を殲滅してグランドロンに居るハールへ撤退の判断をさせるという目標は相当困難であると、ケルベロス達自身も思い始めていた。
「……敗北の涙酒、か……」
 バンブージェネラルによる青臭い拳や蹴りの乱打を喰らって、ずっと率先して仲間を守っていた梓がとうとう地面へ倒れ伏し、意識を手放した。
「踊りなさい、わたしたちの掌の上で」
「うんぬ」
 刃蓙理も、メリュジーヌの群れに魔力を帯びた瞳で睨みつけられて、怒りを煽られるより早く体力の限界を迎え、膝から崩れ落ちた。
(「2箇所は失敗してもいい? ううん、絶対に成功させる……そう思わなきゃ成功なんてできない!」)
 ディフェンダーであるアロアロが仲間の盾となって倒れた後も、マヒナは必死に自分へ言い聞かせて、攻撃を続けていた。
 だが、3班とも戦線が確実に崩壊した今、彼女もフェーミナ騎士団員が降らせた槍の雨に脇腹を貫かれ、地面へ沈むしかない。
「とっとと死になさい!」
 そして、蛇の尻尾を振り回すメリュジーヌ達にバシバシと容赦なくシバかれたキアリが、度重なるヒールや自身のシャウトの甲斐もなく、4人目の戦闘不能者となってしまった。
「ごめんなさい、わたしのせいかも……」
「キアリさん!」
 仲間を助け起こそうとして、シルは気づいた。グランドロンから新たなフェーミナ騎士団員達が降下してくる。
 それは、ハールがグランドロン内に戦力を温存させる必要は無いと判断したという事……。
 ケルベロス達がグランドロンへ乗り込んでくる可能性は無く、今の護衛部隊へ援軍を出せば殲滅する事も容易い筈だと。
「……仕方ありません。撤退しましょう」
 ラーナが決断するのへ、梓を担いだ蒼眞と刃蓙理を抱えたイリスが苦い顔で頷く。
 シルもマヒナを抱え、悔しそうな面持ちでグランドロンに背を向けた。

作者:質種剰 重傷:不知火・梓(酔虎・e00528) 円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年5月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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