太陽と、月と

作者:洗井落雲

●進化の道程
「ケルベロスの戦闘力は、急激に進化しています。私達ダモクレスも進化しなければ、いずれ滅び去る事でしょう」
 女――デウスエクス、『ジュモー・エレクトリシアン』が、言った。
 そこは、無機質な、研究室のような場所である。ダモクレスの拠点の一つなのだろう。ジュモー・エレクトリシアンは、椅子に腰かけ、画面に映し出される数列、あるいは図面を見やると、次に、その手にした宝石――『コギトエルゴスム』へと視線を移した。
「多くの犠牲を払い手に入れた、宝瓶宮グランドロンの宝……私たちの進化の為に有効に活用させてもらいましょう」
 そう呟くジュモー・エレクトリシアンの手の中で、コギトエルゴスムは静かに輝いていた。

 それから少しの後――。
 その自動車部品工場には、悲鳴が響き渡っていた。
 逃げ惑う人々を、炎を、氷が襲った。
 焼かれ、切り裂かれ、人々が無残に命を奪われていく。
 その災禍の中心にいたのは、『『攻勢機巧』日輪』と、『『防勢機巧』月輪』と呼ばれるダモクレス、総計5体である。
 量産型と思わしきそれら5体は、かつてケルベロス達の前に姿を現したことがある。だが、その様相は、ケルベロス達の知るそれとは、些か異なっていた。
 外装は、褐色にくすみ、その身体の至る所に、有機的なパーツが見え隠れしている。
「周囲生命反応の消失を確認」
「次の指示を望む」
「続いて資材の確保を行え」
「了解」
「これより行動を開始する」
 太陽と月は、連携の取れた動きで、無人となった部品工場を物色し始めた。

●太陽と、月を墜とせ
「集まってくれて感謝する。今回の作戦について、説明を始めよう」
 アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は、集まったケルベロス達へ向けて、そう言った。
 曰く、『リザレクト・ジェネシス』後に撤退し、行方の分からなくなっていたダモクレス、『日輪』と『月輪』の量産タイプたちだが、これらが自動車部品工場を襲撃するという予知がなされたという。
 ダモクレス達は、工場の作業員たちを皆殺しにし、其処に蓄えられた資材を根こそぎ奪おうとしているようだ。
「ダモクレス達の目的は、グラビティチェインというより、工場の資材のようだ。そのため、工場の従業員たちを避難させても、襲撃は行われる。よって、今回、従業員たちの避難は既に完了させている。君たちは、工場にてこのダモクレス達を待ち受け、撃退してほしい」
 工場の敷地はさほど広くはないため、邪魔者である作業員たちがいないとわかれば、ダモクレス達は資材置き場へと直行するだろう。また、前述したとおり作業員たちの避難は完了しており、周囲への立ち入りも禁止してある。ケルベロス達は、この敵との闘いに、注力できるという事だ。
「それから……少し奇妙なことがある。この『日輪』と『月輪』なのだが、以前皆が戦った時と比べて、『全体的に褐色にくすんでいて』、『生物的な要素が付け加えられている』ように見える。戦闘能力などは大きく変化していないようだが、ダモクレス側で、何らかのアップデートを行ったのかもしれないな。念のため、注意しておいてくれ」
 そう言って、アーサーはひげを撫でた。
「なりふり構わず資材を強奪しようとは、リザレクト・ジェネシスでの皆の活躍もあって、ダモクレス達もかなり追い込まれているのだろうな。それでは、君たちの無事と、作戦の成功を、祈っている」
 そう言って、アーサーはケルベロス達を送り出したのだった。


参加者
アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)
椿木・旭矢(雷の手指・e22146)
葛城・かごめ(幸せの理由・e26055)
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)
鹿坂・エミリ(雷光迅る夜に・e35756)
エトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)

■リプレイ

●進化の星々
 とある自動車部品工場。その場所へ、五つの巨大な『手』が降り立った。それは、炎と氷を纏う、手のような形をしたダモクレス、『量産型『攻勢機巧』日輪』と『量産型『防勢機巧』月輪』であった。
 だが、かつて両者の姿を見た者ならば、その外見に差異が生じていることに気づいただろう。その装甲は全体的に褐色にくすんでいて、パーツの一部が有機的なものへと変わっていてた。例えば、パーツが何やら肉を思わせるものでおおわれていたり、パイプが植物のツタのようなものに変貌していたり……などである。
「目標地点に到達」
「周囲生命反応、見受けられず」
「ニンゲンたちめ、逃走したか?」
 そう言うダモクレス達へ、別の個体が答えた。
「気にすることは無い。我々の目標は、グラビティ・チェインではない」
「物資を見つけ、持ち帰るのだ」
 がしゃり、と体を震わせて、太陽と月が進軍する。向かう先は、この工場の倉庫である。加工前の物品や、加工後の製品、それらをまとめて奪うのが、ダモクレス達の目的だった。
「――とまれ」
 ふと、一個体が声をあげた。その声に応じて、ダモクレスたちは進軍を止める。その視線の先には、倉庫の建物、そしてその前に立ちはだかる、8つの影があった。
「日輪、月輪か。月輪と以前戦った折には大変な苦戦を強いられたものだが……」
 その中の一つの影――椿木・旭矢(雷の手指・e22146)が、静かに、声をあげた。
「今度は人質も守るべき者もない。今回は、全力だ。ここで『江戸の敵を』……なんて言うんだったかな……」
 表情は変えず、少しだけ首をかしげる旭矢へ、
「『江戸の仇を長崎で討つ』、だ。椿木君」
 答えたのは、神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)だ。あごに手をやり、ふむ、と唸ってから、続ける。
「だが、それでは些か、見当違いな使い方では……いや、種類が同じとはいえ、以前遭遇した個体ではないのだから、この場合は正しいのか……?」
「ケルベロスか!」
 ダモクレス達が声をあげるのへ、
「いかにも、その通りだ」
 答えたのはアジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)だ。アジサイは、変貌したダモクレス達の外見を見やり、眉をひそめる。
「どうやら……本当に、なにかバージョンアップをしたようだな。だが、そのやり口は、気に要らん。心、体……自分の核を利用されるなんぞ、たまったもんじゃない」
「復活させ、利用するのではなく、あくまで強化パーツとして利用する。貴様ららしいやり方と言えば、その通りだ」
 リューディガー・ヴァルトラウテ(猛き銀狼・e18197)が、続けた。
「ダモクレスの進化とは何か……未だ、それはわかりまセン。ですガ……それハ、何かヲ……命を利用するものであってはならない……と思いマス」
 と、エトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)は言う。
「何を知っている」
 ケルベロス達の言葉に、ダモクレスは静かな声色で尋ねた。
「答える義理は、ありませんね」
 鹿坂・エミリ(雷光迅る夜に・e35756)が冷たく、答えた。
「地に落ちた太陽と月。あなたたちが再び天に上ることはありません」
 ゆっくりと、エミリが構えた。合わせるように、仲間たちも戦闘態勢に入る。
「有機的なパーツ……ですか。なんか……微妙に不気味ですね」
 葛城・かごめ(幸せの理由・e26055)が、ダモクレスたちのパーツを見やり、呟く。気を取り直すように頭を振ってから、
「資材の強奪……そして、あなたたちの狙う進化。その企み、ここで潰えさせてもらいます」
 鋭く、そう告げるのへ、ダモクレスたちもまた、その身を強く振るわせ、構える。
「良いだろう。我らがシンカ、貴様らケルベロスで試してやる」
「ふふ、こわぁい」
 プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)は、そう言って艶やかな笑みを浮かべた。
「でも、こちらこそ。あなたたちの味、私のカラダで試してあげるわ」
 プランの言葉を合図に、ダモクレスたちは一斉に動き出す。ケルベロスたちもまた、一気に駆けだした。
 無人の工場にて、ケルベロスとダモクレス、両者は激突する――。

●太陽と月の手
「戦闘プログラム通りに行動しろ。フォーメーション」
 『月輪』が声をあげ、『日輪』たちが一歩、先行する。『日輪』たちが体に纏う炎がひときわ激しく燃え盛ったと思うと、それは嵐のごとく噴き出され、ケルベロス達を飲み込まんと襲い来る。
「リューディガー君、やれるな?」
 晟が声をあげるのへ、
「了解だ。盾としての矜持、見せてやろう」
 『GoldenWirbelwind』を起動、構えたリューディガーが、炎の前へと立ちはだかる。
「ラグナル、お前もだ。私たち三人で、皆の盾となる!」
 晟の言葉に応じるように、ボクスドラゴン『ラグナル』が吠える。晟とラグナル、二人の翼持つ龍が、その翼をはためかせ、炎へと立ち向かった。
 炎が、三人へと着弾。鋼鉄をも溶かすであろう激しい炎は、しかし三人の魂、その端を焦がすことすらできない。
 受け止められた炎、その間隙をぬって、飛び出したのは無数の大型ドローンだ。
「俺たちの鉄壁の盾、その真価を見たか? なら、次は矛の真価をお見せしよう」
 跳躍したアジサイが、ドローンを足掛かりに、さらに高く、素早く、跳んでいく。重装ドローンは、アジサイへと充分な反発力を返し、その速度をさらに上昇させていった。
 ドローンは、ダモクレスたちを囲むように展開。アジサイはそれを蹴り、その身を砲弾として、ダモクレスへと突撃していく。
「ぉぉおおお―――っ!!」
 鋭き咆哮は、風切り音と共に。『隼一筆(ハヤブサヒトフデ)』の攻撃は、縦横無尽にダモクレス達の間を駆け巡り、その装甲に幾重もの傷を刻んでゆく。
「さすがだ、アジサイ君。私も援護と行くか!」
 その攻撃を後押しするように、晟は『蒼竜之手套【瀑】』を起動。士気を高める色とりどりの爆発が発生し、戦場をど派手に彩った。ラグナルもまた、仲間たちを援護するために、自身の属性を分け与えていく。
「私も続きます……!」
 かごめはオウガメタルへと呼びかけ、その身に鋼鉄の鎧をまとう。同時に放たれた輝く粒子を、仲間たちへと降り注がせて、その感覚を研ぎ澄まさせた。
 一方で、重砲撃の音にも負けぬ、力強い歌声が、戦場へと響いていた。
「あなた方ハ、実験台になっテ……その姿になっテ、どこへ……行きたいのでショウカ……?」
 エトヴァの歌声が、信念を削り取る攻撃となって、ダモクレスたちの聴覚センサーを震わせる。
「ぐ……何を……!」
 うめく『月輪』。そして、その隙を逃さぬ、妖しい視線が、ダモクレスたちを貫いた。
「私の事……愛してほしい、な」
 プランの催眠魔眼が輝き、ダモクレスたちの電子頭脳を犯していく。
「ああ!」
 『月輪』の一体が、狂ったように体を震わせると、あたりかまわずに鋭い氷の刃を展開。それはダモクレスの仲間たちへと襲い掛かり、味方を傷つけていく。
「あら? ふふ、ありがと」
 その様子を見て、プランはウインク一つ、『月輪』へと投げかけるのであった。
「ちいっ……補修プログラムを走らせる……!」
 『月輪』の身体がほのかに輝き、月光を思わせる輝きが、もう一体の『月輪』へと降りそそぐ。
「させんっ!」
 雷のごとく響き渡るリューディガーの声。続いて放たれる銃撃の連射。『Donner des Urteils(ドンナーデスウアタイル)』が敵に与えるは、貫くような衝撃。どのような偉丈夫であろうとも、その雷鳴には、畏怖し、身をすくませることしかできない。
「くらえ」
 静かに――だがその胸には確かな戦意を燃やしながら、旭矢が跳ぶ。その手には、片手30枚ずつの卍手裏剣が、鈍く輝いていた。
 ふっ、と息を吐きながら、卍手裏剣を一気に投擲。総計60枚の弾幕ならぬ刃幕が、ダモクレスたちへと一気に降り注ぐ。直線的なだけではなく、微妙な円を描くものなど、複数の軌道を描いて放たれる『羽虫ノ舞(ハムシノマイ)』。それを避けること能わず。
 手裏剣が、ダモクレスたちの装甲へ、次々と着弾する。
「くっ……怯むな! センサーを総動員して回避……!」
 苦し紛れに声をあげる『月輪』。だが、その背後に、静かに忍び寄る影があった。
「では……どうぞ避けてみてください。……避けられるのであれば、ですが――」
 『月輪』の背後へと忍び寄ったエミリは、静かにその装甲に触れた。冷たい感触が、その手に伝わると同時に、エミリは稲妻の如き電流を、相手の体内に流し込んだ。『灼雷(シャクライ)』、その名の通り、輝きやけつく雷が、相手の神経回路を破壊する。すべては一瞬。意識は赤い闇の中へ。
 バヂン、という音を立てて、『月輪』が機能を停止した。
「残念ですが、避けられませんでしたね」
 その身体が、人形のように倒れるのと同時に、エミリの姿が掻き消える。
「やられただと……!」
 『日輪』の一体が声をあげる。ケルベロス達の連携と、猛攻により、ダモクレスたちの戦力は欠かれた。そしてそこから、形勢は一気に傾いていくことになる。
 『日輪』がその身体を縮こませると、さながら巨大な握りこぶしのような見た目になる。そのまま、勢いよく突撃……振るわれる『拳』を、晟はその全身をもって受け止めた。
「ぬ……うぅんッ!」
 二つの巨体がぶつかり合う。晟は『日輪』の勢いを受け止め、完全に殺した。
「馬鹿な……!?」
 『日輪』がたまらず悲鳴のような声をあげる。晟は笑った。
「残念だが……君たちのシンカとやらは、私達には通用しないよ」
 力を振り絞って、放り投げる。『日輪』が、上空へと投げ出されるのを、アジサイが攻撃。
「その炎、より激しき炎で吹き消してやろう!」
 アジサイの放つ炎のブレスが、『日輪』たちを薙ぎ払う。炎と炎がぶつかり、果たして打ち勝ったのは、アジサイの炎だった。自らを焼き尽くす炎に、ダモクレスたちは身を怯ませる。
「終わりだ」
 『赤日』を振りかざし、『日輪』のさらに上空へと跳んだ旭矢。『日輪』へと狙いを定めると、落下の勢いと力の噴射を載せて、思いっきり『赤日』を叩きつける。
 ぐしゃぐしゃと音を立て、無残な鉄塊と化した『日輪』が、地へと叩きつけられる。少しおいて、旭矢は着地。
「どうだアジサイ? わりとイケてないか俺?」
 と、尋ねるのへ、アジサイは笑った。
「安心しろ椿木、お前さんは間違いなくイケてる男だ」
 親指を立てて、応える。旭矢は、うん、と静かに頷いた。
「俺も負けていられナイ……!」
 エトヴァが『日輪』をターゲットに駆けだす。それを阻むように、残った『月輪』が立ちはだかった。
 エトヴァのエアシューズは激しくローラーを回転させ、摩擦熱の炎を吹き上げる。エトヴァは跳躍し、サマーソルト風に後転しながら『月輪』を蹴りつけた。炎が『月輪』の氷と装甲を焼き、エトヴァが宙に舞う、その隙間を縫って、
「対機械には機械の力……少し力を借りるよ」
 その身に『【暴走する殺戮機械】』のエネルギーを宿したプランが、半機械化した己の腕を振るう。殺戮機械の刃が『月輪』の体を捕らえ、横一文字に薙ぎ払った。
 真っ二つに切り払われた『月輪』が、断末魔のようにその身体をくねらせ、地に落ちる。『月輪』はそのまま機能を停止した。
「ん……ちょっと激しすぎた?」
 薄く笑いながら、小首をかしげるプラン。
「優勢か……このまま押し切るぞ!」
 リューディガーが声をあげ、癒しのオーラを放ち、仲間たちの傷をいやす。
「このまま最後まで、誰も倒れさせたりしません!」
 かごめもまた、癒しのオーラを放つ。オーラは舞い散る花弁となって、仲間たちを鼓舞するのだ。
「足を止めます!」
 エミリが、その身にオウガメタルの装甲を纏う。同時に出現させたレギオンレイドの黒き太陽が、地に落ちた偽りの太陽を、その黒い光で圧し焼いた。
「お……の……れぇ!! 我らは! シンカした我らはァッ!」
 残る『日輪』が雄たけびを上げ、矢の如き炎の光弾を放つ。その一撃は晟が/リューディガーが、それぞれ受け止めた。
「この程度で……!」
 晟が声をあげ、
「何が進化か……!」
 リューディガーが声をあげる。
 『日輪』の攻撃、それにより生じた隙をついて、アジサイは駆けた。
「俺たちには、通じん!」
 『黒砕』の刃をきらめかせ、大上段から叩きつける。光り輝く呪力を受けた刃が、『日輪』の装甲を破砕し、両断した。
「……もう、俺はつめたい機械ではナイ……!」
 残る『日輪』へと、エトヴァが迫る。鋭く振るわれた蹴りの一撃が、『日輪』のコアを貫いた。
「そんな……我々は……我……」
 『日輪』が末期の声を呟く。エトヴァが飛びずさると、『日輪』はぐらりと体を揺らし、その身を投げ出すように、地へと倒れ伏したのであった。

●進化の先にて
 見事、すべてのダモクレスたちを迎撃したケルベロス達は、戦いの余波によって傷ついた周囲のヒールを行う。
(「ダモクレスによる……物資の収奪……ですか……」)
 エトヴァは、あたりをヒールしながら、胸中でそう呟く。その胸の内に、何を思い描いているのだろうか? その真意は、エトヴァ自身にしかわからない。
 さて、ケルベロス達は改めて、ダモクレス達の残骸を調査する。
「確かに……以前戦った時とは、違うように見えるな」
 旭矢が声をあげる。装甲の色の変化。そして、有機的なパーツの追加。戦闘能力自体に大幅な向上は見受けられなかったようだが、それでも、何らかの変質がなされたことに違いはなかった。
 詳しく、その残骸を改めてみると、やがてケルベロス達は、一つの宝石のようなものを見つけ出す。それは、紛れもなく、コギトエルゴスムだ。
「やはり……! 奴らは、コギトエルゴスムを利用していたのだな……!」
 アジサイが、自身の予感が的中した驚きと、そしてコギトエルゴスムを利用していたという怒りがないまぜになった声をあげる。
「状況的に、これも妖精のものなのだろうな。奴らに利用され、実際に被害が出る前に止められたのは、僥倖と言えるだろう」
 リューディガーが、言った。今回、人命などの被害は、ケルベロス達の活躍もあり、未然に防がれているのだ。
「一体どんな種族なんでしょうね?」
 かごめが首をかしげて尋ねるのへ、プランは笑って答えた。
「んー、カワイイ子だといいんだけれど」
「いずれにせよ、おそらく近いうちに判明するだろう」
 晟の言葉に、相槌を打つように、ラグナルが唸った。グランドロンを巡る戦い、その過程で、このコギトエルゴスムの主とも、対峙することになるだろう。
「太陽も月も、落ちてしまえば残るは暗闇。ですが、私達の前には……」
 エミリの言葉に応えるように、空には、未だ落ちぬ太陽が光り輝いていた。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年3月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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