神を騙る

作者:洗井落雲

●月下の悪夢
 空に、満月の浮かぶ夜――。
 月光だけを明かりに、夜闇のなか、独り佇む女性の姿があった。
「セントールの復活はケルベロスの邪魔により失敗したが、コギトエルゴスムはこういう使い方も出来る」
 女性――『ソフィステギア』がそう言うと、その足元に光が走った。光は魔法陣を描くと、天上の月光に呼応するかのように、激しく、強く光り輝く。
 やがてその光の中から、無数の影が現れた。
「狂月の病魔達よ、神造デウスエクスとなり、我らがマスタービースト様へ至る、道しるべとなれ」
 ソフィステギアの言葉に応じるように、現れた影――『狂月病の病魔』たちは、不気味に揺らめいた。

 それから、少しの後。
 満月輝く夜道を、独り、ウェアライダーの青年が、歩いていた。
 あたりには人気もなく、些か不気味な雰囲気が漂っている――気がする。
 少しばかりの恐怖を感じた青年は、足早に、家路を進んでいた。
 と――。
 その青年の前に立ちはだかる、5つの人影があった。
 一目見れば、ウェアライダーの女性のように見えたが、彼女が纏う妖艶な――そしてどこか恐怖を抱かせる空気は、それが異常な存在であることを物語っている。
「ウフフ」
 女が、笑った。
「遊びましょう?」
 じりじりと、女が――『狂月病の病魔』が、青年へとにじり寄った。

●病魔迎撃
「集まってもらって感謝するよ。では、今回の作戦についての説明だ」
 アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は、集まったケルベロスたちへ、そう告げた。
 ケルベロス達の活躍により、妖精8種族、『セントール』を蘇らせ、自分たちの戦力にしようとしていた螺旋忍軍たちの計画を阻止することに成功した。
 しかし、計画を阻止された螺旋忍軍は、次なる作戦として、『狂月病の病魔にセントールのコギトエルゴスムを埋め込む』事で実体化させ、神造デウスエクスモドキを生み出す計画を実行に移したようなのだ。
「病魔はウィッチドクターでなければ実体化させることはできない。……だが、狂月病は神造デウスエクスであるウェアライダーが定命化した事で発生した病魔だ。もしかしたら、ウィッチドクターに頼らずに実体化させる方法が存在するのかもしれないな……」
 アーサーは考え込むように口元に手をやる。
 さて、実体化した神造デウスエクスモドキは、実体化した病魔のような戦闘能力を持っていて、ウェアライダーを狙い、襲撃を行うのだという。
「これは、ウェアライダーを襲撃して殺害することで、マスタービーストの秘儀を再現しようとしているのかもしれないな。色々と謎が多い事件だが、いずれにせよ、襲撃されるウェアライダーを守り、神造デウスエクスモドキを撃破しなければならない。それに、この神造デウスエクスモドキを撃破できれば、妖精8種族のコギトエルゴスムも手に入れることができるはずだ」
 襲撃されるウェアライダーの青年は、深夜、独り夜道を歩いているところを襲われるらしい。事前に避難させられればいいのだが、もしそうしてしまえば、神造デウスエクスモドキたちは別の標的を探し、姿を消してしまうだろう。そうなってしまえば、神造デウスエクスモドキの行方を探ることが難しくなり、次の犠牲者を守ることもまた、難しくなる。
 危険ではあるが、青年が襲撃されたところに救援に入るのが、最善であるのだ。
 また、神造デウスエクスモドキたちは、青年に攻撃することは無いようだが、もし青年が戦闘開始後に逃げ出した場合は、青年を追って、自動的に移動してしまうという。
 この自動追尾移動を阻止することはできない。そのため、戦闘開始後に避難させる……という事も出来ない。
 なお、襲撃を仕掛けてきた神造デウスエクスモドキたちの総数は、5体であるという。
「それから……君たちが戦い始めて、8分が経過すると、ウェアライダーの青年は、重度の狂月病を発症すると予知されている。そして青年が狂月病を発症してしまった場合、神造デウスエクスモドキたちが一気にパワーアップするようなのだ。だから、敵の強化を阻止するためにも……青年に、狂月病の苦しみを与えぬためにも、できるだけ短期間に決着をつけてほしい。お願いだ」
 アーサーは、深く頭を下げた。彼もまた、ウェアライダーであるのだ。病の苦しみは、身をもって理解しているところだろう。
「……ウェアライダーはもちろん、コギトエルゴスムを利用されたセントールもまた、被害者だ。多くの苦しみを生み出すこの事件は、放ってはおけない。作戦の成功と、君たちの無事を、祈っている」
 そう言って、アーサーはケルベロスたちを送り出した。


参加者
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)
四方堂・幽梨(義狂剣鬼・e25168)
田津原・マリア(ドラゴニアンのウィッチドクター・e40514)
エリザベス・ナイツ(フリーナイト・e45135)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)
フレイア・アダマス(銀髪紅眼の復讐者・e72691)

■リプレイ

●月の下にて、悪意は蠢く
 月光があたりを照らす、夜の路地で――。
 ウェアライダーの青年は一人、家路を歩いていた。
 空に浮かぶ満月に、どこか怪しげな雰囲気を覚えるのは、思い過ごしだろうか。
 胸に浮かぶ、ちりちりとした不安感。それを振り払うように、青年は頭を振り――目を見開いた。
 青年の行く手をふさぐように、妖艶な女が、立っていた。
 その数は、総勢にして5名。皆、似たような様相を持ち、そして奇怪な生き物を、奴隷のように使役している。
「ウフフ」
「遊びましょう?」
 女が、笑った。
 赤い瞳が、まるで満月のように思えた。
 青年は、身の毛がよだつような、本能的な恐怖を覚えた。あれには、近づいてはならない。あれは恐ろしく、悍ましく、触れてはならない存在だ。心が、そのように警鐘を鳴らした。
 青年の直感は、ある意味で正しい。女たち――それは、『狂月病』の病魔をベースに生み出された、神造デウスエクスモドキなのだから。
「ひっ……!」
 青年が、たまらず悲鳴を上げる。心の中の不安や恐れが、少しずつ、何かに塗りつぶされていくのを感じた。それは、青年にとっての『狂月病』の症状に似ていた。
 病への恐怖――それを覆い隠すかのように走る、衝動のようなもの。いずれ青年の理性を蝕むであろうそれが、最初は弱く。少しずつ、強く、にじみ出ていく。
「――そこまでや」
 声が、響いた。
 青年を庇うように、いくつもの影が降り立った。その中のいくつかの影は、人々に希望と勇気を与える、決戦の姿をもって、まるで月光に負けないくらいに、輝いているようにみえた。
「もう大丈夫や。あんたを脅かす『病魔』、倒しに来ました」
 声の主――田津原・マリア(ドラゴニアンのウィッチドクター・e40514)が、青年へと告げた。
 そう、降り立った影は、ケルベロスたち。神に造られしものを騙る、月光の病を切除するオペレーションのためにやってきた、救いの戦士。
「逃げて……って言いたい所だけど」
 リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)が、静かに、青年へと声をかける。無表情ではあったが、その姿は人々を励ます光に満ちていた。
「逃げても、あいつらはあなたを追いかけてくるよ。だから、リリ達が守るからそこから逃げないで。お願いだよ」
「不安に、思うかもしれません」
 その言葉に続いたのは、ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)だ。
「人に運命を委ねて何もできない、もどかしい気持ちは分かりますわ。けれど、あなたの前に立つ人達は、これまでも何度も地球の運命を守り抜いた歴戦の英雄です」
 凛とした雰囲気を纏いながら、ルーシィドは、落ち着かせるように、青年の瞳を覗いた。
「そんな方達が守るとおっしゃったのです、必ず守ってくれますわ。もちろん、私だって、全力をもってあなたを救うことを約束いたします。だから、どうか信じて下さい」
 ケルベロスたちの言葉に、青年は、困惑した様子を見せながらも、しかし信頼の眼差しをもって頷いてくれた。リリエッタ、そしてルーシィドも、互いに視線をかわして、頷き合う。
 青年を引き留めることに成功したケルベロス達は、改めて、彼を守る様に、神造デウスエクスモドキたちへと相対する。
「ウフフ」
 ケルベロスたちを前にして、神造デウスエクスモドキたちは余裕の笑みを崩さない。
「なんだか、不気味な感じですね……」
 霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)が、声をあげる。敵の纏う雰囲気が、どこか現実離れしている気がするのは、その誕生の経緯の複雑さゆえだろうか?
「誕生の経緯が経緯だ。まったく、回りくどい連中だ」
 フレイア・アダマス(銀髪紅眼の復讐者・e72691)が嘆息する。セントールのコギトエルゴスムを利用し、狂月病の病魔をベースに生み出されたのが、あの神造デウスエクスモドキたちだ。
「そうですよ、こんなふうにいじくりまわされたら、病魔たちにまでリア充が発生しかねません! まったく、危険極まりない!」
 憤る裁一へ、
「リア……?」
 フレイアが言葉を漏らす。主の気持ちを代弁するかのように、ボクスドラゴン『ゴルトザイン』は首を傾げた。
「ツギハギみたいな奴等だ」
 告げたのは、四方堂・幽梨(義狂剣鬼・e25168)だ。静かに『黒鈴蘭』を抜き放ち、敵へ向けて、突きつけた。
「誕生経緯、手口……何もかも厄介な奴ら。カタギに手を出すんじゃないよ、まったく。ここで中身だけ置いてってもらうよ」
「『病』を『殺す』か」
 ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354)が、言った。
 その獣のような眼には、神造デウスエクスモドキたちは『獲物』……『殺す為の対象』としてのみ、映る。
「面白い体験だ。がっかりさせてくれるなよ」
 浮かべるは、獲物を見つけた肉食獣のごとき笑み。
「時間の余裕もあまりないもの!」
 エリザベス・ナイツ(フリーナイト・e45135)もまた、『鋼鉄の覇王ノヴァ』の巨大な刀身を振りかざした。
 小柄な体に、不釣り合いなほどの巨大な獲物を、くるりと構えて、
「巻き込まれた彼を助けるため、セントールの人たちを助けるため! 全部っ! ここでやっつける!」
 その声に合わせるように、ケルベロスたちもまた、全員が戦闘態勢に入った。
「ええ、いいわ」
 それを見た神造デウスエクスモドキたちは、怪しい笑みを崩さず。しかし、其処に嗜虐的な色を合わせて浮かべ。
「遊びましょう?」
 鋭く振り払われる鞭の音と共に、月光の下で、戦いは始まる。

●病魔は踊る
「制限時間付か。まずは……」
 ヴォルフはちらり、と時計に目をやりつつ、呟く。予知によれば、8分が過ぎた段階で、襲われた青年は重度の狂月病を発症、神造デウスエクスモドキたちはその戦闘能力を飛躍的に向上させる。青年を救うためにはもちろん、敵の戦力向上を阻害するためにも、短期決戦が重要であった。
 ヴォルフは、静かに、その手をかざした。
「Weigern……」
 呟くように唱えられた言葉。その言葉に呼び寄せられるように現れたのは、ひとつの『精霊』の姿だった。
 その業の名は『Vorzeit zauber(フォーアツァイト ツァオバー)』。『太古の魔術』を意味するそのグラビティは、敵の破壊を約束することで精霊を召還し、
「行け」
 敵へと襲い掛からせ、その治癒能力を阻害する。ヴォルフの言葉通り、放たれた精霊は、回復を担当する神造デウスエクスモドキへと飛ぶと、その力を解放し、放たれる力のヴェールが、メディックを撃ち抜いた。
「攻撃は最大の……という奴だよ。斬らせてもらう」
 一方、地を滑る様に、幽梨は走る。目標は、前衛――立ちはだかるディフェンダー。
 天上に月があるのならば、幽梨の斬撃の軌跡は、地に描かれた三日月であった。刃は敵ディフェンダーの使役する生物、その足を切り裂き、動きを阻害させる。
「病魔を使って……こんなことするなんてっ!」
 エリザベスが続いた。その手にかざす、『鋼鉄の覇王ノヴァ』。その超重の武器を、しかしエリザベスは高らかに振りかぶった。その重量を利用し、勢いよく振り下ろす。狙うは、敵の持つ武器。その一撃は、ワイヤーよりも固いであろう敵の鞭を、まるで糸を断ち切るように破断。
「ルー、行くよ……!」
「はい、リリちゃん!」
 リリエッタの言葉に、ルーシィドは頷く。リリエッタが蹴り上げる星のオーラが、大地を走る流れ星となって、ディフェンダーへと突き刺さる。一方で、ルーシィドは、己のオウガメタルへと呼びかける。活性化し、ルーシィドの身体を包むオウガメタルはオウガ粒子を放ち、
「皆様の、手助けとなる力を……!」
 ルーシィドの命のままに、仲間のケルベロスたちへと降り注がせた。
「病が相手、ですからね! 予防はしっかりと!」
 続く裁一が振るう剣が、地に守護星座を描いた。星の結界は邪を振り払う力となるだろう。
 デウスエクスたちも、ただ黙ってやられているわけではない。反撃に転じた2体のディフェンダーは、反撃とばかりに鋭い鞭の一撃を振り払う。一つは、幽梨へ。一つは、エリザベスへ。
「遅い……っ!」
 幽梨は、すれすれの所でその身をひるがえすことで、
「そんな攻撃じゃ、ノヴァは砕けないわよ!」
 エリザベスは、その巨大な刃を素早く振るい、盾とすることで、それぞれ攻撃を防ぐことに成功する。
 一方で、狙撃手タイプのデウスエクスは、狙いを定め、その鞭を鋭く、まるで銃弾を撃ち放つように、直線的に打ちはなった。それはフレイアの防御をかいくぐる様に軌道を変化させ、その腕に痛打を加える。
「……! なるほど、鋭い……だが、遠いな!」
 しかして、命にはまだ届かない。
「まずは取っ掛かりですね」
 次に接敵したのは、マリアだ。ケルベロス達の猛攻を受けた、一体のディフェンダーをターゲット。流星の如き跳び蹴りをお見舞いしてやる。その攻撃に、ディフェンダーはたまらず、体を揺らせる。
「こんなところで、私は、私達は――負けるわけにはいかんのだ!」
 フレイアは叫んだ。『不撓不屈の咆哮(アダマス・クライ)』。フレイアの魂、在り様を載せた叫び。それは聞くものの勇気を奮い立たる。ゴルトザインも主の活躍に負けじと、自身の属性を仲間たちへと注ぎ、活力を与えていく。
 残るデウスエクスたちも動き出した。メディックとジャマー、共に月光を思わせる光を放つ。しかし、その性質は異なっていた。
 メディックの月光が、傷をいやすものであるならば、ジャマーの月光は、狂気を植え付けるものだ。狂気の月光がケルベロスたちへと降り注ぎ、その精神を、病のように蝕み、ざわつかせる。
「チッ……だが、この程度で狂わされるほど、温い人生送ってないんでな……!」
 ヴォルフは幻影を振り払いながら、なんとかディフェンダーへと攻撃を続行する。『Unterwelt』の刃はディフェンダーの胸を貫き、命を手放した病魔が崩れ落ちる。
「鬱陶しい幻影が……あたしにまとわりつくなッ!」
 幽梨が、裂ぱくの気合と共に、自身を惑わせる狂気を吹き飛ばす。それに続いたのは、ルーシィドだ。
「私の出番ですわね……! 眠れる森の茨よ……!」
 ルーシィドが祈る様に瞼を閉じると、その身体より無数の茨が現れた。だがそれは、実際の茨ではなく、ルーシィドの心の裡にある夢、その幻視のひとつ。仲間を包み、癒す茨は、一瞬の後に、夢のように溶けて消える。そこには、悪しき狂気の月光が与えた夢も、残らない。
「ありがとう、ルー……もう一度、力を貸して!」
 続いたリリエッタが、ルーシィドの隣へと立つ。二人は頷き合ってから、お互いの手を強く、握り合った。
 途端、二人の魔力が、お互いの身体を循環していく。一度巡るたびに、その魔力は高くなり、何度もめぐり合うたびに、その力は極限まで高まり、響き合う。
「ルー、これで!」
「決めますわ、リリちゃん!」
 二色の魔法陣が重なり合い、生み出される『荊棘の弾丸』。二人の魔力、その結晶。
『――『死ヲ運ブ荊棘ノ弾丸(スパイク・バレット)』!』
 二人が叫ぶと同時に、放たれた弾丸が、残るディフェンダーへと着弾する。弾丸は体内へと突き刺さり、其処から萌芽する無数の茨が、内部を食い破り、外へとはい出る。茨のオブジェ、その一部となりながら、ディフェンダーはその命を手放した。
 ケルベロスたちの進撃……だが、ふと後ろへと視線をやれば、進行する狂月病の症状に耐える青年の姿が見えただろう。時間に余裕はない。
「さっきのお返しよっ!」
 エリザベスが走る。手に持つ武器、その重量など感じさせぬように、ジャマーへと接近しながら、『鋼鉄の覇王ノヴァ』へとグラビティを注ぎ込む。極限までグラビティを送り込み、跳躍。エリザベスはそのまま、『鋼鉄の覇王ノヴァ』の重量を載せ――、
「急所に……ううん、一刀両断っ!」
 言葉通り、頂点からの一刀両断の一撃をお見舞いする! ジャマーはなすすべなく、真っ二つに両断。その身体は爆発するように消滅する。
 次々と撃破される仲間たちの姿に、さすがのデウスエクスたちも狼狽の色を見せ始めるが、
「嫉妬病を患う薬品どうぞ」
 そのうち、スナイパーの背後へと忍び寄り、裁一は注射器を、スナイパーの腕へと突き立てた。『嫉妬暗殺術(カップルシスベシ)』による、毒薬の注入である。派手さはないが、その毒性は折り紙付きで、スナイパーは瞬く間にその身体を痺れさせた。慌てて反撃に移ろうとするが、それすらままならない。
「おや、病魔にも毒って効くんですね……やっぱりリア充なのですかね?」
 くすりと笑う裁一。
「なるほど、では、こっちも……!」
 マリアは武器を構えると、光の弾丸を生み出した。
「こっちは麻酔弾や!」
 武器を振るい『光の麻酔弾』を放つ。『神鎖抑制閃弾(グラビティインヒビター)』、対デウスエクス用の、グラビティチェインを抑制するそれはメディックへと着弾。破裂する光がその目をくらませ、
「その魂、頂くぞ。レア物だけにしっかり味わってやるから、私をがっかりさせてくれるなよ?」
 その隙をついて接近したフレイアとゴルトザインの一撃が突き刺さる。ゴルトザインのブレスはメディックを包み、フレイアの拳はメディックの腹部を貫いた。魂を喰らう降魔の一撃は、デウスエクスの魂を食らいつくす。
「まぁまぁ、楽しめたよ。ではな」
 冷たく言い放つヴォルフ、その言葉のよりも冷たい輝きを放つ『Lament』の刃が、残るスナイパーの胸を抉った。
 その一撃がトドメとなった。そして、それを合図にしたかのように、すべての敵の死体は、幻のように消滅したのであった。

●月光の決着
「大丈夫ですか? 体の具合悪い様だったら休みましょう」
 優しくかけられるマリアの言葉に、青年は消耗した様子を見せながら、しかし無事な様子で笑って、頷いた。
「よかった……間に合って」
 その様子に、エリザベスも微笑む。
「ルーシィか。サポート助かったよ」
 一方で、幽梨はルーシィドへと声をかける。ぶっきらぼうな様子ではあったが、そのうちに宿る温かなものを感じ、
「はい! ありがとうございますの!」
 ルーシィドも笑って返事を返した。その様子に、幽梨はほほを掻き。
「お疲れ様、ルー」
 リリエッタもまた、ねぎらいの言葉をかけるのであった。
 一方、セントールのコギトエルゴスムの回収にも、ケルベロスたちは成功してた。
「ふむ。敵の数通り。これで全てか」
 ヴォルフの言葉に、
「ミッションコンプリート……ですね」
 裁一が笑った。
「未来の同胞になるかもしれん相手だ。丁重に扱おう」
 フレイアはそう言って、コギトエルゴスムを丁寧に、ケースへと保管した。
 ケルベロスたちの活躍により、神造デウスエクスモドキは撃退され、
 新たなる未来への道は、確かに開かれたのであった。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年4月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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