大阪城内に取り込まれた、宝瓶宮グランドロンの『破片』のひとつで、エインヘリアルの第四王女レリは、同じく宝瓶宮グランドロンの『破片』のひとつを拠点とする、第二王女ハールとの間で回線を開き、情報を交換していた。
議題は、当然、ケルベロスへの対策である。
『ケルベロスの襲撃の情報が欺瞞情報の可能性があります。アイスエルフの忠義を確かめる為にも、男のアイスエルフを復活させ、前線に配置しなさい』
このハールからの指示に、レリは、
「男のアイスエルフこそ、裏切る可能性が高いでしょう。ケルベロスの迎撃は、信頼できるものだけで行うべきでしょう」
と答え、白百合騎士団による防衛すべきだと意見を返す。
ハールは、何度か注意を重ねた後、
『砕かれたグランドロンの『破片』が、再び揃おうとしています、その前に、大阪城の『破片』が失われる事だけは無いように、心して守り抜きなさい』
と念を押し、通信を切る。
この通信の後、第四王女レリは、グランドロンの警護として、騎士団の後方支援を担う蒼陰のラーレと、戦力としては期待できないアイスエルフの女性達を残すと、騎士団主力を率いて、ケルベロスの迎撃へと出陣したのだった。
●
集まった番犬達を前にクーリャ・リリルノア(銀曜のヘリオライダー・en0262)が説明を開始する。
「大阪都市圏防衛戦は大成功に終わり、多くのアイスエルフを救出する事に成功したのです。
しかし、救出できたのは、女性のアイスエルフだけだったようなのです」
エインヘリアルの第四王女レリは、男性を信用していないようだ。アイスエルフの男性は、コギトエルゴスム化したまま、拠点であるグランドロンの宝物庫に閉じ込められているようだと言う。
「救出したアイスエルフからは、彼女達の恋人や家族、友人である男性アイスエルフの救出を行って欲しいという嘆願があったのです。
この作戦の為に有志のアイスエルフ達が、ケルベロスの元から脱走したと見せかけて大阪城に戻り、偽情報で敵を混乱させてくれるそうなのです」
この偽情報を第四王女レリは信じる可能性が高い。それに伴いアイスエルフ救出の潜入作戦を行う事になった。
「潜入作戦は少数精鋭での隠密作戦となるのですが、これを成功させる為には、アイスエルフの欺瞞情報通りに、大阪城に向けてケルベロスが襲撃をかける陽動作戦が不可欠となるのです。
皆さんには、アイスエルフ救出の為の陽動作戦を担当してもらいたいと思いますので、どうかよろしくお願いするのです!」
続けてクーリャは必要な情報を知らせてくる。
「こちらの陽動に対して迎撃にでてくる敵戦力は、第四王女レリ配下の白百合騎士団のエインヘリアルと、大阪干渉地域で活動していた『竹の攻勢植物』の混成部隊となるのです」
敵の詳細は不明ながら、過去に遭遇している敵もいることからその戦力は予測しやすいだろう。
「陽動作戦である為、迎撃に出向いてきた第四王女の騎士団と戦闘しつつ、頃合いを見て撤退すれば作戦は成功となるのです。
無理せず、戦況を見極めて撤退の判断を行って下さいなのです」
なお、第四王女や精鋭の騎士達と遭遇した場合は、撤退して戦闘を避けても良いが、複数のチームで連携する事ができれば、有力敵を吊り出して撃破する事も、可能という予測が立っている。
高い連携力を求められるかもしれないが、狙ってみる選択肢もあるだろう。
「ちなみに攻撃された敵は守りを固めつつ増援が来るのを待つようなのです。
なので敵を見つけて攻撃しては増援が来る前に撤退……という戦いを繰り返しつつ、敵の目を引きつけるのがよさそうなのですよ」
資料を置いたクーリャは番犬達に向き直る。
「皆さんの活躍で多くのアイスエルフを連れ帰る事ができたのです。
このチャンスを生かす事が出来れば、アイスエルフを仲間にする事ができるはずなのです」
クーリャは一度呼吸を整えると言葉を続ける。
「多くの騎士をケルベロスに殺された第四王女側は、戦意が高いようなのですが、それを上手く利用すれば、有利に戦えるはずなのです。
潜入チームが作戦を成功させる為の陽動作戦になりますが、陽動だと気づかれないように注意が必要なのです。力一杯攻撃している姿勢が大事になるはずなのです。
アイスエルフの皆さんを助けるために、どうか、皆さんのお力を貸してくださいっ!」
ぺこりと頭を下げたクーリャは、そうして番犬達を送り出すのだった。
参加者 | |
---|---|
立花・恵(翠の流星・e01060) |
ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399) |
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896) |
ククロイ・ファー(ドクターデストロイ・e06955) |
ラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691) |
水瀬・和奏(フルアーマーキャバルリー・e34101) |
ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719) |
リリベル・ホワイトレイン(堕落天・e66820) |
●陽動作戦開始
大阪城を近傍に、集った番犬達が作戦の開始を待っていた。
女性アイスエルフ達によって嘆願されたその救出作戦は、多くの敵を欺くことが必要とされる作戦で、願いを聞き入れた番犬達は彼女達の行動を有利にするために、大阪城へ向けた陽動作戦を行う事となった。
作戦開始は近い。
番犬達はその時を待ち、最後の準備を行っていた。
「話を聞いてくれたアイスエルフの為にも、願いはちゃんと聞いてやんなきゃな」
愛用の銃の最後の点検を終え、ホルスターにしまい込んだ立花・恵(翠の流星・e01060)が、そう言葉にする。
コギトエルゴスムのままグランドロンの宝物庫に閉じ込められている男性アイスエルフ達。それを救うために行動を起こした女性アイスエルフ。彼女等は大阪城へと戻り欺瞞情報を流すそうだ。危険な役目であるのは明白で、その救出を手伝う潜入班の番犬達と共に心配の種でもある。
恵の想いを汲み取るようにソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)が強い意思を湛えて口を開いた。
「アイスエルフと潜入班。
彼女達が無事戻ってこれるかは、私達の陽動の成否が大きく影響するだろうな。
有力敵が出てくる事もあるかもしれないが……今回はしっかりと陽動メインで立ち回ろうか」
これもお仕事お仕事と、切り替えるように言うソロ。心情的に有力敵の撃破を狙ってみたい所ではあったようだが、作戦を第一に考える彼女は優秀な番犬だ。
ソロの言葉に神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)が頷く。
「大阪城周辺の敵の数は多いが、それは同時に広く展開し防衛網を広げているということでもあるだろう。
その防衛網に穴が空けば、欺瞞情報に乗せられた奴らが上手く踊ってくれるに違いない」
「ネトゲでもモンハウからの釣りだしは有効な手段だしね。
救出作戦本番。
私達ケルベロスの頼れるとこ、見せてあげようじゃないか!」
ゲーマーなリリベル・ホワイトレイン(堕落天・e66820)がネトゲ用語を口にしつつ珍しく気合いを入れる。
それもそのはずで、アイスエルフ達とは前回の依頼で交流したこともあり、親近感や仲間意識が芽生えていた。力になってあげたいと、強く心から想っているのだ。
「ええ。
自ら危険な役割を買って出たアイスエルフ達のためにも、この作戦を成功させてみんなで一緒に帰ってきましょう」
リリベルの想いに水瀬・和奏(フルアーマーキャバルリー・e34101)も呼応して、誓いを新たに立てる。
みんなで一緒に。それはこの場に――戦場に――いる全ての番犬達の思いだろう。アイスエルフ達を真に救い出し、迎い入れる。その時は今なのだ。
「ええ、頑張りましょう。――そろそろ時間ですね」
一つ頷き、ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)が作戦開始時刻を確認する。
番犬達も促されるままに時間を確認し、武器を携えた。
「――北西から僅かな物音が聞こえてくるようだ。そう遠くない、か」
緊張を解きほぐすような、ネコミミ型の集音デバイスがクネクネ動く。ラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)の言葉に番犬一同頷いて武器を構えた。
「それじゃ、向かうとしようか。お仲間を助ける、その役目を果たしに、ね!」
最後に気合いを入れたククロイ・ファー(ドクターデストロイ・e06955)の言葉を合図に、番犬達は一斉に走り出した。
アイスエルフ救出作戦――その陽動作戦が開始されたのだ。
●Hit&AwayⅠ
此度の作戦においては有力敵の出現が懸念されていたが、多くの番犬達は有力敵との直接的な戦闘を避ける方針であった。
このことは、陽動作戦全体としてプラスに働いたと言って良いだろう。陽動をメインに据えたことで効果的な陽動作戦が行われたと言ってよい。
大阪城周辺を守る第四王女レリ配下のエインヘリアル白百合騎士団と、竹の攻勢植物の混成部隊は、次々に現れる番犬達の対応に追われる事となる。
「三時の方角、数は十……有力敵はいないようですね。なら、行きます――!」
飛行ドローンで戦場を偵察し、敵の陣形、その戦力を把握するジュスティシアが、一気に距離を詰め奇襲を開始する。
突然の番犬の襲来に応戦の構えを見せる白百合騎士団達。だが先手を取った番犬達の勢いを殺げるものではない。
「――嘘八百吹き込んで! 今すぐ彼女達を渡しなさい!」
挑発の言葉を口にしながら、ジュスティシアが射程ギリギリから凍てつく光線を走らせ、グラビティ纏う弾丸を追撃の如く雨降らせる。
居並ぶエインヘリアルを釘付けにするその連射は、奇襲によってその効果をさらに上げ、大きなアドバンテージを番犬達に生み出した。
「おのれ、番犬共め――! 仲間(アイスエルフ)を貴様等に渡してなるものか」
ガトリング掃射から抜きん出て、エインヘリアルが手にした武器を振りかぶり迫る。
「やらせるものか――!」
仲間を守るように前に出るのは蒼き闘氣を身に纏う晟だ。エインヘリアルの巨大な一撃をその身を盾に防ぎ、受け流すと同時、一気に肉薄しドラゴニアンたる証である爪撃を叩き込む。
「仲間や味方と謳いながら、結局は戦力としての期待をしているわけだろう?
妖精種族は都合の良い兵士ではないはずだがな――!」
その巨躯より繰り出される一撃は巨大なエインヘリアルと言えど蹈鞴踏ませる強力無比な一撃で、そうしてバランスを崩したエインヘリアルへ向けて空へと舞った晟が、大きく息を吸い込み、そして放った。
晟の口より渦巻き迸る蒼炎の息吹が、火炎旋風となってエインヘリアル達を巻き込んでいく。
「くっ! 距離を取り体勢を整えろ!」
エインヘリアル達が、陣形を整えようと、動き出す。その隙は番犬達にとっても都合の良いものだ。
「そっちが体勢を立て直すなら、こっちも万端に備えさせてもらうよ!」
リリベルが腕部に装着したキーボードをカタカタ……タンッ! と勢いよく入力すれば、味方の背後に色とりどりの爆風が広がる。士気をあげるその爆風を背にすれば、身体に力が漲ってくる。
此度の戦いで回復を担うリリベルの役割は重要だ。戦いはこの一度のみならず、数度に渡って繰り広げられる。故に、自ずと番犬達の傷も見逃せなくなってくるだろう。最後の撤退を行うまで、仲間を支えるのはリリベルの重要な役目だ。
「とはいえ手隙にぼっ立ち姫ちゃんプレイをする訳にも行かないのだ。ヒーラーも火力出せとはどっかのゲームで言われてたけど……無茶言うね!」
何て言いながらも、的確に回復と攻撃を行うリリベルはヒーラーとして申し分ない働きをしたと言えるだろう。サーヴァントのシロハも手伝って、仲間達にとっては手厚い援護となったはずだ。
リリベルの援護を受けて、更なる火力的な加速を行うのはソロだ。
「臆病者共を追ってみれば有象無象がうじゃうじゃと。
白百合騎士団とはこの程度の者たちしかいないのか」
二対のギアブレードを縦横無尽に振るい、敵の目を引きつけるが如く烈火の戦いぶりを見せる。
「我らを侮辱するか――番犬!!」
エインヘリアルが走り武器を幾重にも振り下ろす。その連打を紙一重で躱し、手にしたギアブレードで弾き返したソロは更に一歩踏み込んで、無数の霊体を憑依させた一撃を鋭く見舞う。
まさに蝶の様に舞、蜂の様に刺す。派手に立ち回るソロの動きに、敵陣の目が釘付けとなる。
鎧を砕かれ、地に倒れたエインヘリアルを前に、ソロがギアブレードを突きつけイヤらしく笑みを浮かべる。
「脆い脆い。
――レリだったか?
これでは大将の力もたかが知れているな。あっはっは!」
「ぐっ……! 貴様ァ!!」
主を愚弄され怒りに唇を噛むエインヘリアル達。
番犬達はそうして挑発を繰り返しながら、確実にエンヘリアル、そして攻勢植物の戦力を削ぎ落としていく。
だが、エインヘリアル達も強敵であることに変わりはない。体勢を立て直し始めると、徐々に番犬達を追い詰める動きを見せ始めていた。
(と、そろそろ頃合いだな――)
苛烈な攻めを見せながらもソロは冷静に判断し、仲間達へ視線を向ける。仲間達もその意味をすぐに理解し、声を上げ始めた。
「態勢を立て直す!
手薄な所を探せ――!」
「引くぞ、チャンスは他にもあるはずだ」
ジュスティシアと晟が声を上げ、それに倣って番犬達が後退の姿勢を見せる。
「逃がすな――! 犬共を殺せ!」
追いすがろうとするエインヘリアルを嘲笑うかのように、ソロの放つミサイルが煙幕を張り、同時リリベルの投げた閃光手榴弾が光を放つ――そして、番犬達は戦域を離脱した。
「くっ……なんて手際の良さか……!」
悔しげに唇を噛んだ白百合騎士団のエインヘリアル達の元に援軍が到着するのはすぐ後のことだった。
●Hit&AwayⅡ
大阪城の周辺は、防衛の為に白百合騎士団、そして攻勢植物の混成部隊が広く展開していた。
これに対し、小部隊での浸透作戦を行った番犬達。この動きに混成部隊は対処できず、各地点で各個撃破が起こり、防衛網を寸断されてしまう。
知っての通り、番犬達は手際の良い陽動、撤退戦術を繰り返しており、襲撃された地点にエインヘリアル達の援軍が駆けつけようとするが、増援が間に合わなかったりすることが多く、また間に合ったとしても増援の少なさからさらに各個撃破の餌食となることが多かった。
これによって、エインヘリアル達は敗北に至らぬとも、大きな被害を被っていた。
転戦を続ける番犬達もまた、その一役を担っていた。
「悪いけどここは俺達の星なんでな。出てってもらうぜ!」
愛用のリボルバー銃を早撃ちし、制圧射撃を行う恵。敵が足止めを受けバラければ、一足飛びに間合いを詰めて、捻った身体から放つ流星纏う蹴りが重力の楔を打ち付けて更なる足止め効果を齎す。
「そんなに守りを固めてちゃ俺らは倒せないぜ!」
挑発するように言葉を走らせて、空を絶つ一撃を見舞えば、攻勢植物に穿たれた傷口は見る間に広がって、泥沼にも似た停滞へと誘った。
スナイパーとして多くの敵の足を止める恵の攻撃によって、エインヘリアル、そして攻勢植物たちは自由な回避行動を行えず、被害を拡大させていた。今も動きを鈍らせた竹の攻勢植物がラギアの一撃によって見事に真っ二つに割られ、その行動を停止した所だ。
苦戦を強いられるエインヘリアル達にラギアが言葉を投げかける。
「王女も苦戦しているだろうな」
「くっ……!」
チラリと、第四王女の配下である白百合騎士団のエインヘリアルの視線が動く。それは王女の身を案じたものか。しかしその僅かな視線の動き、そして歯噛みする機微をラギアは読み取り逆手に取る。
「――王女の居場所は向こうか」
「……! 行かせるものか!!」
白百合騎士団にとって、第四王女レリが番犬達によって倒される事は在ってはならない。その可能性を示唆されれば、当然、目の前の番犬達を王女の元へと行かせまいと、その戦いを熾烈なものへと変化させる。
そうして敵が陽動に乗れば、全てはラギアの思惑通りだ。
白百合騎士団の女騎士達に対し同情の念を持つラギアだが、それはそれとして容赦などすることはない。策も含め全力でぶつかるのが礼儀なのだと、仄かに冷気を纏う鴨頭草の剛斧を強壮に振るい、敵を次々に打ち倒していった。
「アイスエルフ達を逃がしはしません!
邪魔するのであれば、貴方達にも容赦はしませんよ――!」
アイスエルフ達を追っている事を強調し、エインヘリアル達に欺瞞情報を信じ込ませようとする和奏。その考えは実に有効で、声に上げ迫真を演じることでエインヘリアル達は見事にその”嘘”を信じ切っていた。
和奏が手にした戦槌を振るえば、弾倉へと変形しアームドフォートへと接続される。そして勢いままに発射される竜砲弾の雨霰。夥しい量の弾丸を放ち足を止めれば、狙いを定めるようにアームドフォートを構えた。
和奏の身体を支えるようにアンカーが展開される。反動を吸収する準備が整えば、ロックしたターゲットへと向け、アームドフォートの主砲を一斉に発射した。
轟音と共に衝撃が和奏の身体を揺らす。アンカーを展開していなけば、反動で大きく動いたことだろう。
発射された主砲の一撃は吸い込まれるように飛んでいき、エインヘリアルの身体を穿つ。衝撃は敵の神経を焼き切り、麻痺にも似た痺れを与えた。
和奏の一撃に、敵が一瞬怯んだ。その隙をククロイが逃さす攻めに回る。
「騎士ってのは守ってばかりの腰抜け揃いかァ!?
――死んだ仲間の元へ送ってやるよォ!
セットアップ『ヴァルキュリア』! その首、いただくぜェッ!!」
ククロイは自身が記録したヴァルキュリアのデータを呼び出し、特殊な最適化を施して自身へとセットアップを終える。そうして腕を振るえば、冥府深層最終地獄に連なる冷気が振るった手に帯びる。それはやがて『氷で出来た巨大なギロチンの刃』を生成し、ククロイの狙い通りに射出された。
まさに断頭の刃たるそれは、エインヘリアルの息の根を止めるとともに、涙すらも凍る氷に包み込み、見る者全てを震え上がらせた。
「まだまだ終わらねェぜェッ!! 薬飲んで寝てろッ!」
ウィッチドクターたるククロイ得意のウイルス薬が、エインヘリアル達の治癒能力を奪っていく。
ジャマーとして多くの影響を与えるククロイの活躍もまた、エインヘリアル達に番犬達の本気を臭わせるものとなり、徹底抗戦の意思を芽生えさせるのだった。
そうして多くのエインヘリアル、攻勢植物を撃破しその力を示していると、後方より敵の増援が近づいてくるのが見えた。
援軍に沸き立つエインヘリアル達。だが番犬達の行動は素早い。
「増援かっ、一旦引こうぜ!」
恵が声を上げると同時に踵を返す。エインヘリアルの一撃を受けていたラギアも牙を見せ笑って、
「今の一撃で仕留められなかったのは残念だったな」
そう言い残して、一気に距離を離し撤退し始める。
「悪ィがここまでだ!」
「追撃はさせませんよ――!」
ククロイがバイオガスをばらまき、それに合わせて和奏が閃光弾を投げつけた。幾度も繰り返した磐石の撤退術によって、番犬達は瞬間姿を眩ませ消えて行った。
その鮮やかな撤退に、白百合騎士団は悔しそうに地面を蹴りつけた。
●撤退
「さぁて、うまくいったかな……?」
戦域から離れながら口にする恵の言葉に、一同は「どうかな」と僅かに思案してみせた。
状況は、かなり良いと見込めていた。陽動は全域で成功し、敵をかき乱せたと言って良いだろう。
あとは潜入班の結果次第。此処まで来たのだ成功を祈りたい所だろう。
「大丈夫。バッチリ上手くいってるよー」
ゆるーく希望を口にするリリベルに、一同は笑いながら相槌を打ち、戦域から完全に撤退するのだった。
鮮烈なる陽動作戦は、そう。成功したのだ――!
作者:澤見夜行 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年4月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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