大阪都市圏防衛戦~白百合騎士団と氷の妖精

作者:沙羅衝

「そこのお下げ、少し前に出すぎだ」
「あっ……ごめん、なさい……」
 オフィス街の路地と思わしき場所で、騎士姿の女性に叱責され、髪を編んで後ろに垂らしている少女が、弱々しく謝罪をしている。
「そっちのおかっぱは、もう少し早く!」
「!?」
 今度は最後尾で肩で息をし始めた少女に、声が飛ぶ。最後尾の少女はびくりと体を跳ね上げながら、少し早く足を動かした。
 ガラン!
 激しい音が鳴る。慌てた脚が、足元にある空き缶を蹴り上げてしまったのだ。
「しっ! 気をつけろ!」
 声は落としているが、厳しい一言である。その声に、しゅんとしてしまう少女。
 此処は大阪城周辺にある地域の一つである、淀屋橋という地域だ。近くには大阪市役所や、中之島公会堂と親しまれている大阪市中央公会堂。そしてすぐ北には梅田という大きな繁華街がある。そんなオフィス街。ビルとビルの間を隠れるようにして、その者達は居た。
「久しぶりの戦いになるからな、アイスエルフの力、頼りにしているぞ」
 そして、女騎士の一人が、隠れながらもそう言う。女騎士とは、エインヘリアルの白百合騎士団であった。
「とは言え、復活したばかりだ。あまり、無理はするな」
 女騎士はそう続けた。その騎士に、勇ましそうなアイスエルフが問いかける。
「本当に、アスガルドで再び暮らせるんだろうな?」
 怪訝な表情で、真直ぐに騎士を見る。すると、その騎士は当然だと言わんばかりに得意げに話す。
「第二王女が王になる為に、重要な役割を果たす事。それは何よりの手土産になる。お前たちはもう白百合騎士団の見習い騎士なのだ。胸を張れば良い」
 その瞳は純真で、偽りの無い輝きを放つ。完全に王女、つまり第四王女レリの言葉を信じているからだ。
「ただ……。この地にはケルベロスという恐ろしい者達がいる。気を抜くんじゃないぞ」
 そして、その者達はオフィス街から北に向かい、大阪市中央公会堂の方へと向かって行ったのだった。

「みんな、よう聞いてな」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が集まったケルベロス達に依頼の説明を開始していた。
「リザレクト・ジェネシスの戦いの後に、行方不明になってた『宝瓶宮グランドロン』に繋がる情報が、大阪城周辺から報告されたで」
 現在大阪城周辺では、竹の攻性植物による警戒作戦が行われている。その事を知っているケルベロスは、少し状況が想像できた。
「まあ、竹のヤツがうろうろしているわけやったんやけど、そん中にやエインヘリアルの騎士と『妖精8種族であるアイスエルフ』の女性の姿が確認できた。どうやらレリ王女は、彼女達を騎士団に組み込んだ見たいやな。それに攻性植物との同盟も強化したっぽい。リザレクト・ジェネシスで消耗した第二王女の勢力を盛り返そうっちゅうわけやな」
 絹の説明を聞いたケルベロス達は頷き、先の説明を促す。
「皆に向かってもらうんは、その竹のヤツと変わって動いている白百合騎士団の場所。数は8体。ただ、そこにアイスエルフも8体おる。全部で16体っちゅう大所帯やけど、幸いにそのアイスエルフはまだそんなに強くない。
 んで、市街地の地形を利用できるのは、竹ん時と同じや。作戦としてできる事は、どうやって隠密して奇襲するか。それを考えてな。
 それから、アイスエルフ達はまだ自分から攻撃をしてこうへんらしいねんけど、当然こっちが攻撃すれば反撃はしてくる。で、白百合騎士団は彼女達を守る様に戦闘をするっぽいから、その辺頭にいれて作戦たててな」
 すると、その絹の含みのある言い方に、ケルベロスの一人が気がついた。
「……ひょっとして、つれて帰れる、ということ?」
 その言葉に、周囲のケルベロスの何人かは驚き、絹は頷いた。
「せや、白百合騎士団を全滅させた上で、アイスエルフを説得できれば、それは可能や。
 でもな、結構難しいと思う。何でかっちゅうと、自分達を守ってくれた相手を殺したヤツを、簡単に信用できへんやろ? せやから、もし説得を試みる場合は、戦い方もまた、注意せなあかんやろな。知っての通り、白百合騎士団は、騎士や。その彼女達が体を張って自分達を守って、魔法とか武器で殺される姿を、目の当たりにするんや。相手からしたら、そら、おっそろしい敵に映るわけやからな。
 まあ、もし説得に失敗して、そのアイスエルフ達を撃破しても、撤退させてもええ。そこは、現場の判断に任せるな」
 その言葉を聞いたケルベロス達は唸る。確かに絹の言う通りなのだ。ただ単に、相手は悪いやつだから一緒に行こうよ、なんて言葉を信じる事はないだろう。少しの時間の差だが、白百合騎士団のほうが突然会ったケルベロス達よりも、長い時間を共にしているのだから。
「しっかし、攻性植物側も不気味やな。攻性植物にとっても、エインヘリアルは敵なわけやから、第二王女の反乱を狙ってあえて同盟を結んだのかもしれん。その為にも、この依頼はしっかりとやって欲しい。アイスエルフの事は、任せるな。ほな、頼んだで」
 こうしてケルベロス達は、ヘリポートへと向かって行ったのだった。


参加者
神楽火・皇士朗(破天快刀・e00777)
レベッカ・ハイドン(鎧装竜騎兵・e03392)
ライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196)
カトレア・マエストーゾ(幻想を紡ぐ作曲家・e04767)
燈家・彼方(星詠む剣・e23736)
レイリア・スカーレット(鮮血の魔女・e24721)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
刈安・透希(透音を歌う黒金・e44595)

■リプレイ

●護る者
「こちらは、予定通りの配置についた。そっちはどうだ?」
『大阪市中央公会堂の近くだ。こちらも、予定通りだよ』
「了解」
 刈安・透希(透音を歌う黒金・e44595)は、そう言ってビルの屋上から、大阪市中央公会堂を見下ろしながら、シーバーのスイッチを離して様子を見た。先程の声はカトレア・マエストーゾ(幻想を紡ぐ作曲家・e04767)だ。そして、透希は視界に入った一つの集団を見逃さなかった。
「あれは……」
 そう言って、再びシーバーのスイッチを押し込んだ。

 ケルベロス達は、絹の予知の通りの道路を見張っていた。それぞれがバラバラに動いてはいたが、最終的には大阪市中央公会堂を中心に、網を張り巡らせていた。
「じゃあ、……行くわね」
 婦警の姿をした獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)が、肩にとりつけたシーバーにそう声をかけて、ゆっくりと歩いていく。そこに、神楽火・皇士朗(破天快刀・e00777)が、並びはしない距離を保って少し視線を合わせたあと、同じ方向にむかって歩いた。
 続いて燈家・彼方(星詠む剣・e23736)とライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196)が、同じように合流する。
 全員が無言だった。
 そして、一つの曲がり角を曲がったところで、全員が静止し、同じ方向を向いた。
「奇襲か!」
 ケルベロス達の目の前に現れた、いや、現れたのは此方のほうだろうが、その者達は慌てたように武器を手に取った。8体の女騎士たちと、アイスエルフの少女達だった。彼女達は、まずアイスエルフを護るように、一斉に前に出たあと、その役割に従い、フォーメーションを組む。
「まあ、そう焦るな」
「そうですね。まずは話し合いをしませんか?」
 そこへ、空からレイリア・スカーレット(鮮血の魔女・e24721)とレベッカ・ハイドン(鎧装竜騎兵・e03392)が舞い降りて、声をかけた。
 さらにカトレアと透希が、大きなジャンプからその地に降り立った。
「新手……! おい、絶対に前に出るんじゃないぞ……」
 白百合騎士団の一人がそう言って、アイスエルフに声をかけた後、武器を構えた。
「投降するんだ。おれ達は自分の故郷を守るために戦っているだけだ。きみ達が侵略行為を中止するなら、これ以上争うつもりはない」
 皇士朗は、武器を構える騎士達に、そう声をかけた。
「もとより覚悟の上。全てはレリ様の為に。それに、この地に集うのが、我々と攻性植物だけだと思わない事だ!」
 白百合騎士団の一人がそう言う。どうやら、此方の言う事を聞いてくれるような者達ではないようだ。それに、彼女達はレリに忠誠を誓っている。レリの命令は、絶対なのだ。
 ケルベロス達は、その事を考えていなかった訳ではないし、相手を舐めていた訳でもなかった。ただ、思考を重ねて出した結論は、奇襲は行わず、真っ向勝負するという事だった。
 出来たはずの作戦を取らず、自らの考えに沿って目的を達成する事は、当然その報いとして、戦いが困難になる事は承知の上だ。しかし、それ以上に伝えたい事があったのだ。
「やっぱり、駄目みたいだね……分かっていた。分かっていたんだよ……」
 ライゼルは少し空を見上げたあと、両手で鎖を繋げて引く。すると彼は見事な変身を遂げる。
「仕方が無い。では、此方も相手をしなければね」
 カトレアもまた、頷きながら後方支援する位置に下がる。
「さぁ、皆が幸せになれる未来に繋げよう……来い!」
「さぁ、舞台は整った。開演といこうか」
 二人の声と共に、戦闘は開始されたのだった。

●自分達の戦い
「キックは封印するが……鎖は硬いよ? 破れるかな?」
 まずライゼルが鎖の盾を前衛に張り巡らせながら、突っ込んできた女騎士ルーンアックスをその鎖で受け止め、斧を弾き返す。
「最初に地球に攻めてきたのエインヘリアル達デウスエクスですからね。そっちが地球人を殺戮しまくってるから反撃してるんですからね。
 そっちはこっちを単なる餌扱いしてるんでしょうけど」
 レベッカがその斧使いに、『レインボーバスターライフル』を構えて、打ち放った。
「観客を呼んでおこう」
 そしてその隙に、カトレアが紙兵を撒き、皇士朗がドローンを展開する。
「うおおおおお!!」
 二人の白百合騎士団が、ゾディアックソードを振りかぶり、目の前にいる銀子に同時に斬りかかる。
 ドシュ!!
 何とか一人の攻撃を避ける事は出来たが、もう一人の剣は避け切れずに銀子の肩口を切り裂いた。
「……!!」
 その痛みに彼女は耐える。そして、それでもその斬りかかってきた女騎士を見据えて言う。
「お互いに、守るために戦っているんだもの。無闇に傷つけるつもり無いわ」
 そう言って、絶対的な防御の構えを取り、意識を集中させた。
 ケルベロス達は、決して自分達から攻撃を仕掛けなかった。それは、自らの意志をそこに居る者達に伝えたかったから。
 アイスエルフ達にも、その姿を見てほしかったから。
 どんなに傷ついても、倒れない姿を。
「攻性植物は本当に信用出来るのですか? あれらの侵略能力は脅威です。気付かぬうちに、あなた達アイスエルフが攻性植物に侵食されているかもしれませんよ」
 そんな中、彼方がアイスエルフ達のほうをみて、そう呼びかける。
「だが、攻性植物も変わろうとしている!」
 その声を聞いた二本の斧を持った騎士は、即座にそれを否定し、それを高く掲げる。
「うおおお!!」
 そのクロスさせた斧が彼方に襲い掛かる。
「それは、まやかしです!」
「させんぞ!」
 彼方と皇士朗が同時に叫び、皇士朗の肩にその二本の斧が突き刺さる。これも、大きなダメージである。これまでの盾の力がなければ、倒れてしまうかもしれないほどだ。
 だが、皇士朗もまた、銀子と同じく怯む事はなかった。
「もし、なんらかの理由で隷属を強いられているなら、おれはきみ達を助けるために、この剣を振るうことも厭わない。おれの敵はあくまで侵略者だ!」
 それは、女騎士を見ながらも、実際に届けたい相手、アイスエルフたちへの言葉。
『水は留まり、いずれ澱む。……逃がしません』
 二本の斬霊刀『黒隼星』と『白狼星』に『水華星』の力を宿した彼方は、足元に突き立てた力で、二本斧の女騎士の足元に水を発生させて、凝固させる。
「東京での決戦といい、第二王女の都合の良いように利用されているのが白百合騎士団の現状だろう? 本当に、故郷へ戻れる保証はあると思うか」
 するとレイリアがそう白百合騎士団に問う。
「女の、ヴァルキュリア……。ふっ、裏切り者達が何を言うか。だが、もう遅いかもしれんな。聖王女の威光があれば、世界は良い方に変わっていけるのだから」
「どういう……」
 レイリアはそこまで言って、言葉を発するのを止めた。
「まあ、そういう事だろうな……」
 すると、透希がレイリアに頷きかける。
(「聖王女という言葉が、何処まで本当かは分からないし、本来攻性植物とエインヘリアルは対立関係にある。そう吹き込まれているといった所だろう……」)
 透希はそう考えながら、獣の拳で目の前の騎士を殴る。
「我が名はレイリア・スカーレット。兵站と看取りを司る者。刃を向けるというのならば、容赦はしない」
 レイリアはそう言って、オーラの弾丸を放ったのだった。

 両者の戦いは、一進一退の攻防が続く。それは、ケルベロス達が完全に持久戦の構えを取ったからだ。此方からの攻撃は仕掛けず、完全に受身である事が、戦闘の時間を引き延ばす要因となっていた。
 だが、持久戦を覚悟した作戦と、前を行く者達に攻撃を集中させる事を徹底したケルベロス達の勢いは、徐々に守勢でありながらも攻勢に転じる様相となっていく。
 その時、レベッカはチラリとアイスエルフ達の様子を確認する。どうやら、此方の戦いを見て、ある者は困惑し、ある者は真実が何であるかを考えているようだった。自らの立場を考え、目の前の戦いを凝視している。
「負けを認めたら説得して貰っていきますからね。無理矢理攫ったりはしませんけど。
 その代わり負けを認めればそこで戦闘終了です」
 レベッカは良く通る声で、一帯に向けて声を発する。すると、一人の女騎士がその言葉に応じる。
「いい度胸だ。どうだ? 我々に協力してくれるのならば、アスガルドの王を廃した後は、必ず、この地球の女性にも手を差し伸べる。一緒に戦おうでは無いか?」
「さて、それは出来ない相談ですよ?」
 相容れない考え。少しの思い違いなのかもしれない。
 それぞれがそれぞれに、自らの戦いに赴いていく。そして、永い戦いは決着の時に突き進んでいった。

●護られた者
 エインヘリアルたちは、最後の一人になるまで、戦いを止めなかった。劣勢であっても、それが自らの任務であるからだ。
 レベッカが蒸気を噴出させて、自らを癒すと、皇士朗が『鬼哭景光』を女騎士に突き立てる。
『神楽火流、討邪の太刀がひとつ。……「荒魂啖」』
 そしてライゼルが最後の一人を鎖で縛り、彼方が足元を固める。
『君たちを讃える歌を用意しておいた。まだまだへばるんじゃあないよ。それでは第6番……“聖女による頌歌”』
 そして、万が一に備えて、カトレアが少女を模した式神を召喚して、歌わせる。
『獅子の力をこの身に宿し…以下略、さあ、ぶっ飛べっ!!』
『さぁ、愛に飢えしモノよ…踊り狂え』
 銀子が鍛えた肉体で圧せば、透希がその動きに合わせるように低音を効かせて歌い上げる。
 ケルベロス達の何人かは少し哀れに思った。ただ、それでも戦うという事からは、それ以上の言葉は侮辱になる。
『――貴様を、冥府へ送ってやろう』
 ただ一思いに。レイリアはそう思い、冥府深層の冷気を纏った一振りの氷槍を最後の一人に、全力で投擲したのだった。

 白百合騎士団全員を葬ったケルベロス達は、残されたアイスエルフ達を見た。
「……恐ろしいかい?」
 ライゼルは鎖を解き、武装を解除して話しかけた。
「……はい」
 髪を編んで後ろに垂らしている少女が、そう頷いた。ただ、その少女はそういう反応であったが、此方をキラキラとした瞳で見る少女の姿もあった。
 そう、彼女達は彼女達で、それぞれに個性と言うものがある。ある者はその力に畏怖し、ある者はその力に酔っっているのだ。
 ただ、同時に少女達からは不安も存在している事がわかった。
「少し、説明をさせてくれませんか?」
 レベッカは、これからは言葉だと、他のケルベロス達に頷きかけた。
「まず、約束出来る事から。地球に危害を加えなければ、こちらは敵意を向けない。これは本当だよ」
 カトレアが切り出したのは、敵意がない事。ただ、あれほどの攻防の後だ、半分脅迫気味である事も、反応からは読み取れた。
 カトレアはそれでも頷きながら、攻性植物とエインヘリアルの関係や、お家騒動の事なども話した。それは、彼女達が持っている情報とは異なる内容であるはずだ。
「そうですね。信じてもらえないかもしれないですが、僕たちが持っている情報では、そういう事になります」
 彼方もまた、カトレアの言葉に同調する。
「これは戦いながらも示したつもりなんだが……」
 すると、透希が少し前にでて、ゆっくりと言葉を選んで話す。
「私達は抵抗できぬ人々と自分達の居場所を、デウスエクスから護っているだけだ。
 私達は故郷を護らなければいけない……それは貴女方もわかるのでは?」
「それは、……わかる。故郷のことは、同じだ」
 その言葉に答えたのは、少しリーダー格らしき少女だった。
「貴女達が望むなら実際に地球で生活してみたらいい。
 地球の人々に危害を加えないという条件付きなら、アイスエルフの居場所の確保もできるだろう」
「……本当、なのか?」
 その少女は、疑心暗鬼を隠そうともせず、そう反応した。無理も無いだろう。一度信じた白百合騎士団には、裏切られたわけではないが、本当とも思えなかったのだろう。もはや、何が本当かは見極めにくい状態であろう。それでも、ケルベロス達は話を終わらせなかった。
「我らヴァルキュリアもシャイターンに意思を奪われ、利用されていた。
 ザイフリート王子とケルベロスの助力が無ければ、とうの昔に滅んでいただろう。
 お前達も仲間になれとは言わない。だが、己の目で地球の者達を殺すべきか見定めるべきだ」
 すると、レイリアが自らを名乗り、そう話した。
「ヴァルキュリア……」
 妖精8種族が仲間であること。これには、アイスエルフ全体が身を乗り出して、耳を傾けた。その言葉はある種の同胞という説得力を持っていた。
「情報も居場所も提供できる。しばらく状況を見て、判断してほしいな」
 銀子は、強引に連れて行くことも出来るとは考えていた。ただ、出てきた言葉は彼女達に任せたいという言葉になった。少し甘いと考えながらも、それも本心だからでてきた言葉なのだ。
「こちらに付いてきてくれれば居場所も、敵からも守る事ができる。すぐに答えを出す必要はないから、まずはこの地球に生きる人々の現状を見て欲しいね」
 ライゼルもまた、まずはそれぞれで判断して欲しいと呼びかけた。
 すると、一人、また一人とケルベロスのほうへと歩み寄り、ついにはリーダー格の彼女だけが残った。
「まだ、全てを信じることは……できない」
 苦虫を噛み潰したような表情と、迷い。それが手に取るように分かる。
 純粋なのだ。
 純粋が故に、悩むのだ。
 すると、皇士朗が優しい声で、一つ聴いて欲しい、と声を発した。
「おれは人々のために神を……デウスエクスを殺すことがおれの使命だと教えられてきた。
 だが、ヴァルキュリアやローカスト、オウガといった新しい隣人達が増えて、おれが倒さねばならないのは『デウスエクスという生命の形そのもの』なのではないかと思うようになった」
 自らの生い立ちや、今の状況を嘘偽りなく話す。その事が大切に思えたからだ。
「だから、もしアイスエルフ、君たちが地球の人々のように、エインヘリアルに脅かされているのだとしたら、おれは君たちを虐げるデウスエクスとも戦う」
 皇士朗の言葉は決意そのものだった。それは、彼の真の言葉なのだろう。それが通じたのか彼女は頷き、前に出る。
「……信じたい。それに、確かめたい。私の意志で、そう思った。みんな、それでいいか?」
 その言葉に、アイスエルフ全員が頷いたのだった。

 こうして、アイスエルフ達は、ケルベロスと共にヘリオンに乗り込んだ。
 これから来るアイスエルフの運命は分からない。
 だがそれでも、ケルベロス達は約束する。
 必ず護る。
 そして、できればで良い。仲間になろう、と。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年3月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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