猫嵐

作者:雨音瑛

●あるいは心の春
 冬のコートでは暑すぎる、けれどマフラーを外すにはどこか風が冷たい。
 そんなとある日、某広場において人々が晴れやかな顔をしているのは何も季候のせいだけではない。
 所狭しと陳列されている、猫たち。
 正しくは、猫グッズたち。
 『猫嵐』と名付けられたそのイベントでは、編みぐるみやぬいぐるみ、ストラップ、置物、食器など、実にさまざまな猫グッズが販売されており、訪れる人々を圧倒していた。
 あれやこれやと片っ端から買ってみたり。一目惚れした子を、緊張した様子で手に取ってみたり。ひたすらに悩んでみたり。
 訪れた人々の反応は、さまざまだ。
 けれど空から落ちてきた厄災への反応は、皆一様。巨大な骨が広場に突き刺さるや否や、人々は驚き、我先にと逃げ出すばかり。
 そうして顕現した剣と鎌を手にしたドラゴンの手先、すなわち竜牙兵たちは当然のごとく人々を追い回し、命を奪う。今日も今日とて、グラビティ・チェインを奪うために。

●守るもの
 赤いマフラーをなびかせ、リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)は無表情に口を開いた。
「竜牙兵が現れる、これを見過ごすわけにはいかない」
 いわく、とある県のある広場に竜牙兵が出現するというのだ。広場ではちょうどイベントが開催されており、訪れる人も少なくないという。
「竜牙兵を倒す……のは当然のこととして、問題は介入のタイミングだ。竜牙兵が出現する前に人々を避難させてしまえば、竜牙兵は他の場所に現れる。そうなれば対処が間に合わず、被害が大きくなってしまうとヘリオライダーに聞いた」
 心苦しいところではあるが、ここはひとまず竜牙兵の出現まで現地で待機。竜牙兵が出現次第戦闘を開始するのが良いだろう。
「避難誘導は、現地のスタッフと警察に任せられる。既に連絡も行っている。……つまり、ケルベロスは戦闘に集中できるというわけだ」
 実際、竜牙兵はケルベロスとの戦闘が始まればそちらに注力するらしい。であれば、人々はスタッフと警察に任せ、すぐさま竜牙兵との戦闘に移るのが得策と言える。
「出現する竜牙兵は3体だそうだ。うち2体が剣、1体が大鎌を装備しているらしい」
 剣を装備した者は攻撃力が高く、大鎌を装備した者は命中力が高い、という特性を持っている。彼らは、ケルベロスとの戦闘が始まれば撤退することはないという。
「また、広場には予備スペースとして確保されていた場所がある。店舗やグッズへの被害を減らして戦闘を行うには、攻撃を仕掛けつつそちらへ誘導するのが良いだろう」
 そして、とリューデは一呼吸置いた。
「ケルベロスが戦闘をしている間、イベントはどうしてもいったん中止となってしまう。そこで、無事に戦闘を終えたら現地でイベントを楽しむ許可を貰ってきた」
 竜牙兵を倒してイベント再開となったら、ケルベロスが率先して楽しむことで賑わいを取り戻せるに違いない。
 まだ見ぬ猫グッズたちに思いを馳せるように、リューデは目を閉じた。


参加者
ルーチェ・ベルカント(深潭・e00804)
リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)
レミリア・インタルジア(咲き誇る一輪の蒼薔薇・e22518)
ヨハン・バルトルト(ドラゴニアンの降魔医士・e30897)
小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)
クラリス・レミントン(夜守の花時計・e35454)
エトワール・ネフリティス(夜空の隣星・e62953)

■リプレイ

●春の嵐
 現場に到着したケルベロスたちを出迎える、猫、猫、ねこグッズたち。
「正に猫嵐だね、ねーさん!」
 ロシアンブルーに似たウイングキャットの親友に声をかけ、小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)は心を弾ませる。
 ここに並ぶたくさんの猫たちを、ただの一匹も傷つけさせるつもりはない涼香だ。やがて聞こえた牙の突き刺さる音に反応し、すぐに一般人やグッズの間に立つ。
 細い腕が広げた黒鎖が、防備を高める形を取る。ピンクの瞳がただ見つめるのは、姿を現した竜牙兵だ。
「なあに? 猫の可愛さに惹かれてきたの? じゃれたいのなら、お付き合いするよ?」
 涼香の言葉に同意するように、ねーさんも飛び出して竜牙兵の一体を引っ掻いた。
「ほら、こっちへおいでよ。小娘相手にビクついてるんじゃ、竜の尖兵の名も廃るよね?」
 そう言いながら光の戦輪を飛ばすのは、クラリス・レミントン(夜守の花時計・e35454)。戦意を示しつつも、向かう先は予備スペースだ。
 何かの罠かと身を寄せる竜牙兵を、深紅の炎が包みこむ。
「こっちよ、竜の牙。ケルベロスを倒して帰れば、褒められるのではなくて?」
 ファミリアロッド「l'aube」の先にまだ熱を残しながら、エヴァンジェリン・エトワール(暁天の花・e00968)が言い放つ。繊細な身体から出たとは到底思えない、凛とした声で。
 竜牙兵が仕事熱心なのは、いつものことだ。だからといってこちらが油断する理由はならない。
「それとも番犬の相手は、怖い?」
「ナニヲ……!」
 身を乗り出した竜牙兵を、何者かの一撃が蹴り倒した。後に残るのは、不思議な甘い香りだ。
「Ehi. 使い捨て3人組」
 微笑をたたえ、ハゴロモジャスミンを咲かせるルーチェ・ベルカント(深潭・e00804)が声をかける。
 先ほどの香りは、その花のものだろう。
「仕事したいなら、必死になって殺しにおいで。生憎僕には良心も大義も無いからねぇ……君らを握り潰すまで、全力で愉しませて貰うよ。Siete pronti?」
 光の名を冠した紅い瞳の悪魔は、柔らかな物腰で微笑を絶やさない。挑発する言葉だというのに、どこか甘美な含みがあるのは、ルーチェの本職が声楽家ゆえか。
 何より特筆すべきは、飄々とした態度ながらも油断が一切見えないことだ。
 竜牙兵が迂闊な攻撃を仕掛けてこないのは、彼の用心深さを感じ取ったからだろう。
「タノシム、ダト……ナ、何事ダ!?」
「ふふ、鬼さんこーちら!」
 何かを言い返そうとした竜牙兵を、無数の星たちが追いかけまわす。無邪気な星屑は、エトワール・ネフリティス(夜空の隣星・e62953)によるものだ。
 エトワールの隣に立つのは、彼女が姉と慕うウイングキャット、ルーナ。月色の翼を広げ、すまし顔で清らかな風を後衛に送れば、綺麗な毛並みも風に揺れる。
 続くのは、普段こそ温厚で戦闘を好まないが、戦闘ともなれば気合いを入れて臨むヨハン・バルトルト(ドラゴニアンの降魔医士・e30897)だ。
 一見すれば屈強な男であるヨハンが深く息を吸えば、竜牙兵たちが警戒するのが見て取れる。
「お前達の相手は此方です……にゃあ」
 重低音の割り込みヴォイスで的確に竜牙兵へと声を届けるヨハンの態度は、いたく真面目だ。さらに九尾扇を猫じゃらしのように振るが、こちらも真剣そのものである。
(「猫グッズにこれだけ種類があるとは、そして愛好家がこんなに居るとは知りませんでした。そこに目を付けるとは、竜牙兵……侮れませんね」)
 竜牙兵の向こうに逃げてゆく人々と周囲の猫グッズをちらりと見て、ヨハンは小さく頷く。
「オ、応戦スルゾ!」
「ウ、ウム!」
「マズは貴様ラからダ、ケルベロス!」
 相手がケルベロスであるということ以上に何かに警戒し、気を取り直した竜牙兵たちが各々の武器で攻撃を仕掛ける。
「――遅いよ! レミリア、今のうちに!」
 大好きなものと友人を守れるのなら、多少の攻撃は何ともないクラリスだ。
 剣の一撃を受け止めた友人に呼びかけられ、レミリア・インタルジア(咲き誇る一輪の蒼薔薇・e22518)は、柔和な見た目に反して素早くゲシュタルトグレイブ「Skakar skakande ljus」を射出した。
 上空で分裂した槍が降り注ぐより早く、クラリスがその場を離れる。
「みんなが幸せになれる場を竜牙兵に壊されるのは許せません! そんなことするなら私、竜牙兵絶許明王になっちゃいますよ……!」
 何せここには猫グッズがたくさん。少し視線を逸らしただけでも、魅惑の猫グッズがレミリアを手招きしているように見える。というか、ソーラー電池の招き猫が本当にレミリアを手招きしていた。
「ここは天国ですか……って、天に召されるのは戦闘が終わってからです! というわけでリューデさん、お願いします!」
「ああ、任せろ」
 しっかりと頷き、リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)が、静かに進み出る。
「お猫様に仇成す者は滅する。そしてグッズに仇成す者も滅する」
 だから、と続ける言葉はリューデのみが行使できるグラビティのための言葉だ。
「手出しはさせない」
 竜牙兵の大鎌に小さな花が灯るように咲いた。その色が白、と認識するが早いか、花弁は散ってゆく。静かに刃を鈍らせて。
「ヌ……!」
 動揺する竜牙兵を、リューデはただ金色の瞳で見つめる。
 人も、グッズも死守する。
 そんな覚悟を、宿しながら。

●番犬の嵐
 予備スペースに誘導が完了した後、ケルベロスたちは剣を持つ個体を優先して攻撃していた。とはいえ単純な各個撃破ではなく、何人かが他の個体に牽制にあたることで、結果として戦闘時間を短縮させていたのだ。
 攻撃の範囲を広げるほか、厄介な状態異常で弱体化を図る――その目論見を理解するほど頭の回らなかった竜牙兵は、見る見るうちに追い詰められていった。剣を持つ竜牙兵こそ回復手段を有していたが、息の合った連携をするケルベロスを相手にしては、もはや焼け石に水。
 剣を持つ竜牙兵は、成す術なく1体、もう1体と撃破され、残る大鎌の竜牙兵も既に死に体だった。
 それでも流石デウスエクスというべきか、弱体化をされているというのに威力の高い攻撃を稀に仕掛けて来る。
 そんな時には、ねーさんの翼が起こす風と、涼香の起こす恒風がすぐに傷を塞ぐ。
「これで大丈夫だね、ねーさん。ヨハンさん、回復はもう大丈夫だよ」
「ありがとうございます、涼香さん」
 涼香へと丁寧に頭を下げたヨハンは、竜牙兵へと向き直った。
「では、医武両道をお見せします。――出番ですよ、」
 薬液に液体金属を加えて現れるは、鋼の竜。無骨で愛らしく、犬とも霧とも表現できるような動きで竜牙兵へと纏わり付く。悪気がないからこその動きがじゃれているだけだと解るのは、ヨハンだけだ。
「僕達には用事があるのです。怪我や邪魔などさせるものか!」
 さあ、とキャットウォークにて場所を譲る相手は、クラリスであった。
「私達のもふもふラブパワー、思い知った?」
 猫に限らず動物が大好きなクラリスだ、ドラゴン勢力は今回の襲撃で全ての猫好きを敵に回したとすら思っている。
「モ、モフ……?」
 可愛げの無いダミ声で復唱されようとした言葉は、クラリスが片手を振る動作に遮られた。
「思わぬところに、近道はあるんだよ?」
 指揮者のような動きによって、虚空には七色に輝く五線譜が現れる。
 それは、導となる小路だ。
 クラリスは小路に飛び乗り、まるで滑るように一気に駆け抜けた。プリズムのような光と即興の旋律纏う少女を、竜牙兵は回避できない。突撃を受けて弾き飛ばされた竜牙兵は、大鎌を支えになんとか踏み止まる。
「セメテ、1人デモ……!」
 竜牙兵の振り下ろした大鎌が、リューデに向かう。決死の突撃か、その刃が振り下ろされる速度は存外速く、リューデはやがて訪れるであろう痛みに身構えた。
「アタシは盾。そう簡単には、通さないわ」
 静かな言葉ではあるけれど、竜牙兵に向けられた花緑青の瞳の奥には一本通った芯が垣間見える。
 リューデとエヴァンジェリンが一瞬だけ視線を交わす。それは信頼があるからこそのやり取りだ。
「エヴァンジェリンさん、下がってください!」
 レミリアが叫び、御業を展開する。放たれた炎弾で竜牙兵が数歩下がり、エヴァンジェリンが体勢を立て直す好機が生まれた。
「ありがとう、レミリア」
 体勢を立て直しつつ、エヴァンジェリンはゲシュタルトグレイブ「glisch」を手元でくるりと回転させ、穂先を竜牙兵へと向ける。その後の行動は、単純明快。
「祈る時間は、あげない」
 唇に言葉を載せて、光と見紛う斬撃を放った。髪に咲くダチュラの花が、風圧でふわりと揺れる。
 赤いマフラーをなびかせ、リューデも攻撃に加わる。音速を超える速度で叩き込まれる拳は、苛烈そのものだ。
 下宿先では4匹の猫と暮らしているリューデだ、それゆえお猫様が大好きだし、何よりお猫様は可愛いし可愛いしそれに何を差し置いても可愛い。故に、攻撃において躊躇も容赦も一切無いのだ。
 紅い瞳に冷たい光を宿らせ、ルーチェは竜牙兵を水の鎖で幾重にも戒める。
「……さて。先ほど妹分にしてくれたことのお返しといこうか」
 無論それだけに留まらず。拘束から逃れようとする竜牙兵を見遣りながらも刻印の右手を露わにし、鎧の厚さなど無視して突き入れる。心の痛覚が欠落していなければ出来ないであろう、無遠慮な行動だ。
 そうして握り潰すは、骨の中に収まっていた温かい何か。
 されど未だ消え去らない目の前の骨を見て、ルーチェは笑みを浮かべたまま首を傾げた。
「おや、以外と頑丈だねぇ。――ネフリティスさん、お願いしても?」
「はーいっ、任せてー!」
「猫グッズイベントを邪魔するなんてぷんすこなんだよ!」
 元気よく返事をし、エトワールはルーナと目を合わせる。
「わかってるよお姉ちゃん、ちゃんと『めっ』てしないとね!」
 しゃらり、翡翠の杖を鳴らして沢山の星型を描くエトワール。大小様々な星屑たちが、瀕死の竜牙兵を追い回す。
「お星さまとの鬼ごっこ。キミは逃げ切れるかな?」
 無邪気な遊びに、無邪気で楽しげな声が重なる。やがて星屑と竜牙兵の距離は一気に縮まり、星屑が竜牙兵を覆い尽くした。
「これに懲りたら、もう楽しいイベントを襲撃しないこと! ……って、もう聞こえてないかな? ボクたちの勝利だよ、みんな、お疲れさま!」
 黒い煙となって消えゆく竜牙兵を見送り、エトワールは仲間たちに勝利を告げたのだった。

●猫の嵐
 ケルベロスたちの速やかなヒールのおかげで、イベント「猫嵐」は瞬く間に再開の運びとなった。
 無事に仕事を終えたことに胸をなで下ろしつつ、エヴァンジェリンはルーチェと共に広場を巡る。
「仕事の記念に揃いのカップを買いたいの」
 ルーチェに手を伸ばしながら、エヴァンジェリンが微笑む。その手を包み込むように握り、ルーチェは思案顔になる。
「揃いの物……書斎で使うカップを探そうかなぁ。僕が持っても可愛げのあるモノがあると良いのだけれど」
「これだけあるんだもの、きっと見つかるはずよ」
 とても嬉しく楽しい散策に、エヴァンジェリンの笑みが溢れる。
 途中、ルーチェの目についたのは猫の顔を模したカップだ。
「……僕は黒猫、エヴァは白猫でどう?」
 黒と白の猫は、きっと兄弟でも姉妹でもなく、兄妹。ルーチェは二つのカップを示し、妹分の様子をうかがう。
「素敵! それがいい」
 幸せの笑み咲かせてカップを購入するエヴァンジェリンに、ルーチェは笑み返す。今だけは、優しい顔で。
「たまには妹とデートもいいねぇ」
 これはデートなのかと少しの間考えるエヴァンジェリンであったが、楽しいことは確かだ。だから、素直に伝えるための言葉を零す。
「兄さん、楽しい」
 と、いっそうの笑顔も添えて。

 エトワールがまず向かおうとしたのは、ルーナ用の食器を売っている場所だった。
 しかし途中にも罠、もとい猫グッズは沢山あるわけで。
「あっ、この子お姉ちゃんのお友だちに良さそう!」
 と、黒猫ぬいぐるみにはしゃいで脱線してしまうことは、ルーナにとって想像に難くなかった。そういうわけで、ぺしぺしと肉球で肩を叩いてエトワールに本来の目的を思い出させるのもルーナの役目だ。
「えへへ、ごめんねお姉ちゃん。あ、お皿は隣で売ってるんだね! わあ、空色に月色の猫さんのお皿だ……すてき! 他にもマグとかあるんだ! えへへお買い物楽しいね、お姉ちゃん♪」
 そう言ってルーナを見れば、彼女もまた選べない、というように食器を見渡していた。

「うわあ、みんなかわいい……!」
 目移りするのは覚悟の上、だからねーさんのそっくりさんを探して歩く涼香だ。
「ん! 美人さん発見!」
 ねーさん共々駆け寄った先には、ロシアンブルーがプリントされたクッション。
「うん、これなら庭で待ってるあの人も楽しめるかも」
 掌で感触を確かめると、それはもうふっかふかだ。お土産にと包んでもらう間、クラリスの姿を見つけて呼び止める。
「クラリスさんは、何か買ったの?」
「可愛いのがあったから、さっそく買っちゃった。見て見て、猫型のクリップ!」
 ぴこんと耳が立ったこのクリップは楽譜を止めるのに使う予定だが、用途は秘密。それもそのはず、クラリスは正体を隠して音楽活動をしているのだ。
「わあ、可愛い……! あれ、ヨハンさんは……黒猫のステッカー?」
「はい、僕の所属する旅団のシンボルですからね。この花飾り、さりげなく春の花なんですよ」
 なんて涼香に説明した直後、肉球柄の絆創膏を発見するヨハン。
「あっ、これすっごく可愛い……!!」
 と、一足先に飛びついたのはレミリアだ。幸せオーラをだだ漏れに、もだもだしつつあちこち見て回る。
「幸せすぎます、素敵すぎます。作家さん達の猫への愛が溢れていますね!!」
 置物も小物も実用品も、どれも余すところなく猫要素が入っている。
 そんな中でレミリアが見つけた黒猫のキーホルダーは、シンプルながらもとても可愛らしいもので、思わず手に取ってしまった。
「……ふふ、買っちゃおう」
「皆楽しそうで何よりだ。……俺も、楽しんでいる」
 仲間を見遣るリューデの腕に抱かれているのは、自分用の白黒ハチワレ猫クッションと相棒用の茶トラ猫クッション。どちらも、下宿先にいる豊満な猫そっくりだ。何よりイベント再開直後に最初に目が合った子だ、もはや運命と言っても過言ではない。
 まだまだ散策を続ける仲間の後ろを歩くリューデの表情は真顔。それでも髪に咲く白いペンタスがぽこぽこと増えている。つまり、「今、とても幸せ」ということだ。
「猫嵐、か。……良い春の嵐だ」
 ふと目を閉じたリューデの脳裏に、桜並木を歩く猫の姿が思い浮かんだ。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年3月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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