大阪都市圏防衛戦~梅の花咲く、刹那の中で

作者:黄昏やちよ


 竹の攻性植物による哨戒活動が行われていた、攻性植物との緩衝地帯。
 第四王女配下の騎士とアイスエルフが侵攻を開始する。
 騎士たちと共に征くアイスエルフは、戦いへの強い意志を感じる瞳をしている。
 その様子を見て、騎士たちは期待を込めて言った。
「エインヘリアルの王を打倒すれば、再び妖精8種族がアスガルドで暮らす事が出来るようになる。我々は氷と制圧を司る、アイスエルフの力に期待している」
 また別の騎士が口を開く。
「ケルベロスという恐ろしい敵が居る。お前たちはコギトエルゴスムから復活したばかりだ。戦闘になれば、無理はしないように」
「久しぶりの戦いだ。アイスエルフの力を、見せてやろう」
 一人のアイスエルフが応える。その瞳に戦いへの意気込みという炎を燃やして。
「ねえ、私たちエインヘリアルの反乱に利用されるだけじゃないかしら……」
 一人のアイスエルフが不安げに、傍らに寄り添うアイスエルフに耳打ちする。
「もし、アスガルドで再び暮らせるならば……戦う意味も、十分にあるだろう」
 その言葉に、不安そうな表情を浮かべながらも、こくりと頷くのであった。


 榎本・イツキ(ヴァルキュリアのヘリオライダー・en0302) が、集まったケルベロスたちを確認すると安心したように笑った。
「よかった。集まってくれてありがとう」
 そう言うと、イツキは事前に用意したのであろう資料を一人一人に手渡してゆく。
 リザレクト・ジェネシスの戦いの後、行方不明になっていた『宝瓶宮グランドロン』に繋がる情報が、大阪城周辺から報告されたのだ。
 大阪城周辺は、竹の攻性植物による警戒が厳しくなっていたが、その中に、エインヘリアルの騎士と『妖精8種族であるアイスエルフ』と思われる女性の姿が確認されたのだという。
「第四王女は、アイスエルフを自分の騎士団に組み込むと同時に、攻性植物との同盟を強化する事で、リザレクト・ジェネシスで消耗した第二王女の勢力を盛り返そうとしているようだね」
 資料を確認するケルベロスたちの顔を一人一人見ながら、イツキは説明を続ける。
  敵はレリ配下の白百合騎士団のエインヘリアル8体程度、アイスエルフ8体程度の混成軍である事。
「市街地の地形を利用して、上手く隠密で近づく事ができれば奇襲攻撃もできるだろうね」
 アイスエルフ自体は戦闘力が低いが、ケルベロスが襲撃すれば自分の身を護る為に反撃してくる。
 そして、エインヘリアルの騎士たちは、アイスエルフを守るように戦闘をするようだ。
「エインヘリアルの騎士を全滅させた状態で、アイスエルフを説得する事ができれば……」
 アイスエルフたちを連れて帰ることも可能だろうとイツキは言った。
 自分達を『守って戦った』騎士を殺したケルベロスを、すぐに信用する事は難しいかもしれない。
 そのため説得を目指すのならば、アイスエルフから見た印象を良くするような戦い方が必要かもしれない。
「どうするかの判断は……キミたち、現場のケルベロスに任せたいんだ」
 説得できなかった場合は、アイスエルフを撃破しても殺さずに撤退させても良い。
「第四王女勢力は、善意で行動しているようだね。でも、どうやらアイスエルフとの認識には差があるみたいなんだ」
 うまくそこを攻めれば、アイスエルフを味方に引き込む事ができるかもしれないとイツキは付け加えた。
「あとはよろしくね、勇者たち」
 イツキはケルベロスたちに笑いかけ、ヘリオンの準備へと向かっていった。


参加者
藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)
楡金・澄華(氷刃・e01056)
スウ・ティー(爆弾魔・e01099)
リーズレット・ヴィッセンシャフト(愛を喰らわば世界まで・e02234)
古海・公子(化学の高校教師・e03253)
テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)
バジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)
鍔鳴・奏(あさきゆめみし・e25076)

■リプレイ

●第四王女の騎士とアイスエルフ
 竹の攻性植物による哨戒活動が行われていた、攻性植物との緩衝地帯。
 第四王女配下の騎士とアイスエルフが侵攻を開始していた。
 20人には満たない程度であろうか。小さな隊列を築きながら、第四王女配下の騎士とアイスエルフは歩き続けていた。
 進む先に、立ちはだかる人影に先頭に立つ騎士は眉を顰めた。
「止まれ!」
 その声に従い、列をなした者たちはぴたりと足を止めた。
「アイスエルフ達よ。復活したばかりだが……敵襲だ」
 隊列の後ろの方にいたアイスエルフが顔を青くし、ひゅっと怯えたような呼吸音をたてた。
「ケルベロスだ」
「正々堂々と正面から来たことは、褒めてやろう」
 恐らくこの中で最も地位の高い騎士と思われるエインヘリアルが口を開いた。
「お前たち! アイスエルフの前に立て!」
 その言葉に従い、第四王女配下の騎士たちはアイスエルフを庇うように前に出た。
「そんな……わ、私……こんなところで……死にたく、ないよぉ……」
 アイスエルフの中で一番小さな体をした娘が小さく呟く。体は小刻みに震えていた。その両手は何かに祈るように、懇願するかのようにぎっちりと組まれていた。
「……お前は、私の後ろに下がっていろ」
 別のアイスエルフが、小さな体のアイスエルフの個体名を囁き、抱き寄せた。
 安心させるよう、ぽんぽんと頭を撫でた後に、彼女は小さなアイスエルフを守るように仁王立ちする。
「おねえ、ちゃん」
 大きな瞳を潤ませながら、小さな体のアイスエルフは『お姉ちゃん』と呼んだそのアイスエルフを真っ直ぐに見つめると、再び祈るように両の手を握りしめるのだった。

●騎士道
 梅の花がちらちらと降り注ぎ、春の訪れを感じさせていた。
 ばちりと火花が散るよう。ケルベロスと第四王女配下の騎士、アイスエルフたちの視線が絡み合う。
「アイスエルフの皆様、お初にお目にかかります。私達はケルベロス、あなた方とお話をしにまいりました」
 テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)が、クラシカルメイド服のドレスの裾をつまみ上げカーテシーをしてみせる。
「……」
 エインヘリアルの騎士の眉毛がぴくりと動く。まるで自分たちには挨拶はないのかというように。
「そもそも本当にこの徴兵は彼女達の為になるかな?」
 スウ・ティー(爆弾魔・e01099)が言葉を投げかける。
「……何?」
 騎士は眉を顰める。
「……わ、私たちのためにならないって……そういうの?」
 後方から、体の小さなアイスエルフが呟いた。
「死神に次いで攻性植物と接触し、内乱の火種を抱えた王女達に付けば、それこそ内輪揉めに巻き込みかねない」
 スウの言葉に一瞬静寂が訪れた。
「俺にはまるで居場所をちらつかせた脅しにも聴こえるよ」
「……!」
 はっと息を呑むような音。
「ケルベロスの言葉に、耳を貸すな!」
 騎士はスウの言葉を遮るように言った。その言葉からは、決してアイスエルフたちを騙そうなどといった気持ちは一切感じられなかった。
 そうか、エインヘリアルの騎士たちは本気でこの徴兵が彼女たちアイスエルフのためになると、信じて疑わないのだと、ケルベロスたちは察してしまう。

 ほんの少しの静寂。風の音だけが聞こえる。
「退け、と言っても……退かぬのだろうな」
 再び口を開くエインヘリアルの騎士。
 ケルベロスたちは、退こうとする素振りは見せない。
 それを見て、エインヘリアルの騎士はすらりと鞘から長剣を抜いてみせた。
 その長剣を、ケルベロスに向ける。
「ならば、退いてもらうまでだ」
 ふっとエインヘリアルの騎士は笑ってみせた。
「もう一度言うが……正々堂々と戦おうとするお前たちの、その『心意気』は気に入ったぞ」
 そうして、戦いの火蓋は切られた。

●それぞれの意思
 まず動き出したのは、エインヘリアルの騎士だった。
「はああああ!」
 手入れの行き届いた長剣が振るわれる。素早く振り下ろされたそれは、重たい音を響かせて空を斬っていく。
 ザン!
「……ッ!」
「テレーゼ」
 最前線に立った相棒のテレサを庇うようにして、飛び出したのは同じく最前線にいたライドキャリバーの『テレーゼ』だった。
 テレサは頭を振った。いつものアンニュイな無表情で、冷たく淡々と言い放つ。
「アスガルドに住めたとして、再び侵略されて滅ぼされる危機がつねに付きまとうのではございませんか?」
 一瞬、アイスエルフがざわついた。
「アイスエルフとて、戦えぬわけではあるまい」
 そうだろう?と騎士は、アイスエルフたちに視線を向ける。頷くアイスエルフたち。その中には、騎士の言葉に全く頷かない者もいたが。
「この斬撃、耐えられるか?」
 ケルベロスたちの中で、真っ先に攻撃に踏み切ったのは楡金・澄華(氷刃・e01056)だった。
 絶対零度の冷気を纏った超高速の連続斬撃が、最前線に立っていた騎士を斬り裂いていく。
「が、はっ……!」
 エインヘリアルの騎士を纏う鎧が砕けた。苦しげな声と共に、口からは鮮血が零れ落ちる。
「はぁっ……はぁっ……」
 その一撃を放った澄華も、その威力の代償に、体に大きな負担がかかっていた。
(「重要依頼ではあるが仕事は仕事。いつも通りに勝って帰ってくることだな」)
 心の中で呟いて、澄華は息を整える。

「私達は貴方達アイスエルフに手出しはしない。出来ればそれで分かってはもらえないだろうか……?」
 リーズレット・ヴィッセンシャフト(愛を喰らわば世界まで・e02234)は言葉を続ける。
「守る事も誠意だが、攻撃しないと言う事もまた一つの誠意だと言う事をわかって貰いたい……」
 決して、アイスエルフたちを傷つけるつもりはないのだということをリーズレットは切に訴えかける。
 ペイントブキを振るい、リーズレットは『空中に浮かぶ道』を描くと、その上を滑走して騎士に突撃する。
 鎧を失った騎士は、その攻撃を生身でまともに受けるしか術はなく。
「……っ!」
 声にならない声をあげるしかなかった。それでも、倒れずに歯を食いしばり、立っていた。
「わ、たしが……斃れる……わけには、……いかないッ!」
 自らを鼓舞するように、騎士は大きな声で言った。
「お加減は、如何です?」
 意の儘、操るは凍える紅炎。朧げな紅の炎がちらちらと燃えている。藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)が、必死に立っている騎士の肉叢の熱を奪っていく。
 一つの命が消えていく、熱が喪われていく。
 騎士は、最期まで斃れようとしなかった。この中で、最も地位の高いエインヘリアルの騎士だったからなのだろうか。それはわからない。
 己の武器に身を預けるように、そっと地に膝をつくと、彼女はそのまま絶命した。
 再び訪れた静寂の中、景臣が口を開く。
「僕にはエルフの娘がいます。身を賭して守りたい、愛おしい子」
 『エルフ』という単語に、アイスエルフたちがぴくりと反応したのが見える。
 ごくりと、唾を飲み込む音。その先の、言葉を待っている。
「貴女方は我々を恐ろしいと断ずる……然しその様な者達の元で定命化を完了する等、果して有得るのでしょうか?」
 景臣の淡く藤色に灯る真剣な瞳が問いかけるその言葉に、アイスエルフたちは、静寂を以て答えとしたようだった。

●共に歩む道
 斃れた騎士と同じ最前線に立っていた騎士がわなわなと震えた。
「よくも……!」
 その大きな斧に、怒りを込めて力任せに振るった。
「……!」
 大きなルーンアックスを振るったその先にいたのは、先ほど騎士を斃した景臣だった。
 怒りに任せたその一撃は、残念ながらまともに景臣を傷つけることは出来なかった。
 腕の辺りを掠める程度。少しだけ切れた着物の袖から、白い肌に赤い色。
 ほんの少しのかすり傷。そんな程度のものだった。
「大丈夫? あまり無理はしないでね」
 バジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)が傷ついた仲間たちに声をかける。
 優しく、安心させるような音色で。
 テレサは小型治療無人機の群れを飛ばし、傷ついた相棒と仲間の傷を癒していく。
 ブォンブォンと威嚇するようにエンジン音を響かせてみせた。
「逃さないよ」
 スウが、水晶形の浮遊する『見えない機雷』を周囲に散布し戦場を埋め尽くす。
 前衛に立つ攻撃的なポジションに巻かれたそれは、主にエインヘリアルの騎士たちに牙をむいた。
 スウは舌なめずりをした。
「エルフは狙うなって? なかなかどうして、無茶な注文だ♪」
 運よく、前衛にはアイスエルフたちは立っていなかった。それがスウの計算だったかどうかは、本人だけが知る。
「あぁっ……!」
 爆破。近くにいたエインヘリアルの騎士を巻き込み、それは次々に爆発していく。
 苦しげなエインヘリアルの騎士の声。
 スウはニヒルに笑ってみせた。

「今の現状に疑問を覚える事は? 疑問を抱いたまま思考を放棄しても、良い事には為らないよ」
 鍔鳴・奏(あさきゆめみし・e25076)が隙を見て、声をかける。
 奏は、自身の光の翼をアイスエルフたちに見えるようにしながらメタリックバーストを前衛の仲間たちにかけていく。
「見て、聞いて、そして感じて欲しい。何を為すか、何を為すべきか。俺は考えた末に、ケルベロスとして定命化を望んだ。ケルベロスは、俺達は、貴女方の敵に見えるか?」
 アイスエルフたちは答えない。ただただ無言で、考えるように俯くだけだ。
 奏はボクスドラゴンの『モラ』に、視線を向ける。こくりと頷く、モラ。
 ふよふよと浮かびながら、モラは景臣を属性インストールによる回復を施してゆく。
「Standup and Bow!!」
 響く鐘の音。有名な寺院の鐘の音は、仲間たちの心すら癒していく。
 古海・公子(化学の高校教師・e03253)は、その鐘の音が静かに消えていったあとに口を開く。
「ケルベロスが仇とするのは、あくまでも侵略者だけよ」
 公子は隣人力をフル活用し、優しく語り掛けるようにアイスエルフたちを説得する。
「足裏から毒素を取り込みましょう」
 バジルは詠唱する。
 バジルが地面に黒影弾を撃ち込むことで、影が毒を帯び、騎士を足元から侵食する。
 アイスエルフに語り掛けを行う間も、ケルベロスたちはエインヘリアルの騎士への攻撃の手をやめない。
 少しずつ、少しずつ、アイスエルフを庇うように戦うエインヘリアルの騎士たちは疲弊していく。
 一人、また一人と、エインヘリアルの騎士たちは地に斃れてゆく。

●その先にあるもの
 少しずつ、エインヘリアルの騎士たちに焦りの色が滲んできたのを感じる。
 リーズレットは、今だとばかりに最も信頼をしている彼に視線を向ける。
「ケルベロスは本当にいろんな種族が居るよ。こうして、心の底から信頼出来る仲間も居るし、俺はケルベロスになった事を後悔した事も無い」
 その視線を受けた奏は、彼女の想いに応えるように、アイスエルフたちに語り掛ける。
 リーズレットを見やり、柔らかな音色で言う彼の姿を見たアイスエルフたちは何を思うのか。
 奏の言葉を聞いたリーズレットは、目頭が熱くなるのを感じる。
 瞳から涙が溢れそうになった。
 バチーーーン!
(「お仕事中!」)
 リーズレットが自分の頬を叩く音が鳴り響く。色の白いほっぺたに、赤い手形がくっきりと。
「多種族同士でも互いに尊重し合える世界がある事を教えてあげようか」
「リズ、キミに合わすよ」
 阿吽の呼吸とは、恐らくこのことを言うのだろう。
 二人は、構えの瞬間から弓矢を放つ時までほとんど同じ動きだった。
 相談など、していない。戦闘中にそんなことを、する暇などなかった。
 けれど、『リズなら』『奏君なら』わかっているはずだと、彼らは同じ騎士を撃ち抜いた。
 ビシュッ!
 二人の放った弓矢は、同時に騎士を貫いた。
「ぁ……あ……」
 小さく、嗚咽のようなものを漏らす騎士。ゆっくりと、膝から崩れ落ちてゆく。

 アイスエルフたちを守る壁は、殆どが崩れ落ちていった。
 守られていた彼女たちは、ケルベロスたちが自分たちに攻撃しないのを見ていたためか決してケルベロスに対して攻撃をすることはなかった。
 勿論、傷つくエインヘリアルの騎士たちを指をくわえて見ているだけではない。
 騎士たちの回復を行っていたが、それ以上にケルベロスたちの攻撃が深手だったというだけの話だ。
「こうなっては仕方あるまい……!」
 一人の騎士が口を開いた。彼女も、例外でなく傷を負っていた。
「撤退するぞ!」
 その言葉に、ケルベロスたちははっとした。
 全力でアイスエルフたちを説得するならば、今しかない!……と。
 騎士の数よりアイスエルフたちの数が上回っている今、誤って攻撃してしまう可能性も踏まえ、ケルベロスたちは一旦攻撃の手を休めることにした。

●共に歩むと決めた者
「先兵として利用された者の末路は、大概は悲惨が待っているだけよ」
 最初に口を開いたのは公子だった。公子は言葉を続ける。
「もし違和感を感じているのなら、その違和感は間違いありません」
 その言葉に、アイスエルフたちはお互いの顔を見合わせ何か話し出す。
「私達シャドウエルフやヴァルキュリアは地球で暮らしてるわ。よかったらこっちに来ない?」
 バジルも公子に続いて口を開く。
 彼女の『シャドウエルフ』という種族の立場も上手く利用しながら、言葉を紡ぐ。
「それと、ケルベロスを恐ろしい敵だと思ってるみたいだけど、正直心外ね。私たちの事を知ってからあらためて考えてほしいわ」
 ひそひそ、ひそひそ。何を話しているのかは聞き取れないが、アイスエルフたちは何かを語っていた。
「何をしている! ぐずぐずするな! 撤退するぞ!」
 エインヘリアルの騎士の声に、びくっと肩を震わせるアイスエルフたち。
 ちらりとケルベロスたちを見やり、騎士たちについていく。
「アスガルドで暮らすのが望みならば、敵対しない限り此方もそれを拒まない。希望としては此方側にたち、氷を司るその力を弱者のために振るって欲しい」
 澄華も続く。
「……アイスエルフにお聞きしたい。妖精8種族が共に暮らす未来――其処にシャドウエルフやヴァルキュリアの居場所はありますか?」
 景臣の言葉。
「……」
 体の小さなアイスエルフが足を止め、その娘を守っていた女性ともう一人が、また足を止めた。
 3人はゆっくりとこちらに向かってくる。
 それ以外のアイスエルフ、騎士たちは離れていく。
「また逢おうよ。今度はじっくり口説かせて貰いたいもんさね」
 スウが撤退していくアイスエルフたちに、ひらひらと手を振り笑顔を浮かべながら言う。
「あのね……お姉ちゃんと一緒にね……」
「すまぬが、我々を連れていってはもらえぬだろうか」
 その言葉に応えるように、テレサは事前に用意した『親愛の証』としてメガネを差し出すのだった。

作者:黄昏やちよ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年3月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 4
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