焼鳥と生ビール~なつみの誕生日

作者:絲上ゆいこ

●4月15日、昼
「ねえ、アナタ。夜の予定って開いてるかしら?」
 天目・なつみ(ドラゴニアンのガジェッティア・en0271)は、ケルベロス――あなたと視線を交わし、首を傾げ。
「開いてるなら、今日は一緒に夕ご飯を食べましょう!」
 あなたの手を引いて、悪戯げに笑った。

 彼女が言うには。
 去年二十歳になったのだが、まだお酒を飲んだ事が無い。
 ぐずぐずしているうちに一年立って、また誕生日。
 今年こそチャレンジをしたい、と。夕ご飯についてきて欲しいとの事であった。

「それに、ご飯は皆で食べた方が絶対楽しいものね。ふっふっふっ、待ってるわよ!」
 集合場所を告げてから、わくわくとした様子で大きな翼を畳み。
 もう一度あなたの瞳を覗き込んで、なつみは笑った。


■リプレイ


 今日も平和の為にお仕事を頑張ったご褒美。
「一日お疲れ様でした、かんぱーい!」
 グラスを掲げれば、乾杯の声が幾つも重なる。
「ぷはぁ! この瞬間の為に生きてる気がするわぁ」
 生ビールより顔を上げたさくらは、ほんわり微笑み。
「何から食べようかなーっ♪」
 グラスを置いたシルが、早速焼鳥へと手を伸ばす。
「あ、シルさんのそれ絶対美味しいやつですね……」
「茜さん、はんぶんこする?」
「わ、えと、よろしくお願いします」
 大きな卵黄のとろけるつくねを、シルと茜で半分こ。
「しかし、酒に焼鳥……最高の組み合わせだな」
 呟きにタレモモを抱えたナノナノのルーナが頷き。日本酒のグラスを瞳を細めて傾ける遊鬼。
「――うむ、旨い」
「酒が呑める者も呑めない者も一緒に楽しめるというのは良いものだナ」
 未成年の茜とシルがきゃっきゃと焼鳥を分ける様に千夜はこっくり。手はレバー串へ。
 肉をしっかり食べられる絶好の機会、逃す訳も無い。
「ほれほれー、千夜ちゃんも遊鬼くんも飲んでるーぅ?」
 飲酒可能者代表さくらはもはや空になりそうなグラスを持って、幸せ笑顔。
「あァ、呑んでるゾ」「サクラは……一目瞭然だな」
 千夜が頷き、遊鬼が肩を竦めて笑う。
「そうよそうよ、呑んでるのよー、美味しいわよねー」
 顔を上げたシルは、長耳を立てて。
「さくらさん、もうグラスが空だね。さぁ、次は何にする?」
「次は芋焼酎ロックで! 焼鳥もおかわり欲しいわよねー」
 シルがメニュー片手、さくらは手を上げ。
「みんなで食べるから沢山頼まなきゃ! あ、茜さんは何にする?」
「ノンアルコールも意外と多いですね……」
「名前や色が可愛いのも多いわよね。シンデレラとか可愛くない?」
 メニューを覗き込むシルと茜の後ろから、さくらは覗き込み。
「綺麗な響きだから、次はそれにしようかな?」
「良いですよねー」
 少し通ぶって選ばなかったけれど、次はそれもいいな、なんて茜。
 場の雰囲気に自然と笑顔も綻んでしまう。
「ワインと厚揚げを追加で頼ム」
「ワインと焼鳥って合うのか? あぁ、焼鳥はねぎまと鶏皮と……、タレモモと」
 千夜の注文にと首を傾いだ遊鬼が、ルーナをちらと見て注文を足し。
「了解しましたーっ、店員さーん!」
「はーいなのですー」
 呼ばれて出て来た店員制服ヒマラヤン。さくらは目をぱちくり。
「……ヒマラヤンちゃん?」
「わ、私はただの通りすがりの店員さんなのですよ!」
「……バイト?」
 茜の言葉に、慌てたヒマラヤンは首を横に振る。
「そ、そんな事よりオーダーなのです!」
「あ、えっと……」
「焼きおにぎりも下さいっ。お米も食べたいお年頃なのですっ」
 職場の仲間の一面に呆気にとられつつも注文開始。
「美味しいものと皆の笑顔を肴に英気を養って、また明日からも頑張りましょ♪」
 グラスを置いたさくらが笑み。うむ、と再び頷いた千夜は瞳を眇めた。
 楽しく呑むなら仲間と一緒の方が良い。
 そんな酒の楽しさをこれから知る者達に実感してもらえれば良い、なんて。

 座布団に腰掛けたヒコが店員へ手を上げ。
「とりあえずは生……で良いか?」
 首を傾いだつかさに、初めての居酒屋に周りを見渡していたエトヴァは頷く。
「何を頼めば良いのデ?」
 なんたって初体験、メニューをしげしげと眺める。
「喰いながら決めれば良いんじゃないか?」
 つかさは慣れたもの。
「刺身と焼鳥は盛り合わせ、……後枝豆」
「俺は卵焼き食いてえ。それとたこわさ」
「ホッケの一夜干し」
「口直しの野菜も欲しいな、お浸し追加で」
 つかさの横で口を出すヒコも遠慮無く。
「流石、手際が良いのデス」
 運ばれてきたビールを掲げ。偶には野郎ばかりで親睦深めるのも悪くは無い。
「かんぱーい!」
「美味なのデス」
 酒を煽りふは、と息を零したヒコとつかさ。
「この一時が堪らねえな」
「もう少し暑い時期だと最高に美味いよな」
 ヒコが皿を突く横、グラスを両手で包んだエトヴァはふと尋ね。
「……皆様は結構飲まれるのですカ?」
「俺も呑む方だがつかさほど無茶な呑み方はしねえよ。どっちかってと喰う方が」
「疎影」
 答えるヒコに、つかさは眉を寄せ。
「卵焼き独り占めすんな、寄越せよ」
「ア、俺も食べたいデス」
「しまった、ばれたか」
 肩を竦めたヒコは悪戯げに笑い。
「まあまあ、これ旨いからも一個頼もうぜ。酒と一緒によ」
「仕方ねえなあ」
「……なんだか、誰かのお家のような雰囲気デスね」
「飯は何食うかなー」
「ラーメンもあるのですネ……」
 そして始まる近況報告会。
 気心知れた仲間とならば、お酒だってより楽しい。
 乾杯の音頭を任されたノルは、どきどきビールジョッキを掲げて。
「こうして集まれたことに感謝と、……これからも楽しくわいわいやっていこうね!」
 かんぱーい! 重なるグラスの音は心地良く。
 ビールを一気に飲んだ丁が、息を吐いた。
「あー、たまんないわね……!」
「日本酒とちがって、なんかにがい、ねぇ」
 飲み慣れない味にフィーラは瞳を瞬かせ。唐揚げをぱくり。
「でもやき鳥やからあげと合うのは、すごくよくわかった」
「ビールはポテトも割と合うぜ」
 ジョッキを傾けるアベルの言葉に、フィーラは目を丸く。
「へえ。ほかにもいろいろ、お酒のんでみたい。おすすめ、ある?」
「カクテルなんかも良いわよね。あ、エトはノンアルコールカクテルなんて雰囲気が出るんじゃない?」
 丁の言葉に未成年のエトワールはジュース片手。並ぶ焼鳥にどやっと笑みを深める。
「えへへー、どのジュースが一番焼鳥に合うか見つけちゃうのに、選択肢が増えちゃったね!」
「お、面白そうだな、俺もやりたい」
「郁くんも一緒にやろ!」
 エトワールは、笑顔で郁の利きジュースの参戦を歓迎だ。
 早速飲み物メニューを眺めだした郁は、ふと顔を上げ。
「そういやこういう時さ、焼鳥や唐揚げは外せないって思うけど。皆は何が好き?」
 俺は出汁巻き卵が好きと言う郁に、エリアスは肩を竦め。
「日本って旨いもんだらけだからなぁ?」
 まだまだ食った事ないものばかりだけれど、と。
「でも現時点では唐揚げがダントツで一位だな!」
 エリアスが笑って唐揚げを齧れば、フィーラが皆を見回した。
「かおるのすきな、だし巻きたまごもおいしいよね」
 頷くグレッグとアベル。
「だし巻き卵も良いよなー、素朴だが優しいのが、また」
「へえ、だし巻き卵はまだ食った事ないかも」
 アベルを見たエリアスは、よろしくとニンマリ。
「アベルさんならすごく綺麗に作れそう」
「あ、自分で作ると何故か一味足りなくてさ……、今度教えてよ!」
 郁が同意しながら焼鳥を一口。作るなら、とノルが手を上げ。
「俺の味で良ければいつでも。じゃ次作る時は一緒な」
「うん!」「やった!」
 交渉成立。アベルの返事にノルもエリアスも歓声を。
「好きな美味いもん食べれば、明日も一層頑張れるってやつよ」
 丁がサラダを取り分ける横で、フィーラは思案顔。
「すきなもの……」
 そのまま眼の前のパスタフリットを摘み。
「あ、おいしい。これすき」
 ノータイムでアベルへとフィーラはソレを差し出して。
「アベル、こんどこれ作って」
 齧ったアベルは少し笑う。
「お気に召したなら今度作ってやるさ」
「確かに美味しい」「癖になるなー」
 勧められるがままにノルも郁もぱりぱり。
 大人数で飲む事に慣れぬグレッグは、笑顔で眺めながらも何処か落ち着かず。日本酒瓶を抱えた丁が手を振った。
「グレッグ、飲んでる?」
「ああ、自分のペースでさせてもらっている」
「まー、でもグラス空いちゃってるじゃないの」
「おや、ありがとう。……では丁も」
「ありがと」
 日本酒を注ぎ合う丁とグレッグ。雰囲気でついつい進む酒。
 お皿を運んできたテレビウムのお供に郁は唐揚げを一つ。
「はい、お供、あーん」
「あら、お手伝いしたのね、えらいえらい」
 跳ねて喜ぶお供に丁も笑顔を綻ばせ。
「あのねあのね、郁くん焼鳥ね。青りんごジュースが中々いい相性だったよ!」
 利きジュースの結果をエトワールはご報告。
「お、飲んで見るかな」
「えへへー、どうぞ! お姉ちゃんは……」
 振り向くエトワール。お姉ちゃんの翼猫のルーナは、翼猫のロキと並んで丸く。
「エトワールの姉さんにも仲良くして貰ってんのか、ロキ」
「エリアスお兄さんの相棒さんと仲良しさん?」
 エトワールとエリアスは顔を合わせて、くすくす。相棒達のお友達が増えるのは嬉しい事。
「んー」
「大丈夫か、ノル」
 アルコールに強くは無いノルは、ふわふわ。グレッグに寄りかかってお水を勧められるがままに一杯。
「――楽しいね」
「……ああ」
 飲み会は、まだまだ続く。
 ラウルは桜色のカクテルを一口。
 豪快にビールジョッキを傾けたシズネに生まれる白い髭。続き、黄色い出汁巻き卵に箸を伸ばして。
「うまい」
「ん、ふわふわで美味しいね」
 ほろほろ広がる優しい出汁の味。
 しかしシズネの感じる違和感は、彼の甘い卵焼きに慣れてしまったからだろうか。
 そんな事知ってか知らずか、ラウルは柔く笑む。
「今度、甘くない卵焼きも作ってみようかな?」
「……そうだなあ」
 視線交わせば、思い起こすあの夜。
「――あの日から少しはお酒に強くなったと思わない?」
「その割にはりんごみたいに赤くなってるぞ」
 胸を張るラウルの紅色の頬を、笑いながら突くシズネ。
「そういう君こそトマトみたいに真っ赤だけど?」
 口先を尖らせて見せるラウル。
「オレは元からこんな色だ!」
 シズネの答えに、悪戯げにラウルは笑う。
「酔興の夜はまだ長いからね、気のすむまで付き合ってあげる」
「それじゃあどれだけ強くなったか見せてもらおうか」
 夜は、まだこれから。二人の前に重ねられる杯。
「鶏肉は良い」
 ポジションはメディック。
「脂が少ないし、筋肉の素となるからな」
「居酒屋で薀蓄垂れる男は嫌われるわよ、唐揚げ山盛りお願い」
 朝食と昼食は抜いて来ました。リリはルースに言い捨て、注文一つ。
「言った傍から脂臭いが」
「今唐揚げの悪口言った?」
 目を反らすルース。ふうん、とリリは瞳を眇め。
 野菜もスイーツも目もくれず、今日は鶏肉デー。
「へぇ、本当にそれなりに食べているじゃない」
 酒を煽りながら、二人は並べられていた焼鳥をどんどん胃へと収める。
「どうだ? 俺の本気を見た気分は」
 ハ、と鼻で笑うリリ。
「甘いわ。焼鳥はぼんじりを食えるようになってからが一人前よ」
「なんだよぼんじりって、尻の一種か」
 大体正解。横目でリリの串数を見たルースは、二度瞬き。
「……なぁ、アンタの串の本数を数えてみても?」
「は? 女の串の数を数えるつもり?」
 既に4倍はありそうですけれど。
「親族で集まる際はこういう座敷を使う事がありまして」
 冬真はビールを一口。
「鉄家の集まりも、このように賑やかなのですか?」
 同じくニコラスも酒を傾け。あの子――冬真の妻の有理は溶け込めているのか、と首を傾ぐ。
 ニコラスは有理の育った児童養護施設の園長。彼からすれば有理は子のような存在で。
「次期当主の妻という立場が重荷になるのではと心配でしたが、有理は楽しんでくれていますよ」
 顔を上げた、冬真は視線を交わし。
「あの子は小さい頃から他の子を気に掛け、大人の手伝いに回っていたもので……」
「昔から人を気遣う子だったんですね。――そんな優しい彼女を、僕は守りたいと思っています」
「……今の幸せは冬真さんと出会えたからこそですね」
「貴方は僕にとってもう一人のお義父さんのような存在ですから、本当に感謝しています」
「お義父さん……、なんでしょう目頭が熱く……」
 兎柄のハンカチで目頭を拭うニコラス。
 あれ、柄可愛くない?


 トリアエズナマ。
「なつみ、アイヴォリー、20歳おめでとう」
「祝・お酒解禁です!」
 杯を掲げたティアンの音頭に、皆が口々に祝の言葉を。
「アタシは+1だけどねえ」
「では、なつみへは+1の分、奢ろうか」
「嬉しいわ!」
 笑うなつみに、夜は笑ってグラスを掲げ。
「ぷはーっ!」
 これが言ってみたかった。初めての喉越しは心地良く、アイヴォリーはぴかぴか笑顔。
「黒ビールも深さとフルーティさで苦味に変化を感じて飲みやすいよ」
「……美味しい! ……ああ、わたくし、溺れてしまいそう!」
 夜のおすそ分けにも早速才覚を発揮するアイヴォリー。
「次は葡萄酒と焼き鳥!」「これも美味しいです!」
「おおっ、アイヴォリーどのイケる口ですな!」
 夜とアイヴォリーのやり取りにハガルが拍手一つ。
「今年で二十歳になった私もお酒飲めます飲みますよー!」
 獣の耳をぴんと立てたミリムも、『お酒と上手い付き合い方』という参考書を片手にキャベツをパリポリ。
「なつみさんもキャベツいかがです?」
「わーい貰うわ」
「僕も上手い付き合い方は知りたいですー」
 なつみの横。シャーマンズゴーストの夏雪と並ぶ月が、桜カクテルを手に小さく笑う。
「やっぱり一口目のビールは最高!」
 獣の耳をぴょこぴょこ。ミレッタもごきげんさん。
「ところでサイガ。それはゲコというやつか?」
「ハイ? これは新種のビールだし、アンタがひとりで寂しくねぇようにジュースでお揃いにしたんだよ、感謝しろ」
「そうなの、ありがとう」
 疑う事も無く頷くティアン。
「え? ゲコゲコサイガどの?」
「ゲコじゃねえよ」
「蛙か?」
 ハガルとサイガのやり取りに夜が尋ねる。それはジンジャーエールです。
「互いに酒に強い事は知っているの筈なのだが……」
 並ぶ黒髪と銀髪。
「澄華殿とは、酒よりも茶を飲む方が多いな」
「確かに、蓮殿と呑んだことは余り無かった。故に今日はいい機会だ」
 色々話そうではないかと澄華が笑み、冷の日本酒を一口。
「愚痴なりなんなり色々聞くぞ?」
「……花粉症が辛い、とかでは駄目か」
 鼻を鳴らし、瞳を眇める蓮。
「愚痴ならば、任務に忙しいお主の方があるのでは?」
「ふふ、久々に楽しい酒だ。また戦場に戻らねばだが、今日位は良いだろう?」
 笑う澄華。春野菜の天ぷらを突きながら蓮は頷いた。
「しかし、肴も良い選択だ。冷の日本酒に良く合う」
 ついつい進む酒に、澄華は首傾ぎ。
「おっと、蓮殿。私のペースに合わせなくてもよいぞ?」
 仲間内ではその酒の強さから『不沈艦』と呼ばれる澄華。
 同じペースは危ない、と。
「大丈夫、己のペースは心得ておるよ」
「そうか。ならば地元の旨い酒と肴に、絶世の美女を楽しむとするか」
「ふふ、口が上手いな」

「これ、何でも頼んで良いのですよね……」
「甘くて飲みやすいお酒はどれですかねー?」
「ええ、勿論! どれを食べても良いわよ」
 居酒屋初心者。月とミリムはメニューとにらめっこ。
 ミレッタは応えながら、手を止める事は無く。
「去年は日本に来たばかりで、初鰹と日本酒を合わせた美味しさが解らなかったのよね」
 鶏皮唐揚げも、お刺身も、お酒も何でも美味しい。
「あっ、これ鮪ステーキだわ……、美味しい……」
 肉でも魚でも、美味しいしか言えなくなっているミレッタ。
「ティアン」「ん」
 酒粕漬けの魚をティアンへと差し出す夜。酒を使っているが、酒精は飛んでいる為ティアンだって食べられる。
 その横でサイガの摘もうとした串をどんどん奪う、吸引力の変わらない女アイヴォリー。
「……大食らいからののん兵衛って強すぎやしねえ?」
「ふ、いいんですクロガネ。酒豪になれるならむしろ本望!」
 肩を竦めヤバいモノを見る目のサイガ。
「なつみ、そっちに皿を置くと全部持ってかれるぞ」
「もう実感したわ……」
「そうか……」
「なあ、こりこりしたあれが食べたいのだが、何と言ったか名前が出てこない」
 首傾ぐティアン。焼鳥の名前は難しい。
「ティアンの食べたいのはハツ? 軟骨?」
「追加ですか! ではハツと軟骨に加えて、もも!」
「OK、全部追加しましょう!」
「余りましたら拙者がいただきますゆえ、ジャンジャンバリバリ頼みましょう!」
「うん」
 ハガルの追加オーダーにアイヴォリーが元気に答え。頼んで貰えたティアンは長耳ぴるぴる。
「そうだ。皆は、おとなになったから何になりたいとかあるか?」
 なれたのか。ティアンは興味津々首傾ぐ。
「はて、なれたのですかなぁ、どうなのでしょう! あっはっは!」
 ヘラヘラ笑うハガルはそろそろ脳に酒が回っている。
「おとなねえ」
 鼻を鳴らしたサイガに夜が瞳を細め。
「オトナになっての喜びは皆と会えたことかな」
「およ。夜クンのが介抱必要そう?」
 誂い逃げるサイガは、きっとまだ途上なのだろう。
 ふんわりと身を包む酩酊感。
 夜の肩に身を預けるアイヴォリーに、大人の実感なんてない。
 でも、唯こうして自分の好きなひとたちと、好きなものを楽しむ時間を選べる事。
 きっと、それが――。

「なつみさん、それちょこっと味見してもよいですか?」
「いいわよー」
「……こうして飲んでいるとオトナっぽくなった感じしますよねー、うふふ、おいしーい」
 月とカクテルを交換するなつみ。
 ミリムは心地よい酩酊感に身を任せて。
「なつみさんもそうは思いません? あれ? ふたり?」
 あれ、なんだか周りの人が増えてきたなあ。
「……ミリム?」
「わー、ふたりともお誕生日おめでとう!」
「ミリム、ミリム? あたしは一人よ? ミリム?」

 ヒールでは治らない酔い。
 お酒は、自分にあった量を程々に。
 楽しい時間は、もう少しだけ続くのです。

作者:絲上ゆいこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年4月16日
難度:易しい
参加:33人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 4
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