ザ・ファスト・アンド・フュリアス

作者:ハル


「ぜってぇイカサマだ! 積み込んでやがった、間違いねぇ!!」
 ある日の夜道、チーディ・ロックビル(天上天下唯我独走・e01385)は怒りに全身をワナワナと震わせていた。
「今時、全自動卓じゃねぇ時点で怪しむべきだった。そうだ、そうに決まってる、俺様が負けるはずねぇんだからな! よっし、そうと分かれば今すぐあの雀荘に乗り込んで――あん?」
 麻雀で手痛い敗北でも喫したのだろう。無から有を生むが如く敗因を捻りだし、勇んで踵を返そうとして……チーディは腐臭を嗅いだ。
「チーディ・ロックビルだナ」
「……テメェは」
「我が名は獲式自己強化型強襲体ワールド・イーター。貴様が自称する世界最速の称号を奪いに参上しタ」
 それは、様々な肉の集合体。種族も所属も関係なく、力ある者の一部を節操なしに複合した先に至る歪な肉塊。
 螺旋忍軍の頭部から覗く紅の眼光。射貫かれた者は、それ以上の言葉など必要なく理解する。向けられたそれが、殺意であると。
「成程な!」
 チーディはワールド・イーターの右足――チーターのそれを一瞥しながら、含み嗤う。
「要はテメェ、俺のファンって訳だな! そうだよなぁ、世界最速の俺様に憧れちまうのは、テメェみてぇなガラクタからすりゃ、自然の摂理みたいなもんだよなぁ! だがな――」
 チーディが掻き消える。揺蕩う地獄の炎の軌跡を辿ると、瞬きの間にワールド・イーターの背後に回った姿が確認できた。
「野郎のファンはノーセンキューなんだよ!! 生まれ変わる手伝いしてやるから、巨乳にでもなって出直してきやがれ!! あと、自称じゃねぇ!!!!」
 激昂するテーディと、ワールド・イーターが激突した。


「急がないと不味いです! チーディ・ロックビルさんが、ダモクレス『獲式自己強化型強襲体ワールド・イーター』に襲撃を受ける予知を受け取りました!」
 緊急招集を受けて集まったケルベロス達。
 山栄・桔梗(シャドウエルフのヘリオライダー・en0233)にその事情は知らされた彼らは一瞬驚き――あいつなら、そういう事もあるだろう。同時に、そう納得もしていた。
「連絡を取る事もできていませんし、急を要する事態です。それに……」
 桔梗は、チーディの人となりを思い出す。助けを待つ、そういった思考とは対極に位置する人物だ。桔梗は不安を色濃くしながら、
「ともかく、一刻も早く救援に向かいましょう!」
 額に冷や汗を浮かばせ、敵の情報をケルベロスに授ける。

「改めて確認しておきます。ワールド・イーターは、ダモクレスです。敵味方問わず、優れた肉体の一部を鹵獲し自身に取り込む事で強化を図っているようです。そのため、それぞれ特徴の違う肉の集合体のような、歪な見た目をしています」
 右足にはチーターのような特徴が垣間見えるが、チーディとの関係性は現時点において不明だ。
「世界最速であるかはともかく、ロックビルさんが優れたスピードを有しているのは事実です。ワールド・イーターは、その速さの秘密を求め、彼を襲撃したのでしょうか?」
 現場に人影はなく、避難やそれに類する対処の必要はない。
「対象があのロックビルさんなだけに断定はできませんが、なんとか襲撃に間に合いそうです」
 ヘリオンの予想到達時間としては間に合う計算だ。
「遅くとも、皆さんであればロックビルさんとワールド・イーターが相対してから1分以内には到着できるはずです」
 桔梗が一先ずの朗報に、冷や汗を拭う。
 そして桔梗は、急ぎ準備を進めるケルベロス達を見据えると、
「ワールド・イーターは、多種多様な長所を宿す厄介な敵です。容易い任務とはならないこ事が予想されます。どうか、ロックビルさんと一緒に帰ってきてくださいねっ! 皆さんをお待ちしております!」


参加者
リリィエル・クロノワール(夜纏う宝刃・e00028)
御神・白陽(死ヲ語ル月・e00327)
リスティ・アクアボトル(ファニーロジャー・e00938)
チーディ・ロックビル(天上天下唯我独走・e01385)
シェイ・ルゥ(虚空を彷徨う拳・e01447)
ヴィクセン・ニコラウス(狩猟豹の胃を狩る馴鹿・e18482)
エルマー・スカイウォーカー(選ばれし者だったのに・e24506)
植田・碧(紅き髪の戦女神・e27093)

■リプレイ


 獲式自己強化型強襲体ワールド・イーターの背後に回ったチーディ・ロックビル(天上天下唯我独走・e01385)が、釘付きエクスカリバールを叩きつける。
「世界……いや宇宙最速つったら俺の事で、俺っつったら宇宙最速っつーことよ。そしててめぇは俺じゃねぇ!! だからよ、てめぇが俺に勝てる道理は――」
 チーディは確かな手応えを。しかし、彼の本能は警鐘をけたたましく鳴らしていた。流星の如き煌めきが視界に入ると、最速の名に恥じない反応と速度で回避行動をとる。
 しかし!
「ほゥ、今のが貴様の言う宇宙最速とやらカ?」
「うぐぉ!?」
 数瞬間に合わず、チーディは街路樹を薙ぎ倒しながら吹き飛んでいた。
「いってぇぇ!! ば、あっちょっ、こいつ思ったよりつえ……やっべぇぇ!?」
 寄せ集めのガラクタと、ワールド・イーターを舐めていた。
(「よりによって元・俺様の脚で……くそったれが!! そもそも、もう一本の脚はどうしやがった!!??」)
 今更あんな汚い両脚に興味はないが、自分以外が価値がないと断ずるのは許せない。だが、然しものチーディでも、現状がピンチである事は認めざるを得ず。
「宇宙最速、宇宙最高の存在チーディ・ロックビル様がピンチだぞ!! オーイ!!!! 返事しやがれ、俺様の下僕共!!!!」
 チーディは叫んだ。聖人君子でも匙を投げそうな言い様で。

「チーディさんって、何回か依頼を一緒に受けたけれど面白い人だった記憶があるわ。そんな人を助けない訳にはいかないわよね!」
 夜道を駆ける植田・碧(紅き髪の戦女神・e27093)。だが周囲を伺うと、何故か皆一様に首を傾げていた。
「碧ちゃんの言うように、チーディ君はいろいろな意味で面白い男ではあるけどね。だから、助けて『あげる』のは吝かじゃないけど」
 若干面食らう碧に、リリィエル・クロノワール(夜纏う宝刃・e00028)が苦笑を見せる。
「いつもはともかく、今日は完全なとばっちりみたいだから。私自身、『アイツの自業自得には手を貸さない』が信条だけど、今回ばかりは一肌脱ぐよ。だから君達も――って、その生暖かい視線をやめろ」
「いやぁ、あの猫君がついに所帯を持つんだと、感慨深くなってね。ヴィクセンさん、キミも随分と様になっている」
「まだ、だよ。気が早い」
「まだ、ね」
 ヴィクセン・ニコラウス(狩猟豹の胃を狩る馴鹿・e18482)も今回ばかりは擁護に回るが、シェイ・ルゥ(虚空を彷徨う拳・e01447)にその手の話題を出されれば、降参するしかない。
「自分の身まで捨てて……チーディを襲った奴は、相当な悪趣味みたいだねぇ。奪うのが生業の身としちゃあ、気に入らない相手だよ。とっとと仕事を終わらせて、迎え酒と洒落込みたいもんさ」
 リスティ・アクアボトル(ファニーロジャー・e00938)の赤いツインテールが、夜闇を跳ねる。
「オレ様を差し置いて最速だのなんだのと。脚の速さなら確かにチーディのあんちゃんには負けるかもしれねーが、反射神経と空でならオレ様だって負ける気はねえぞ!」
「俺も一応、最速を自称する彼には多少興味があるかな」
「おっ、白陽のあんちゃんもその手の事に自信のある口か?」
「自信がないとは言わないけど、勝負付けに興味はないよ。ただ、どの程度のものか見ておきたくてね」
 飛行するエルマー・スカイウォーカー(選ばれし者だったのに・e24506)と、周辺のオブジェクトを足場に視線を周囲に這わせる御神・白陽(死ヲ語ル月・e00327)が言葉を交わす。
 二人が先行してチーディを捜索していると。
「――共!!!! いや、マジで! マジで洒落になんねぇから!! 助けて下さりやがれ、お願いしてやるから!!!!!!」
 聞き慣れたその声は、耳に届く。
「今行くぜ、チーディのあんちゃん!」
 奇跡的に前半部分を聞き逃したエルマー達は、ワールド・イーターの拳が今にも振り下ろされようとしているチーディの元へ。
「横から現れて勝手にイチャモン付けに来るんじゃねえ、蹴り飛ばすぞツギハギ星人」
 エルマーはワールド・イーターに向け一喝すると、渾身の飛び蹴りを喰らわしてやるべく、猛烈な勢いで滑空していった。


 ――やべぇ!?
 迫る拳を前に、しかしチーディは目は閉じない。彼の心の奥で燃えたぎる激昂は、ここで死ぬなどと、微塵も感じてはいないから。
「てめぇら!!」
 ゆえに彼は、その一部始終を目撃した。

「死を撒くモノは冥府にて閻魔が待つ、潔く逝って裁かれろ」
 ワールド・イーターの影から湧き出るように現れた白陽が、夜闇に淡色と影色の刃文を煌めかせる。背後から襲い掛かった白陽の凶刃は、低く鋭く。吸い込まれるかのようにワールド・イーターに迫るが。
「ふむ」
 火花を散らして、頑強な装甲に刃は弾かれた。白陽が、煌青色の瞳を好奇に細める。
 スピード、パワー、防御力。隙のなさは、全ての要素において優れた存在を自身に組み込んできたワールド・イーターの強み。
 エルマーの飛び蹴りも、ワールド・イーターのバランスを崩すだけに止まった。
 しかし、一連の強襲によって意識が僅か逸れ、ディフェンダー陣が間に合う。
「悪いけど、そいつは売約済みでね。……ってわけで、ご退場願おうか」
 左手の薬指に大粒のダイヤを輝かせ、チーディを守るように待ち塞がったヴィクセンが、ワールド・イーターを睨み付ける。
「戯言ヲ」
 ――と、行き場を失っていた拳を代わりにシェイが引き受けた。
「無事で安心したよ。これ以上、猫くんから何か奪ったら素寒貧になっちゃうからね」
 しかしシェイは飄々と軽口を交えながらその拳を見切り、いなし、冷気に満ちる霹靂龍牙棒でもってカウンター気味に打ち払う。
「なんとか間に合ったみたいね!」
 一息に戦乙女の歌を歌い上げた碧は、肉体が活性化され、負傷状況が幾分か和らいだチーディの状態を確認して、胸を撫で下ろす。
「助けに来てあげたんだから、感謝してよね」
「アンタがそう簡単にやられるタマじゃないとは思っていたけど、なるほどどうして、随分と可愛らしい叫びだったじゃないかい?」
 万全を期して、リリィエルが桃色の霧を放出した。
 リスティがチーディを一瞥してニヤニヤと笑いながら、守護星座を起動させて守りを固める。
「バッカ、演出だっつーの、演出! てめぇらの見せ場を考えてやった俺様の温情だからな!! てめぇらが来なくても、俺一人で余裕で勝ててたからな!!!!??」
 一息で言い切ったチーディは、次いで油断なくワールド・イーターを見据えるヴィクセンの頭に手をやると、
「お前買ったのは俺様の方なんだよお前!!」
「…………おい」
 遠慮も加減もなく、銀の髪をグチャグチャに掻き乱した。
「だがよくやった!!」
「……ったく」
 そしてチーディは、悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
 ヴィクセンは背を向けたまま、呆れたように嘆息する。互いに浮かべている表情なんて、見なくても分かる。
 だからヴィクセンは、意識をワールド・イーターに改めて向け、言った。
「地獄の脚まで含めたコイツに私は惚れたんでね。そういうわけで、礼を言っておこう。……謝礼は、鉛玉で支払うぜ」
 ヒューと、どこからともなく口笛が吹かれた。ヴィクセンは祝福と好奇混じりのそれを振り切って、目にも留まらぬ弾丸を放つ。
 ワールド・イーターは、その弾丸を両腕を盾に受け止めた。
「それにしても――」
 リリィエルはワールド・イーターを眺め、そして肩を竦める。
(「自分にないから欲しい、なんて駄々をこねて……子供が好きなものだけを取り分けたバイキング皿のようね」)
「貴様ラの力を見せてみロ」
「それはこちらの台詞よ。そんなので、『破天荒にもほどがある彼』の速さをモノにできるのかしら? 私の流麗さを理解できるかしら? お手並み拝見ね」
 分身の幻影を纏うワールド・イーターと、夜闇を魅了するような、無数の霊体を帯びた喰霊刀を振るうリリィエルが交錯した。


「……飛行カとその瞳。悪くはなイ」
「なっ!?」
 エルマーの背に、ゾクリと怖気。拳に宿る破壊の力は、その拳が何倍も巨大であるかのように彼に錯覚をさせる。
「遍く夜を照らすが如く、全ての汐を起こすが如く―――この眼は何も、逃しはしない」
 すかさず、エルマーは銀の瞳を見開いた。ワールド・イーターが死に至る道を察知すべく、洞察し、隙を炙り出す。その過程で回避が不能だと悟ったエルマーは、なおも攻める決断を下す。腹部に拳を捻じ込まれ、衝撃で身体をくの字に曲げながらも、蹴りでカウンターを叩き込んだ。
「肩を借りるよ、自称最速くん。それとも、俺も猫くんと飛ばせてもらおうかな。いい愛称だ」
「て、てめぇ!! この俺様を足蹴に!!?」
 追撃させまいと、白陽がチーディの肩を蹴り、遍く境界線を踏み越えようと瞬時に加速。
「無を穿てるのなら、月さえも墜とせよう――」
 己と太刀さえも“虚無”と化して、すべてを無に帰すために薙がれた一閃が、幻影諸共エルマーの攻撃で脆くなっていた片腕を斬り飛ばす。
 が、ワールド・イーターにとっての肉体とは、いくらでも換装のきく代物であるゆえに、動揺も苦痛も見せず。
「ありがと……っス」
「気にしないで、スカイウォーカーさん。――次、来るわ!」
 碧が、エルマーに気力を溜める。
「南海の朱雀よ、焔を纏い敵を穿て」
 朱雀の加護を帯びた焔を纏うシェイが、装甲の一部を灰燼に帰した。
 チーディが、電光石火の蹴りを放つ。
「ちょいと借りるよ!」
 リスティが、愛用のアンティーク銃――フリントロック・リボルバーから、『<』のルーンが刻まれた魔弾を放ち、ワールド・イーターを炎で包む。
 炎を纏ったヴィクセンの激しい蹴りが、燻ぶった炎を拡大させた。
「役に立つようなら、他の者も我が一部として組み込んでやろウ」
「私もスノーも、謹んでご遠慮願うわ! それに、貴方に私達のような翼が似合うとでも?」
 ワールド・イーターの胸部から拡散される雷の光線が、前衛に降り注ぐ。
 対する碧とスノーは、失われた面影を悼む歌と清浄の翼で邪気を払い、代わりに魂を纏わせる事で威力の軽減を試みた。
「チーディ! 君は私の事は気にせず、気兼ねなくぶっ飛ばしてきな!」
 それでもなお、チーディと白陽への雷撃光線を請け負ったヴィクセンとリリィエルが激しく帯電している。
 限界を超えて一度膝をつくも、ヴィクセンが立ち上がる。
「ツギハギだらけでとても見れたものじゃないね。植田さんが言いたくなる気持ちも分かるよ。――キミ、鏡とか見た事ある?  ってね。どうせ奪うならいい顔を奪ってみたら、ちょっとはマシになるんじゃない?」
「そのようなもノ、我には無用なリ!」
「憐れな存在だね。それにキミは確かに速い。……でも、チーディさんよりは遅い。これなら十分追いつけるよ」
 ワールド・イーターの見せるスピードは、シェイにとっては見慣れた光景。攻撃を捌きながら、ヴィクセンにオーラを溜める。
「リスティ、どうもヴィクセンちゃん達はラブラブみたいよ?」
「そうかい。ならリエル、アタシらも負けてないって所を見せてやらないとね!」
 コンビネーションを発揮したリスティが、優先的に花びらのオーラを降らせた。
 動ける態勢となったリリィエルが、「――いただきます♪」妖艶に唇をペロリと舐め上げる。尻尾をワールド・イーターに絡みつかせ、強制的に快楽エネルギーを際限なく吸い上げた。
 ダラリと両手を下ろした白陽が予備動作なしに踏み込むと、七ツ影が空の霊力を帯び、ワールド・イーターに刻まれた傷……凍傷を執拗に狙って斬りつける。
 続け様に【破剣】を帯びたチーディの弧を描く斬撃が、仮面に覆われた頭部を裂き、分身を消滅させる。
「黒髪の男モなかなか優れた機動力を有しているよう――」
「だから、オレを差し置いて偉そうに品定めしてんじゃねぇぞ!」
 ワールド・イーターが言い切るよりも先に、光の粒子と化したエルマーが卓越した身体能力を武器に上空から突撃する。
 と、グラリ……ワールド・イーターの巨体が傾いた。
「ナ……!」
 予想をしていなかったのか、驚愕の声を上げるワールド・イーター。耐性を小まめに摘み取り、その上で蓄積、増殖させた炎が効いてきたのだ。
 ――が。
「……っぁ……後は……任せた、よ。……きっちり、決めてきな……ッ、宇宙最速!」
 一時行動不能となっていたヴィクセンが、蹴りを喰らって倒れこむ。
 碧とエルマーが彼女を下がらせた時、チーディは既にトップスピードに入っていた。
「見えねぇだろ? てめぇは俺の歩みにすら追いつけねぇってこった!!」
 彼はヴィクセンを顧みない。チーディ・ロックビルの将来の嫁とは、チーディを見失う程度の敵にどうこうされる女ではないから。
「チーディ・ロックビル。ぶっちぎってやんな!」
 リスティの声すらも、チーディに追い付けない。
「盗れねーもん盗りに来たバカがッ! てめぇの身を張ったギャグで思い出しちまっただろうが、脚を盗りやがった時、めちゃくちゃ痛かった事をよぉ!!!!」
 チーディは衝撃となって駆け抜ける。駆け抜けた道程に残るのは、微かな地獄の炎の残滓と、ワールド・イーターの残骸のみであった。


「さて、こんなものかな?」
「ええ、お疲れ様」
「にしても、チーディのあんちゃんが無事で良かったぜ。……むしろ、元気すぎるぐらいか?」
 後始末を終えた白陽、碧、エルマー。
 ゲーッハッハッハッハッ!! エルマーが下品な笑いに釣られてそちらを伺うと、「今日は焼き肉いくぞお前らァ!!」そう手招きするチーディと目が合った。
「猫くんの奢りかい?  いい肉とお酒を出す店を知っているんだよ。お値段も結構するけどね」
 シェイが、さりげなくチーディの奢りであると確約をつける。
「あら、いいの? それじゃ、めいっぱいオゴられちゃう!」
「アタシは酒が飲めればどこでもいいさ」
 リリィエルは高い肉を注文する気満々。リスティも、表情を綻ばせた。
「焼肉はいいけど、君大負けしたところじゃなかった? 私は自分の食べた分以上は出さないぜ?」
 幸運にも重傷を免れたヴィクセンは、チーデイの懐事情をよく知るが故心配するが。
「パチンコでもやって、勝ちゃいいんだよ!」
「あ、賭博だったらいいトコあるわよー、Gimlet っていうんだけど――」
「よっしゃ!! 俺様ならデケェのぶち当てるの間違いなしだからな、有り金全部攫ってやるぜ!!!!」
 リリィエルに背中を押され、チーディが歩き出す。
「――はぁ、アイツってば、ほんと馬鹿」
 ヴィクセンはチーディが坂を転がり落ちる様を幻視し、深く溜め息を吐きつつも。
(「……でも、君がどれほどの馬鹿か、世界で一番知ってるのは私だぜ?」)
 噛み締める様に一度婚約指輪を夜空に翳し見て、彼の背中を追いかけた。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年3月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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