大阪城内に取り込まれた、宝瓶宮グランドロンの『破片』のひとつで、エインヘリアルの第四王女レリは、同じく宝瓶宮グランドロンの『破片』のひとつを拠点とする、第二王女ハールとの間で回線を開き、情報を交換していた。
議題は、当然、ケルベロスへの対策である。
『ケルベロスの襲撃の情報が欺瞞情報の可能性があります。アイスエルフの忠義を確かめる為にも、男のアイスエルフを復活させ、前線に配置しなさい』
このハールからの指示に、レリは、
「男のアイスエルフこそ、裏切る可能性が高いでしょう。ケルベロスの迎撃は、信頼できるものだけで行うべきでしょう」
と答え、白百合騎士団による防衛すべきだと意見を返す。
ハールは、何度か注意を重ねた後、
『砕かれたグランドロンの『破片』が、再び揃おうとしています、その前に、大阪城の『破片』が失われる事だけは無いように、心して守り抜きなさい』
と念を押し、通信を切る。
この通信の後、第四王女レリは、グランドロンの警護として、騎士団の後方支援を担う蒼陰のラーレと、戦力としては期待できないアイスエルフの女性達を残すと、騎士団主力を率いて、ケルベロスの迎撃へと出陣したのだった。
●エスケープ・エスコート
「大阪都市圏防衛戦は大成功に終わり、多くのアイスエルフを救出することが出来ましたわ。ですが、救出できたのは女性のアイスエルフのみ……第四王女レリの方針が絡んでいるようですわね」
オリヴィア・シャゼル(貞淑なヘリオライダー・en0098)はアイスエルフ達の状況と今後の方針について説明を始める。
「第四王女レリは男性を信用していないようですわ。それ故、アイスエルフの殿方はコギトエルゴスムのまま、拠点であるグランドロンの宝物庫に閉じ込められているようですの」
復活した女性アイスエルフ達にしてみれば、恋人や家族、友人を人質にとられているも同然。
そのような窮状から『救い出して欲しい』と嘆願するのも必然の流れだ。
「有志のアイスエルフ達が、ケルベロスの元から脱走したと見せかけ、大阪城に戻り偽情報で敵を混乱させてくれるそうです。ピュアと言いますか、シンプルな思考と申しますか……」
とにかく第四王女レリは偽情報を疑わず、信じて行動する可能性が高い。
ならば、その策に乗じようではないか。
「そこでアイスエルフ達の協力の元、アイスエルフ救出作戦を決行することに相成りましたわ。潜入作戦は少数精鋭による隠密作戦となりますが、これを成功させるためには、アイスエルフの欺瞞情報通りに、大阪城に向けてケルベロスが襲撃をかける陽動作戦が不可欠となります。皆様にはアイスエルフ救出のための陽動作戦を担当して頂きたく存じますわ」
第四王女レリは配下の白百合騎士団のエインヘリアルを大阪干渉地域に派遣――つまり攻性植物のテリトリーで活動している。
「敵戦力は白百合騎士団のエインヘリアル、大阪緩衝地域で活動していた『竹の攻性植物』の混成部隊となるでしょう」
ただし、今回の作戦目的は『陽動』であり、引きつけておくことが肝要だとオリヴィアは告げる。
「迎撃に出向いてきた第四王女の騎士団らと戦闘しつつ、頃合いを見て撤退すれば作戦成功となりますわよ。もし第四王女や精鋭騎士達と遭遇した場合は、撤退して戦闘を避けても良いでしょうし、複数チームで連携することが叶えば、有力な敵を誘い出して撃破することも可能やもしれません」
とはいえ、敵方も飛び込んできた獲物を逃す気はない。
増援を送り込んでジワジワと、食虫植物のように痛めつけるだろう。
「接敵と交戦、増援が来る前に一時離脱を繰り返し、敵方の注意を引きつけることが本作戦の目的ですわよ。兵は神速を尊ぶ、と申しますゆえ」
万が一の時は戦線からの撤退も肝心である――と、オリヴィアは息を吐く。
「アイスエルフから申し出たということは、ケルベロスへの信頼あってこそ。この機会に救出が叶えば、アイスエルフの定命化も実現するやもしれませんわね」
まずは彼女たちの想いに応えて欲しい、オリヴィアは恭しく一礼する。
参加者 | |
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ウォーレン・ホリィウッド(ホーリーロック・e00813) |
フィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308) |
ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542) |
空木・樒(病葉落とし・e19729) |
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402) |
刈安・透希(透音を歌う黒金・e44595) |
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384) |
●王女の理想に自由はあるか
張り巡らされた蔓の合間に、女の号令が響く。
「発見次第、追い払え! 女だろうと容赦は不要だ!」
警邏する女エインヘリアルの指示に従って、部下と竹の衛兵達が移動を始めた。
その姿を陰から見送り、極太い蔦の陰から覗くウォーレン・ホリィウッド(ホーリーロック・e00813)は再び身を屈める。
「10体くらいで行動してるみたいだね。……他の班はもう見えないし、ここからは7人で頑張らないと」
大まかな方向を書きこんだ地図をウォーレンは一瞥し、チームメイトに目を向ける……彼と同じように、複雑な心境の者が多いようだ。
「やはりゲート近辺となると警戒レベルも段違いだな」
視線の先――死角を塞ぐように見渡す刈安・透希(透音を歌う黒金・e44595)の瞳には、険しさが滲んでいた。
(「男性だけ復活させない……大切な人が囚われているなら、彼女たちも気が気じゃないだろうに」)
男性アイスエルフを目覚めさせない理由は、レリの個人的な思想。
相棒のテラを肩に乗せたフィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)は終始眉根を寄せ。
「レリ王女……男を信用しないのは勝手だが、一つの種族を巻き込むのは、な」
「こっちとしては好都合だけど、純粋さを利用するのは……ちょっと気が引けるかな」
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)も、怯えた様子のシャーマンズゴーストの手を握りつつ、心情を吐露する。
極度の男性不信。
レリにとって目指すべき目標であり―――固執するあまり、最大の弱点となっていた。
フィストの義憤も、マヒナの憐憫も、人ならば感じるべくして感じる情念。
「アイスエルフも焦っているのでしょう。友人、家族、婚約者だって……傍にいない寂しさ、辛さを考えれば…………私も、手段を選べるほど、冷静ではいられないと思います」
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)の言葉には実感が籠もっていた。
まるで体験してきたかのように、伏し目がちな眼差しを地面に向け――。
ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)はマヒナに寄り添うように向き直り、
「――今は、彼女達の選択を尊重しよう。レリには悪いけどね」
たった一人の感情が、誰かを拘束して良い理由にはならないのだから。
「隠れていては陽動になりませんが……ふむ」
迫る一団を凝視する空木・樒(病葉落とし・e19729)はポツリと呟く――――竹の兵士が5体と女騎士2体。
「9時の方向から7体、比較的少ない部隊ですが」
警戒レベルが高い中、少数で動けるだけの相手なら……実力のある個体が組んだ可能性も否めない。
これ以上の少人数は見込めないだろうと、樒は是非を問う。
「……攻性植物にとってここは本拠ですものね。予想以上に多いですが」
悩ましげに唸る沙耶だが、多いなら多いなりの対処を講じる他ない。
協力を嘆願したアイスエルフを手助けするために、ここまでやってきたのだから。
覚悟はとうに出来ている。
(「僕も頑張るよ。だから、無事に帰ってきてね」)
脳裏に浮かぶ大切な人にウォーレンは祈り、哨戒する竹槍兵の接近と同時に先制攻撃を仕掛けた。
側頭部に一撃を蹴りこみ、衝突による騒音で一斉に視線が向けられた。
一気に奇襲で攻め落としにかかる透希達に気づき、
「現れたなケルベロス、迎撃せよ!!」
戦斧のエインヘリアルが号令をかけて戦闘態勢に移行する。
敵は女エインヘリアルが斧と剣で1体ずつ。
攻性植物は槍兵と銃兵2体ずつ、それと爆弾兵が1体。
(「前衛偏重かもしれませんし、後衛からの集中攻撃も考えられます……一見しただけでは予想できませんね」)
沙耶は敵の編成予測を試みるが……情報が少なく、想定外の状況に変わりない。
想定から見切りをつけ、沙耶はウォーレンの蹴り飛ばした槍兵に追撃の弾丸を放つ。
「マギー、援護は頼んだよ。 ……さて」
ショキンショキンと鋏を鳴らすテレビウムを送り出し、ピジョンは二体の銃兵を見据えた。
「違う個体だけど、久しぶりだ。手こずる前に倒したい所だけど……!」
パズルを組み替え、三眼四腕の女神が姿を現す。
狂乱の幻影は髑髏の首飾りを鳴らし、憤怒の一刀で執拗に傷を刻む……一体のガンソルジャーは幻影ごと振り払うべくピジョンへ銃撃を見舞い始めた。
「レリ王女はどこだ、臆して身を隠したか!」
「王女を愚弄するとは!!」
大斧を奮うフィストが『狙いはレリだ』と嘯けば、剣の女騎士は激昂し、打ち合いが激しさを増す。
あの長(おさ)にしてこの部下か――嘆息したい衝動を堪え、フィストは雷を武器に這わす。
「見識が狭い……男全てを排斥したところで、なにも解決しないぞ!」
弾かれたように飛び退くフィストを、純白の幻影をまとうテラが守護するように立ちはだかる。
グリフォンの白翼で砂埃を吹き飛ばすテラと共に、フィストの刃が戦場に嵐を巻き起こし槍兵ごと戦場を掻き乱す。
「アロアロ、頼んだよ……ワタシも友達の助けになりたいから」
誰よりも共存を望む彼女のチカラとなるために――臆病な相棒も主人の言葉に勇気づけられたのか、懸命に祈りを捧げた。
(「ピジョンを狙うソルジャーだけでも落とさないと」)
瓦礫を踏み台にマヒナは大きく跳躍。
春の日差しを背負い、精確な跳び蹴りが体勢を崩す。
すかさず透希が獣爪での右ストレートを叩き込み、即座に息の根を止め、背後に迫る刺突を軽々とやり過ごす。
「すぐに治療しますから」
周囲の有機無機物と同調し、冷静さに磨きをかけた樒はピジョンに近づき、賦活の薬液を与える。
『自分は新米の衛生兵である』とアピールした立ち回りを見せつつ、注意を引いているか敵の動きを見やった。
……援護しながら動画を流し続けるマギーや、浮遊するテラに前衛の狙いが集まっている。
(「この一団は倒しやすい相手から狙うのでしょうか……それなら」)
標的として認識されぬなら治療に専念すればよい。
続けているうちに、遠距離攻撃を引きつけられるかもしれない。
樒は剣戟に晒される沙耶を支援しようと戦場を駆ける。
銃兵、槍兵は膝をついて腐葉土へ変質した。
「動きは視えてる――そこだよ!」
爆撃で妨害に走る攻性植物をマヒナの一矢が射貫き、残るは女騎士2体。
「貴方の運命を示します。閉塞し、終わりを迎える運命を」
沙耶の指先が円を描く――――これこそ運命の車輪。
虚空に描いた光の軌跡は紐か、手織りの糸か。
細く長く伸び往く無数の糸は、肩で息をする剣のエインヘリアルを絡めとる。
「……あ、ぐぁ…………レ、ぃ……――」
宙づりの女騎士は抵抗むなしく、首元に巻きつく糸で事切れた。
(「話し合いで歩み寄れればいいんだけど……」)
黒曜のナイフで戦斧を受け流し、ウォーレンは目の前で殺気立つ女騎士を見据える。
まるで親を殺した仇と対峙したように睨みつけて……男の自分に劣勢を強いられていることも屈辱に感じるのか。
「失せろ優男!!」
流れる血で甲冑が汚れるのも構わず、女は豪快に得物を振り回す。
周囲の蔦やコンクリートを容易く潰す一撃をくぐって、ウォーレンは鋼鉄の拳をまとう。
「ザイフリート王子みたいに信頼関係を築けたらよかったのに」
「詭弁を弄するつもりか!? これだから男は……!」
「……現実は難しいね」
口をついて出た言葉に、女騎士は『男』という理由で一蹴した。
きっと、今は対話のときではないのだろう――豪壮な一撃をもってウォーレンは沈黙させた。
「なんとか切り抜けたか……少数とはいえ、やはり守りが堅い」
「手練れだからこそ少人数で活動できるのかもしれませんね」
額を拭う透希に、樒は顎を撫で思案する。
なんにせよ、アイスエルフを捕えるエインヘリアルと、ゲートを守護する攻性植物にとって近づいて欲しくない場所。
警備が厳重であることは重要度の高さを意味する。
「この緩衝地帯にいる以上、どこも戦場だからな……態勢を立て直しつつ次の場所へ行こうか」
透希の提案を受け、負傷が目立つ仲間の補助をしつつ次のエリアへ。
――遠雷のごとく戦禍の音は鳴り響く。
その雷鳴が警戒レベルを最高までに押し上げ、音と気配に注意を払わせる。
厳戒態勢の影響を受け、隠密気流や螺旋隠れは効果を失っていた。
数百メートル移動した先――発見した警備隊へ奇襲を試みるも、すぐに対応されてしまったのだ。
「番犬如きが突破できると思わないで!」
拳圧がピジョンの脇腹を抉り、飛来したボムを羽合わせのように飛ばされたテラが受け止める。
応援し続けるマギーもパチパチと火花を散らしていた。
「ここは、どちらを……いえ、まとめていきます」
(「わたくしがいる限り、誰も戦闘不能にはさせませんから……!」)
戦士の偉烈を込めた水溶き薬を樒は戦域に放る。
水薬の飛沫はフィスト達の気性を、燃え上がる火柱のごとく促進させた。
昂ぶる衝動のままフィストが銃兵を両断し、沙耶も星座の守護ごと粉砕する。
――それでも騎士達は戦意を捨てなかった。
次々に仲間が倒れ……否、倒れた仲間達の為にも負けられないのだと!
「失せなさい、ケルベロス」
星辰のオーラが断続的に透希達を襲い、援護にかけつけたマギーとテラは遂に姿を消失させていく。
「っ、これくらい……!」
体の芯まで軋ませる痛みにマヒナは眉を顰め、奥歯を噛みしめ耐える。
淡い光のオーラを軽やかに、風に乗せて反撃を見舞うものの、直撃した爆撃兵は悲鳴もあげず爆炎で返礼。
避けるより到達が早い――咄嗟に防ごうと得物を構えるより早く爆音が轟いた。
「どうし、て…………ピジョン!?」
火傷を帯びた青年は視線をむけ、口元に笑みを浮かべる――心配はいらないと。
「そろそろ使わせてもらおうかな!」
防衛に回ったサーヴァントが離脱し、ここからは守りが重要になる。
ピジョンの左腕から茨が幾重にも伸び、張り巡らされ、障壁を築くように戦線を覆っていく。
「私は護るために歌う、ヘリオライトの輝きが新たな道を照らすと――――!!」
ヘリオライトの輝きが彼女たちの道を拓くと信じて!
荒れ狂う戦渦の中、透希の歌声が広がっていく。
護るべき世界に希望を観た氷晶の乙女よ、結ばれる絆で希望の花を咲かせよう!
透希の力強い意思が旋風となり、渦を巻く疾風は戦気の騎士を瓦礫ごと攪拌……壮麗な鎧も砕け、騎士が伏してオーラは消えた。
「ハァ、ハァ…………フィストさん、大丈夫?」
「なんとか。だが、もってあと一戦か」
ウォーレンの問いに溜息まじりでフィストが返す。
目立つ負傷はピジョンのみならず、近距離攻撃が届く位置で戦う沙耶にも。
「満足に休憩できる状況ではないですが、応急処置はできるでしょう」
樒の提案で応急手当をすべく移動を開始する。
疲労感は確実に増していた――フィストの言葉通り、次の戦いが瀬戸際になる。
誰もがその予感を覚えていた。
●リーヴ・ライズ・ワールド
隠密効果はもはや期待できない。
物陰からの先制攻撃はマヒナの初撃がクリーンヒットしたものの、続く一撃を防いですぐさま交戦状態に移行。
「雑兵に用はないんだよね、王女達はどこにいるのかな?」
「男に教えることなど何もない!!」
竜と見まがうほど鋭い雷電をかわし、女騎士の怒声と共に銃撃が飛来する。
すぐさま樒が手当に向かうものの、蓄積した疲労は目に見えて感じ取れた。
(「一人で守備を担うには厳しい状況ですね……立ち振る舞いだけでは、注意を引けないなら」)
「強情な姿勢で突っぱね、男と見れば聞く耳も持たないとは――『白百合』の名が聞いて呆れますね!」
清浄を謳いながら不正に奔り、尊厳を求めるあまり視野は曇っている。
純潔? 汚れなき心? 笑い上戸も笑えぬジョークがあるとは驚きだ。
どう取り繕っても――温室ほどの狭い世界しか知らぬ、世間知らずの小娘だろうが!
……愕然としていた騎士は、鯉のように唇をパクパク震わせ、顔面を真っ赤にさせていた。
「侮辱するか……我らを侮辱するか? ……キッサマァァァァァァァァアアアア!!?」
少しでも狙いをシフトさせようする樒に、怒り狂った騎士の叫びがこだます。
喚き散らす女の声に、数体のソルジャーも。
爆風にさらされながら、竹槍兵と対峙するウォーレンも大技で打って出る。
「弾丸の雨より、こっちの雨の方が綺麗だよ」
しとしと降り出す涙雨。
色気もなく刺突を繰り出す兵士を惑わせ、雨雫は血に染まる。
一雨すぎたそこには、赤く濡れた地面と男が一人……苦痛に耐える相貌は涙をこらえているかのように。
(「あと5人、ワタシ達も充分引きつけられたと思うけど」)
矢を放ったマヒナは仲間の背を順に見渡す。
精彩を欠いた動きの中で泥臭く食いつき、攻撃の手を止めないこともあってか、特にエインヘリアルから微かな焦りが見て取れた。
……問題は、予定した通りに動くか否か。
思考を巡らす間に、祈り続けたアロアロも戦線から姿を消していく。
「正確性はなかなかですが……踏み込みが浅いですね!」
刃を交える透希を女騎士がフェイントを交え、空いた脇腹に直撃を食らわせる。
地べたに血潮が飛び、透希の頬が苦痛に歪む。
「ぐ、ぁあ……っ!」
もう一撃、振り下ろそうと構えたエインヘリアルの追い打ちに、ピジョンが割り込む。
すぐさまフィストが電光石火の突撃で仕留めるも、背後に投げ落とされた爆撃は彼女の体力を根こそぎ奪い取りにかかる。
――――互いに互いの喉笛を咬み千切ろうと喰らい合う乱戦。
消耗の激しい沙耶達にとって、嫌な状況を形作る要素だった。
『――……こっち……音が……――!』
遠巻きに聞こえる声は哨戒する別部隊のものか――満身創痍のウォーレンを一瞥し、沙耶が顔をあげる。
「敵の増援部隊が接近しています! すぐさま退避しましょう!!」
これ以上の戦線維持は一気に瓦解する恐れが考えられた。
言葉にする必要もなく、各々が肉体の限界が近づきつつあることを察する現状では、沙耶の英断は心強いものだった。
「ワタシが追撃を止める、シキミは怪我した人たちを!」
ヤシの木の幻影からココナッツを落とし、マヒナは残る衛兵達に置き土産を叩きつける。
ウォーレンがフィストを、沙耶がピジョンを、樒が透希に肩を貸すと一斉に離脱を開始。
途上で遭遇した部隊を突破し、真新しい戦禍の中を駆け抜けていく。
エインヘリアル、そして攻性植物がひしめく大阪緩衝地帯――数十分にも及ぶ陽動は、確実に潜入班の手助けとなった。
作者:木乃 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年4月12日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
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