アイスエルフ救出作戦~貴女の願いと皆の想い

作者:雪見進

 大阪城内に取り込まれた、宝瓶宮グランドロンの『破片』のひとつで、エインヘリアルの第四王女レリは、同じく宝瓶宮グランドロンの『破片』のひとつを拠点とする、第二王女ハールとの間で回線を開き、情報を交換していた。
 議題は、当然、ケルベロスへの対策である。

『ケルベロスの襲撃の情報が欺瞞情報の可能性があります。アイスエルフの忠義を確かめる為にも、男のアイスエルフを復活させ、前線に配置しなさい』
 このハールからの指示に、レリは、
「男のアイスエルフこそ、裏切る可能性が高いでしょう。ケルベロスの迎撃は、信頼できるものだけで行うべきでしょう」
 と答え、白百合騎士団による防衛すべきだと意見を返す。
 ハールは、何度か注意を重ねた後、
『砕かれたグランドロンの『破片』が、再び揃おうとしています、その前に、大阪城の『破片』が失われる事だけは無いように、心して守り抜きなさい』
 と念を押し、通信を切る。
 この通信の後、第四王女レリは、グランドロンの警護として、騎士団の後方支援を担う蒼陰のラーレと、戦力としては期待できないアイスエルフの女性達を残すと、騎士団主力を率いて、ケルベロスの迎撃へと出陣したのだった。

「大阪都市防衛戦では、多くのアイスエルフさんたちを……えっと、『保護』する事が出来ました」
 そう言葉を選びながら説明をするのはチヒロ・スプリンフィールド(ヴァルキュリアのヘリオライダー・en0177)。保護とはいえ、様々な理由で一時的にケルベロスに保護されているアイスエルフがいる。
 『帰る場所が無い』『仲間を守りたい』『エインヘリアルが信用ならない』など、理由は様々。ですが、ほぼ共通している想いがある。それは、男性アイスエルフの救出だ。
「エインヘリアルの第四王女レリは男性を信用していないようなので、男性アイスエルフはコギトエルゴスムのまま、グランド論の宝物庫に閉じ込められているのです」
 レリ王女がどう考えているかは不明だが、アイスエルフの中では、男性アイスエルフを人質として取られていると感じ、救出して欲しいという嘆願があった。
「その願いを受け、大規模な作戦を実施することになりました」
 それが、アイスエルフの救出作戦。有志のアイスエルフ達がケルベロスの元から脱走したと見せかけ、大阪城で偽情報を流し混乱させ、その隙に潜入班が大阪城に潜入し、アイスエルフたちを救出、保護を行う。
「非常に危険な任務となりますが、アイスエルフの皆さんの為にも、頑張って成功させましょう!」
 そう言うと、想定される内部の状況についての説明に移るチヒロだった。
「皆さんには、潜入後、まだ協力するとお約束していない女性アイスエルフさんたちとお話しに行っていただきます」
 『お話』なんて言っているが、要は『説得』だ。前回の作戦でも全てのアイスエルフがケルベロスに保護された訳ではない。ケルベロスたちに不信感を抱き、撤退したアイスエルフもいる。
「ただ……話は聞いてくれると思います」
 大阪都市圏防衛戦の報告書に目を通しながらのチヒロの言葉は、願いか願望か、それとも確信か……。
 少なくとも、即座に攻撃してくる事は無いだろう。
「そして、『お話』なのですが……」
 肝心のアイスエルフの説得だが、前回の戦いで撤退したアイスエルフたちが現在の地球の状況については説明をしていると考えられる。
「なので、皆さんには地球に住んで、楽しかった事を教えてあげてください」
 チヒロ自身が定命化して、手に入れた『思い出』が、目の前に並べられる。彼女はヴァルキュリア。エインヘリアルの命令とはいえ、無関係な地球人の命を奪おうとした事もある。そんな彼女が、笑顔でこの場にいるのは、ケルベロスの助力の結果だ。
「そして、説得がうまく行けば、その後の行動はお任せします」
 そのまま、説得が成功した場合の説明を続ける。もし、失敗した場合は、説得に応じてくれた女性アイスエルフを保護しながら撤退する以外の選択肢は無いが、成功すればその後は、様々な選択肢がある。
「他の潜入部隊は、グランドロンへと向かいます」
 そこへ救援に行くのが、チヒロが提案する選択肢。実際、説得に応じたアイスエルフたちも、それを願う可能性が高い。
 だが、それ以外の選択肢を選ぶ事も出来る。男性アイスエルフの保護は他の班を信じて任せ、保護したアイスエルフの安全を最優先に、脱出するという選択肢もあるだろう。
「説得成功の後の選択肢は、皆さんにお任せします」
 そう言うチヒロの言葉には、危険な潜入任務に挑戦するケルベロスたちへの信頼がある。
「皆さんなら、アイスエルフの皆さんとも、お友達になれると信じています」
 説明を終えたチヒロは、ゆっくりと頭を下げ、様々な想いと共に、ケルベロスたちへ後を託すのだった……。


参加者
ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)
愛柳・ミライ(宇宙救命係・e02784)
羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)
空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709)
那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)
款冬・冰(冬の兵士・e42446)
笹月・氷花(夜明けの樹氷・e43390)
ベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)

■リプレイ


 真田の抜け穴から、ケルベロスたちが潜入を開始した。
 少し先を進むのは那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)と空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709)。斥候として、先行しながら、進路調査と周囲警戒を行う。
 大阪城の内部では、アイスエルフたちの偽情報による陽動と案内により、アイスエルフたちが待機している場所へと向かっていた。
(「あの二人はいるかな?」)
 摩琴は以前の作戦で話をしたアイスエルフとの再会を願いながら、大阪城の中を慎重に進む。
(「先日は無礼なことをしてしまったみたいだし、信用を得られるのは難しそうだね」)
 笹月・氷花(夜明けの樹氷・e43390)も心配な気持ちを胸の奥に押し込みながらも、歩を進める。
(「これで少しは場の空気が緩めば上々なのですが」)
 ベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)はコートの下に、説得の準備をしていた。そんな想いの中、アイスエルフたちが待機している場所へとたどり着くのだった。

 目的地に到着すると、そこで待機していたアイスエルフたちは、なんと300人を超える数。
「……ボクはマコトだよ♪」
 一瞬、アイスエルフたちの数に躊躇するも、すぐに笑顔を見せ挨拶する摩琴。
「噂のケルベロスか、何の用だ」
 突然現れたケルベロスたちに、一人のアイスエルフが立ち上がり、値踏みでもするかのような視線をケルベロスたちへ向ける。彼女は、以前の作戦でケルベロスが遭遇したアイスエルフではない。
「話したい事は色々あるが、まずは何よりも先に謝罪したい。一部の物が貴女方に失礼な態度をとってしまった事は、本当に申し訳なかった」
 最初に言葉を発したのはムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)。
「……」
 そんな謝罪の言葉への返答は沈黙だった。
「……今は、許してなんて、とても言えないの。ごめんね、ごめんね……」
 沈黙の中、愛柳・ミライ(宇宙救命係・e02784)が言葉を続ける。さらに、武器を収めるケルベロスたち。そんな行動に、アイスエルフたちは沈黙していた。
「……」
 しかし、ケルベロスたちは沈黙の意味を取り違えていた。
 最初の言葉が謝罪の言葉だった事に、実はアイスエルフたちは困惑していた。以前の作戦でケルベロスとアイスエルフの間で何かあった者もいたようだが、それはごく一部だ。
 武装解除に関しても、ここは敵の支配領域の中。アイスエルフたちが攻撃しなくとも、エインヘリアルや攻性植物が襲いかかってくる可能性は十分にある。
「……えっと、それはいいから。貴方達は、何をしにここに来たの?」
 彼女たちは、ケルベロス側に付くか、それともエインヘリアル側に付くか、様子を見ているのだ。
「本日はお話がしたく。冰達の事を、色々」
 そんな困惑の空気の中、口を開いたのは款冬・冰(冬の兵士・e42446)。
「話せば、なにかつかめることもあるはずだから」
 羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)が冰の言葉に繋げる。
「今度は落ち着いて、お話したい」
 さらに摩琴も『話』をしたいと言葉を続ける。
「わかった……」
 ケルベロスたちの様子に、差し迫った危険が無いと判断した様子のアイスエルフたちは、話を聞く態勢になるのだった……。


「あんたらには、大切な人や好きな人はいるか?」
 ムギの言葉に、アイスエルフたちは誰かに想いを巡らすような表情を浮かべる。
「俺にはいる。大切で大好きな人でさ、その人と一緒に笑い合いながら何気ない日々を送るのが、俺の何よりの幸せなんだ」
 続く言葉に、反応した一人のアイスエルフ。
「なるほど。大切な仲間と共に、敵を制圧する事。それは、とてもいいものですよね」
 微妙に何かニュアンスに違いがあるかもしれない反応。そこは『制圧』と『氷』を司る妖精種族ならではの反応だろうか。
 その後に続くムギの言葉に、耳を傾けるアイスエルフたち。
(「説得ってのは正直苦手なんだが、戦わないですむならそれが一番だ。その為なら、どんな努力だってしてみせるさ」)
 デウスエクスとケルベロスたちの考え方の溝の大きさを感じさせるも、ムギの言葉に込められた強い願い、そして……。
「好きな人と一緒に運動したり、美味しい食い物を食べたり……」
 語りながら、逐次強調されるムギの筋肉。そんな視線に注がれる視線は、畏怖と憧憬と……別の何かの感情。
「……ふ〜ん」
 必要以上に何かの感情が込められた視線。
「この地球では、多種多様の種族が交流を深めあう。それは有意義で、素敵な事だと認識」
 そんな視線に何かを感じたのか、それとも別の意図か冰が説得を引き継ぐ。
「種族すら違う他者の長所、力量を認め、信じて役割を託し、協力する事で困難な目標を達成した課程は、心地よく、楽しくもあったと回想」
 少々、独特な口調の冰だが、その言葉以上に異種族というものに、関心を見せるアイスエルフの姿がある様子。
「……理解出来ない。そもそも、種族すら違う者を信じる事など可能なのか?」
 冰の言葉に返答する言葉は否定的だが、拒否的ではない。
「可能、不可能ではなく、体質、得て、不得手、文化、思想等の交流を繰り返す事で視野が拡大され、その上で考慮」
「……やはり理解出来ない」
 冰の言葉に、やはり首を横に振るアイスエルフ。しかし、興味はある様子だ。
 そんな様子に、一瞬だけ摩琴に視線を送る冰。対して、ウィンクで返す摩琴。
「あなた達の事も、冰は知りたい」
「もし、信じてくれるなら、ボクは全力でアイスエルフのみんなを守るよ!」
 冰と摩琴の言葉を拒否する様子はアイスエルフたちには見えない。
「私も嘗ては螺旋忍軍に籍を置くダモクレスだった」
 その様子を見て、説得を引き継のはモカ。
「私が今こうして貴女達と話せているのも、私の罪を許し、人の心を与えてくれた恩人のお陰だ」
「……敗北したのに、その後も生かされているという事なのか?」
 モカの言葉に、小さな独り言を呟くアイスエルフもいるが、それは彼女の個人的な感想。単純に螺旋忍軍をよく知らないのか、ダモクレスを理解していないのか……ともかく、言葉の真意は不明だが、モカの話を理解していない事だけは分かる。
「そして、私は色々な事を学び、知り、日々の生活の中で様々な友人を得た」
 モカの言葉の中で『友人』という言葉に反応した一人が質問をする。
「その『友人』とは、地球人の事なのか? シャドウエルフやヴァルキュリアの事なのか? それとも他の異種族も含むのか?」
 その質問に笑顔で答えるモカ。
「そうだ。私は貴方達とも友達になりたい」
 差し出す手に、一人のアイスエルフが答える。しかし、大半は頭の上に疑問符を浮かべている。
「その『学ぶ』という事についてだが……」
 ケルベロスたちの言葉の中から、気になる単語を抜粋して質問するのは、知りたいという気持ちだろうか。
 それに丁寧に答えていくケルベロスたち。一瞬、冰に視線を送ると、時計を指差し、芳しくない反応を返す。
 作戦としては、説得が迅速に行えた場合には、別の班へ援護に行く予定だったが、それは難しそうだった。
「地球では『学ぶ』方法は様々です」
 その反応を見て、ゆっくりと質問に答えたのは、ベルローズ。ならば、丁寧に説得しケルベロスの事を、地球の事を知って欲しいという気持ちを説明に込める。
 その想いと共に、コートを脱ぐと、その下からは、日本の学生なら思入れがある人も多い服、学生服が現れる。
「アスガルドにも学ぶ場所があるかもしれませんが、地球には学校というものがあります」
 ベルローズの説明を興味深く聞く者と、興味が無さそうな者、反応はやはり雑多。
「そこでは、読み書きや算術、歴史等の勉学だけでなく……」
 ベルローズの説明は、学校という施設を多くの視点から見た説明を行う。
 やはりというか、どの種族でも同じなのかもしれないが『異性』や『恋』と言った単語に反応する者が多い。
「その服も学校と関係するのですか?」
「ああ、これは学校の制服ですよ」
 後は女性だからだろうか、ベルローズの着ている制服に興味がある様子。
「……多くの者が、同じ服を着るのか?」
 しかし、やはり理解しているとは言えない状況。
 ただ、様々な話をする事で、ケルベロスたちの話に興味を抱く者が、徐々に増えていく。
 だから、今はアイスエルフの興味に答える為に、会話を続けるのだった……。


「皆と一緒に日本中の事件の起こっている場所で、人々の救助活動を行なっているんだけど、それは種族の違う人たちとも協力して、無事に人々の役に立てたら、達成感があって嬉しく感じるよ」
 氷花が説明をするのは、彼女が皆と出会えて嬉しかったこと、楽しかったこと。
(「真摯な気持ちを告げたら、きっと心を許してくれるよね」)
 異種族であっても協力し、助け合う事が楽しく、嬉しいと氷花は言う。
「皆も、他種族との共存も勿論可能だろうし、一緒に共闘する事で、新たな絆が生まれる、それはとても喜ばしい事になると思うよ」
 そんな協力体制には、旅団の説明も欠かせない。結衣菜が簡単に旅団の説明をする。そして、それが好きな自分の気持ちを続ける。
「旅団では、いろんな仲間がいる。心置きなく話せる人がいて、同じ思いを抱いている人もいる。そして、大事な人だって居る」
 そっと、自分の『大事』な気持ちを抱きしめるように、自分の手を握る結衣菜。
「頼りになる先輩もいて、私はその人達と過ごすのが幸せよ」
 結衣菜はシャドウエルフ。同じ妖精8種族として……だけじゃなく、地球を愛する一人として、手を差し伸ばしてみたいと願う。
「それに、地球では、色んなイベントがあるの。近い機会にあるのは超会議かな? いろいろな旅団が出し物を出して、ワイワイ騒ぐのよ」
 そんな願いと共に、実体験を語る結衣菜。
「……なぜ、そんな事をするんだ?」
 結衣菜や氷花の話を聞き、膨らむのは好奇心と疑問点。それに答えたのは摩琴。
「ボクは地球生まれで、孤児で、小さい頃には、ある集団に混じって、地球のあちこちを廻ってたんだ」
 静かに語るのは摩琴の過去。
「この地球は、昔デウスエクスの侵略でボロボロにされて、そのままになっている地域もあるんだ。そんな場所でも、生命は力強く日々を暮らしていたよ。両親を亡くした子ども達が笑ってくれる瞬間は輝いて見えた。命に限りがあるから、今を懸命に生きてるんだって……」
 懸命に語る摩琴の言葉。それを理解しようと、耳を傾けるアイスエルフたち。そんな様子を見ながら『話』のバトンを最後へと繋ぐ。
「私ね、歌が好きなんだ……」
 最後に語るのはミライ。彼女の言葉は、詩的な言葉。言葉で伝えられない事も、歌なら想いを込められる。大好きな歌を誰かと共有したいから……。
「みんなで歌うのも、好き」
 言葉が違っても、文化が違っても、種族が違っても、歌は想いを繋げる。歌は宇宙共通だと、ミライは信じているから……。
 歌うようなミライの言葉が、この空間に響き、そして包み込む。言葉と共に差し出された手を一人のアイスエルフが握る。
 その握手は、冷たいが……力強い。
「これくらいにしましょう」
 手を握ったアイスエルフがミライの手を握りながら、他のアイスエルフにも聞こえるような声で代表的に返答を返す。
「私の名前はアイサリファス」
 改めて、ケルベロスたち全員の目を見つめながら、丁寧に挨拶をする。彼女は以前の作戦でケルベロスたちと遭遇し、撤退したアイスエルフの一人だ。
「貴方達の話は、正直言って……充分には理解する事が出来なかった」
 そんな彼女は、ミライの手を握りながらも、堂々と『理解出来なかった』という正直な想いを口にする。やはり文化の違いを知ってもらうのに、数分では短い。
「でも、貴方たちの理論が違う事は分かりましたし、それに……」
 そう言いながらも、握った手は離さない。
「『理解出来ない』が、悪い考えではないと感じました」
 その言葉には『定命化』の事も含まれているのかもしれない。ケルベロスたちが語った事の大半は『定命化』の先に見える事である。
「でも、もっと良く知ってからでなければ判断できない」
 『永遠』と『定命』には、大きな隔たりがある。しかし、ケルベロスたちの言葉を聞いて、その隔たりを越えようかと、この場にいるアイスエルフたちが『考える』ようになったのだ。
「そうですね。というか、もっと良く理解したいです……」
 別のアイスエルフがアイサリファスの言葉に同意するように言葉を繋げ、ムギの手を取り興味のある視線を向ける。
「『超会議』とやらも、よく分からないが、あたしの力で制圧してあげるから!」
「私も……歌は好き……」
「貴女の事はともかく、その服には興味ある……」
 ケルベロスたちの話に興味を持った様子のアイスエルフも多い。
「貴方達が、悪人でも暴力的でもない事は感じられたので、とりあえずという形ではありますが、ケルベロスの陣営に連れて行って欲しい」
 ケルベロス陣営に保護してもらうという意思表示を込め、立ち上がるアイスエルフたち。
「『定命化』云々は、そこで改めて調べて理解してから考える……それで問題ありませんね」
「もちろんです」
 改めて、この場のアイスエルフたちの総意として、アイサリファスがケルベロスたちに返答する。
「では、行きましょう。こちら側から脱出すれば比較的安全に撤退が可能です」
 そこに現れたアイスエルフは、以前の作戦で撤退したアイスエルフの一人。アイサリファスに合図を送り、摩琴とミライへと軽く会釈をする。
 彼女の案内で、脱出を図るケルベロスとアイスエルフたち。
「なんだ、お前らは! 待機しているはずだろう!」
 しかし、その数は約300人。その数が目立たず城を出る事は無理だ。城内で待機していた白百合騎士団の一班に見つかる。
「皆さん、苦戦している様子ですね」
「復活したばかりで微力ですが、少しでも助けたいです!」
「援軍として、出撃したいのです!」
「そ、そうか。ならば、後詰として行くがよい!」
 300人という数に圧倒されたのか、それとも事前に根回しをしていたのか、あまり抵抗されずに、大阪城から援軍という形で脱出に成功する。
(「世界中からアイスエルフちゃん達へのメッセージを募集するのです。私達の『大好き』を伝えるために。大好きって、言ってもらえるように!」)
 無事に大阪城を脱出した事で、少し安心して、そして次にやりたい事を願うミライ。
「帰るまでが任務」
 そんなミライの気持ちが伝わったのか、冰が、改めて声を上げる。
「そうですね」
 戦いはまだ続いている。今は、保護を求めたアイスエルフたちを無事にケルベロス側の陣営へと連れて行くのが最優先事項。
 戦場を走り抜けながらも、新たな友人が出来る期待に心を踊らせるケルベロスたちであった。

作者:雪見進 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年4月12日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。