大阪城内に取り込まれた、宝瓶宮グランドロンの『破片』のひとつで、エインヘリアルの第四王女レリは、同じく宝瓶宮グランドロンの『破片』のひとつを拠点とする、第二王女ハールとの間で回線を開き、情報を交換していた。
議題は、当然、ケルベロスへの対策である。
『ケルベロスの襲撃の情報が欺瞞情報の可能性があります。アイスエルフの忠義を確かめる為にも、男のアイスエルフを復活させ、前線に配置しなさい』
このハールからの指示に、レリは、
「男のアイスエルフこそ、裏切る可能性が高いでしょう。ケルベロスの迎撃は、信頼できるものだけで行うべきでしょう」
と答え、白百合騎士団による防衛すべきだと意見を返す。
ハールは、何度か注意を重ねた後、
『砕かれたグランドロンの『破片』が、再び揃おうとしています、その前に、大阪城の『破片』が失われる事だけは無いように、心して守り抜きなさい』
と念を押し、通信を切る。
この通信の後、第四王女レリは、グランドロンの警護として、騎士団の後方支援を担う蒼陰のラーレと、戦力としては期待できないアイスエルフの女性達を残すと、騎士団主力を率いて、ケルベロスの迎撃へと出陣したのだった。
「大阪都市圏防衛戦はみごと大成功でケルベロス大勝利っす! ケルベロスの皆さんのおかげで多くのアイスエルフを救出できたっすっ!!」
ケルベロスを目の前にするなり黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)の興奮たるやいつも以上である。
彼が尊敬してやまないケルベロスが、なりゆきとはいえ一時は敵対する立場に身を置いていたデウスエクス――アイスエルフにも認められ頼られているという事実は彼にとって誇らしくて仕方ないのかもしれない。
「ただ、今回助け出せたアイスエルフは女性だけっす。エインヘリアルの第四王女・レリは徹底して男性を信用しないらしく、アイスエルフの男性達はいまだコギトエルゴスム状態のまま拠点であるグランドロンの宝物庫の奥に閉じ込められているらしいんっす」
差別されている彼らの中には今回助け出した女性アイスエルフの家族や恋人、親しい友人も含まれており、当然の事ながら、彼らも救出して欲しいとの声が多く寄せられている。
「既に一部のアイスエルフ有志が、ケルベロスの元から命からがら脱走してきたと見せかけて大阪城へ戻り、偽情報で敵陣を混乱させてくれる手筈となっているっす。ケルベロスの皆さんによる救出作戦への、頼もしい援護の一手っす!」
その偽情報とは『ケルベロスはアイスエルフの種族全てを定命化させようとしている』『自分達を追いかけてケルベロスが大阪城にやってくる筈』といった内容となる。
加えて、アイスエルフからエインヘリアルへは『どうか、自分達を守って欲しい。ケルベロスは強くアイスエルフでは太刀打ちできない』『その代わり、大阪城内の警備や雑用など協力させて欲しい』といった嘆願や志願もなされるらしい。
現場で指揮を執るレリ王女は、おそらく、これらを全く疑わず鵜呑みにするに違いない。
白百合騎士団の精鋭達の中にもケルベロスとの再戦や仲間の敵討ちを望む者が多いことと相俟って、第四王女を始めとした騎士団主力は城内警備をアイスエルフ達に預けた上で迎撃に出てくるだろう。
「つまり男性アイスエルフを救出する為の潜入作戦を仕掛ける舞台は整ったって事っす!」
そちらは隠密作戦故の少数精鋭となるが……これを成功させる為には、偽情報通り、まずはケルベロスが大阪城へ向けて大挙して襲撃を掛けて騎士団を城外へ誘い出す必要がある。
「皆さんにはこっちの陽動作戦を担当していただきたいっす。よろしくお願いするっす!」
そして、改めて陽動部隊として戦うための各種情報がダンテから伝えられてゆく。
「皆さんの相手は第四王女レリ配下の白百合騎士団の女性エインヘリアル、そして、緩衝地帯で活動していた『竹の攻性植物』――バンブージェネラルや各種ソルジャー達による混成部隊っす。主目標は陽動っすから、迎撃に出向いてきた騎士団達とはある程度戦闘した後に頃合を見て撤退すれば、作戦は成功っす」
ケルベロスから攻撃を受けた場合、敵部隊は守りを固めつつ味方増援の到着を待つという戦法を取る傾向にある為、対するケルベロス側の基本行動は『敵を発見して攻撃、増援が来る前に撤退』とヒットアンドアウェイを繰り返しつつ敵の眼を引き付け続ける、といったものになるだろう。
ただし、先にも述べた通り精鋭の騎士や第四王女その人と遭遇する危険もあるので、その場合は戦闘を回避しての撤退もやむなしである。
「っすがそれは同時に好機でもあるっす。複数チームが連携すれば有力敵を釣り出して撃破する事も充分に可能だと自分思うっす!」
無論その為にはケルベロス同士で密に連携して敵の増援を断ち、狙う有力敵を孤立させる方策を充分に練り上げる必要があるだろう。
第四王女の戦力が第二王女の軍勢との合流を果たしてしまえば、その性質上、完全な敵として立ち塞がる可能性が高い。陽動のみに留まらず、今の内に出来るかぎり敵戦力を削いでおくという方針もまた今後を見据えた場合に作戦の一つとして考慮すべきものがある。
「これは潜入チームの作戦を成功させる為の陽動作戦っす。けど全チームがあからさまな陽動だけに徹しても真の意図を気づかれる危険が高まるっすから、本気で大阪城内の宝物庫にまで攻め込むつもりなんだと敵に思わせるような戦い方も時に見せつける必要があるっす」
危険な敵地潜入を敢行するケルベロス達を支える為の、そして今度こそすべてのアイスエルフ達を仲間として迎え入れる為の、戦い。
「作戦や方針に関しての細かなところはケルベロスの皆さんが現場で下す判断にお任せするっす。何はともあれまずは――ド派手に暴れて来てくださいっすっっ!!!」
参加者 | |
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結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032) |
鳥羽・雅貴(ノラ・e01795) |
キソラ・ライゼ(空の破片・e02771) |
奏真・一十(無風徒行・e03433) |
サイガ・クロガネ(唯我裁断・e04394) |
草薙・ひかり(往年の絶対女帝は輝きを失わず・e34295) |
神咲・イサナ(月夜の銀狼・e45201) |
ウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399) |
●惹かれ、退き
ひび割れたアスファルトの下からは青々と雑草が生えて伸びており、手入れの入らぬ――攻性植物支配圏との緩衝地帯となってからの期間の長さを物語っていた。
「アイスエルフの驚くべき行動力に敬意を以て応えようではないか」
そう奮って戦いに臨んだ奏真・一十(無風徒行・e03433)も息さえ潜め、サーヴァントのサキミごと己の身をすっぽりと隠密気流に包んでの慎重な足取り。
無人の市街地は敵地であり今や戦場である。その内での派手な陽動戦であればこそかなう限り戦う相手やタイミングはこちらの側で吟味する為。
同じく隠密中であったサイガ・クロガネ(唯我裁断・e04394)が物陰伝いに合流を果たし無言でクイと手招きして敵発見を告げる。甲冑が5、竹も5。
既にバンブーアーミーとの市街戦を経験済の彼にとって、人間サイズの街並みにそぐわぬエインヘリアル騎士を多く含む混成部隊相手の偵察はやや拍子抜けすらしたくなるほど容易いものであった。
「要は存分に暴れろってコトだろ、楽しもうじゃナイの」
キソラ・ライゼ(空の破片・e02771)が放った『彩雲ノ糸(サイウンノイト)』が奇襲の口火を切る。敵前列へ俄かに立ち込めた淡き薄曇が齎した効果は阻害の彩光のみにあらず。
その一撃を受けた剣騎士や竹槍兵の防御のさまからポジションと大まかな力量を見抜いた猟犬達の進軍は静から動へ――否、キソラの台詞通り『暴』へと一変する。
「いきなりで何だけど、そこのバンブーソルジャーのアンタ! ――『オヤスミ』」
鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)の詠唱と同時、荒れた地面に落ちた影から襲った鋭刃が標的と定めた敵兵へ一閃を浴びせ、痺痛を注いで味方を援護する。
「派手に動くのは得意中の得意だよ!」
とはいえあまりに派手にわざとらしく動き過ぎてもそれはそれで策の存在を疑わせそうなので程々に、と続く本音を飲み込んだ草薙・ひかり(往年の絶対女帝は輝きを失わず・e34295)もすかさずその全身に魂喰らう降魔の力を漲らせようとしたが叶わず、纏う王者の闘魂も気咬の技を紡ぐ気配は無い……だが歴戦のファイターたる女は決して焦りを見せる事無く、開幕早々のドロップキックで強烈な旋刃脚を炸裂させるのであった。
敵前衛4名中ディフェンダーは騎士とソルジャーランスソルジャーから各1名。サイガが盾役を一手に引き受けるケルベロス側よりは守備寄りだがそれでも事前にヘリオライダーが伝えた傾向を考えれば総勢10体に盾2はやや薄い印象を受ける。
「ドォモ、けるべろサマだぞ!」
おそらくは回復重視の編成と読んだサイガは一切の躊躇無く敵陣内へと斬り込み竹槍兵へと肉薄し漆黒の爪を奔らせる。噛み砕くが如き『錆蝕(ショク)』の一撃は、威力以上に、底知れぬ貪欲をもって心身侵す腐食こそが真価。
穢れ傷へと重ね、白き小袖と緋袴に手甲を着けた戦巫女が抜き放つは神刀・彼岸花。
「作戦が成功すれば、アイスエルフの方々が解放される……。絶対に成功させましょう、私も精一杯努力致します」
眼力は不利を告げれども裂帛の気合から繰り出された神咲・イサナ(月夜の銀狼・e45201)の突きは守り厚き敵の喉元を掠め砕いた。
大攻勢を偽装しての陽動作戦の初っ端、敵前でまっすぐそれを口にしちゃうのは少し拙いのではと小心な結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)などは地獄化した心臓ですらドキドキ高鳴らせそうになったが、
「何が解放だ! アイスエルフ達はお前達をきっぱりと拒絶したにもかかわらずなおも無理強いしようとするなど許せぬ!」
「レリ様の名にかけ、新たな仲間である彼女達は絶対に定命化から守り抜いてみせます!」
相手は相手で……闇雲にまっすぐだったので何ら問題は無かった。
敵後衛からの手厚い治癒すら上回る火力とその集中を以って正面から切り結び、1体ずつ確実に討ち倒してゆくケルベロス。
奇襲成功の優位もあり、時計が4分経過を告げる頃には混成敵前衛は全てその不死の命を絶たれている。だがケルベロスの方針は殲滅ではなく深追い禁物のヒットアンドアウェイ。
「さあ、次へ行こう」
ウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)が見上げた方角は世界樹へと呑まれた大阪城。
それを合図に、仲間と一丸となっての離脱を開始した人派ドラゴニアンの掌からは置き土産とばかりに眩き光そのものと化した御霊が振り撒かれたのだった。
●咲き、盛れ
完全に追撃を撒いた後、態勢を整えて離れた市街地で再び隠密偵察にと戻ったケルベロス達はほどなく行き当たった別の混成部隊へと仕掛けゆく。
今度は白百合6に対して竹は3と先より更に少ない。そして初撃の列攻撃が伝えた手応えは竹槍兵2体と竹銃兵全てがディフェンダーであった。
「ハハ、キラキラ眩しいばっかのお嬢揃いかと思えば……そういうのも嫌いじゃねーよ」
あからさまに攻性植物だけを盾とする布陣を前にしてのサイガの大笑いには台詞とは裏腹に何処か冷笑の響きが混じり出した事、キソラや一十にはお見通しであった。
竹といえども男。ある種ブレない姿は、しかし、シャドウエルフ男性として氷の妖精種族の行く末を気遣う雅貴にとって改めて取り除くべき一つの障害だとの想い強くさせた。
(「男達だけこのまま、なんて寝覚めが悪ィもんな……」)
「――天から降りた女神の『断罪の斧』に、断ち切れないもの、打ち砕けないものなんて、存在しないよっ!!」
満面の笑顔とともにはちきれんばかりの肉体をしなやかにふるわせて炸裂した『アテナ・パニッシャー』が竹銃兵を豪快に路上へと沈める。
竹割り斧もかくやの切れ味で決まった世界を制する剛腕の威力と美とに、刹那、女騎士達は思わず見惚れるような表情を浮かべた。だが……。
「こちらは今回は珍しく女の子が少ないんだよね……これだけのイケメンがご同伴となれば、きついお仕事もちょっと楽しい、かも!」
「……それほどの力誇りながら地球の女達は男に媚びねばならぬのですか……」
続けて何の気なしに吐かれた無邪気な台詞がそれを失望へと変えてしまった。
騎士団の中でもちょっと面倒臭……意識高い系女子が主で構成されている部隊らしい。
「あれほどの勇者が、あのような半裸も同然の恥辱的な姿で闘わねばならぬのも、お前達のおぞましき獣欲の所為なのかっ!」
ルーンの長柄斧を二刀に携えた騎士が、思わずといった形相で吼えかかり、中衛位置から十字の斬撃を飛ばす。彼女がこの隊のリーダー格らしかった。
「ちょっマテ! それすげー誤解!!」
「そうよ、恥辱ってナニよ! このリンコスは鍛え上げた最高峰の技とこのカラダを世界中の観客に魅せつける為の……」
プロレス興行という概念の無い相手にそう訴えても見世物にまでと火に油。
グラビティ飛び交う激闘と並行して巻き起こった男と女の(ほぼ一方的な)拗れなどどこ吹く風、サキミの翼は、超然としたはばたきを保って水の癒しと加護とをケルベロス達へと順に注いで廻るのだった。
「我が心より生まれし畏れの炎、この一刀に纏て悪を断つ!」
『――――ッ』
不平一つ漏らさず黙々と混成部隊の盾を務めた竹兵もレオナルドが宿して放った白炎の前に最後の1体が崩れ落ちる。
ケルベロスが一戦あたりに科したノルマは敵4体。盾の数が増えた分だけ先の第1戦よりもやや梃子摺り戦闘開始から5分以上経っていたが、あと一押し、中衛に居並ぶエインヘリアルのいずれか1体を倒せばまたすぐに撤退開始である。
そして『それ』は唐突に――イサナの頭上へと降り注いだ。
「伏せろ、爆弾だ!」
「……え……?」
叫ぶとほぼ同時に駆け出したサイガが咄嗟にボムソルジャーの爆竹型ボムの爆発と衝撃波を一身に引き受けた。
しかし奇襲はそれだけでは終わらず、次なる爆弾が銃撃が、雨霰と巫女装束の狐と水属性の竜めがけて容赦なく降り注ぐ。
「……そんな」
明らかに、眼力と経験則から確実に倒せるものを見抜いた上で火力を集めた狙い撃ち。
周囲との連携が噛み合わぬ挙動も多々見せていたイサナは為すすべなく、ただその場へと倒れるしかなかった。
「サキミサン!?」
偽骸の白髪振り乱してキソラが手を伸ばすもディフェンダーならぬ身では庇いも叶わず、眼前、親しきボクスドラゴンは無数の飛沫撒いて宙に消失する。
射線の先、廃ビルの上を碧き双眸が振り返り睨みつければ、そこには指揮棒代わりに竹刀掲げて差配する1体のバンブージェネラルとその配下たるソルジャー7体。更にその後方から伏せるような低い姿勢から守護星座の光陣を展開したエインヘリアル騎士が2体。
「増援要請の合図や素振りの類いは一切無かったはず。しかし……大戦力を広く展開中の敵軍にそんな物はそもそも必要なかった、という事か」
自らのサーヴァントと仲間1人を突然脱落させられた上での挟撃開始。
そんな窮地にあっても一十は冷静に状況を分析した後に、再び、何事も無かったかのようにメディックとしての務めに勤しむ。小さく一言、参ったなとだけ零されたが、それすらも淡い微笑まじりであった。
「サイガさん……『大丈夫。治る!』」
地獄への鍵模した鉄塊のつるぎ押し当てた先は既に何度か限界超えたディフェンダーにして友人たる男の背中傷。
トドメ刺す乱心かと見紛う其の施術は如何なる魔力もってしてか痛みすらなく鮮血零す傷口をぴたりと『閉じて』みせる。
ともあれ、『増援視認』という一時撤退トリガーの1つが既に弾かれた。
倍以上の敵を向こうに廻しての撤退戦を成し遂げる為、ケルベロス達は、立ち塞がる敵を懸命に耐え凌ぎ、粘り強く1体1体を返り討ちにして囲む数を削いでゆく。
陽動の任果たす為の攻めの姿勢を貫いて来た雅貴だったが狙撃手の立ち位置はそのままに治癒役への専念を余儀なくされている。
しかし彼の眼は――その銀の眼差しだけは今も、敵陣の隙窺い僅かでも綻べばたちどころに食い破らんとばかりに、耽耽と。
(「番犬を信じてついてきてくれたアイスエルフの心に、大事な相手の救出を願って動く彼女達のその想いに……最善尽くしてちゃんと応えてみせよーか」)
――繚乱と、血華舞い絶えぬ戦場で誰よりも紅くその身を染めて、サイガが哂う。
「竹にゃ華が足んねえな。折角の見頃だ、楽しんでけよ。桜」
竹より好みは血桜、ではあるが。
案外と青き群竹も、少なくとも白百合などよりはよほど見応えも戦り応えもあったとその枝振りを愛でつつも、無惨に刈るべく、振り下ろされるは鉄銹の鎌刃。
「くっ――やはり、惜しい」
『…………!?』
高く跳んだひかり必殺のラリアットが、今度はニ斧の女騎士の胸元へと決まりその巨体を揺るがせたとほぼ同時、黒き血錆に塗れた鉄梃をむんずと振り被ったキソラから投擲された勇者の一撃がジェネラルの頭部を強か揺さぶり遂には片膝をつかせる。
今だとの号令が複数挙がり、駆け出したケルベロス達。
瞬く間に追っ手を引き剥がした後にいったんは大阪の街並みへと消えた彼らは、だがまだ戦いを諦めない。
●氷と影と
過酷な連戦を生き抜いたケルベロスだったが完全撤退のトリガーにはまだ猶予がある。
出来るかぎりの治癒を施し合い、ヒール不能ダメージを溜めつつも立ち続けるサイガが後衛レオナルドとその役割を取り替える事で速やかに陣容は立て直される。
最後の交戦相手は白百合騎士団が5で竹の攻性植物も5の同数。
どちらが主導権を握るでもなく、誰が指揮を執ると決まった訳でも無い一団は混成というよりはただの2つの小部隊であった。
「状態管理に抜かりは無い。支援は任せて存分にやってくれ」
「撃破してしまってもいいんだろう?」
頼もしき癒し手である一十の鼓舞に応え、如意棒を構え不敵にそう口にした後ウリルは思わずクスリと笑ってしまう。
まるで何処かで聞いたフラグみたいな台詞だがそれごと敵を打ち破る、それもまた望む処、なのである。
ただ一つの気がかりは重傷癒えぬイサナの無事だったが、もう戦えぬまま倒れ臥す女性を真っ先に狙うのは卑怯とでも考えているらしい白百合騎士はバンブーアーミーらにもそれだけは譲らず徹底させていた。
対ケルベロスで繋がった呉越同舟らしい各部隊の混成っぷり。
攻性植物とエインヘリアル、どちらが主導権を握っているかで部隊の性質や弱点も大きく変わってくるのかもと知れないと、連戦の間それらを探り続けた雅貴は結論づけた。
約7分がかりで敵4体を撃破するやいなや残す敵を置き去りに陽動を終えて踵を返すケルベロス達。
今回は追撃にも増援にも奇襲にも遭わぬまま無事に安全圏への離脱を目指すその道中。
「また敵援軍? いえ、あれは……アイスエルフ!」
「潜入班がやり遂げてくれたんですね」
ひかりとレオナルドがひそひそと念入りに声を潜めて指さして示した先には氷の角の妖精達が連なる戦列。
「まァたまた巧い事言いくるめちゃ口実作って大阪城から飛び出して来やがったって所か」
任務抜きにしても今回率先してケルベロス達の側についたアイスエルフ達の強かさ――弱いなりに抗おうとする意志はサイガにとっても個として好ましい。
まったく大したものだと同じシャドウエルフの仲間の言に頷きながら、雅貴は想う。
願わくは、彼女達がもう望まぬ眠りや戦いに就かず暮らせるようにと。
作者:銀條彦 |
重傷:神咲・イサナ(月夜の銀狼・e45201) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年4月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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