●シンカは続く
「日輪と月輪は進化する事はできなかったようですね」
巨大なモニターを前に、女……ジュモー・エレクトリシアンは呟く。ダモクレス達の拠点思わしきその場所は、様々な器具や機械類、計器類やモニターなどで埋め尽くされており、その中心にある椅子へと、ジュモー・エレクトリシアンは深く腰掛けた。
「しかし、彼らの死は無駄ではありません。彼らの死は、試作進化型ダモクレスの礎となったのですから」
その手でもてあそぶのは、鈍く輝く宝石……コギトエルゴスムだ。ジュモー・エレクトリシアンの見やるモニターには、新たなる試作型ダモクレス、その外見が表示されていた。
「試作進化型ダモクレス『クレイドール・クレイドル』よ、ダモクレスの未来を新すのです」
ジュモー・エレクトリシアンは、静かに、そう告げるのであった。
とある地方都市。平日故に人はまばらではあったが、決して少なくない人々が行き交うその場所へと、奇怪なる『ゆりかご』たちが降り立った。
それは、ジュモー・エレクトリシアンの言う試作進化型ダモクレス、クレイドール・クレイドルに違いない。
「おああああ」
「おああああ」
クレイドール・クレイドル、その中にたたずむ、ヒトのような期間が、産声のような、泣き声のような、声をあげると、外装に取り付けられた赤い球体から、無数の熱戦が発射され、次々と、建物を人を、薙ぎ払っていく。
ほんのわずかな時間で、殺戮と破壊は完了した。今はもう、動くものはクレイドール・クレイドルの他になく。
「おああああ」
「おああああ」
泣き声をあげるのもまた、クレイドール・クレイドルのみ――。
●次なる進化
「皆のおかげで、ダモクレス、量産型の『日輪』と『月輪』を撃破することができた。それに加えて、強化に使われていたパーツを回収することもできたんだ。まずは、皆の活躍に、感謝の言葉を述べたい」
アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は、集まったケルベロスたちへと、そう告げた。
「そして皆の想像通り、使われていたのはコギトエルゴスム……しかも、皆の調査と予知により分かったことだが、これは『妖精グランドロン』のものであるらしい」
妖精グランドロン……その名が示す通りならば、宝瓶宮グランドロンと密接な関係のある種族であるのだろう。今はまだ、眠らせておく他にないが、やがて、グランドロンたちを元の姿に戻す時が来るかもしれない。
「さて、ダモクレス達の企みも阻止できた……と言いたいところだが、連中は次の手を打ってくるようだ。グランドロンのコギトエルゴスムを利用し、次なるダモクレスを生み出したらしい」
その名は、『クレイドール・クレイドル』。不完全ながらグランドロンのコギトエルゴスムの力を引き出すことに成功しており、状況によっては、非常に強大な戦闘力を発揮するようだ。
「クレイドール・クレイドルは、完全体となるべく多量のグラビティ・チェインを必要とするようで、これを求めて市街地を襲撃するという予知がなされた。こいつらを迎撃してほしい」
ケルベロスたちが担当するのは、4体のクレイドール・クレイドルだ。戦闘に入れば、敵は撤退することは無いと目されている。
4体のクレイドール・クレイドルには、それぞれ一つずつグランドロンのコギトエルゴスムが利用されていると思われ、撃破すればそれぞれ、グランドロンのコギトエルゴスムを回収できるだろう。
「だが……このダモクレスは少し特殊でね。どうやら追いつめられると、戦闘能力が強化されるようなのだ」
どうにも、『残りHPが半分を切った次のターンから』、戦闘能力が大きく強化されるというのだ。これは、ケルベロスたちで言う所のエンチャント効果が発生するという事のようだが、強力さゆえか、ブレイクによる解除が不可能となっている。
しかし、不完全さゆえか、この強化には反動が発生するようで、この強化状態になってから『4ターン後』、『急激に定命化して崩壊してしまう』ようなのだ。
「自滅を狙って……と行きたい所だが、これはこちらにもデメリットがある。敵が『定命化して崩壊した場合、同時に内部のコギトエルゴスムも崩壊してしまう』ようだ。もしグランドロンのコギトエルゴスムを回収したいならば、あちらが崩壊する前に一気に撃破しする必要があるんだ」
強化前のクレイドール・クレイドルたちの戦闘能力は、真正面からぶつかっても勝てない相手ではない程度の相手だ。だが、同時に、一斉に敵に強化をされてしまうと、些か苦しい状況に追い込まれてしまうだろう。
「一体一体を確実に倒していくか、あるいはまとめて一気に倒すか……グランドロンのコギトエルゴスムを回収することも含めて、戦い方は皆に一任されているよ。相談して、決めてほしい」
そう言って、アーサーはひげを撫でた。
「グランドロンたちのコギトエルゴスムを多く回収できれば、今後の作戦に有利に働くかもしれない。それに、グランドロンたちとも友好を築けるかもしれないな……では、君たちの無事と、作戦の成功を、祈っているよ」
そう言って、アーサーはケルベロスたちを送り出した。
参加者 | |
---|---|
アルフレッド・バークリー(エターナルウィッシュ・e00148) |
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414) |
皇・絶華(影月・e04491) |
霧島・絶奈(暗き獣・e04612) |
アリューシア・フィラーレ(亡羊の翼・e04720) |
機理原・真理(フォートレスガール・e08508) |
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412) |
旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・e72630) |
●眠
とある地方都市、その繁華街。
平日故に、人影はまばらではあったが、それでも、決して少なくない人の往来があった。
そこへ――。
空中より、突如として、何かが飛来した。
粘土細工で作られたような、半分が割れた卵のような形状をした物体である。
その外壁にはいくつかの赤い宝石のような飾りが見受けられ、卵の殻の内部には、これも粘土細工で作られたような赤子の姿と、巨大な眼のような赤い石が見えた。
「おああああ」
「おああああ」
赤子が――『クレイドール・クレイドル』が、泣く。
途端、殻にあしらわれた無数の赤い宝石が輝き、次の瞬間には、その輝きは一条の熱線となって、人々へ向けて放たれた。
熱線は宙を走り、怯える人々へ向けて直撃――する直前。
「させ……ませんっ!」
一つの影が、人々の前へと飛び込んできた。同時に展開される障壁とシールド――『結晶式飛翔防御体『DD2016-2式クリスタル・ファンネル』』と『虚心の外套』が、熱線を受け止める。激しい光を放ちながら、やがて熱線は消滅する。熱線は障壁を貫くことなく、人々の命を奪う事も、なかった。
影――アルフレッド・バークリー(エターナルウィッシュ・e00148)は、背後に待つ人々へ、笑いかける。
「ケルベロスです。もう大丈夫ですよ!」
人々の間より、歓声が上がる。
「指示に従って欲しい。速やかに避難を!」
皇・絶華(影月・e04491)が声をあげる。事前に周辺地域の地図を頭に叩き込んでいた絶華である。その避難指示は適切なものだったと言えるだろう。
「さて……一般の人に目を向けさせないためにも、注意をひく必要があるですね……」
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)が、クレイドール・クレイドルへと、視線を移した。ライドキャリバー『プライド・ワン』は、主に返事をするかのように、エンジン音を一度、鳴らす。
「おああああ」
クレイドール・クレイドルが、泣く。人の赤子の声のようにも聞こえるそれは、その外見と在り様故に、どこか不気味な印象を、人々に与えていた。
「赤子の泣き真似をする機械、か」
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)が言った。
「悪趣味だな」
「悪趣味なのはそれだけじゃありません。使い捨ての電池みたいに、連中はグランドロンのコギトエルゴスムを利用してるんです……!」
旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・e72630)は、ぎり、と歯を食いしばって、沸き起こる怒りをこらえた。クレイドール・クレイドルは、その誕生過程で他者の命を、平然と利用しているという事だ。
「……ひとが寝てる間に、勝手に赤ちゃんにされて殺戮者に仕立てられるとか、酷い迷惑もあったもんだねぇ」
アリューシア・フィラーレ(亡羊の翼・e04720)が、嘆息するように、言った。
「……もちろん、敵の思い通りにはさせないけれどね。ここであいつらを止めて、グランドロンの事も助けるんだ」
そう言って、アリューシアはブラックスライム――『黒紅』へと呼びかけた。戦いの合図を受けて、『黒紅』もまた、その身体を震わせる。
「どうやら連中は、進化を目論見、未来を得ようとしているようですが」
霧島・絶奈(暗き獣・e04612)が言う。足元では、テレビウムがぶんぶんと凶器を振り回し、やる気充分、と言った様子を見せている。
「誤った道の先に、進化も、未来もない。そのことを、教えてあげることとしましょう」
静かな笑みを浮かべながら、絶奈もまた、ロッドを手にし、構えた。仲間たちもまた、戦闘態勢に入る。
「――さて、未来を占うコイントスと行こう」
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)は取り出したコインを、高く、はじく。空中で回転するコインは、しかし落下する前に、クレイドール・クレイドルより放たれた熱線により、消滅した。
それを合図に、ケルベロス、そしてクレイドール・クレイドル、両陣営が一気に動き始める!
「やれやれ、馬鹿な奴らだ」
戦場を駆けつつ、泰孝はぼやいた。
「自らの手で、未来の可能性を消すとはな。お望み通り、お前らは此処で行き止まりだ」
その言葉通り――誤った進化を止めるための、戦いの幕が上がる。
●醒
「まったく、ろくでもない事を考えるもんだ。コギトエルゴスムを電池代わりに使うとはなぁ……!」
鬼人が駆ける。手に輝くは『越後守国儔』の刃。接敵するは、クラッシャータイプの一体。
「その魂、斬り離してやるよ」
放たれる、『無拍子』の一撃。それは刀術の基礎。複雑なものはない。一切の無駄を排し、刃を振るい、斬る。ただそれだけで、それは回避不能の斬撃となる。だが、ただそれだけの、如何に難しいものか。基礎、それを極める果てに到達する、奥義の極致。
斬撃が、粘土細工の殻を切り飛ばす。おあああ。赤子が泣く。
「まずは足を止める! それから一体一体……確実に仕留めるんだ!」
絶華は叫び、クラッシャーへと追撃の蹴撃をお見舞いする。浮遊する敵の身体が、衝撃から激しく地面へと叩きつけられた。
ケルベロスたちの作戦は、絶華の言葉通りの、一体一体に攻撃を集中させ、確実に仕留めるというものだ。
とはいえ、敵の火力も決して、軽視できるものではない。
「たとえ死んででも、やり遂げたい事があるって気持ちなら分かるのです。……でも、これは」
プライド・ワンへはクラッシャータイプへの攻撃を続行させつつ、真理はスナイパータイプへと、ミサイルの群れを撃ち放った。これは、ダメージを狙うというよりかは、けん制と、行動の阻害を狙ったものだ。
「きっと違うのですよね。何も知らないまま、貴方達は実験されてるのですよね……そんなことは、許してはいけないのです」
「同意しますよ」
ロッドを振るい、雷の壁を発生させて仲間を守らせながら、絶奈が言う。
「その泣き声は、誕生の産声か、嘆きの慟哭か……いずれにせよ、これは魂の尊厳を汚す行為であると、断言できます」
テレビウムもまた、主の意に応えるように、狂気を振り回してクラッシャータイプの外壁へと攻撃を加える。
「えげつないやり方だぜ」
同様に、雷の壁による援護を行いながら、泰孝も同意する。
「こんなやり方の先に、未来なんてないのさ。奴らが自らの手で、未来を消した。それをわからせてやらないとな」
「ああ……奴らの企み、これ以上許しては置けない!」
嘉内が叫び、その背中に、輝くエメラルドの翼が現れ、羽ばたいた。それは、幻像に過ぎない。だが、鎧装より散布されるナノマシンの力により、それは真実、輝く『エメラルドの翼(エメラルドノツバサ)』となる。
「他の者達を強化素材にするだけでなく使い捨てるとは、貴様らのその非道さは、私の逆鱗に触れた! 最初から全力で、最大威力のグラビティを叩き付けてやる!」
その翼が羽ばたくと、無数の『羽根』となって、宙を走った。その羽根一つ一つが、敵の身を裂き、敵の身を撃つ、自律起動型の兵器であった。
その刃、そしてレーザーが、クラッシャータイプの外装を次々と攻撃、傷を負わせていく。
「お……あああ……!」
クレイドール・クレイドルたちは、一斉に泣くと、でたらめに熱線を吐き出し始めた。拡散し、雨あられのように、熱線がケルベロスたちへと襲い掛かる。展開されていた二つの雷の壁が熱線と衝突し、激しく明滅。いくつかの熱線はケルベロスたちを撃ち貫かんと、その間隙をぬって迫りくる。
「させない、です……!」
『鎧装用シールドユニット』を展開した真理が、その熱線を受けて立った。灼熱の熱線がシールドを溶かさんばかりに襲い掛かる。真理が、その熱量に顔をしかめた。これが、本気の敵の攻撃だという事なのだろう。
「やはり……決して、侮れる相手ではないですね」
真理が言う。
「……じゃあ、力を殺ぐことにしようか」
アリューシアがそう言って、『クォーツァス』、『レベッカ』、二つのロッドを掲げる。その二つの力を以って唱えられるは、古の雷鳴の精霊を呼び出す精霊魔法。
「来たれ雷鳴。其の腕以って打ち据えよ」
アリューシアのその言葉と共に、天よりいくつもの雷が降り注いだ。雷は地に落ちて消えず、渦巻く嵐となって地を嘗め尽くさんばかりに荒れ狂う。その中心にいるのは、クレイドール・クレイドルたちだ。精霊魔法、『エヌムクラウ』の嵐に巻き込まれ、クレイドール・クレイドルたちは雷に打ち据えられる。
「そこ……狙い撃ちます!」
アルフレッドのアームドフォートによる砲撃が、クラッシャータイプの泥人形、その胸を貫いた。
「お……あ……あ……」
ダメージを負った、クラッシャータイプが不気味に声をあげる。次の瞬間、泥人形はメキメキと音を立て、少しずつ、少しずつ――。
「成長……しているのか……?」
敵の様子に、常に注意を払っていた絶華は、いち早くその様子に気づいただろう。その言葉通り、内部の泥人形が、成長しているように、見えた。だが、同時に、その身体はボロボロと崩れ始める。急激な成長と崩壊。それが同時に行われているように。
「『定命化』の兆しです!」
絶奈が叫んだ。予知に合った通り、ある一定のダメージを受けた際に発動する、強化――その果てに待つ、『急激な定命化による自己崩壊』。これがただの自壊であればさほど問題ではないのだが、その結末は、グランドロンのコギトエルゴスムの崩壊につながる。
「ならその前に……!」
鬼人が『越後守国儔』の刃を振るう。三日月を思わせる軌道の斬撃。刃が敵の外装に接触し、鬼人が眉をひそめた。
「なるほど、前より硬くなっているな……!」
ぐるぐると回転する泥人形の瞳が、鬼人を認めると、急激に動きを止めた。
「けるるるるるべろろろろろ」
たどたどしく、回らぬ舌で、泥人形が声をあげる。
「つくづく……趣味の悪い!」
「一気にとどめを刺す!」
叫び、絶華が飛び込む。入れ替わるように、鬼人が後退。
「我が全霊の技をもって……! 我が獣の技、たっぷりと味わえ……!」
その言葉と共に、絶華の瞳が獣のごとく凶暴に輝いた。同時に、その身に、さながら魔獣を宿したかのような、力強さがみなぎる。いや、実際に、魔獣の力を宿したのだ。『四門「窮奇」(シモンキュウキ)』。その業により高速化・強化された身体能力による、獣の爪の如き無数の斬撃が、文字通りにクレイドール・クレイドルを微塵に切り裂く。
「あああ、あああああ」
泥人形が、悲鳴のような声をあげた。その身体、その破片が、泥に帰るように、ぐずぐずと溶けてゆく。その中心に、光る何かがあった。絶華がそれを、掴み取る。輝く宝石――コギトルゴスムだ。
「一つ……成功だ!」
絶華が叫んだ。それは、ケルベロスたちの作戦、それが的確であったことの証左でもある。
「いいぜ、これで、敵の耐久力の予想もつく……!」
泰孝が言う。その言葉通り、まったくの情報もなく敵にダメージを与えなければならなかった状態とは違い、これである程度ダメージの指標ができた。これはケルベロスたちの戦術にとって、有利な情報と言えた。
「よかった……では、残りも確実に、倒していくですよ」
真理のアームドフォート、そしてプライド・ワンのガトリング砲が、残るクラッシャータイプへ向けて圧倒的な密度の弾幕を展開する。その銃撃に、外装の宝石を次々と破壊されながら、泥人形が再びの『成長』の兆しを見せ始めた。
そのクレイドール・クレイドルへ、絶奈は一気に接敵する。
「自立進化の行末――それが『定命化』であるのだとしたら、デウスエクスにとっては、些か皮肉と言うものではありますね」
もっとも、と絶奈は言って、笑った。普段の穏やかな笑いではない。それは、狂笑――絶奈の、本質。掲げられた右手が、青く輝く。生み出されるのは生命の蒼。生命賛歌を謳う、槍の如き輝ける物体。
「あなた達が歩んだこの道は、行きどまり。まさに徒労というものですね」
放つ生命の槍が、クレイドール・クレイドルを貫く。青に飲み込まれ、消滅するその身体より吐き出されたコギトエルゴスムを、テレビウムがしっかりキャッチ。アピールするように掲げて見せた。
「さっきは未来を拒否したようだが……こいつで改めて、占ってやるよ」
泰孝が投げつける、三つのダイス。それが地に落ちて、転がり――果たしてその目は、すべてが6――666の三つ目。しかも、すべての面に傷がつけられ、どうあがいても666が出る、イカサマダイスだ。そのダイスが放つ魔力が、スナイパー敵の心の裡より、燃えんばかりの怒りと焦熱を生み出す。
「666――絶望が、お前たちの行き先だ」
ダメージを受けたスナイパータイプが、『成長の兆し』を見せる。
「始まった……待っていてくれ、グランドロン!」
嘉内が飛び込み、マインドリングより生み出した刃で、スナイパーを切り裂いた。真っ二つに切り裂かれたその身体が、泥状に溶けてゆくのへ、嘉内は手を伸ばし、コギトエルゴスムを抜き取った。
「これで……3人め!」
残るスナイパータイプが、悪あがきの反撃を仕掛ける。放たれる熱線は、宙にて突如直角に曲がり、ケルベロスたちの死角より迫るが、もはやこの程度の攻撃など、ケルベロスたちを怯ませる程度の力すらない!
「……あとは、きみだけだね」
振るわれる、アリューシアの『黒紅』。ほんのりと赤みがかったその身体が、赤い牙となって、スナイパーの外装をかみ砕いた。
「……コギトエルゴスムを復活させずして利用する……なかなかの非道なやり方だけど、そんな手法思いつかなかったよ。……考えるきっかけをくれたっていう点では、感謝してるよ。……グラビティ・チェインについてもそう。ボクらはきっと、それを、もっと、知らなきゃならないんだ」
「お……あ……あああああ」
泥人形の悲鳴――そして『成長の兆し』。だが、その泥人形の身体が、まるで石化したかのように硬直した。
「グランドロン……彼らがボクたちの仲間になるか敵になるか……それは分りません。でも、彼らが何を選択するにしても、それは彼らの意思でなされるべきことです」
アルフレッドが放つペトリフィケイションが、クレイドール・クレイドルを撃ち。そのダメージが引き金となり、クレイドール・クレイドルは、その命を手放した。崩れ落ちる残骸から、アルフレッドはコギトエルゴスムを取り出す。
「だから、彼ら自身で未来を選べるようにしなくてはいけないんです。ましてや、機械生命の部品として使い潰されるなんて、論外。……グランドロンに粘土人形の揺り籠は、必要ないんですよ」
アルフレッドは、その宝石を、太陽へと透かして見せる。
その輝きは、救い出されたことへの礼を、ケルベロスたちに告げるようでもあった――。
作者:洗井落雲 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年4月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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