グランドロン迎撃戦~大同盟の阻止に向かえ

作者:寅杜柳

●大阪城にて
 ユグドラシルの一部と化した大阪城は攻性植物の本拠である。
 この地に、5つのグランドロンが集結していた。元在った形から砕かれたそれを招聘したのはエインヘリアルの第二王女・ハール。
 この地にいるのは彼女だけではない。
 ダモクレスの科学者、ジュモー・エレクトリシアン。マスタービーストの継承者を自称する螺旋忍軍、ソフィステギア。ドリームイーター、第七の魔女・グレーテル。そして女性の地位向上を目指すエインヘリアル、第四王女・レリ。
 種族も立場も異なる彼女達に共通するのはそれぞれがグランドロンの欠片の主であること。
 その間には信頼も友愛も存在しない。ただ、互いに利用し合う利害関係により攻性植物と第二王女ハールを主軸とする同盟を組むに至ったのだ。
 そして同盟を組んだ彼女達の次なる作戦は、定命化の危機に瀕するドラゴンを勢力に加える事。それが成ればかつてない強大な勢力が誕生する事になる。
 多くのデウスエクス勢力を糾合した大作戦が、今まさに動き出そうとしていた。
「アイスエルフ救出戦は成功し、多数のアイスエルフとコギトエルゴスムを救出する事ができた。ケルベロスに覚醒するアイスエルフも現れているようで、頼もしいな」
 しかしその内容と変わって説明する雨河・知香(白熊ヘリオライダー・en0259)の表情には僅かに憂いがある。
「しかし救出作戦で第二王女ハールを含む複数の勢力が、グランドロンと共に大阪城に集結しようとしている事が判明したんだ。エインヘリアル、攻性植物、ダモクレス、螺旋忍軍、ドリームイーター……これだけの勢力が集まっているだけでも非常に危険な状況なのは間違いない」
 そして、それだけじゃないんだと知香は続ける。
「予知で得られた情報なんだが、攻性植物と第二王女ハールは、『限定的な始まりの萌芽』を引き起こし、ドラゴン勢力の拠点『城ヶ島』をユグドラシル化する事で、ドラゴン勢力まで自勢力に引き込もうとしている事が判明したんだ。ただでさえ危険なのにドラゴンまで合流したら大変な事態に陥ってしまう」
 だからそれを阻止する為に、城ヶ島のユグドラシル化の為の作戦を阻止してきてほしいんだ、そう知香は告げた。
「今回の相手の作戦は大阪城の地中から城ヶ島までをユグドラシルの根を通して繋ぎ、城ヶ島をユグドラシル化するというものだ。その為に根の通り道に莫大なグラビティ・チェインを注ぎ込んで、そのエネルギーでユグドラシルの根を成長させなければならない。第二王女はその手段として『5つに分かれたグランドロン』を利用しようとしている」
 資料を広げた知香は予知で得られた情報をケルベロス達に説明し始める。
「場所は奈良、伊勢、浜松、静岡、熱海の五地点、この地点に5つのグランドロンが其々向かいグラビティ・チェインを地中に注ぎ込むようだ。十分注ぎ込むには30分以上その場に留まって作業する必要があるようで、そこが狙い目になる。各地点の市街地に到着したグランドロンは着陸した後、グラビティ・チェインを注ぎ込む為無防備になる。だからその前に護衛が地上に降下し敵を掃討して作業完了まで周辺の警備にあたるようだ。一応各地全域の市民の避難は終わっているからそこは安心して大丈夫だ。警備をどうにかして外壁に攻撃を集中させれば内部に侵入する事が出来る。内部にはコア部分には有力なデウスエクスとその護衛が、それから妖精八種族のコギトエルゴスムが保管されたままの宝物庫には守備隊がいる」
 具体的にどこまで狙うかは任せるよ、と知香は顔を上げ、ケルベロス達を見回す。
「5つのグランドロンのうち、2つまでは阻止できなくても良いとも考えられる。敵も強敵揃いだし、戦力の選択と集中が重要になるかもしれないね」
 みんなならできると信じてる、と知香は締め括り、ケルベロス達を送り出した。


参加者
八蘇上・瀬理(家族の為に猛る虎・e00484)
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)
ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)
火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)
那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)
帰天・翔(地球人のワイルドブリンガー・e45004)
トリューム・ウンニル(碧き天災の運び手・e61351)

■リプレイ

●空より降り
 グランドロンが下りてきた事を確認した八人のケルベロス達は、周囲を警戒しつつ走っていた。
「敵も危うい橋を渡ってくるね」
 脆い同盟なんて簡単に崩れるのにさ、とオーロラピンクの髪を揺らすシャドウエルフの少女、那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383) は小声で呟く。
「この大勢力にドラゴンが加わったら、大変な事になっちゃう」
 でも、と火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)は考える。
(「ハール王女は本当に、王位継承権のために此処までしているのかな?」)
 まるでエインヘリアルとも攻性植物とも違う勢力を築こうとしている風に彼女には見えるのだ。単純に全てはケルベロスを倒して戦果を挙げてから、という事なのかもしれないと考える彼女。
「終末機巧大戦ん時みたいにならないように頑張んないとねー」
 茜色のマントを羽織った蒼髪のヴァルキュリアの少女はトリューム・ウンニル(碧き天災の運び手・e61351)。その肩に乗った黒骨のドラゴン、ギョルソーも喉元に赤炎を覗かせながら周囲を見渡している。
「早くボク達も行こう」
 今回相手をするのは特に立場が危うい螺旋忍軍。だからこそ、ここで追い詰める。そう決意していた摩琴は仲間達を促す。
「とにかく阻止するんだよ! めっなんだよ!」
 陰謀とか其方に巡らせる考えを一旦打ち切り、気合を入れたひなみくはお菓子箱のようにカラフルなミミックを傍らに速度を上げる。
「精一杯やろうぜ!」
 それに同意する筋骨隆々の青年は相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)。ボクサーの如く軽装で裸足だが特に問題ないようだ。
「ええ、行きましょう」
 静かに同意したのは帰天・翔(地球人のワイルドブリンガー・e45004)。混沌で補った目には特に周囲に異常は映っていない。
「そしたらまー、せいぜい大暴れしよか!」
 白虎の尾を揺らし、八蘇上・瀬理(家族の為に猛る虎・e00484)が拳を打ち合わせ快活に言う。
 その一方で、ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)は黙々と周囲に注意を払いながら走っていた。
「……それにしても姿がありませんね」
 伏兵、そしてトラップを警戒しつつ進むピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)が後ろの仲間を振り返ろうとした時、
「……――ッ!! 危ない、ピコさん、伏せて!!」
 ミスラが叫び、咄嗟にピコが屈むと。黒い動物が彼女の真上を通り抜ける。ミスラの警戒が功を奏した形だ。そしてその動物、忍者犬へとミスラが駆け寄り斬り捨てんと虚空ノ双を振るうが、即座に距離を取られ刀が届かない。
「レンブラントさん、有難うございます」
 ピコが言葉少なに言いつつ忍犬の飛び出してきた側を見れば、ぽっかりと開いた穴と這い出して来るデウスエクス達がいた。
「流石、相手が相手だけに、姑息な待ち伏せはお手の物ですね」
 ミスラが苦々しく言う。地面に穴を掘り、その上に周囲にとけ込む迷彩何かを被せ潜んでいたのだろう。
「ようやくお出ましになったか」
 ワイルドウェポン流星霊華を構え、好戦的な口調で翔が言う。
 現れたのは竹の攻性植物が二体、犬型の螺旋忍軍が二匹、そして、
「病魔……!」
 ひなみくが緑の瞳に捉えたのは、以前交戦した狂月病の病魔から産み出された神造デウスエクスモドキと同類と思われる姿形の存在。
 病魔が吼える。そして猟犬達とデウスエクス達が一斉に飛び出し、戦闘が始まった。

●混成軍
 獣人の魔力を宿した咆哮――物理的な破壊を伴うそれは、飛び出してきていたケルベロス達に衝撃を与える。
「ダミー投影開始。パターンは命中支援でランダムに。今のうちに、態勢を整えて下さい」
 ピコの纏うマントがさらさらと崩れ、その欠片が前衛へとを散布される。その欠片はナノマシン、ピコの命令によりミスラや泰地達のホログラムが投影され、投影された本人の傷が消えていく。
「あっはっは、ワラワラ来よったなぁ。うち、あいつら大嫌いやから、虫みたくプチッと潰さしてもらうわなー」
 普段通りの緩い関西弁のまま瀬理が先陣を切る。飛び込んできた犬の螺旋忍軍の一撃が届くより早く、瀬理の聖なる左腕がその首元を掴み引き寄せ、漆黒の闇の右の強烈な一撃へと繋げる。
「最初に腸食われたいんはどいつやー!?」
 瀬理が挑発すればもう一匹の忍者犬が氷結の螺旋を放ち凍らせようとする。しかしそれはギョルソーに防がれる。
「報復には許しを 裏切りには信頼を 絶望には希望を 闇のものには光を」
 朗々とミスラが祈りの言葉を紡ぎ、
「許しは此処に、受肉した私が誓う “この魂に憐れみを”」
 その言葉が終わり、周囲の味方に祝福の加護が齎される。
 続いて翔とトリュームが具現化した黒き太陽の絶望の輝きが踏み出そうとしたデウスエクス達を照らし出し、その歩みを鈍らせる。
 だが、最初に強烈な一撃を受けた忍者犬には効きが悪かったのか、絶望の光を突っ切りミスラへと喰らいつく。さらに攻性植物が蔦のような竹の群をを伸ばすが、泰地が割り込み防ぐ。そして同時に全身に纏うオーラで気力を溜め傷を癒やす。
 そして獣人が獣化した腕を摩琴へと叩きつけんと駆け出し、ひなみくが割り込み庇う。重い一撃だが、護り手である分負傷は軽減されている。
「大まかに回復するから細かいところお願い!」
 そう言った摩琴は指揮棒を振るい、エクトプラズムで前衛を飲み込み、疑似肉体で前衛の傷を塞ぐと共に呪縛への耐性を与えた。
 そして摩琴に合わせ、ひなみくがオーロラのような光で周囲を包み込み傷を癒やす。
 一方攻撃手はと言えば、翔が精神操作で鎖を伸ばし、忍者犬を縛り上げていた。
「へ~、初めて使うが、チェインも中々悪かねぇな!」
 先程まで物静かだった翔が、血に飢えた鮫のような凶暴な笑みを浮かべる。
 更に天空より無数の刀剣が召喚され、泰地が手刀を振り下ろすと同時、デウスエクス達に降り注ぐ。支援により精度を高めた一撃は正確にデウスエクス達を貫きその攻撃の鋭さを鈍らせていた。
「背中任すでー!」
 オーロラの光を受けつつ獰猛な笑みを浮かべた瀬理は再び突撃、伸ばした指で庇いに入った攻性植物の気脈を断つ。
 瀬理の役割は攻撃手、丁寧に一体一体始末する姿は捕食者としての姿そのものであった。

 元より時間制限のあるための短期決戦仕様、均衡が崩れるまでそう長くはかからなかった。
「はーい、動かないで……ちょっとビリッとくるだけだから!」
 玩具のようにも見えるオサレアイテムが変形、轟音とともに発射された極太のビームは、庇いに入った竹の攻性植物を飲み込み全身に纏う呪縛を一気に増幅させた。
 反撃にピコに向け忍犬が駆け出す。前衛の守りをすり抜けての突進を、ピコは炎の紋様の忍者刀を構え直撃を防ぐ。
 が、刀を通し撃ち込まれた螺旋の力はピコの体内で炸裂。けほ、と血が口から零れる。
 それを見たひなみくが即座に掌を合わせ、四翼から舞った羽の一枚がピコに触れるとその傷が一気に楽になる。癒し手の支援を意識した彼女の立ち回りもあり戦況は安定してケルベロスが優勢だ。
 病魔の魔力を宿した咆哮が後衛を飲み込む。
 銀鷲の大盾で防いだトリュームにギョルソーが属性をインストール、僅かに残ったダメージを完治させ、
「キュアの方は任せるね! みんなの情熱に一陣の風を! アンスリウムの団扇風!」
 重圧はそこまでではないと判断したシャドウエルフは、ガンベルトから薬瓶を引き抜き投げ割り気化した中身が周囲に広がる。赤白緑、三色のアンスリウムの幻影が吸い込んだ猟犬達のリミッターを外し、攻撃力を高める。
「任せろ!」
 摩琴に応えた泰地が裸足でステップを踏み、花弁のオーラを周囲に降らせる。
 戦いに臨む泰地の思いはより良い戦果を。倒すだけでなくそれ以上を狙う彼は、各々の役割を果たす事に集中している。
 後ろの仲間の呪縛を解除されたのをちらりと見つつ、瀬理は気分良く敵を睨む。
 知り合いの多い戦場、だからこそ安心して攻撃に専念できるのだ。
 実際、広く戦況を見渡す摩琴の治療は的確で、少なくともこの戦場では護り手や癒し手の連携もあり、攻撃手多めの陣形に拘わらず攻め手の彼女達が一時の自己回復を必要としない程に順調に攻めている。
 神殺しの毒を宿す鎖の群を翔が射出、
「はいドーン!」
 更にトリュームのハンマーが砲撃形態に変形、放たれた竜砲弾が忍者犬を狙ったが、攻性植物が割り込み受け止める。
 けれどそれでは終わらない。ピコがナノマシンより生成した焼夷弾をばら撒き、デウスエクス達を炎に包む。ホログラムにより本来の数よりも多く見えるそれはデウスエクスにとって回避し辛いものとなっていた。
 慌てたように黄金の実の輝きで傷を癒そうと攻性植物が収穫形態へと変化しようとするが、
「こちらは任せてください」
 その声と共に、飛び掛かってきた攻性植物へとミスラが距離を詰め、霊体を憑依させた呪われし刃で竹の体を両断した。
 勢いはまだ止まらない。お菓子箱のようなミミックが偽物の財宝をばら撒けば獣人が惑わされ、咆哮を自陣へと解き放つ。
「ナイスタカラバコちゃん!」
 ひなみくが褒め、そして扇の羽を無数の鞭の群として病魔と忍者犬に叩きつける。
 さらに翔の伸ばした鎖が忍者犬を縛り上げ、
「援護は任せろ、敵の守りを打ち砕く!」
 泰地の声と共に忍者犬が突然爆発する。精神を極限まで集中する事により引き起こされたその爆発は忍犬のガードを崩す。
 そして、銀鈴の涼やかな音が響いた。
「ほーれどこ見とんねん。余所見しとったら……」
 食いちぎるで? その言葉と同時、力を纏った瀬理のガントレットが忍犬の片割れを貫く。慈悲なく深々と突き刺さった白虎の牙は憐れな獲物を引き裂いた。
 更に摩琴が左手の銀のリボルバー銃で瓦礫を狙い一射、的外れの咆哮に飛んだかに見えた弾丸は絶妙な角度で瓦礫に当たり跳弾、視覚外からもう一方の忍者犬を撃ち抜く。
 よろめいた忍者犬に次々と猟犬達のグラビティが突き刺さり、終いに二振りの刃を暴走させたミスラの秘技、それがを深々と斬り裂いた。
 残りは一体。
 その獣人型は獣化した拳をミスラへと叩きつけようとするが、
「させるかよっ!」
 泰地が病魔の拳を蹴りで受け止める。青のレガースに守られた彼の足は傷つくことなく、けれど勢いを殺しきれずお互いに弾き飛ばされる。
 態勢を崩した今がチャンス、瀬理が疾風のような速度で距離を詰め、旋風の蹴りを喰らわせ刀傷のような鋭い傷を刻む。
 続きトリュームが進化可能性を奪う長重の一撃を叩きつける。そしてサーヴァントであるギョルソーが喉元の色とよく似た色合いのブレスを放ち、病魔を焼きその身に染み込んだ呪縛を加速させる。
「捉えたぜ……!」
 翔の右腕の煌く流星の様な液状兵器、それがキャノン砲に変形していた。
「……肉片も残さねぇ……跡形もなく消えやがれ!」
 叫びと同時、混沌の光線が放たれる。逃れようとするが光線自体の追尾能力、そして重ねられた呪縛がそれを許しはせず。
 光線は狂月の病魔より産み出されし存在を穿ち、そして欠片も残さず消し飛ばした。

●グランドロンの中には
「さあ、行きましょう」
 放熱器でもある髪を広げて身体を冷却しつつ、ピコが促す。そしてそれ以上の障害もなく、猟犬達はグランドロン外壁へと到達した。
(「時間はまだ大丈夫」)
 ひなみくが腕時計を見、最初に仲間に知らせる時間にもなっていない事を確認。
「にしても変な形だね」
 トリュームがグランドロンを見渡し呟く。乗り物にしては不格好、歪な形に見えるがこんな形になった理由もあるのだろうかとちらりと思うが、今はこの中に入り、目的を果たす事を優先させる。
「それでは行きます」
 ピコの胸部が変形、展開して出現した発射口から放たれたエネルギー光線が外壁に直撃し弾ける。
「オラオラ! さっさと廃墟になりやがれ!」
 さらに翔の混沌の光線が続き、ぴしりと罅を刻み込むと、泰地の気弾がその罅を目掛け喰らいつく。それに重ねて摩琴の放った銃弾とトリュームの放った竜砲弾が壁にめり込む。
 そしてミスラの双刀と瀬理の白虎の牙が外壁に深々と食い込むと、罅はついに亀裂となり、砕け、人が通れる程度の穴が開通した。
「穴が開いたよ、さぁボク達の出番だ!」
 元気よく摩琴が言い、早速侵入口を確保しようとする。
「それでは私達が先行して露払いに……」
 ミスラの言葉に泰地が周囲を確認したがデウスエクスはいない。
「さあ行く……なんだ?」
 泰地がふと違和感を感じ足を止める。
「何だこりゃ? まさか……」
 続く言葉が翔の口から出る前に、それは起こった。
 急な振動、トリュームが周囲を見れば、グランドロンが浮上している様子が確認できた。
「そんな!? まだ……」
 ひなみくが瀬理を見るが、彼女の時計も同じ時間を示している。三十分は間違いなくまだ経っていない。
 そうこうしているうちに入口はずいぶん高い位置にまで上昇していた。
 ミスラは諦めず飛び込もうと手を伸ばし外壁を掴もうとするが、間に合わない。手の届かない所まで浮上してしまった。
 ひなみくは四翼を広げ縋ろうとするが、彼女だけでは後が続かない。飛行できる少数で斬り込んでも返り討ちになると思い至り断念する。
 そしてそのままグランドロンは完全にこの地を去ってしまった。

●空へと昇り
「情報が早いと思っていたけどまさか……」
 トリュームが原因に思い至り、唇を噛む。
 なぜこうなったのか、摩琴も思案するが、結局は螺旋忍軍が戦力的に十全ではなかったからだろう。
 情報が早くかつ戦力に不安が残る、その上脆い同盟で全てを賭ける程に入れ込んでいるわけでもない。なら出来る限り消耗を抑える方向で逃げるのもあり得ない話ではないのだろう。
「ちくしょう!」
 すでに手の届かぬ場所まで行ってしまったグランドロンの方角を見、泰地が悔しげに地面を殴る。
 少しでも良い成果を出すために作戦を詰めていた、それは間違いない。それを脅威と感じ、敗北の可能性を感じたこそ螺旋忍軍はこの選択をしたのだろう。
「敵の大目標の阻止は成功できています。ですが……」
 無表情に口調も普段の抑制のきいたのまま、けれどどこか悔しさを感じさせる声でピコが呟く。
 作戦自体は潰せているのだから悔やむ事ではないのかもしれない。
 けれど、獲物は目の前だったのに逃がしてしまったという状況にぎりっと瀬理は歯噛みする。
「……まだここに残っているデウスエクスがいるかもしれない、せめて残りを片付けてから帰ろう」
 苛立たしさを飲み込み、翔は言う。ミスラもそれに同意し、刀を構え周囲へと注意を向ける。
(「ハールの狙いはこれからどのようになるんだろう……」)
 ひなみくはそんな事を考え、グランドロンの飛び去った先をじっと見、そして思考を切り替えた。

作者:寅杜柳 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年5月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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