果てなき進化を求めて

作者:雷紋寺音弥

●進化のための贄
 数多の機械が複雑に絡み合い、壁と床、そして天井までをも覆い尽くした奇妙な場所。知る者が見れば、一目でダモクレスの拠点と解りそうなその場所に、独り佇むのはジュモー・エレクトリシアンだった。
「ケルベロスの戦闘力は、急激に進化しています。私達ダモクレスも進化しなければ、いずれ滅び去る事でしょう」
 誇張ではなく、それは確かな事実だと、ジュモーは改めて自らに言い聞かせる。定命の種など、所詮は脆弱なタンパク質の塊か、もしくはエラーを起こした同族の成れの果て程度にしか思っていなかったが、しかし現に彼らはいくつかの種族のゲートを潰しただけでなく、ドラゴンやエインヘリアルといった、列強種族と拮抗するまでに至っている。
 このまま放置しておけば、いずれその刃はダモクレスの存在さえも脅かすことだろう。ならば、そうなる前に列強種族さえも超越する存在にならねば、ダモクレスという種族に未来は無い。
「多くの犠牲を払い手に入れた、宝瓶宮グランドロンの宝……私たちの進化の為に、有効に活用させてもらいましょう」
 ジュモーの手に握られていた美しい宝玉が、ふわりと宙に浮かんだ。それは、ジュモーの前に置かれていた巨大な腕のようなダモクレスへと吸収され……宝玉を吸収したダモクレスの装甲は、瞬く間に褐色へとくすんで行った。

●日と月の襲撃
 その襲撃は、何の前触れもなく、実に唐突に訪れた。
 街外れにある、巨大な煙突の目立つ化学工場。決して大きな工場ではないが、街に住まう人々の生活を支える仕事場でもある。
 そんな場所へ、突如として襲来した巨大な腕が、辺り構わず炎や氷を撒き散らしながら暴れ始めたのだ。
「あ……がぁ……! た、助……け……」
 逃げ惑う工員達は、その多くが凍れる腕の一振りによって氷像と化し。
「うぅ……。だ、誰か……誰かいないの? あぁ……目が……息が……」
「ひっ……! ば、爆発す……わぁぁぁっ!!」
 引火した薬品による爆発で多くの命が失われ、立ち昇る黒煙に巻かれた者達もまた、願い虚しく息耐えて行く。その最中、燃える巨腕と凍れる巨腕は、倉庫に保管されていた資材を根こそぎ掴んで奪って行く。
 白昼の惨劇。だが、その裏に恐るべきダモクレスの計画が潜んでいようとは、その場にいた誰もが気が付いてはいなかった。

●堕ちた太陽、淀んだ月
「招集に応じてくれ、感謝する。『リザレクト・ジェネシス』後に撤退し、行方が分からなくなっていたダモクレス……『日輪』と『月輪』が、工場を襲撃する予知が確認された」
 目的は、工場に保管されている資材の略奪。そのために、邪魔な工場の従業員を、問答無用で殺害しようとしていると、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に、険しい表情のまま説明を始めた。
「工場には俺の方から、既に情報を伝えておいた。従業員の避難は完了しているから、後は襲撃しているダモクレスを現地で待ち受け、撃破するだけだ」
 敵が現れるのは、食事時を終えて少しばかり経った昼下がり。数は日輪と月輪がそれぞれ2体ずつの併せて4対で、日輪は炎を操り攻撃を、月輪は氷を操り防御を担う。炎や氷を纏った巨腕そのものを武器とするだけでなく、炎や氷を放つことで複数の目標を同時に攻撃したり、自身の火力や防御力を増強させる術も持っている。
 幸いなのは、敵の戦闘力が、かつて戦った際と比べても大きく変化していないことだろう。もっとも、その身体は全体的に褐色にくすんでおり、生物的な要素が付け加えられているなど、随分と容姿が様変わりしているようなのだが。
「リザレクト・ジェネシスの戦いの結果、ダモクレスもかなり追い込まれているのだろうな。だが、だからと言って、連中の略奪を見逃してやる筋合いは無い」
 なにより、襲われる工場は、街で暮らす人々の生活を支える貴重な仕事場。この工場がなくなったり、資材を奪われたりすれば、仮に命が助かったとしても、人々は職を失い困窮した生活を強いられるかもしれない。
 取り逃した日輪と月輪を撃破し、工場を守り抜いて欲しい。そう言って、クロートは改めて、ケルベロス達に依頼した。


参加者
ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)
神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)
カトレア・マエストーゾ(幻想を紡ぐ作曲家・e04767)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
ティユ・キューブ(虹星・e21021)
影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)

■リプレイ

●巨腕襲来
 無人の工場に舞い降りる、燃える巨腕と凍れる巨腕。彼らの目的は、工場に積まれた資材の奪取。だが、地球の番人たるケルベロス達が、それを許そうはずもない。
「今度はダモクレスか。グランドロンも、すっかり新たな火種となってしまったようだね」
 出現した巨腕を前に、ティユ・キューブ(虹星・e21021)は苦笑しつつも拳を構える。宝物庫に保管されていた妖精族に罪はないのだろうが、こうも好き勝手に、様々な種族に利用されている様というのは、哀れというか何というか。
「ガ……ガガ……」
「ググ……グ……」
 燃える巨腕が、凍れる巨腕が、それぞれに奇妙な音を発しながら指を開く。どことなく、生物質な外観を持つそれが立てる音は、まるで取り込まれた妖精族が、苦悶の叫びを上げているかのようにも見え。
「ドリームイーターや螺旋忍軍と違って、妖精種族をただただ利用するだけなんて……」
「命をモノのように利用して、自分の力にするなどという蛮行、許せませんね」
 リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)の言葉に、ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)が小さく頷いて続ける。だが、その言葉が終わり切らないままに、敵の掌から放たれた火炎と氷河が、ケルベロス達に襲い掛かった。
「くっ……量産型の分際で、味な真似をしてくれる!」
 焔を振り払うようにして、ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)は舌打ちをした。いきなり後衛を狙って来るとは、なかなか面倒な相手のようだ。資材の強奪を目的にしているとはいえ、最初から戦闘を前提として造られたダモクレスだけはある。
「熱い……けど……」
 同じく、身を焦がす焔に顔を顰めながら、影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)もまた立ち上がる。
「工場も、そこで働く人達の生活も、絶対に守り抜いてみせるよ」
 こんなところで、弱音を吐いている場合ではない。見た目の派手さと広がる炎に気圧されすれば、それだけ戦いでも不利になる。
「よく、失った四肢の代わりとか、機械で補うって言うのは医療関係とかで聞くが、逆の場合はどうなんだろうな? まあ、今は気にしていても仕方ないか」
 神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)の操る御技が炎を吹き、凍れる巨腕を包み込む。そちらが炎なら、こちらも炎だ。まずは面倒な氷壁を、早々に片付けさせてもらおうと。
「観客がいないというのも寂しいね。用意しておくよ」
 カトレア・マエストーゾ(幻想を紡ぐ作曲家・e04767)が紙兵を撒き、仲間の守りを固めさせる。今は、焔や氷結が広がるのを少しでも防がねば、時間が経過する程に不利となる。
「さぁ、舞台は整った。開演といこうか」
「うむ……。燃える巨腕と、凍れる巨腕よ……我が牙と爪を以て、貴様達を破断する!」
 カトレアの言葉に頷きつつ、黒剣を構えるジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)。
 グランドロンより持ち出されし、妖精族のコギトエルゴスム。そして、この地に住まう全ての人々の生活を賭けた、ケルベロス達の死闘が始まった。

●絶対氷壁
 化学工場に、突如として現れた巨大な4本の腕。一見して知能の低そうに思われる敵だったが、しかし戦闘時の連携に関しては、なかなか巧みな動きを見せる。
「……っと! 残念、止められたか」
 回し蹴りで敵を薙ぎ払おうとした瑞樹だったが、その攻撃は氷を操る巨腕によって、容易く受け止められてしまった。
 敵は前衛に集中しているため、纏めて倒そうとするのは悪い戦法ではない。だが、それは敵も解っているのか、4本ある腕の内、それぞれお2本が攻撃に、残る2本が回復支援にと動くため、結果として敵の強化をなかなか剥がせない。無理に同じ技で攻撃を繰り返しても軽々と避けられ、当たったと思えば割り込んで来た氷の腕に受け止められてしまう。
「一人で無理をするな。足りない分は、私が補おう」
 同じく、ティーシャが回し蹴りを繰り出すも、その効果とて一瞬のもの。再び敵に手番が回れば、相手は巧みなローテーションで、砕かれた強化措置を再び張り直してしまうだろう。
「この敵……できる。でも、無関係の人達を犠牲にした上での進化なんて……」
 空の霊力を纏った刃で斬り付けながらも、その硬さに歯噛みするリナ。そんな彼女に向けて、ティユは炎や氷に全身を包まれながらも、苦笑しつつ気を練った。
「なんとなし、目指しているものは窺えるけれど、同時に甲斐ないものにも見えるがね。なにより、甲斐ないものにするのが僕らの役目さ」
 そう、口では言っているが、しかし彼女の負担は想像以上に大きい。敵の攻撃は、時に間合いを問わず広範囲を凍らせ、焼き尽くすもの。しかし、その壁となって仲間を守れる者は、ティユと彼女の相棒である、ボクスドラゴンのペルルしかいないのだ。
 自分達を除けば7人が食らう分の攻撃を、可能な限り身を挺して庇う。それで負担にならない方がおかしいが、しかし敵は炎の削りと氷の壁を利用した、徹底的な持久戦の構え。このまま戦いが長引けば、遠からずこちらの壁の方が先に突破される。
「まだ、行けますわよね、リリちゃん?」
「ん……問題ないよ。でも……」
 ルーシィドの導き出す大自然の加護を受けつつも、どこか顔を顰めた様子のリリエッタ。その手に握った長剣をしばし見つめていたが、直ぐに思い直したのか、鞘に納めて跳躍し。
「やっぱり……使い難い」
 そう言いながら、凍れる腕を蹴り飛ばし、勢いに任せて大地へと叩き付ける。
 やはり、自分は剣を振るうよりも、素手や銃で戦った方が性に合っている。使い慣れたライフルに持ち替えて、リリエッタは改めて自分の適性を確かめる。
「なかなか盛り上がってきたね。それではここで一曲……『双ツ星』」
 楽譜にグラビティ・チェインを注ぎ、カトレアが自作の曲を奏でて敵へと聞かせた。
 追憶に囚われることなかれ。そして、前に進み続けろ。歌に込められた想いは、時に敵の信念さえも揺らがせる。心無きダモクレス相手に、果たしてどこまで有効なのかと思えたが、しかし歌を聞かされた4本の腕は、途端に攻撃の勢いが鈍って来た。
「心無き者さえ揺らがせる歌……いや、中に取り込まれた、コギトエルゴスムがそうさせるのか?」
 だとすれば、随分と皮肉なものだと苦笑しつつも、ジョルディは剣と斧をそれぞれ構え、氷を駆る腕の前に立ち塞がった。
 絶対氷壁。決して溶けず、砕かれることのなき氷の壁。
 相手にとって、不足はない。そして、この世に絶対などというものもまた、決して存在するはずがない。
「全てを凍らせる守りの腕か。ならば……消えることのなき、地獄の業火で相手をしてくれる!」
 燃える大剣、唸る戦斧。獄炎を纏った二つの武器が、氷河をも生み出す氷の巨腕を、正面から十字に斬り捨てた。

●紅蓮双腕
 凍れる腕が、音を立てて崩れ落ちる。度重なるケルベロス達の猛攻を前にして、ついに鉄壁の防御が崩壊した。
 互いにローテーションを組んで、回復と攻撃を繰り返す。その上で自らの力を攻守共に高め、炎の勢いと凍結による効果で一気に押し切る戦い方。
 ダモクレス達のフォーメーションは、実に合理的で無駄のないものだった。しかし、どれだけ無駄なく行動しようと、必ず穴は存在する。
「なんとか……防御を崩せたようだね……。残るは……あの燃える腕だけか……」
 満身創痍になりつつも、ティユはこの戦いに勝機を見出していた。
 敵の弱点は、二つあった。一つ目は、自己強化に走り過ぎて、肝心の回復量がおざなりになっていたこと。回復を専門とせず、おまけに広範囲に効果をもたらす技であれば、ヒールとしての性能は大したことはない。
 そして、もう一つの弱点は、敵が体勢を立て直すための術を持っていなかったこと。敵の繰り出す炎や氷は脅威だが、それはそのまま、向こう側にも当てはまる。こちらが炎や氷を除去しながら戦えるのに対し、巨腕達はその術を持っていなかったのだ。
「ガ……ガガ……」
 もっとも、それでも敵は未だ諦める様子さえ見せず、炎に包まれた指を武器に、ティユを焼き尽くさんと迫って来た。
「……っ!」
 さすがに、こう傷が深くては避けられない。迫り来る指先は焔を纏った剣の如く、ティユと相棒であるペルルのことを、一気に焼き尽くさんと振り下ろされる。が、彼女の視界が燃える炎に包まれようとした瞬間、間一髪のところで、ペルルは主に自らの属性を付与し、その体力を一時的に持ち直させた。
「……熱ぅ……。まったく、やってくれたね……」
 焦げた腕を軽く払い、ティユは思わず目の前の巨腕を睨みつけた。
 この借りは、そっくりそのまま返してやろう。星の輝きを展開し、ティユはその光の中から無数のミサイルを射出した。フォトンミサイル、もしくはフォトントルピードとでも言うべきか。輝ける光のミサイルは巨腕に全て命中し、その動きを瞬時に鈍らせて。
「ご安心下さい 茨の棘に刺されても あなたがたは決して死にません ただ眠り続けるだけ」
「君たちを讃える歌を用意しておいた。まだまだへばるんじゃあないよ。それでは第6番……“聖女による頌歌”」
 ルーシィドが茨を、カトレアが少女の姿をした式神を呼び出し、それぞれ仲間達のフォローに回る。式神の少女が英雄を讃える楽曲を紡げば、傷口に絡みついたルーシィドの茨は、癒しの残滓だけを残し、消えて行く。
「ここにはあなた達に渡すものは何もないよ」
「そう……ネジ1本たりとも渡さない」
 もはや遮るものは何もないとばかりに、リナとリリエッタが一気に仕掛けた。
 この連中に、少しでも何かを渡してなるものか。工場の資材だけではない。妖精族のコギトエルゴスムも、それになにより仲間の命も。
「風舞う刃があなたを切り裂く」
 まずは、リナが刃に風を纏い、文字通り疾風の如く突貫し。
「これで動きを止めるよ! ライトニング・バレット!」
 その後ろから、リリエッタの放った雷弾が追従する。風と稲妻が一つになって、荒れ狂う嵐は巨腕の纏っていた炎さえも消し飛ばす程の勢いだ。
「こいつはオマケだぜ。バラバラに解体してやるよ」
 疾風と雷鳴に敵が怯んだ隙を突き、瑞樹が釘の生えたバールを直撃させた。さすがに、これには耐えられなかったのか、燃える巨腕は音を立てて崩れ落ち、そのまま動きを停止した。
 これで、残すは後一体。しかし、戦いは最後まで分からない。味方を失い、もはや後がなくなった燃える巨腕は、今まで相手をすることのなかったジョルディに狙いを定め、炎の指先で攻撃してきたのだ。
「……ッ!? やってくれたな……」
 幸い、兜が吹き飛んだだけで済んだが、もう少し反応が遅れたら危なかった。それこそ、炎の剣と化した指先で、そのまま首を刎ね飛ばさされていたかもしれない。
「私が押さえる! その間に、やつを……!」
 目には目を、歯には歯を、そして炎には炎を。ティーシャの燃え盛る蹴りが炸裂し、巨腕の身体が大地へと沈む。そこを逃さず、ジョルディは手にした剣と斧を業火で包むと、空中へ逃げようとした敵へ肉薄し。
「HADES機関フルドライブ! 戦闘プログラム『S・A・I・L』起動!」
 懐に回り込み、自らの仇敵が用いていた剣を、そして技を振るう。守るためでなく、倒すために。元よりこれは、そういう技なのだから。
「受けよ無双の必殺剣! ライジィング……サンダァァァボルトォォォッ!」
 高々と打ち上げられるような形で斬り上げられ、巨腕の装甲に亀裂が入る。未だ敵の生死は不明だったが、しかしジョルディは踵を返すと、静かに武器を納めて呟いた。
「……爆!」
 瞬間、ジョルディの背後で起こる大爆発。工場を襲った4つの腕は消滅し、そこには代わりに4つの宝玉が、輝きを湛えながら転がっていた。

●宝玉回収
 ダモクレスの襲撃から、見事に工場を守り切ったケルベロス達。今、そんな彼らの手の中には、4つのコギトエルゴスムが輝いていた。
(「敵は異種族の力を使ってでも進化する必要に迫られている。ならば、私が姉さん達と決着をつける日も、そう遠くないかもしれんな」)
 ダモクレス達も、徐々に後がなくなって来ている。そう感じ、ティーシャは自分自身にとっての決戦の時もまた、近づいているのではないかと思っていた。
「それにしても……敵の姿が少しばかり機械離れしていたのも、このコギトエルゴスムのせいなのかな? 実に興味深い話だよ」
 その一方、敵の残骸と入手した宝玉を見比べながら、瑞樹もまた何かを考えているようだ。もっとも、この場で調べられることは限られているので、後はコギトエルゴスムを持ち帰ってから考えるしかなさそうだが。
「さあ、一段落したら、工場のヒールを済ませてしまおう。不可抗力とはいえ、随分と壊してしまったからね」
「ええ、そうね。でも……」
 カトレアの言葉に、リナがティユの方へと目をやった。敵の攻撃の大半を引き受けていた彼女は、果たして本当に大丈夫なのだろうか。思わず、そんな心配が頭を過ったが、見ればペルルも既にその姿を復活させていた。
 この様子なら、彼女も心配は要らないだろう。破壊された施設に簡単なヒールを施して、ケルベロス達は改めて、今回の戦いで得た宝玉を手に取った。
「これは、なんて種族のコギトエルゴスム?」
「さあ、そこまでは……。ですが、以前のお仕事で出会った妖精族は、好意的な印象を受けました」
 リリエッタの問いに答えるルーシィド。願わくは、今回利用されたコギトエルゴスムも、悪意ある敵ではないかもしれないと考えたい。
「グランドロンの宝、か……。如何なる力を秘めるのか……」
 宝玉の輝きを見つめながら、は誰に言うともなしに呟くジョルディ。
 その力は、人を救う新たな希望となるのか、それとも人類に破滅をもたらす悪魔となるのか。
 その、どちらかは、今は誰にも分からない。だが、それでも相手が心ある存在であれば、理解し合えると思いたい。
「仲間になってくれると良いな……」
 シャドウエルフやヴァルキュリアのように、この地球で暮らす、新たな友として。いつか、その日が来ることを夢に見つつ、ケルベロス達は守り抜いた工場を後にした。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年3月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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