露出ゆえに春! 春ゆえに露出!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「春と言えば、花見……花見と言えば、無礼講……無礼講と言えば、全裸ッ! つまり、春は露出の季節ッ! 花見と言ったら、腹踊り! 腹踊りと言ったら、露出だ! このように、春と露出は切っても切れないモノ。故に、俺達のやるべき事は、ただひとーつ!」
 ビルシャナが信者達を前にして、自らの教義を語っていた。
 場所は都内某所にある花見会場。
 みんな花を眺めて、イイ気分になっている中、ビルシャナだけが興奮していた。
「そもそも、なぜ露出にならなければイケナイのか、お前達に分かるか? それは脱皮のようなモノ。いつまでも自分の殻に閉じこもっていたところで何も変わらないッ! むしろ、いまこそ巣立つ時ッ! 新たな自分と出会うチャンスなのだ!」
 ビルシャナが偏った考えを、あたかも正論の如く訴え、拳っぽいモノをギュッと握り締めた。
「だからこそ、立ち上がれ! 今こそ、その時! だが、最近の奴らは、草食系の恥ずかしがり屋さんばかり! だからこそ、俺達の出番だ! 問答無用で剥いてやれ! 服さえ奪ってしまえば、こっちのモンだ!」
 そう言ってビルシャナが『正義は我らにあり』と言わんばかりの勢いで叫ぶ。
「おおおおおおおおおおおおおお!」
 その途端、信者達が興奮した様子で、人々から服を奪い取るため、行動を開始するのであった。

●セリカからの依頼
「アーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです。悟りを開いてビルシャナ化した人間と、その配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事が今回の目的です。このビルシャナ化した人間が、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やそうとしている所に乗り込む事になります。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまいます。ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「ビルシャナは破壊の光を放ったり、孔雀の形の炎を放ったりして攻撃してくる以外にも、鐘の音を鳴り響かせ、敵のトラウマを具現化させたりするようです。信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。現在、信者達は花見会場で獲物を探しているようです。そのため、のんびり花見をしていれば、信者達の方から寄ってくるでしょう。彼らは服を脱がすためならば手段を選びませんので、殺さない程度に痛めつけてください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
「また、信者達はビルシャナの影響を受けているため、理屈だけでは説得することは出来ないでしょう。重要なのは、インパクトになるので、そのための演出を考えてみるのが良いかもしれない。また、ビルシャナとなってしまった人間は救うことは出来ませんが、これ以上被害が大きくならないように、撃破してください。それでは、よろしくお願いします」
 そして、セリカはケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。


参加者
ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)
エル・ネフェル(ラストレスラスト・e30475)
イリーナ・ハーロヴュー(ツンロシュ・e78664)

■リプレイ

●都内某所
「これは……春になると変なやつが増える、ってやつね。……まったく! ろ、露出を推奨するなんて、頭おかしいんじゃないかしらね! まったく!」
 イリーナ・ハーロヴュー(ツンロシュ・e78664)は不機嫌な表情を浮かべ、都内某所にある花見会場にやってきた。
 花見会場には一般人達がおり、朝から酒を飲みながら、のんびり桜を眺めていた。
 彼らにとって、花見は安らぎ。
 仕事で溜まったストレスを解消するため、みんなハイテンションで騒いでいた。
「……『春は露出』と言いつつ自分は完全防備……。いつも思うんですけど、こんな鶏によく信者付きますね」
 一方、若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)も事前に配られた資料を眺めつつ、呆れた様子で溜息をもらした。
 おそらく、自分達が捕まらないようにするため、守りに入っているのだろう。
 その時点で教義に反している事に関しては、誰も触れないようである。
 もしかすると、洗脳の影響で自分達にとって都合の悪いモノは、すべてスルーするようになっているのかも知れない。
「……まったく! 露出趣味者のなんたるかを解っていませんね!」
 そんな中、エル・ネフェル(ラストレスラスト・e30475)が、全裸で登場ッ!
 普通であれば、花見客に通報されていても、おかしくないような状況ではあるものの、事前にラブフェロモンと、フェスティバルオーラを使っていたおかげで、何とかなっているようである。
 その代わり、写真や動画等を撮影しているらしく、アングルの魔術師の如く勢いで、花見客が地面とお友達になっていた。
 それに応えるようにして、エルもY字開脚や蟹股等を繰り出していたため、気のせいか先程よりも花見客の数が増えているようだった。
「とりあえず、服を着ましょうか。みんなが見てます」
 ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)が気まずい様子で、ツッコミを入れる。
 いまのところ、通報はされていないものの、次第に花見客のテンションが上がっているらしく、下半身を露出し始めているため、違う理由で通報されそうな感じであった。
「確かに……この視線は、ちょっと……」
 そう言いつつ、イリーナが恥ずかしそうに頬を染める。
 実はイリーナも、コートの下は全裸。
 それが原因で、花見客の視線を浴びるたび、身体が敏感に反応しているのだが、それを気づかれまいとする気持ちと羞恥心で、余計に興奮しているようだった。
「とりあえず、ビルシャナが現れるまで、このバスタオルで身体を隠しておいてください」
 めぐみが気まずい様子で汗を流し、エルにバスタオルを手渡した。
 場合によっては、興奮した一般人達に襲われるか、警察の御厄介になる事になってしまうため、最低限の対策をしておく必要があった。
「おおっ! いるぞ、いるぞ! 獲物がいるぞ! よっしゃ、お前等! 張り切って仕事をするぞ!」
 そんな中、現れたのは、ビルシャナ達であった。
 ビルシャナ達が興奮した様子で鼻息を荒くさせ、何処からどう見ても不審者であった。
「……噂をすれば、何とやらですね」
 めぐみがゲンナリとした表情を浮かべ、ビルシャナ達に生暖かい視線を送る。
 本音を言えば、このままスルーしたいところではあるものの、ビルシャナが関わっている以上、やるしかない。
「それでは……行きましょうか」
 そう言ってロベリアが覚悟を決めた様子で、ビルシャナ達の前に陣取るのであった。

●ビルシャナ
「おいおい、まさか俺達の邪魔をしようって訳じゃないだろうな? だったら、返り討ちに遭うのがオチだぜ。間違いなく……な!」
 それに気づいたビルシャナが、チンピラテイストで叫ぶ。
「だとしたら……どうしますか?」
 ロベリアが臆する事なく、ビルシャナ達に問いかけた。
「そんなモノ、決まっている。……お前達を脱がすだけだァ!」
 次の瞬間、ビルシャナ達が、ハイテンションで襲い掛かってきた。
 その姿は、まさにケモノ。
 服を脱がすためならば、手段を選ばないケダモノであった。
(「これは説得のため……説得のためなんだから……!」)
 イリーナが覚悟を決めた様子で、自分自身に言い聞かせた。
 しかし、コートの下は、全裸。
「マ、マジか!?」
 これにはビルシャナも、驚いた。
 ある意味、同志。
 それどころか、ベストフレンドになれる存在が、目の前に……いた!
「ところで、皆さん。ひとつ聞いていいですか? 『露出だ』『裸踊り』だと言ってる、鶏さん、自分は全身羽毛で、全然露出してないんですけど、良いんですか?」
 めぐみが何やら察した様子で、信者達の前に立つ。
「……あっ!」
 それに気づいた信者達が、ビルシャナをガン見ッ!
「お、おい! いまさら何を言っているんだ。これは服じゃないぞ? 体毛だ、体毛!」
 ビルシャナが身の危険を感じつつ、必死に体毛である事を強調した。
 だが、信者達はジト目のまま。
 『確かに、言われてみれば……そうだな』と言わんばかりに、疑いの眼差しを送っていた。
「そもそも、露出趣味者というなら、春夏秋冬季節を問わず、暑くても寒くても裸を晒してこそでしょう? まずは春だから脱ぐというのがヌルイです。周囲全員が全裸になったら、全裸でいることに注目されないじゃないですか!」
 エルがバスタオルを脱ぎ捨て、他人を脱がすという行為の無益さを解く。
 その間、ビルシャナ達の視線は、エルの裸体に釘付け。
 まったく部外者であるはずの花見客に至っては、『よっしゃ!』とばかりにガッツポーズを決めていた。
 それ故に、話半分。
 むしろ、裸体を優先して、会話の内容が入ってこない。
「大体っ! 露出すれば良いことがあるみたいに言ってるけど! ハダカになったところで人間何も変わらないわよ! むしろ余計に縮こまってしまうわ! 外身を脱いで自由になった気でいるなんて、単に中身が伴っていない証拠よ! その点私は服なんか脱いだところで平常心! 露出論法敗れたりね!」
 イリーナもビルシャナ達をジロリと睨み、彼らの教義を全否定。
 だが、ビルシャナ達の視線は、イリーナの足元に広がった、恥ずかしい水溜まりに集中していた。
「……ち、違っ、これは興奮じゃなくて~~えっと、お、おもらし! そうよ、おもらししただけなんだから!!」
 それに気づいたイリーナが、必死に言い訳をしたものの、焼け石に水ッ!
 それどころか、興奮した信者達に、まわりを囲まれてしまう始末。
 気がつけば、花見客まで集まり、何やらいやらしい笑みを浮かべていた。
「教祖だと言い張るなら、まず自分からだと思いませんか? それを拒絶するのであれば、自ら教義を否定しているようなものだと思うのですが……」
 そんな空気を察しためぐみが、ビルシャナ達の矛盾をつく。
「だ、だから、これは服じゃないし……。俺は裸だ」
 ビルシャナがしどろもどろになりながら、全裸である事を再び強調した。
「真にそうであるならば……迷わず羽毛を処分すべし! 極めた趣味者は、羽毛など持たぬもの、です」
 そこに追い打ちをかけるようにして、エルがビルシャナに迫っていく。
「うぐぐ……、お前達さえいなければ、すべて上手く行っていたのに……。こうなったら、お前ら纏めて、皆殺しだあああああああああああ!」
 その途端、ビルシャナが怒り狂った様子で、自らの殺気を爆発させた。
「どうやら、答えが出たようですね」
 そう言ってロベリアが躊躇う事無く、ビルシャナに攻撃を仕掛けていった。

●ビルシャナの最後
「此処は今から戦場になります。早く安全な場所まで避難してください」
 ロベリアが信者達に警告しながら、安全な場所まで連れていく。
 信者の大半は戸惑っている様子であったが、巻き添えは勘弁と言わんばかりの勢いで、ロベリアの後についていった。
「余計な真似をするなあああああああああああああああ!」
 それに気づいたビルシャナが、殺気立った様子で破壊の光を放つ。
「……やらせませんよ!」
 すぐさま、イリーナがスターゲイザーを仕掛け、ビルシャナを足止めした。
「グッ……、ググッ! 余計な真似を! ならば、俺の教義が正しい事を示すため、お前達を倒すだけだァ!」
 ビルシャナが殺気立った様子で、両目をギラギラと血走らせた。
「そこまで言うのであれば、まずは自分からですよね……」
 次の瞬間、めぐみがビルシャナに飛び掛かり、一心不乱に羽毛を毟り始めた。
「こ、こら、待て! 俺は別に、そんな事を言っている訳ではない!」
 それ故に、ビルシャナは焦った。
 まさか、こんなにも呆気なく、身体の自由を奪われるとは……。
 正直言って……、予想外ッ!
「大丈夫、そのうち癖になりますよ」
 だが、めぐみはイイ笑顔を浮かべつつ、ビルシャナの羽毛を毟って、毟って、毟りまくった。
「も、もう勘弁してくれ!」
 間一髪でめぐみの事を振り払い、ビルシャナが全力ダッシュで逃げていく。
 ……間違いない。
 あれは関わってはイケナイ部類の人間……いや、ケルベロス達であった。
「ならば、御覧あれ。冥き天をも灯し出す、陽神再起の命の舞を……!」
 それと同時に、エルが鏡の舞を発動させ、蟹股ダンスでビルシャナの行く手を阻む。
 本来であれば、大喜びでガン見しているところだが、いまは危機的な状況ッ!
 ……そんな事をしている場合ではなかった!
「さあ、教義通りの姿になってもらいましょうか」
 そして、めぐみが再び飛び掛かり、ビルシャナの羽毛を毟っていく。
「や、や、やめてくれええええええええええええええええ!」
 それでも、ビルシャナが必死に抵抗したものの、早鐘の如く高まった心臓が限界を迎え、白目を剥いて息絶えた。
「……ふん! 他愛もないビルシャナだったわね! 私は少し露しゅ……お花見して帰ろうかしら!」
 そう言ってイリーナが、小さくコホンと咳をした。
 気のせいか、一定の距離を保ちながら、女性達が後を追っているような気もするが、イリーナはまったく気にしていなかった。
 そうしているうちに、女性達の数が増えていき、まるでイリーナの逃げ道を塞ぐような感じで距離を縮めていた。
「それでは、わたしはそろそろ……えっ? ライブ配信ですか? わたしで花見? よく分かりませんが、あっちに行けばいいんですね」
 一方、エルは花見客に連れられ、物陰に連れていかれるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年4月15日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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