氷炎の腕

作者:寅杜柳

●機械仕掛けの拠点にて
 巨大な手の形をしたダモクレスが複数、蒼髪の女と向かい合っている。
 巨大な手は『月輪』と『日輪』、先日のリザレクト・ジェネシスで撤退したのと同型の機体達。
「ケルベロスの戦闘力は、急激に進化しています。私達ダモクレスも進化しなければ、いずれ滅び去る事でしょう」
 対する女――ジュモー・エレクトリシアンは眼前のダモクレス達に無感情に告げ、宝石を取り出す。
「多くの犠牲を払い手に入れた、宝瓶宮グランドロンの宝……私たちの進化の為に有効に活用させてもらいましょう」

 東大阪の小規模な機械工場。
 普段なら工作機械の駆動音が響くこの工場の中、ダモクレスの襲撃に逃げ惑う工員の悲鳴が響いていた。
 一人の工員が資材搬入の為のシャッターを抜け、外へと逃れようとする。けれど、その背後から巨大な手が飛び掛り、握り潰した。
 形状は本来のものから生物的になり、くすんだ色合いとなった量産型の日輪と月輪の群れは、機械工場を鮮血と絶望に満たしその資材を略奪していった。

「『リザレクト・ジェネシス』後に撤退したダモクレス、『日輪』と『月輪』が工場を襲撃する未来が見えたんだ」
 集まったケルベロス達を前に、雨河・知香(白熊ヘリオライダー・en0259)は彼女が見た予知を告げる。
「奴らの狙いは工場の資材。それを根こそぎ奪うのと合わせて邪魔な工場の従業員を虐殺しようとしている」
 けれど先に見えたのが幸い、従業員の避難は襲撃前に何とかできそうだと知香は続ける。
 だが、
「ダモクレスが資材を狙いに来る事自体には変わりはない。だからアンタ達には現地に向かって、襲撃に来るダモクレス達を撃破して来て欲しいんだ」
 そう言うと知香は自身が見た予知について説明を開始する。
「襲撃される工場はそこまで大きくはないけれど、戦闘するには問題ない位の広さはある。中には移動できなかった大型の機械類もあるけれど、そっちは戦闘後にヒールしてくれれば大丈夫だ」
 そして肝心の敵戦力についてだけど、と知香は資料を広げ日輪と月輪の描かれた図を指し示す。
「工場を襲撃する日輪と月輪は二体ずつ、合計四体だ。かつて戦った頃に比べると全体的に褐色にくすんでいて……何というか、形が生物っぽい? 元々に比べると機械的な感じが減っている印象があるね」
 だからといって戦闘能力が極端に違うとか、そういうのは無いようなんだけれどもと知香は続ける。
「攻撃についても電気……いや、雷って言った方が正しいかな。それを帯びるようになっている位で、基本的に大きな違いはない。日輪は炎を主体とした攻撃でガンガン攻め、月輪が日輪を守りつつ氷でサポートする戦法だ。その上で連携をとって攻撃してくるから量産型とはいえ侮れない相手だから注意して欲しい」
 説明を終えた知香は資料を閉じ、思案して付け加える。
「多分、此間の戦いでダモクレスもかなり追い込まれているんだろう。とは言え、挽回狙いの一手をやらせるわけにもいかない」
 頼んだよ、と信頼に満ちた言葉で締めくくり、知香はケルベロス達を送り出したのだった。


参加者
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
レリエル・ヒューゲット(小さな星・e08713)
那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)
柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)
アルベルト・ディートリヒ(昼行灯と呼ばれて・e65950)

■リプレイ

●静かに待つ
 既に避難は完了し、静まり返った工場内にケルベロス達の足音が響く。
「工場資材を奪い、さらには人々を苦しめるだなんて……そんな悪行許しません!」
 ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815) は灼熱の竜棘鎚をその手に握りしめ、ダモクレスに対し闘志を燃やし、
「ダモクレスの戦力増強を阻止するぞー! おー!」
 病院着にも見える服の少女、実際は立派な成人男性である平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)が明るく応える。
「日輪だか競輪だか知らんが、人様をパーツ扱いとか、いい根性してるな奴等」
 人でなく妖精ではあるけれど、他者を道具のように扱うダモクレスの所業をアルベルト・ディートリヒ(昼行灯と呼ばれて・e65950)が切って捨てる。
(「これがホントの『奥の手』なのかな」)
 同型を、それも強力な日輪や月輪のような個体を量産できるダモクレスの特性は那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)にとっても厄介に思われる。
 それにコギトエルゴスムも、と思考を巡らせかけた時。
 シャドウエルフの耳が工場外よりの機械駆動音を捉え、直後破砕音。現れたのは巨人サイズの手を模したダモクレスが計四体。以前の戦いから装いを生物的なものへと一部変化したそれらの姿を見たレリエル・ヒューゲット(小さな星・e08713)は、妖精弓をぎゅっと握る。
 強さは戦争の時程ではないと理解しつつも、襲来してくる数は多い。さらには妖精のコギトエルゴスムによる変化まであるのだから油断は禁物だ。
 傍らの白三毛の翼猫プチも毛を逆立て全力で警戒している。
(「こいつらが日輪と月輪か」)
 いつかは戦いたいと思っていた相手、こんなふうに相対するとなれば戦好きの柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)には願ってもない状況だ。
 覇気に満ちた武者といった主とは対照的に、陣羽織のふくふくとした茶虎の翼猫の虎も襲撃に反応し眠たげだった表情を引き締めていた。
「よう、機械相手に名乗って意味があるかはわからんが、俺はオウガ、柴田鬼太郎よ」
 赤漆の鞘から太刀を抜き、左腕に鬼金を変形させて籠手として装着した鬼太郎が自信に満ちたよく通る声で名乗りを上げ、
「かかってこいポンコツ共。強欲なお前達には資材も何も渡さん」
 さらにアルベルトが挑発。当然、強敵だとはわかっているけれども敢えて眼前の敵達をそう呼ぶ。それに反応したか、或いは目の前の存在を敵と認識したか、ダモクレスはケルベロス達へとその全身を向け各々氷と炎を纏う。
「作業員さん達には手出しさせないぞ!」
 返り討ちに仕留めてやろう、尻尾を逆立て威嚇の声を上げながら、竜棘鎚を深くに構えたミリムも駆け出す。愛用の剣はこの場に無いが、無いなら無いでやるべき事を為さなければならないのだから。
「資材も戦力も落ちてなりふり構わない相手みたいだし、油断せず確実に仕留めないとね」
 爪型のエクトプラズムを展開した縛霊手を構えた摩琴が駆けだし、戦闘は始まった。

●月は静かに
「機械野郎に御託はいらねえ、期待してねえ、意味もねえ。――だからよ、かかってきな!」
 鬼武者が構え真っ先に飛び掛かって来た月輪の指を狙い刃を振るう。鋭い金属音が響くが、装甲の一部を削るに留まる。
 他の機体が殺到しようとするがそこに和と摩琴がガトリングの弾丸と礫をばら撒きその出鼻を挫く。
 知り合いの多いこの戦場、支援は仲間が引き受けてくれるなら為すべき事は攻撃。心に宿る騎兵の志を馬として召喚し、それに騎乗したミリムが雷を纏いダモクレス達に突撃し、纏めて薙ぎ払おうとしたが、月輪が庇いに入った。
 そして月輪に連携するように日輪の二体が炎を掌中央から同時に放ち、近接していたケルベロス達を一息に包み込んだ。
 炎が勢いを弱めれば、苦い顔をしたアルベルトの姿。着流しの袖から鎖をじゃらりと伸ばし床に陣を描く彼の狙いはまずは守りを固める事。シンプルに火力で押してくる相手にはそれが先決だ。
「~~♪」
 それに合わせ、レリエルが希望の為に走り続ける者の歌を歌い上げると、炎による傷のほぼ全てを癒やされ、その調べに重ねるようにプチと虎が羽ばたいて清浄なる風を送り、蝕む異常への耐性を与える。
 一方で、月輪二体も周囲に氷の壁を展開し、破損した装甲を補っていた。しかしその装甲を和の後背に出現した黒い太陽が絶望の黒光を照射、氷壁越しに機械腕を焼き動きを鈍らせ、そこに連携した摩琴の巨大な霊弾が続く。日輪は直撃こそ避けたが装甲を削られ、足を鈍らされた月輪は真正面からその直撃を受ける形となる。
「行くよ!」
 そしてミリムがハンマーを加速させ月輪に詰め寄るが、指全体に炎を纏った日輪が横から彼女を貫かんと加速。
「おっとそうはさせねえぞ」
 けれどそれは鬼太郎が割り込み防ぐ。その間にミリムは月輪へとハンマーの強烈な一撃を叩きつけ弾き飛ばした。
 そこに月輪がお返しに氷河の如き氷を攻撃に転じ前衛のケルベロス達へと放つ。
 それに対して鬼太郎がタビでステップを踏み、花弁のオーラを鬼太郎が降らせ周囲の仲間を治療、それを確認したアルベルトは後方に吸血鬼殺しの銘を持つ鎖で陣を敷き、守りを強固なものとなす。
(「分かりやすい所にはついてない、かな?」)
 緑瞳を凝らし、交錯の間にダモクレスのどこにコギトエルゴスムが埋め込まれているのか探っていた摩琴だが、これといったものは見当たらなかった。氷や炎を纏い、造形的にも死角が多いから見え辛いというのもあったかもしれない。
(「はっきり見えないけど砕かないようにだけ気を付けて……」)
 鬼太郎の治療の為、破魔の力を宿す矢を番えるレリエルは思う。コギトエルゴスムを取り込まれたままの状態が続けばどうなるかは分からない。或いは、完全に一体化してしまう可能性だってあるかもしれない。
 けれどまずは倒す事、レリエルはそう考え、矢を放った。

 戦いは真正面からの潰しあいという様相を呈していた。
 ダモクレスの炎と氷が前衛のケルベロス達を傷つける。炎と氷、いずれも直接ダメージを与えるもので、更に日輪の纏う雷と炎は攻撃役としての性能をより強化していた。
「纏めて吹き飛ばすぜ!」
 仲間を庇い、負傷が集中した虎に向けて鬼太郎が愛剣の桜牙を振るい負傷を切り捨て、虎と後方のプチがほぼ同時に羽ばたいて清浄なる風を周囲に送り出す。その姿は戦闘前ののんびりした様子とは打って変わり、凛々しさすら感じられる。
 けれども、その清らかな風をぶち抜くように日輪が突撃。伸ばした炎の指の一撃にミリムが吹き飛ばされるが、勢いを殺したのと同時にレリエルの放った祝福の矢が命中、その傷を癒やした。
「量産型って言ってもやっぱり強いね。でも負けないからね!」
 そう言い切った摩琴の制圧射撃、それに合わせた和の弾丸の嵐がダモクレス達の追撃を阻むようばら撒かれた。そして一瞬前進を止めた所に召喚した馬に騎乗したミリムが突撃、すれ違いざまににゃいぼうでダモクレス達を打ち据える。
 三人は攻撃手、他を任せたなら少しでも早く敵を削る役割に忠実に動いていた。
 その攻撃に怯んだか単なる応答か――月輪二体が氷壁を展開、それと同時に日輪も炎雷の周囲に展開する。
 与えたダメージの多くを一気に回復される。けれど、逆に言えば攻撃の手が緩んだという事でもあり。
「♪ おやすみなさい、良い夢を♪」
 弓を夜空の色合いの竪琴へと持ち替えたレリエルが弦を爪弾くと、穏やかな音色が響く。デウスエクスすら眠りに落とすというその調べに日輪を庇う月輪が戸惑うような挙動を見せ、
「はい没収!」
 連携して飛び込んだアルベルトの仕込み草履の回し蹴りが炸裂、ダモクレス達の体勢を崩す。さらに破魔の力を帯びたミリムが突撃、月輪に残る僅かな加護と日輪の片割れが纏う炎をかき消した。
「霧はキミの栄光を包み込む。過ぎ行く日々が霞みゆく――」
 それと同時に摩琴が口ずさみながら薬品瓶を縛霊手から取り出しグラビティを練り込み、
「その目に写るはイヌサフランの危険な美しき絨毯。……腐食性の霧は機械に良く効くよ、覚悟してね!」
 詠唱を終えた摩琴が薬品瓶を周囲にばら撒く。命中し破裂した瓶から飛散するのは気化した失敗薬品。無機物にすらその過剰な再生力を及ぼすそれは、ダモクレス達の正常な機能を損なった。
「さあ、今だよ!」
 少々遠い目をした摩琴が促すと、応、と返した鬼太郎が月輪を桜牙で斬りつけ、和が半透明の御業から炎弾を放ち月輪に直撃させ、表面を覆う装甲を炎上させた。
 そして御業の炎が消えると、月輪の一方は鈍い音を立て、墜落する。四体同時に回復したと言えど、いずれも少数を回復するには向いていないグラビティ。序盤から月輪に攻撃集中させていたこともあり、修復しきれない損傷が重なっていた為だ。
 そして更にミリムがもう一方の月輪に突撃、竜の力を噴射し加速させたハンマーを最高速度で叩き込んだ。芯を撃ち抜いた手応えと派手な金属の衝突音、結果工場の隅へと吹き飛ばされた月輪はそのまま機能を停止する。
 残るは、日輪が二体。

●日は烈しく
「気をつけて! 大きいのが来るよ!」
 機械腕達の挙動に警戒していた摩琴が警告。僚機が停止しても日輪は動じず、その警告と同時に二体で炎の氾濫を引き起こした。摩琴とミリムへと向けられた火炎の嵐を、アルベルトと鬼太郎が目配せして分担して庇う。戦場を共にした事のある二人は慣れたもの、きっちり受けきり即座に鎖の陣と花弁のオーラにより傷を癒やした。
 更にプチと虎もその攻撃に負けぬよう羽ばたく。序盤こそ増殖する火炎に押されかけていたが、猫達が癒しに専念して重ねられた耐性は、凶悪な火炎による延焼を抑え込んでいた。回復量自体は少々不足しているが、そこに白三毛の翼猫の主の歌い奏でる希望の歌が補う。
(「今回収するのは難しいかなー」)
 月輪の残骸に一瞬目を遣りその中にあるだろうコギトエルゴスムを拾い上げるか考えた和とミリムだが、日輪の攻撃を掻い潜って回収するのは困難だと思い直し武器を構え直す。
 日輪達は範囲攻撃で多少は削れていたが月輪の庇いと修復もあって損傷は殆どなかった。けれど呪縛を解除する手段を持たないが故に、序盤に重ねられていた重圧や捕縛は残り続けていた。その上庇う月輪がいなくなれば加速度的に呪縛、そして傷は増えていく。
 数分後、回復を捨てた日輪の猛攻に関わらずケルベロス達は全員立っていた。一方で、日輪は護り手を失った影響で装甲のあちこちに損傷が見られる状態。
 レリエルのブラックスライムの刺し貫く一撃が損傷の大きい日輪を狙う。辛うじて残っていた氷の護りに一部阻まれたが、その動きを鈍らせる事に成功。さらに連携した鬼太郎の裂帛の気合を込めた拳にその守りすらかき消される。
 勢いに押され一瞬退こうとしたその間隙、
「ダモクレスめ! 好きにはさせないぞー!」
 鬼太郎から見て日輪の裏側に回り込んでいた和がてややーという子供っぽい掛け声とはかけ離れた技量より強烈な一撃を放ち、さらにミリムも騎乗の機動力を活かし一撃を加えもう一方の日輪へと躍りかかる。
 合間を縫って後ろへと清浄なる風を送っていた虎がここぞと日輪にその爪を突き立て鋭く引っ掻き、合わせて空の霊力を纏ったアルベルトの幻想結晶刃が続き、呪縛を重ねさせた。そして動きを鈍らせた日輪の影に、オーロラピンクの髪のエルフが素早く潜り込み、花食む御霊の社を振るいエクトプラズムの鋭い爪撃を放つ。深々と刻まれた爪痕は内部のコードを斬り裂いていて、程なくその日輪は静かになった。
「残りはあと一機!」
 すぐさまもう一方に視線を向ける摩琴だが、その視線の先では炎の腕にミリムが掴まれもがいていた。もがく彼女を解放しようとレリエルが星形のオーラを蹴り込み、更に鬼太郎の桜牙が巨大な指の一本を狙い、振るい、継ぎ目より内部構造の一部を斬り裂いた。
「そこを動くなよ」
 呼吸を合わせ、仕込み草履で大きく踏み込み飛び込んだアルベルトが冷徹にそう告げ、透き通るような結晶の刀身の斬霊刀を鬼太郎の狙った位置に合わせ真っ直ぐ正確に差し込んだ。急所を正確に狙った鋭い刺突はさしたる抵抗なく貫通し、そのまま横へと振り抜きミリムを拘束する指を一つ切り落とした。
 その攻撃で拘束が緩んだか、ミリムの腕が自由になる。
「ケジメだよ!」
 ハンマー後部より竜の力が噴出、その反作用で親指部分へと強烈な一撃を叩き込んだ。
 その衝撃にミリムの拘束が解ける。ハンマーを受けた親指は部品が零れ落ちるほどに砕かれていた。そして息つく間もなく摩琴が落ちた部品ごと捕食形態とした黒い水で飲み込む。すぐ強引に黒水の囲いを振り払うが、既に満身創痍だ。
「うにゅー、しつこーい! さっさといなくなれー!」
 和の声と同時、ふらふらになった日輪の上方に一冊の本が出現。和の全知識を以て錬成されたそれは雷の速度で墜落、ダモクレスの装甲を突き破り風穴を開けた。
 けれどまだ、日輪は動く。最後の足掻きか、周囲に炎の嵐を巻き起こそうとする。
 その炎が解き放たれる寸前、飛び込んだ鬼太郎の左の鬼の拳が突き刺さる。一瞬痙攣するような挙動をした後、重い音を立て日輪は床に落ち機能を停止した。

●残ったものは
「やった! ヴィークトリー!」
 ぴょんぴょんと飛び跳ねながらVサインを決める和。
「お疲れさん」
 一戦を終え鬼太郎は一息つく。
 派手にダモクレスが暴れたため工場の中は少々荒れているが、それもヒールすれば問題ないだろう。
「明日からまたいつもの生活が出来る様にお手伝いしなきゃね♪」
「そこまでがお仕事だもんねー。さっき転がしたコギト玉はどこかなー?っと」
 摩琴と和、そしてミリムが瓦礫や破片を掃除をし、レリエルの奏でる音楽が工場設備をヒールし、元あった状態へと修復していく。
「こちらは修復終わったが……」
 オーラや鎖で設備をヒールしたアルベルトが周囲を見やれば、ダモクレスの残骸からレリエル達がコギトエルゴスムを拾い上げ安堵の表情を浮かべていた。
「ボクは機械を変化させるその性質が気になるよ。持ち帰って調べないと」
 摩琴も別の残骸から一つの宝石を拾い上げ呟く。
「お友達になってくれると良いよねー」
 和もそれを眺め願いを口にした。
「それじゃボクは作業員さんに伝えに行くね」
 全体の修復が終わったことを確認したミリムはそう言うと外へと駆け出した。
 そして、一仕事終えて。
 くぁ、と欠伸をしてころころ丸まった虎と感化されたかその近くで伸びをしてまったりしているプチ。そんな様子を、とてもやさしい目で猫好きのアルベルトは眺めていた。

 程なく、全てのコギトエルゴスムを残骸から回収したケルベロス達は、工員が戻ってきたことを確認し、帰路へとついた。

作者:寅杜柳 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年4月6日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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