搾取

作者:鉄風ライカ

●遭遇
 これから訪れる冬に耐える術なく命を落としていく虫達が、その脅威の喚び声となった。
 キチキチと顎を鳴らして獣じみた動きを見せるそれは遠目に見れば人の形をしているようだったが、表皮は殻とも呼ぶべき硬質な素材をしており、また放つ光沢も人とはかけ離れていた。
 虫のような触角を揺らし獲物を探すその脅威の名は『デウスエクス・レギオンレイド』。ローカストと呼称される種族だ。
 現れた彼に知性らしいものはほぼ見られない。それでも彼は己に課せられた使命を本能で理解していたし、そのための手法も心得ていた。
 人間を捕らえ、グラビティ・チェインを奪う。
 すべきことはたったそれだけ。
 だから、たまたま通りがかった運の悪い人間がその毒牙に掛かり、つつがなくその両前肢に捕らわれてくれたのは、彼としては幸運だったと言えるのだろう。
 もっとも、彼に物を考えられるだけの頭があるならば、の話だが。

●知性なき牙
「ローカストの奴らが新しい動きを見せてるみたいっすね」
 黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)いわく、これまでのローカストと違って知性の低い個体がグラビティ・チェイン奪取のために地球に送り込まれているらしい。
「でも知性が低いかわりに、戦いの面では優秀みたいっすから、注意してくださいっす」
 本能に従って戦う分、敵の余計な動きや隙にはあまり期待できないのかもしれない。だが逆に、あまり知性が高くないからこそ効果的な戦術、というものもあるだろう。
 思案顔のケルベロス達に、油断できない相手っすから、と、ダンテは状況説明を始める。
「敵は知性の低いローカスト1体。でけぇカミキリムシっぽい見た目をしてるっすよ。牙を使った噛み付きと、切り裂き……あと、体内のアルミニウム生命体を利用した自己回復も使ってくるっす」
 単純な攻撃方法ではあるが、いずれの一撃も高い攻撃力が予想される。
「ローカストがいるのは森林公園の一角っす。ちょっと見通しの悪い場所なんすけど、被害者になった男性は近道をしようとそこを通って、たまたま捕まっちまったみたいっすね……」
 気の毒そうに言うダンテの表情は重い。
 このような事例で確認されているローカストは単純に虫の死に引き寄せられて出現しているようで、この事件の被害者が襲われる羽目になったのも、ただタイミング悪く虫の死骸の近くにいたからに他ならない。
「でも、今なら間に合うっす。助けられるっすよ!」
 ローカストはゆっくりしたスピードでなければグラビティ・チェインを吸収することができないため、被害男性の命の灯が消えてしまうまでにはまだ猶予はあるだろう。
「その場で戦うなら、そもそも人の通る道ではないっすから、他の一般人を巻き込むことはないと思うっす。ただ木に囲まれてるんで、正直戦い辛いっす」
 資料としてダンテが広げた森林公園の案内図は、大まかに、左半分が森林部分、右半分が公園部分と分かれた感じで描かれていた。森林部分には枝分かれした遊歩道を表す線が何本か引かれているが、ローカストが出現したのは遊歩道から外れた緑色に塗られた部分。要するに密集した木々の中だ。
「すぐ側の拓けた場所……えっと、森林公園の『公園』の部分っすね。そこまで敵を誘導できれば広い場所で戦闘ができるっすけど、その場合は事前に人払いが必要になるかもっす」
 戦闘になればローカストはケルベロスに牙を剥いてくるので、ローカストにがっしりと組み伏せられた被害者は一時的に解放されることになる。被害者とローカストを引き離すためにも公園へと敵を誘うか、それとも人払いの手間を省きその場でのローカスト排除に臨むか。
「判断は皆さんに任せるっす」
 何より大切なのは、グラビティ・チェイン奪取の阻止とローカストの撃破。
「皆さんならバシッとやり遂げてくれるって、信じてるっすよ!」


参加者
星喰・九尾(星海の放浪者・e00158)
リーフ・グランバニア(サザンクロスドラグーン・e00610)
小田・護(装甲兵・e08345)
リリー・リーゼンフェルト(一輪の黒百合・e11348)
小鞠・景(春隣枯葎・e15332)
ガルフ・ウォールド(でかい犬・e16297)
舞阪・瑠奈(サキュバスのウィッチドクター・e17956)

■リプレイ


 普段ならばのどかな雰囲気で人々を迎え入れているのだろう森林公園だが、今はそうもいかない。
 虫の死。どこにでも、どんな状況にもありふれたその事象に呼び寄せられる明確な畏怖に、リリー・リーゼンフェルト(一輪の黒百合・e11348)は脅威を覚えていた。
 敵が新たな作戦を講じる度にこうして被害に遭う一般人が存在し、対処を誤れば被害が拡大してしまうかもしれない現状。ケルベロスとして立つ以上守るべきものの為に、悠長に構えている時間はないのだ。
 戦闘場所と定めた公園部分の人払いをA班、敵の気を引き誘導する役をB班と役割分担した一行は遊歩道地点で一旦互いの顔を見合わせ、頷き合ってから二手に分かれた。
 悲劇を食い止められるよう、強い決意を込めて。

 自然豊かに樹木の生い茂る森林部分は太陽の出ている昼間でも薄暗く、通行人はいないようだった。ローカスト探索を急ぎながらも近くに人がいないかの確認をしていたガルフ・ウォールド(でかい犬・e16297)、遊歩道の一般人を危惧していた小鞠・景(春隣枯葎・e15332)はそれぞれに胸を撫で下ろす。
 ちり、と感じる毛の逆立つような緊張感。
 高い雑草の奥、一層暗くなった茂みから、風に揺れる木の葉の音に混ざる奇妙な音がローカストの鳴らす顎から発せられるものだと察知したB班の面々は迷うことなくその場に足を踏み入れた。
 ――巨大な昆虫型デウスエクスに抱え込まれた人間、という光景は、想像していても実際目の当たりにするとやはり醜悪で。
「……ッ!」
 一瞬だけ息を呑み、しかし即座に体勢を低くしたガルフが激しい唸り声を上げる。鋭い犬歯の覗く口から漏れる敵意に満ちた低い轟きにローカストが反応し、B班へ飛び掛かってきたのを皮切りに、戦場が整うまでの彼らの防衛戦が幕を開けた。
 舞阪・瑠奈(サキュバスのウィッチドクター・e17956)はローカストの束縛から一先ず解放された被害男性をちらりと見遣る。意識を失っているのだろうか、呼吸があることは上下する胸の動きから把握できるが、ぐったりとしている様子の被害者の姿に、ふと瑠奈の脳裏に愛しい人のことがよぎった。
(「もし、虫に捕まったのが愛しのダーリンだったら……私、耐えられない」)
 想うのは、瑠奈の大切な、かけがえのない存在。だから、少しでも愛しのダーリンに危害を及ぼす可能性のある存在ならば、絶対に排除しなければならない。
 真っ直ぐに突っ込んできたローカストに槍を思わせる一撃を放つ瑠奈だが、ローカストはものともせず勢い任せに顎を振りかぶった。ディフェンダーとして動き、敵と味方との間に滑り込んだランディ・ファーヴニル(酔龍・e01118)の腕を打つ強烈な衝撃に、彼は防御姿勢のまま紫色の瞳を眇め、ひゅう、と小さく口笛を吹く。
 噂に違わぬ頑強さ、ということか。
 邪魔者を屠ろうと剥き出しの戦闘意欲を見せるローカスト。それを目の前にしても尚、星喰・九尾(星海の放浪者・e00158)は貫録を感じさせる仕草で朱に彩られた唇をふっと吊り上げた。
「ふむ……。中々に、骨はあるようじゃの」
 たおやかに宙を走る指が描くのは、力ある文字列。
「かつて星をも喰らいしこの力。少しおぬしに見せてやろう」
 完成した術式は九尾を包み込んでいく。受けるダメージを出来る限り防ごうとリーフ・グランバニア(サザンクロスドラグーン・e00610)もドローンを展開させた。
「自然死はこの星の理。それすらも受け入れられぬとは……」
 同属の死に憤るローカストには『人心在り』と思っていたのだが、ただひたすらに本能だけを曝け出す今回の敵にはそんなものがあるとは微塵も思えない。相手はグラビティ・チェインを奪うデウスエクス、過度の期待をすべきではないとわかっていても、リーフの心は僅かながら落胆を覚えてしまっていた。
「不死身ボケが過ぎるぞ! 小虫!!」
 言っても無駄だとわかってはいるが、どうしても投げ掛けずにはいられなかった言葉を半ば叫ぶようにぶつける。厳しい顔のリーフに、ローカストは無表情のまま。
 景もまた、今まで相手にしていた知能ある相手との違いを肌に感じている。
(「少しタイプが異なりますね……」)
 がむしゃらに振る舞っているように見えて、体の動かし方は理に適っている。けれど誰を攻撃相手に選ぶかなどの計算があるようには見えず、でもある程度は攻撃の通りやすさを考慮しているようにも思える。
 知能は低いが戦闘に特化している、とは、こういうことなのだろう。
「油断すると大変なことになりそうです」
 冷静に相手を観察し、あくまで全力で戦う必要がありそうだと判断した景は、神経を集中させてローカストの主な武器である鋭い顎を狙った。ローカストは発動し爆発するグラビティに煩わしげに頭部を傾げ、牙をギィと奇怪に鳴らす。
 柔らかいはずの冬空の木漏れ日が光沢のある甲虫の外殻を不気味に照らしていた。


 B班と分かれ、A班であるリリーと小田・護(装甲兵・e08345)は公園部分へと急ぐ。
 遊歩道といくらかの木々の間を素早くすり抜けて辿り着いた広場は確かに戦場として使うには十分な広さが確保できそうだった。
 設置された遊具には無邪気に遊ぶ子供や、ペットの散歩に訪れた老人の姿が見られる。
 和やかな様子からは信じられないが、この平和な風景のすぐ隣に恐ろしい怪物がいるのは紛れもない事実だ。
 一般人を遠ざけるための殺気を放つリリーと、逃げる人々が森の方向へと向かわないように注意を促し導く護。耳に届くB班の剣戟が段々と激しさを帯びていく。
 避難誘導と同時に人払い完了の確認まで終わらせた護からのサインを受け取ったリリーがB班への連絡をリーフとガルフの携帯電話をコールした……瞬間、森林の奥から最大音量で鳴り響くマジカルでプリティな着信音。
 リーフが特別設定していたらしいソレにびっくりした小鳥達がバサバサ飛び去るのを見ながら取り敢えずひとつ咳払いをして、リリーはインカム越しに人払い完了の旨を告げた。
「竜騎兵に犬狼、こちら山百合。篭の用意が出来たわ。後は虫を放り込むだけよ」

「わかった」
 一生懸命扱い方を覚えた携帯電話に短く返事をし、ガルフは公園までの最短距離を目指す。引き付けながら、というのを忘れてはならないのが大変ではあるが、優先順位がグラビティ・チェイン奪取よりケルベロス排除に傾いているのが幸いして敵は素直に誘導に乗ってきている。
(「こいつは何を感じてここに出て来たんだろ……」)
 虫の死骸は、ここじゃなくても、よく見ればどこにでもあるのに。
(「……考えても仕方ないか」)
 頭に浮かんだ疑問を振り払い、ガルフはローカストを睨み付ける。知性あるローカストならば何かしら……例えば人間への憎い気持ちだとか、地球の虫を殺されて悔しい気持ちだとかを訴えるかもしれない眼は、何の感情も伝えてこない。
 複雑な感情は拭い切れないが、ともあれ自分は倒れないように頑張る必要がある。瑠奈からの癒しの力に何度か尻尾を揺らして返事をし、大きく振り上げた鉄塊剣を甲虫の背へ叩き込んだ。僅かに傾いだ脇腹には九尾の唱えた御霊殲滅砲が撃ち放たれる。
「いくら身体能力に優れようと、思うように動けんのでは全力は出せまい」
 涼しい目元に余裕を滲ませ、花魁下駄の足元を軽く蹴って道なき道をすり抜ける。
 戦いはそれほど得意ではない、と自認する景だが、スナイパーとして敵を確実に狙う姿勢は堅実に仕事をこなしていると言えた。ここまでに複数の状態異常を身に受け多少動きづらくなったらしいローカストを更にリーフの炎が取り巻くが、しかし鈍れども能力の高さ自体は変わらない。
 仲間の壁となり自己回復を繰り返したランディの横を掠めるように、後方から攻撃の支援が飛んだ。
「神をも殺める疫魔を喰らえ!」
 リリーの高らかな声。
 砂煙を上げて公園部分へと駆け込むB班を迎え入れ、護も機銃を構える。
「合流完了、戦闘に移る」
 任務確認のように端的に呟きガトリングガンの弾を浴びせかけるが、着弾する度にガラスを擦ったような痕が残る表皮を、ローカストはこともなげにアルミニウム生命体で覆ってみせた。
 敵にはまだ余裕があるらしい。が、ここからは全員で攻勢に臨める。
 仕切り直しだな、とランディは短く息を吐いて、
「さて。今回も搦め手無しの個体か。同じタイプでも知能が高い奴の方が苦戦した経験があるが……コイツはどうだろうな」
 過去に倒してきたデウスエクスに思考を巡らせ、それから、改めて眼前のローカストを見据えた。
「情報収集に期待ができねぇ分、戦力分析をさせて貰おうか」
 ニィ、と挑戦的に口角を歪めて。


 回復役として、敵に接近されないことを重要視しながら瑠奈はダメージを受けた味方に回復を施していく。自己回復とドレインを備えたローカストの回復力も目を見張るものはあるが、キュアを持たない、という敵の特徴を的確に捉えている分、ケルベロス達のほうが優勢に思える。ただそれでも数発も食らえばひとたまりもないのは簡単に予想できるのだが。
 長期戦の様相に護は敵の防御を削らんと機銃を駆使する。
 ローカストの強引な行動を見るに、ローカスト側は何かしらのことで焦っているのかもしれない。護はそう考えていた。敵側も作戦を練って地球を攻めてきている以上、思惑もあるのだろうが、それが何であれ確実に阻止していかなければ。
 フィールドを駆る任務に忠実な兵のごとく。護の弾丸が命中したのを視認し、ランディは戦場にふわりと霧を拡散させた。冥龍瘴気の名を持つそれは確実にローカストを蝕んでいく。絞り出すような甲高い咆哮を上げるローカストの牙がぎらりとリーフを狙ったのを、今度はガルフが庇った。
 噛み付かれた腕がちぎれそうに痛い。下がりかけた尻尾を奮い立たせ、ローカストを振り払って態勢を立て直しながら、ガルフは標的にグルルと獰猛に唸った。睨み合って対峙するガルフの隙間を縫うように、九尾の放つ可愛らしい子狐が跳躍する。
「この杖は悪戯っ子でのぅ」
 ころころと笑う九尾。
「螺旋忍法殺刃術! 尖風刃!」
 追随するリリーの鋭利な大鎌での一閃がローカストの腹を一文字に切り裂いた。重なったバッドステータスの影響か思うように修復の出来ないらしいローカストが身じろぐのを好機と護はガトリングを構える、が――、
 その銃弾を掻い潜り迫る怪物の凶牙。
「小田さんっ」
 地に伏した護を瑠奈が呼ぶが返答はなく。
 咀嚼じみた動きで牙を動かしながら、ローカストは美味そうに護から吸い取った生気を味わう。気味の悪い咀嚼を二、三すると腹に負ったリリーからの傷がほんの少し浅くなったようだった。
 行動阻害から回復をしにくくなったのなら、回復自体、攻撃を兼ねたものに切り替えてしまえば効率が良い。戦闘に特化した敵の脳はそう考えたのだろうが、それはつまり高い回復力を持つ技を捨てたことに他ならない。
 それならば、とケルベロス達は武器を握る手に力を込め直した。
 このまま押し切れる、はずだ。例えあと何人か倒れたとしても。
「撤退しなければならなくなってしまったら……私、殿を務めますね」
 淡々と言いつつローカストに爆発をぶちかます景に、馬鹿を言うなと笑い混じりにランディが答える。余裕を装ってはいるが、その実、彼の体力もあまり残ってはいない。
 決定力に欠ける削り合いとなったが、文字通り一進一退の攻防、と呼べる戦いの末、ついにローカストは雷の霊力を帯びた刃に苦しげに呻いて膝を付いた。
 ギシギシと鳴る関節で必死に立ち上がろうとするその頭部めがけ、
「懺悔せよ! 南十字に跪け!」
 リーフの二振りの剣が輝いた。
 煌めく星座から放たれる超重力の十字斬りを叩き込まれたローカストはひび割れるようにしてひしゃげながら潰れていく。
「……終いのようじゃな」
 九尾の告げる通り、ローカストはもう起き上がることはなかった。


 長い戦闘を何とか気力で立っていたようなものだったケルベロス達はその場にへたり込んでしまいたいくらいの疲弊を感じていたが、そうも言っていられない。
「この星では、他種と共生する虫も多い。どうして奪う事しか考えないのかしら……」
 倒れた仲間や自分、戦いで傷付いた森林公園にヒールをかけながら、リーフは独りごちる。
 リリーとガルフはローカストが最初に現れた森へ、切欠となった虫の死骸と共にローカストを埋め、簡素ながら墓を立てて弔っていた。
 恐らく、生命の亡骸に惹かれてきたのだろうから、と、リリーは静かに祈りを捧げる。
「貴方は生命の意味を知っていたの? だとしたら……」
 もしかしたら、分かり合えたのかもしれない。
 口の中で小さく呟いた言葉に、隣でガルフが深く頷いた。ガルフは墓を前にクゥンと鼻を鳴らし、頭を垂れる。
 地球に長く滞在したローカストは理性を失うらしい、と聞いたことがある。
(「こいつも、もしかしたら前は喋ったり考えたりしてたのかも……」)
 確かめる術はない。けれど、虫が好きな身としてはローカストを単なる敵だとは思えず。この虫の死は、他のローカストに気付いてもらえるのかな? なんて、考えてしまう。
 そういえばあの被害者の男性は大丈夫だろうか、と周囲を見回すと、瑠奈が既に手当てを施していたらしかった。
 もう大丈夫、と男性に優しく微笑んでから、瑠奈は携帯電話に耳を当てる。
「もしもし瑠奈よ。今から帰るわ。帰り待っててね」
 愛しのダーリンに電話を掛ける瑠奈の声は明るい。
 幻想を含んで修復されていく風景を眺めながら、ランディはそのまま空を仰ぎ見た。被害ゼロ、とは言い切れなかったが、酒が不味くなるほどの悪い結果ではないだろう。傷はヒールグラビティで癒えても疲れた気分というものはなかなか体から出ていかないもので、もう歳かな、と冗談めかして、暫し強敵に打ち勝った充実感に浸った。

 殺界の解かれた公園には、また人々の姿が戻り始める。
 沈むのがめっきり早くなった十二月の陽を背に、ケルベロス達はひとり、またひとりと公園を後にした。
 何が埋まっているのか知る者の殆どいない墓には、過ぎ行く秋の花が一輪。風に飛んでいかないように丁寧に添えられていた。

作者:鉄風ライカ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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