渇望する屍隷少女

作者:雷紋寺音弥

●紅き嘆きの少女
 曇天の空の下、エリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850)は冬場にしては妙に生暖かい風を感じながら、夜の帳が降りた道を歩いていた。
 最近、この周囲で頻発している奇怪な事件。その内容を思い出し、思わず不快感に顔を顰める。事件の犠牲者は、その誰もが女性。全員、腹部を生きたまま食われるという、実に猟奇的な手段で殺害されていた。
 この事件の裏に、デウスエクスがいるのは間違いない。否、そうであって欲しいと、エリオットは思った。少なくとも、こんな恐ろしい行いをする者が、人間の中にいるとは思いたくなかった。
(「おや? あれは……」)
 ふと、道端に目をやると、朽ち果てた家屋の傍で、赤いドレスを着た少女が蹲っているのが目に留まった。
 こんな夜中に、しかも田舎の村に続く道端にいるにしては、随分と不釣り合いな格好だ。しかし、それでも事件のことを考えると、彼女を放置しておくわけにも行かない。
「どうされました、お嬢さん? こんなところで……っ!?」
 だが、そこまで声を掛けた時、ふいに少女がエリオットに掴み掛かってきた。
 咄嗟に振り払おうとしたが、少女の指先はしっかりと彼の腕に食い込んで離さない。およそ、人間のものとは思えない、恐ろしい力だ。辛うじて振り解いたものの、掴まれたところに鈍い痛みを覚えて目をやると、衣服が破れ、出血していた。
「ウ……ウゥゥ……」
 光を失った虚ろな瞳。獣のような唸り声。間違いない。この少女は……。
「屍隷兵、ですか……。なるほど、事件を起こしていたのは、彼女だったようですね」
 傷口を庇いながら武器を抜くエリオットだったが、それにしても、この脅威的な力は何だろうか。不完全な神造デウスエクスであるはずの屍隷兵にしては、恐ろしいほどの殺気と怪力を誇っている。
「まさか、犠牲者のグラビティ・チェインを吸って……いえ、余計な詮索をしている場合ではなさそうですね」
 まずは、この場を切り抜けなければ始まらない。迫り来る紅き衣の少女を前に、エリオットは覚悟を決めて対峙した。

●血の捕食者
「招集に応じてくれ、感謝する。エリオット・アガートラムが、宿敵と遭遇することが予知された。場所は、山陰にある田舎道。その外れに置かれた、既に人の住まうことのなくなった民家の近くだ」
 出現する敵は、屍隷兵が1体のみ。だが、ただの屍隷兵ではないと思った方がいいと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に警告した。
「敵の屍隷兵は、これまでにも何人かの人間を手に掛けているようだ。それによって得たグラビティ・チェインで、並のデウスエクスに匹敵する強さになっている。知性のない相手とはいえ、一人で戦うには荷が重い相手だぜ」
 その姿は、深紅のドレスを纏った少女。しかし、既に元となった人物の意識などはなく、本能的に獲物を襲って喰らい、自らの糧とするだけの存在に成り果てている。
 攻撃手段は、その外見に反して怪力に任せた力技が大半。また、自らの肉体から滴り落ちる粘血をオークのような姿に変えて、襲い掛からせることもあるようだ。どれも、相手の生命力を奪う能力に特化しており、見た目に反してタフである。
「血染めのように赤いドレスを着た屍隷兵……。さしずめ、ネクログラナータとでも呼んだ方がいいのか? 彼女が造られた目的は不明だが、戦いに同情は禁物だぜ」
 これ以上、彼女の背中に望まぬ咎を積ませることのないように、今度こそ安らかな眠りを与えてやった方がいい。既に人でなくなった少女にとっては、それだけが最後の救いとなる。
 そう言って、クロートは改めて、ケルベロス達へ依頼した。


参加者
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
エリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850)
ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)
フレデリ・アルフォンス(ウィッチドクターで甲冑騎士・e69627)
旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・e72630)
フレイア・アダマス(銀髪紅眼の復讐者・e72691)
 

■リプレイ

●飢えたる少女は血を求む
 廃屋の傍で遭遇した、少女の姿の屍隷兵。本能のままに血と肉を求める敵を前に、しかしエリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850)は、問答無用で斬り捨てることができなかった。
(「女性の、それも腹部を狙った犯行……。まさか、彼女の正体は……」)
 一瞬、嫌な想像が頭を過る。女性の屍隷兵といえば、山形県最上郡に出現している、ネクロジグソーの存在はあまりにも有名だ。
 オークの繁殖用の道具として使い潰され、その亡骸を利用して作られた屍隷兵。一連の猟奇殺人事件の手口からして、目の前の屍隷兵もまた、同じ理由で作られた可能性は極めて高い。
 はっきり言って、これ以上になく戦い難い相手だ。しかし、ここで下手に情けをかければ、次に殺されるのは自分である。女性を主に狙っているとはいえ、遭遇してしまった以上、彼女がここで自分を見逃してくれるとは思えない。
「ウゥ……アァァァッ!!」
 案の定、屍隷兵の少女はエリオットを視界に捉えると、そのまま奇声を発して飛び掛かって来た。
「……っ!!」
 咄嗟に避けようとしたが、それよりも敵の瞬発力の方が上だった。肩を掴まれ、強引に振り払おうとしたところで、そのまま衣服諸共に肉を引きちぎられた。
「これは拙い……ですね。想像していた以上の力です……」
 今までに殺して来た犠牲者からグラビティ・チェインを吸収し続けた結果だろう。不完全な神造デウスエクスでしかない存在でありながら、その強さは下手なオークや竜牙兵以上だ。
 溢れ出る鮮血を押さえつつ、エリオットは痛みに耐えながらも距離を取る。
 正直なところ、このまま戦うのは拙い。いかに知性の低い相手とはいえ、力量の差があり過ぎる。
 ここは最悪、片腕を食われてでも強引に突破し、命を長らえさせる方が先決か。思わず、そんな覚悟を決めようとするエリオットだが、果たしてそこまでする必要はなく。
「目標捕捉……動くな!」
 警告と共に、敵の足元に放たれる銃弾。弾の飛んで来た方を振り返れば、そこには銃を構えるリューディガー・ヴァルトラウテ(猛き銀狼・e18197)の姿があった。
「どうやら、なんとか間に合ったようだな」
「大丈夫ですか? ……酷い傷ですね」
 防御用の鎖やドローンを展開させつつ、フレデリ・アルフォンス(ウィッチドクターで甲冑騎士・e69627)とジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)が、エリオットの身を案じて手を差し伸べた。が、エリオットは二人の気持ちだけ受け取ると、その手は取らずに立ち上がった。
「いえ……この程度、彼女の受けた辱めに比べれば、痛みの内にも入りませんよ」
 強がりではなく、それは彼の本心だった。鎖やドローンによって守られたことで、少しばかり傷口が塞がったことも幸いだった。
「この少女が……そう、ですか」
 事情を察したのか、旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・e72630)はそれだけ言って、涙に濡らした瞳のまま砲を構える。同じく、フレイア・アダマス(銀髪紅眼の復讐者・e72691)もまた拳を固め、目の前の少女と改めて対峙した。
「私はあの日、全てを失ったと思っていたが……甘かったな」
 ふと、横に目をやれば、そこに佇むのは相棒のボクスドラゴン、ゴルトザイン。
 全てを奪われたと思われた自分だったが、相棒と呼べる存在までは失っていなかった。それに、なによりも自分の命が残されていたことを感謝せずに、何に感謝するというのだろうか。
「しかし、この少女は純潔も未来も命も奪われて……あまつさえ、亡骸まで血を流すために利用されているのだな……」
 それに比べれば、自分などまだ幸せな方だと、フレイアは自嘲気味に苦笑した。人としての、あらゆる尊厳を奪われた存在。そのような者を前にしては、どれほど多くの大切な者を失ってきた身としても、それらが全て霞んでしか見えなかった。
「さあ、行きましょう、皆さん。もう、ここで終わらせなければなりません」
 相棒のミミック、相箱のザラキを前に出し、イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)が仲間達へと告げる。
 死してなお、その身を利用され続ける哀れな少女。その魂に永遠の安息を与えるため、ケルベロス達の悲しき戦いが始まった。

●渇望する牙
 ドラゴン勢力により使い捨てられたと思しき、少女の肉体を基にした屍隷兵。ネクログラナータの異名を持つ彼女の攻撃は、単調ながらも苛烈だった。
 いかにグラビティ・チェインを得て強化されたとはいえ、それでも相手は不完全な神造デウスエクス。では、何がそこまで厄介なのかといえば、それは彼女が『他社の生命力を奪う』ことに特化していることだった。
「ウ……ウゥゥ……」
 手近な獲物に食らい付こうとしたところを相箱のザラキに阻まれて、ネクログラナータは不快そうな呻き声を上げながら、今しがた牙を突き立てたザラキを放り投げた。
 やはり、生の肉とは違い、サーヴァントでは味気なく感じるのだろうか。もっとも、それでもしっかり体力を吸収してくるため、難を逃れたとはいえ油断はできない。
 敵の能力は攻撃に特化しているため、一度に吸収される体力もまた大きかった。ならば、一転突破の一気呵成で仕留めることが最適に思われたが、しかしケルベロス達が選択したのは、遠距離からの狙撃や攪乱を主体とした持久戦。
「なかなかに、やり難い相手ですね」
「いい加減、寝てくれると助かるんだが……」
 イッパイアッテナとフレイアが左右から同時に蹴りを食らわせ、ザラキが噛み付きで、ゴルトザインが体当たりで追い打ちをかけるも、ネクログラナータは平然とした表情のまま立ち上がってくる。攻撃が効いていないわけではないのだろうが、少しばかり足を止めた程度では、彼女の高い継戦能力を突破するには至らない。
「くっ……ならば、せめて跡形もなく焼き払えば……」
 その痛ましき過去と共に火葬にしてやろうと、竜語を紡ぎ火竜の幻影を呼び出す嘉内だったが、紅蓮の炎に焼かれてもなお、ネクログラナータはしぶとく立ち上がり向かって来る。全身を覆う炎に身を焼かれながらも、その程度の傷は食べれば治ると言わんばかりの迫力で。
「もう少し、急所を狙えるようにしなければ駄目なのか? しかし、このままでは……」
 オウガメタルより発せられる銀色の粒子を展開しながらも、フレデリは迷い始めていた。
 果たして、このまま回避と守りを主体とした戦い方を続けて本当に良いのか。中途半端な攻撃や削りを加えたところで、敵は捕食により生命力を吸収し、瞬く間に傷を回復させてしまう。その結果、無駄に戦いを長引かせ、却って少女を苦しめてしまっているのではないのかと。
 敵は感情を持たない屍隷兵。あれは少女の形をした、しかし少女とは似て異なる何かだ。そう、頭で分かっていても、やはり実際に対峙して戦ってみると、理性だけで割り切れるようなものではない。
「これ以上、命は奪わせませんよ。あなたの罪を、少しでも軽くするためにも……」
 全身に広がる炎を物ともせずに迫るネクログラナータへ、ジュスティシアが中和光線を浴びせて行く。その光に、一瞬だけ相手が怯んだ瞬間を狙い、エリオットは迸る電撃をリューディガーへと飛ばした。
「これを受け取ってください! そして、彼女に永遠の安らぎを……」
「任せろ! これ以上は、好き勝手にさせん!」
 拳銃での牽制は、もう終わりだ。少しでも早く少女の魂を解放してやらんと、リューディガーは一気に相手との距離を詰め、鎧をも砕く痛烈な一撃を敵の腹部に見舞った。
「……っ!?」
 だが、ネクログラナータを吹き飛ばした瞬間、そこに伝わって来たのは奇妙な感触。まるで、水風船でも叩いたかのような、およそ肉のある存在の手応えではない。
「ア……ウゥ……ァァァ……」
 紅いドレスを破られたまま、ネクログラナータが立ち上がる。これだけやられて、まだ立つのか。敵の持つ驚異の耐久力に言葉を失うケルベロス達だったが、果たしてそんな彼らの視線は、破られたドレスの腹部へと釘付けになっていた。

●失ったもの、奪われたもの
 リューディガーの放った渾身の一撃で、衣服を破られた屍隷兵の少女。しかし、その破れ目から覗く腹部を見た瞬間、ケルベロス達は思わず攻撃の手を止めて立ち尽くした。
「そ、そんな……」
「腹が……いや、子を成すための場所が……ない、だと……」
 口元を覆い、込み上げる怒りと嫌悪感を、辛うじて抑え込むジュスティシアとフレイア。
 屍隷兵と化した少女の腹部。そこは大きく抉られており、ぽっかりと黒い穴が開いているだけだった。その中から漂って来るのは、吐き気を催す程に生臭い血の匂い。生前、彼女が受けた仕打ちを考えると、それ以上は直視しようにもできなかった。
「ウ……ゥゥ……アァァァァ……!!」
 咆哮と共に、ネクログラナータが泣いていた。なぜ、自分だけが、このような目に遭わねばならないのか。なぜ、目の前のお前は生きていて、自分は死なねばならなかったのか。言葉には出していなかったが、それでも今のケルベロス達には、屍隷兵の叫びが少女の嘆きと重なって聞こえていた。
「ア……ウゥ……ァアア……」
 赤く染まった鮮血の涙を流しながら、ネクログラナータは腹部の穴からも粘血を流す。それらの血は、やがてひとつに纏まって、醜悪なオークの似姿へと変わって行く。
「……ブジュルァァァッ!!」
 血の触手を滾らせながら、粘血のオークがジュスティシアに狙いを定めて襲い掛かって来た。が、その触手が身体に触れるよりも先に、ジュスティシアは冷静にライフルの照準を合わせ、血の化け物をカウンターの一撃で粉砕してみせた。
「これ以上は、長引かせるわけにも行きません。オークに辱しめられた上に……なんて、惨すぎる」
 平静を装いつつも、しかしライフルを握るジュスティシアの手は震えていた。
 デウスエクスに攫われたことで、少女は全てを奪われた。純潔も、人としての尊厳も、そして死後の安らぎさえも。
 その上で、もう二度と女性としての喜びを得られない身体にされながら、死後も自らの血を素材にオークの姿をした存在を産まされ続けるという苦痛。これが悲劇でなく、何だというのだ。地獄より酷い地獄があるとすれば、正に目の前にいる少女の運命がそれだろう。
「本当ならこれから先、幸せな未来もあっただろうに、オークに陵辱されるだけされた挙句、殺処分だなんて……」
「酷い……酷すぎるよ……。ドラゴンの下っ端どもは、オークといいドラグナーといい、クズ過ぎる……」
 嘉内とフレデリの二人も、これ以上は見ているのが限界だった。じっくり守りを固めて倒す? そんな理想論など、もはやクソ食らえだ。こんなものを見せられて、それでも動じない方がどうかしている。
「この少女を攫ったオーク共も、亡骸を屍隷兵に用いたドラグナーも、必ずや討ち果たす! 奴らの悪行に報いを与えるためにも……まずはこの屍隷兵を倒し、これ以上の凶行を食い止めるぞ!」
 感情のままに、フレイアが叫んだ。それが全ての合図となり、残る者達も一斉に、ネクログラナータへと殺到した。
「屍隷兵に宿る魔よ! その亡骸は、好きに弄んでいいものではないぞ! 彼女を安らかに眠らせるためにも、貴様の魂はその体から余さず食らい尽くしてくれる!」
 ゴルトザインのブレスに合わせ、まずはフレイアが拳を振るう。その一撃は、魔を食らいて自らの糧とする降魔の一撃。腐った肉を叩いた時のような不快な感触が拳から伝わったが、それでも邪悪なる屍隷の意思だけは食らい付くし。
「……後悔するなよ」
 まるで、自分に言い聞かせるようにして、フレデリもまた敵の屍隷兵から魔力を奪う。それだけでなく、今度は嘉内が輝くイナゴの幻影を生み出して、一斉にネクログラナータ目掛けて解き放った。
「残りの魔力を全て解放する! 災厄の蝗! 彼の……敵、を……欠片も残すことなく、食い尽くせ! エメラルド・グラスホッパー!」
 零れる涙を力に変えて、嘉内はイナゴ達に敵の身体を侵食させる。燃やして駄目なら、せめて欠片も残さぬ程に食らってしまえ。辛く、痛ましい記憶の残る肉体など、むしろ存在しない方が幸せだから。
「今です、エリオットさん!」
「これ以上の事件の拡大を防ぐため、そして死後もなお冒涜される『彼女』のためにも……今ここで悲劇に終止符を!」
 イナゴを払わんと暴れる屍隷兵の少女を押さえるべく、地を砕くイッパイアッテナの一撃と、リューディガーの銃弾が立て続けに炸裂する。それら、全てによって動きを封じられたところへ……最後はエリオットの放った一閃が、少女の首と身体を両断した。
「彼女もまた『犠牲者』なのだとしても、今を生きる人々に更なる犠牲を生み出すわけにはいかない。せめて僕たちケルベロスの手で、今度こそ彼女に『安らかな眠り』を……」
 鮮血の海に倒れた少女を前にして、静かに刃を納めるエリオット。これでもう、彼女は誰にも利用されることはない。二度目の死という名の救済を与えられ、少女は瞳を静かに閉じて力尽きた。

●せめて、人間らしく
 戦いは終わり、辛くも難を逃れたエリオットだったが、しかしその心境は複雑だった。
 いや、彼だけではない。この場に居合わせた全ての者が、その胸中にやるせない怒りを抱いていた。
「全てを救う、とは言えません……でも、私の手の届く範囲では、貴女達のような犠牲者をもう出さないと誓います。ですから、どうか、安らかに眠って下さい……」
 溢れる涙を抑え切れず、嘉内は物言わぬ塊となった少女へと告げた。そんな少女の遺体を、せめて元に戻せればと願うジュスティシアやフレデリだったが、二人の願いも空しく、遺体となった少女の身体を修復することはできなかった。
 無機物さえ治せるヒールグラビティでも、さすがに治せないものはある。死んだものを蘇生できないのと同様に、死んでしまった者もまた、死んだ時よりも以前の姿には戻せない。
「いずれにせよ、彼女をこんな化け物に変えた奴を決して許してはおけん。黒幕も、オーク共も、必ずや俺たちの手で引導を……!」
 リューディガーの手に彼自身の爪が突き刺さり、指先から赤い血が滴り落ちた。それを見たエリオットは、リューディガーの肩にそっと手を置いて、怒りに震える彼を諭すような口調で言った。
「今は、彼女の冥福を祈りましょう。こんな悲劇を、二度と繰り返さないように……」
 眠れる少女は何も語らず、死者は痛みしか残さない。ならば、自分達にできることは、悲劇の連鎖を止めることだと。
 人間の尊厳を破壊し、略奪の限りを尽くすデウスエクス。その驚異から人々を守るため、ケルベロスの戦いもまた終わらない。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年3月5日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 3/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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