アイスエルフ救出作戦~真摯なる陽動援護

作者:柊透胡

 大阪城内に取り込まれた、宝瓶宮グランドロンの『破片』のひとつで、エインヘリアルの第四王女レリは、同じく宝瓶宮グランドロンの『破片』のひとつを拠点とする、第二王女ハールとの間で回線を開き、情報を交換していた。
 議題は、当然、ケルベロスへの対策である。

『ケルベロスの襲撃の情報が欺瞞情報の可能性があります。アイスエルフの忠義を確かめる為にも、男のアイスエルフを復活させ、前線に配置しなさい』
 このハールからの指示に、レリは、
「男のアイスエルフこそ、裏切る可能性が高いでしょう。ケルベロスの迎撃は、信頼できるものだけで行うべきでしょう」
 と答え、白百合騎士団による防衛すべきだと意見を返す。
 ハールは、何度か注意を重ねた後、
『砕かれたグランドロンの『破片』が、再び揃おうとしています、その前に、大阪城の『破片』が失われる事だけは無いように、心して守り抜きなさい』
 と念を押し、通信を切る。
 この通信の後、第四王女レリは、グランドロンの警護として、騎士団の後方支援を担う蒼陰のラーレと、戦力としては期待できないアイスエルフの女性達を残すと、騎士団主力を率いて、ケルベロスの迎撃へと出陣したのだった。

 
「大阪都市圏防衛戦、お疲れ様でした」
 珍しく微笑を浮かべ、都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)はケルベロス達を迎えた。
「今回の作戦で、多くのアイスエルフを救出出来ました。大成功と言って過言ありません」
 とは言え、救出出来たのは、女性のアイスエルフのみ。
「これまでの動向から察せられますが、エインヘリアルの第四王女レリは、男性を信用していないようです」
 アイスエルフの男性はコギトエルゴスムのまま、グランドロンの宝物庫に閉じ込められているようだ。
「救出したアイスエルフ達から、この男性アイスエルフの救出を嘆願されています」
 彼女達にとっては、家族であり恋人であり友人であるのだ。大切な者を助けたいという切なる想いを無碍には出来ない。
「男性アイスエルフの救出作戦に先駆けて、有志のアイスエルフ達が、ケルベロスの元から脱走したと見せ掛けて大阪城に戻ります。偽情報で敵を攪乱してくれるそうです」
 男性は信用しない一方で、女性は大事に遇するレリの事だ。偽情報を疑わずに行動する可能性が高い。
「アイスエルフ救出作戦は、少数精鋭での隠密作戦となります。これを成功させる為には、アイスエルフが流す偽情報の通り、大阪城へケルベロスが襲撃をかける陽動作戦が不可欠です」
 創が送迎に当たる本チームは、この陽動作戦の担当となる。
「皆さんが戦う事になるのは、第四王女レリ配下の白百合騎士団のエインヘリアルと、緩衝地帯で活動していた『竹の攻性植物』の混成部隊です」
 陽動作戦である為、迎撃してきた第四王女の騎士団と戦闘しつつ、頃合いを見て撤退すれば良い。
「例えば……『第四王女レリ』、『沸血のギアツィンス』、『絶影のラリグラス』といった精鋭と遭遇した場合は、撤退して戦闘を避けても問題ありませんが……複数のチームでの連携が叶えば、有力な敵を釣り出して撃破する事も可能でしょう」
 敵は、守りを固めつつ増援が来るのを待つという戦術をとる。故に、敵を発見して攻撃、増援が来る前に撤退――を繰り返しながら、敵の目を引き付けていく事になるだろう。
「第四王女や精鋭の騎士の撃破を狙う場合、仲間同士の連携は勿論、敵の増援を阻止して孤立させる方法を考える必要があります」
 先の作戦で、多くの騎士をケルベロスに殺された第四王女側の戦意は高い。この状況を上手く利用出来れば有利に戦える筈だ。
「又、潜入チームが動き易くする為の陽動作戦ですが、陽動と気付かれては意味がありません。ケルベロスも本気と思わせる戦い方が必須となってきます」
 今回の救出作戦は、チャンスと言える。好機を活かす事が出来れば、アイスエルフを仲間にする事が叶うだろう。
「それでは、宜しくお願い致します。どうかご武運を」


参加者
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
四辻・樒(黒の背反・e03880)
ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)
月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)
カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)
時雨・乱舞(純情でサイボーグな忍者・e21095)

■リプレイ

●真摯なる陽動の始まり
 大阪市緩衝地帯――その日。少なからずのケルベロス達が、攻性植物の拠点となって久しい大阪城を目指すように、一斉に来襲した。
 正しく、陽動だ。アイスエルフの手引きで城内に侵入する『本隊』を気取られぬよう、迎撃態勢の白百合騎士団を派手に攻め立てる。
 そして、陽動チームの一部は、名のある指揮官に標的を定めていた――敵から奇襲を受けぬよう、周囲を警戒しながら進む彼らも、その1つ。
「さて、大物は釣れるだろうか? まぁ、釣れても釣れなくてもやる事に変わりは無いのだけどな」
(「陽動であり、持久戦になりそうな感じか」)
 中々遣り甲斐のありそうな作戦だと、四辻・樒(黒の背反・e03880)は思う。
「役割はきっちり果たして、作戦の成功にも貢献したい所だな」
「どんな敵が相手でも、やる事は同じなのだ」
 応じる月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)は、ギュッと銀槍と銘したライトニングロッドを握り締める。
「ただ、仲間の背中をきっちり守る、それだけでいいのだ」
 遠目に、緑に埋もれた大阪城が見える。久方ぶりの光景に、思わず唇を尖らせる灯音。
(「むぅ、大阪城は返してもらうのだ。いつか必ず絶対に」)
 その為にも、今はやるべき事をしっかりと。
「さてさて、ギアツインスとやらが撃破されるように、あたし達は加勢を阻止しなくてはのう」
 付け髭を捻りながら呟くウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)。
「嘘から出た真、この陽動で大きな戦果を挙げ大打撃を与える気で、攻めてみるのじゃ」
 だが、周囲に他のチームの姿はない――確かに当初、有力な敵を狙うチームは一緒に行動する算段であった。だが、大阪城防衛の為、白百合騎士団は戦力を薄く広く展開。つまりは、指揮官もそれぞれ別の方面を担当しており、ケルベロス側も早々に散開せざるを得なくなっていた。連絡を密にしたくとも、敵地で通信機の類が使えぬのは周知されて久しいお約束だ。
「あちらに、一部隊います……攻性植物とエインヘリアルは半々ですが」
 方向音痴でも、チームが見える範囲でなら大丈夫の模様。翼飛行を以て索敵してきたカルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)の報告通り――果たして、交差点の中央に凛と立ち、配下に指示しているのは『絶影のラリグラス』。かつて、ケルベロスとも戦った事のある指揮官の1人だ。
 ケルベロス達はビルの陰より、仕掛けるタイミングを窺う。
(「この戦い、陽動とはいえ、油断は出来ない」)
 真剣な面持ちで、無名刀と越後守国儔の柄に触れる水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)。
(「恐らく、本気で戦って漸く、対等だろうからな」)
 敵戦力は、竹の攻性植物が5、エインヘリアルがラリグラス含めて5。ラリグラスは湾曲した短刀2本を佩く。白百合騎士団の一般兵達はルーンアックスを携えているのが2名、ゾディアックソードとバトルオーラが各1名のようだ。
 ポジションまで見定められれば重畳であったが……待機状態にあるのか、判然としなかった。
「陽動作戦……倒してしまってもいいのですよね……? 頑張りましょうか!」
 右の機腕をグルリと回す、時雨・乱舞(純情でサイボーグな忍者・e21095)のその意気や良し。
「よし! ガンガン行こう!」
 ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)も、不敵な表情で身構える。
「鬱陶しく思われるくらい、立ち続けてやるさ」
 頷いたカルナも、痩身に違う膂力でドラゴニックハンマーを担ぐ。
「そうですね。敵をバンバン倒して、ケルベロス此処にあり、的な注目を集めなくては」
「それでは今日も元気にロックに! ケルベロスライブ、スタートデス! イェェェェイ!!」
 ギュイィィィンッ!
 開戦の声を上げ、シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)はギターを激しく掻き鳴らした。

●襲撃迎撃
 ギターの唸りと同時、飛び出してきたケルベロス達を、絶影のラリグラスは冷ややかに見やる。
「迎撃せよ」
 端的に命じるラリグラスを中心に、竹の攻性植物と白百合騎士団の混成部隊は、整然と迎撃態勢へ。
「まずは、定石」
 逸早くゾディアックソードを掲げ、後衛にスターサンクチュアリを敷く樒。
 後方より狙いを付けようとして、カルナは微かに眉根を寄せた。敵のポジションはまだ知れない。まずはラリグラスに轟竜砲を放とうとして――気付いた。眼力が報せる命中率が常より相当に低い事に。
「指揮官は、キャスターです」
 だが、標的は変えない。元より、轟竜砲はカルナの得手。よくよく狙いを付ければ、命中自体は叶う。キャスターには、スナイパーの足止め技を。作戦の定石とも言えよう。
(「ラリグラスも一角の勇者でしょうから、相手にとって不足はありません」)
「存分に、楽しく撃ち合いましょう」
 轟音と共に迸った竜砲弾を、竹の攻性植物が遮ろうとは。すかさず、ラリグラスの刃が閃き、乱舞を切り裂く。
「イェェェェイ! 竹はディフェンダーデェス!」
 百戦百識の陣を見定めながら、シィカの断言した通り。まずは盾を潰えんと、ラリグラスを庇った攻性植物に攻撃を集中させるケルベロス達。
「攻性植物は、皆前衛だよ!」
 都合がいいとばかりに笑みを零し、ヴィルフレッドは纏めて凍らせんと絶対零度手榴弾を投げ付ける。
「そろそろ白百合の首を手折らせてもらおうじゃないか」
 だが、攻性植物の内2体が同胞を庇い、エインヘリアルが描いた星座の守護が凍結を剥離させていく。
 ――刀の極意。その名、無拍子。
 鬼人の斬撃が奔る。それは、認識したとして躱す事能わず。長き時を刀と共に過ごし、常に刀を振るい続けた者のみが至る事の出来る極地の技。
「……っ」
 最初から出し惜しみしない刀術の基礎にして奥義を、更に別の攻性植物が阻む。
「まさか……竹全部が、ディフェンダーじゃと?」
 思わず目を見開いたウィゼの言葉通り、攻性植物はエインヘリアルを庇う盾という訳か。そして、ウィゼが動くより早く、攻性植物も次々と反撃。投げ付けられた火薬が爆ぜ、毒帯びた竹槍を突き立てられ、麻酔弾がばら撒かれる。そして、バンブートラップがケルベロスを捕らえんと。
「くぅっ!?」
 敵も眼力を具えるならば、その何れもが最も実戦経験が浅く、且つ近距離攻撃も届く乱舞を狙う。時にシィカとヴィルフレッドが、そして乱舞の相棒たるライドキャリバーのシラヌイも庇い立てたが、如何せん、敵の数はケルベロスより多い。エインヘリアルも半数は回復に手を割きながら、斧刃が連続して唸りを上げる。
「樒、厄介そうなのばかりなのだ」
 やれやれと言わんばかりの面持ちで樒に声を掛けながら、灯音は乱舞に魔術切開とショック打撃伴う緊急手術を敢行する。
(「アイスエルフの者達があたし達の事を信じてくれたのじゃ。なら、その信頼に応えてやらねばならぬのう」)
 改めて気合を入れたウィゼのスターゲイザーが翔ける。よくよく狙い付けた蹴打が、攻性植物の足を刈れば、灯音のヒールで持ち直した乱舞は全身のミサイルポッドを露にする。
 ――――!!
 乱舞が攻性植物へ大量のミサイルを浴びせると同時に、シラヌイも内蔵ガトリング砲を掃射した。

●絶影のラリグラス
 戦闘開始より数分――ケルベロス達は攻めあぐねていた。
(「見切りには気を付けておるんじゃが」)
 スターゲイザーと地裂撃を交互に放つウィゼは、硬い手応えに眉根を寄せる。
 数手に及ぶ挙動より、敵のポジションも見えてくる。ラリグラスはキャスター、竹の攻性植物5体はディフェンダー。白百合騎士団の一般兵は、ジャマーとメディックに分かれている。
 5枚もの盾をメディックが癒し、ゾディアックソードを携えたジャマーが厄を掃う。明らかな防御偏重。主な火力はラリグラスとジャマーの斧使いで、元よりブレイクの術は豊富だ。頻繁にスチームバリアを散らされ、ヴィルフレッドは悔しげに顔を顰める。
「てめぇ、ラリグランスだったか?」
「ラリグラス、だ」
 わざと間違えたと思われたか。彼女の視線は鬼人を射殺さんばかりに険悪だ。
「エインヘリアルのてめぇに、個人的に言いたい事があるんだ」
 構わず、鬼人は飄々と言い放つ。
「地球への罪人の不法投棄と、強引な勧誘は遠慮して……っ」
 挑発めいた言葉で気を引くのが目的であるが、ラリグラスとて黙って聞く義理は無い。呵責ない斬撃を目印に、配下の攻撃も鬼人へ集中する。ケルベロスはディフェンダーに掛りきりであり、ノーマークで振るわれる刃は脅威。
「私は確実に戦力を削ぎ落としていくとしよう……灯、そちらは任せた」
 手裏剣スコールで弾幕を張る樒に頷き返し、すかさず、鬼人にウィッチオペレーションを施す灯音。
「今日のステージは貴方のためのもの………だから、聞いてほしいデス! ボクの歌を! 届けてみせるデス!!」
 シィカも全身全霊、全力全開。渾身の聖唱を以て、癒しを奏でる。
「……全く、厄介事を処理するこっちの身にもなってみろってんだ」
「私はレリ様の手足。頭脳の判断に挟む口は無い」
 鬼人を睥睨し、ラリグラスは冷ややかに吐き捨てる。
 格上のキャスターであるラリグラスの撃破を狙うには、まず、その足を止める必要がある。だが、ディフェンダーに庇われてはそれも儘ならない。故に、盾の掃討を優先するのは、けして間違ってはいない。
 だが、その盾が複数あれば――元より打たれ強く、盾同士でも庇い合う。更に、メディックのヒールが注がれれば、1体倒すのさえも時間が掛かる。
 各個撃破の追加ダメージを見込める氷の技はそれなりの準備があったが、装甲を破る技はヴィルフレッドのフォーチュンスターのみ。最初の標的がディフェンダーであれば、『硬い』敵とやり合うのも必然。その『硬い』敵を短時間で撃破する、という観点が弱かったかもしれない。
(「レリの方を気にする余裕は持たせませんよ」)
 翡翠の双眸に決意を込め、カルナはゼログラビトンを放つ。
 尤も、有力な指揮官を擁する部隊を1チームで撃破するのは相当に無理がある。その点はケルベロス達も承知の上。他の増援に向かわせない事を前提に臨んでいたのも確かだ。
 だが、長期戦を目するならば、敵の命中率を下げるプレッシャー、火力を削ぐ武器封じ、回復を削ぐアンチヒール、攻防一体のドレイン等、継戦力重視の基準があった筈。ちなみに、敵を封殺するパラライズは強力だが発動率は低い。相当に厄を積まなければ発動も安定しない為、手数を費やすという点で長期戦向けだ。
 そう、厄は必ず発動する訳ではない。安定した効果を求めるならば、グラビティの取捨選択は重要。ケルベロスの得手不得手もスタイルも様々だが、共に戦う上で作戦の方向を一致させる意義は大きい。
 戦況は厳しく、好転の気配も遠い。
「……っ」
 特に、サーヴァントと魂を分け合う身で中衛にいる乱舞は、頻繁に集中攻撃を浴びせられて青息吐息。ヒールにも限度がある。それでもまだ立っていられるのは、敵が防御偏重で回復に厚かった幸いだが……本来、『白百合騎士団』随一のスピードを誇り、影すらも追い付けないと謳われる『絶影』のラリグラスが、何故ここまで腰を据えた戦術を採ったのか。
 ――――!!
 突如、鬨の声が空気を揺るがす。
「ラリグラス様、ご無事ですか!」
「ラリグラス隊長をお守りしろ!」
 四方八方に現れる白百合騎士団の増援。彼女の唇が、綻んだ。

●撤退死線
 今回、大阪城防衛の為、広く展開されていた白百合騎士団。この方面の指揮官、ラリグラスを――旗印をけして喪ってはならぬと、増援は大きな波のように押し寄せる。
「潮時だな」
 戦闘不能者はまだ出ていない。本隊の作戦の成否はまだ不明。他の指揮官の生死も又不明――だが、このままでは、多勢に轢き潰さるのは必至。
 忸怩たる思いで、鬼人は決断する。
「退くぞ」
 バイオガスを使うか逡巡して、鬼人は結局取り止めた。
 バイオガスは「戦場内の様子を見えにくくする」効果があるが、ガスが立ち込めて「戦場」と知れる事自体が、増援の目印となりかねない。又、増援を突破する時点で既に同じ戦場に立っているのだ。全力で血路を拓き、離脱を図る方が手っ取り早い。
 素早く、撤退の方向を確認する鬼人。そちらからも増援が迫ってきていたが――構わず突撃する!
(「無事に帰れるように……祈っていてくれ」)
 刹那、胸元のロザリオに触れた手が、次の瞬間、抜刀して月光斬を放つ。
「邪魔しないで、ボクの歌を聞くデスよー!」
 バイオレンスギターを掻き鳴らし、シィカは「幻影のリコレクション」を歌う。追憶に囚われず前に進み続けようと。
「穿ち、枷となれ」
 迫り来るエインヘリアルに牽制のナイフを投擲しながら、樒は灯音に気遣いを寄せる。
「灯、大丈夫か? 帰還まで連戦になるだろうから、無理はするなよ」
「終わったら、温泉旅行にいきたいのだ。樒っ、温泉卵に温泉トマトなのだっ!」
 最愛に見せたのはむくれた膨れっ面。だが、甘えるような表情が一転、灯音は最後までメディックを全うせんと。
「舞え、桜花」
 桜吹雪を顕現させ、仲間を癒し続けた。
「風よ、嵐を告げよ」
 先頭に立って血路を切り拓くシィカと鬼人が孤立しないよう、カルナは凍楔破砕嵐を喚ばう。次元異相から召喚した嵐は魔力帯びた氷晶を伴い、決して溶ける事は無い――敵に意図を悟られぬよう、細心の注意を払い援護を続けた。
「ヘーイ、キャレイジ。ハロウィンパーティ会場まで連れて行っておくれなのじゃ」
 カルナと同じスナイパーながら、ウィゼは対照的に、南瓜の爆車に乗って突撃する。縦横無尽に駆ける爆車が、敵を轢き飛ばしながらにいつの間にか増えているように見えるのは……気の所為ではない。
「さあ、我が幻影達よ……踊りなさい!!」
 よろめく攻性植物に駆け寄り、印を結ぶ乱舞。自らの影分身を無数に作るや、一斉攻撃。幻影に踊らされ、きりきり舞いのバンブーソルジャーは追撃に次ぐ追撃で瓦解する。
 ――――!!
 混戦の最中、乱舞の脳天目掛けたエインヘリアルの一撃は、ヴィルフレッドの九尾扇が受け流した。すかさず、ライドキャリバーが相棒を乗せて疾駆する。
「ふっふーん、庇うのに男女差はないのさ、信頼に男女差は関係ないからね!」
 得意げに言い放つ少年をオーラの弾丸が喰らい付くも、両足で踏んばり耐え抜く。
(「喩え、ぼろっぼろになろうとも、限界まで立ち続ける……皆で、帰るんだから!」)
 振り返っても、ラリグラスの姿はもう見えない。唇を噛んだのは一瞬の事。ヴィルフレッドは身を翻して仲間を追い掛けた。

 ケルベロス達が本作戦の戦果――アイスエルフの救出とコギトエルゴスム奪取。及び、蒼陰のラーレ、愛でる者・アーヴェイル、そして、沸血のギアツィンスの撃破を報ったのは、無事に生還してからとなる。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年4月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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