ケモノ達が咆える時!

作者:baron

 群れなす獣たちの中心に女が居た。
 聞き返す者が居ない為か、女は演説であるかのように話し続ける。
「お前達は、このコギトエルゴスムにグラビティ・チェインを注ぎ復活させる事にある」
「本星『スパイラス』を失った我々に、第二王女ハールは、アスガルドの地への移住を認めてくれた。妖精八種族の一つを復興させ、その軍勢をそろえた時、裏切り者のヴァルキュリアの土地を、我ら螺旋忍軍に与えると」
 獣たちは言葉が判るかのように女の一言を神妙に窺っている。
 良く見ると獣たちは装飾品を与えられており、どこか知性を感じられた。
 だが獣たちは獣人ではなく、また固有の装備にも思えないのだが……。
「ハールの人格は信用に値しない。しかし、追い込まれたハールにとって、我らは重要な戦力足りうるだろう」
「そして、ハールが目的を果たしたならば、多くのエインヘリアルが粛清され、エインヘリアルの戦力が枯渇するのは確実となる」
「我らがアスガルドの地を第二の故郷とし、マスタービースト様を迎え入れる悲願を達成する為に、皆の力を貸して欲しい」
 言葉が終わると獣たちは一斉に頭を垂れ、咆える事も無く動き出した。
 その動きは疾風。尻尾を立てて颯爽と出撃して行ったのだ。

 やがて獣たちが訪れた先で行われたのは……。
「ひぃ!?」
「なんでこんな所にっ!? ギャア!」
 数頭の獣による殺戮劇。
 引き裂かれ、喰い殺されて行く間に装飾品が輝き始めた。
『ここは……お前が復活させてくれたのか?』
『……』
 輝く宝石から現われたのは、人の上半身に馬の下半身を持つ男だ。
 手には弓を持つその姿は、神話に置いてセントールと呼ばれた者の特徴を備えている。
『そうか。ならば俺は何をすればいい?』
『……っ!』
 言葉が無くとも意思の疎通が図れるのか、半人半馬の男は獣の姿を追って移動を開始した。

●動物型螺旋忍軍とセントール
「リザレクト・ジェネシスの戦いの後、行方不明になっていた『宝瓶宮グランドロン』に繋がる予知がありました。動物型の螺旋忍軍による襲撃事件が発生するのですが……」
 セリカ・リュミエールが説明を始めた。
「その螺旋忍軍が『コギトエルゴスム』を装飾品を身に着けており、襲撃によって死亡した人間よりグラビティ・チェインを奪い、人馬型のデウスエクスが姿を現すという事件が起きてしまいます。この事から判明したのは、このコギトエルゴスムが、妖精八種族のものであるということです」
 時期的にも他の可能性は薄い。
 どうやら螺旋忍軍がグランドロンの一部を回収し、コギトエルゴスムを復活させようと言うことらしい。
 いずれにせよ人々が襲われるのは止めなければならない。
 人々を守り螺旋忍軍を撃破すれば、おのずと妖精八種族のコギトエルゴスムを手に入れる事ができるだろう。

●陰中の陽
「襲われるのは深夜の夜道ですが、コンビニが近い在る程度明るい場所です。襲われた人もまさかそんな場所で狙われるとは思ってもみなかったでしょうね」
「うーん。コンビニがあっても人通りがある場所とも限らないしね」
「明るいだけに油断する人も居るし……というか一般人だと警戒しても難しいけど」
 問題なのはその人に注意を促して避難させると、他を襲われると言うことだ。
 時間も特定し易いし、むしろ途中で割って入って助ける方が無難だろう。
「でも普通の人だと危険じゃないかしら? 竜牙兵と違ってケルベロスを優先しないでしょうし」
「その辺りはやり方次第で問題ありません。というよりも相手も手順がありますので、接近戦を挑まれると一般人を殺せるというだけですので」
「なるほど。儀式までは不可能と言うことか」
 近接攻撃を行われた場合、邪魔になって殺害はともかく、儀式による解放が行えないらしい。
 今回はグラビティを集める事よりも、解放を優先して居るので一般人を優先しなくなるようだ。
「もちろん割って入るだけでグラビティによる攻撃を行わなかったり、遠距離攻撃の場合は俊敏な動作で接近し、狙われた人が殺されてしまうことになります」
「あくまで格闘や白兵で止めないといけないのね」
 セリカが説明すると聞いて居たケルベロス達は納得の頷きを返した。
「螺旋忍軍が妖精八種族のコギトエルゴスムを手に入れた経緯は判りませんが、もしかしたら、第二王女や別のデウスエクスの策略があるかもしれません。ですがまずは一般人を殺させない事が重要ですのでお願いしますね」
「虐殺っていうだけでも問題だもんね」
「それに説得すればこっち側に来てくれるかもしれないし」
 セリカが改めて救助優先だと告げると、ケルベロス達は相談を開始したのである。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
グレッグ・ロックハート(浅き夢見じ・e23784)
アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)
アルベルト・ディートリヒ(昼行灯と呼ばれて・e65950)

■リプレイ


「そろそろのはずですわねぇー」
 フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)はおっとりと時間を眺める。
 時間も判って居ることであり、ケルベロス達は夜の裏通りやコンビニの裏手に別れ、敵が訪れるのを待っていたのだ。
「あたしには夜目があるから問題なかったのじゃが、これだけ明るければ皆も問題無いじゃろう」
 周囲は薄暗いが街灯はあり、夜目が効かずとも見えないほどではない。
 ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)は仲間達の様子を確認し、暗闇の中で頷いた。
「ひっ。な、何!?」
「来たっ!」
 そしてその時はやって来る。
 ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)は耳をピンと動かすと、伸び上がるバネの様に暗闇の中を駆けた。
「人々を虐殺するデウスエクスの凶行を止めてやる!」
 ミリムは叫びたくなるのを堪えて疾走。
 街灯に映し出される影は、彼女のほかに数名。別ルートからも同様に集い始めている。
「作戦は覚えて居るな。各自担当を忘れるでないぞ」
「イエ~ス、レッツロック!! こーゆー事件は如何にもノーロック! ばっちり防いで、お助けするのデスよ!」
 アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)とシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)は左右に分かれて、挟み討ちにする様に間合いを詰める。
 先行するメンバーが抑え損なった相手を確実に捉える為だ。
「ヒトに危害加える者は全て死あるのみだ!」
 ミリムは相手が散開し始めたのを見て、足を止めずにそのまま突撃。
 渾身の力で剣を振り被り、当たるを幸いに引き斬った。
「私のお相手はー、あなたですわねぇー」
『ウオン!』
 フラッタリーは邪魔な家屋を飛び越え、頭上から降り注ぐように降下。
 頭から火の粉を散らすように輝き始めた。沈黙を守って居た筈のケモノは、仲間への警告のためなのか初めて口を開く。
「使命を担い群れを綯うー、これは難敵ですわねぇー。……ああ、でも全て喰ラッテ、焼キ尽クセバ。同様、可能、実行……」
 フラッタリーの着物に描かれた花弁が燃え始め、彼女自身が炎の活け花になった。
 次第に不明瞭になる理性と引き換えに、炎は大刀や拳に宿り、周囲に炎をまき散らす。
 狐火が周囲を染め上げ暗闇を放逐し、狂乱暴風と共に炎が荒れ狂う。
「それでは今日も元気にロックに! ケルベロスライブなのデス! イェーイ!!」
『っ!』
 シィカはぎゅいんとギターを奏でる為、飛び蹴りを仕掛けた。
 動物型の螺旋忍軍は今度は声を上げず、沈黙したまま黙って迎撃する(決して腕前にコメントが無い訳ではない)。
「ゲートを失って帰れなくなった母星の代わりに我らの土地をくれてやるなぞと唆かされたのじゃろうが……エインヘリアルはそなたらも手駒としか思っておらぬぞ……」
 アデレードは苦笑いを浮かべるしかなかった。
 記憶の無い自分でも判るくらいに、怪しい理屈だ。
 だがケモノ達に返事はなく、あるいはそんなこと判って居るとでも言わんばかり。
 単純に頭脳を使うのは自分の仕事ではないと割り切って居るのか、それとも判って居て逆用するつもりなのか。
「哀れではあるが、邪悪を看過するわけにいかぬ!」
 アデレードは敵の全てに接敵を確認した後、その内の一体へ回避機動を狙って間接的に狙う。
 ハンマーの勢いを利用し、身をよじって強引に当てる。
 こうして戦いは予定通り動き始めた。


「我々ケルベロスが何とかする、今の内に退避を」
「これで安心して戦えるってもんだ」
 別ルートから割り込む形で敵を遮断。
 ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)とグレッグ・ロックハート(浅き夢見じ・e23784)は逃げ去る者を眺めながら肩の荷を降ろした。
「最近、妖精の話はちらほらと出てきてますね、気になりますが、ひとまず目の前の問題を対処しましょう」
「ああ、そうだな人馬型の妖精……見てみたい気はするが人命を犠牲にする訳にはいかん」
 ラーナの言葉に頷きながら、アルベルト・ディートリヒ(昼行灯と呼ばれて・e65950)は自嘲の笑みを浮かべた。
 好奇心を刺激されるが……敵対せずに回収できれば、儀式を使って自分達が安全に呼ぶこともできる。定命化するかは別にして、人々の犠牲と引き換えにするほどではない。
「うむ、今度はセントール、人馬の者じゃな」
 興味深そうな顔をするウィゼも同じ様に動き出し、相手と味方の動きを見ながら順次戦闘に参加。
 一同の陣形は遮断の為に混在しているが、次第にハッキリしていくだろう。
「お前達にも果たすべき目的の為に与えられた役割があるのだろうが、それを食い止めるのが俺達のやるべき事だからな……」
 グレッグが獣型螺旋忍軍の喉元に走り込み、狙いを済ませた鋭い蹴りを打ち込んだ。
 その瞬間、左腕を中心に燃え上がる様に蒼い炎が広がって行く。
 纏わせた焔は生い茂る枝葉のよう。突如の反応にその機動力を奪うとした。
「……獣にしては驚きませんね。普通の動物にも見えるのですが、ここまでの知能となると、やはり何かが違うのでしょうか?まあ、今は考えても仕方ないでしょうが」
「螺旋忍軍……忍犬とか忍狼とでもいうべきかの。連中が回収しておったのか、あるいは雇われておるのじゃな」
 飛び出すラーナに答えながら、最後方のウィゼは最後まで様子を確認した。
 幸いにでも全員が敵に取りつき、更に言えば誰かが避けられても他の誰かが直撃させている。
「後は何時も通り倒すだけだ! くっ……全体で一つでも、一体に付き一つでも無いのか……後ろ髪を惹かれるぜ」
 アルベルトは敵の身に付けた宝玉を眺めて羨ましそうにしながら(身に付けたい訳ではない。猫なら抱き付きたいが)、味方と敵の位置に意味を持たせた。
 そして自分自身を最後の要として、即席の陣形にグラビティを流し込む。
「ありがとうございます……儀式にも効けば良いのですが……まあ良いでしょうっ!」
 ラーナはアルベルトのくれた力に感謝しつつ、そのままの勢いで蹴りつけた。
 嵐の様に動き回り、連打を浴びせて次々に蹴りを叩き込む。
「気を抜く出ないぞ。ケルベロスの戦いは、これからじゃ!」
 ウィゼが流体金属の膜を広げた時、獣型螺旋忍軍たちもまた反撃に出た。

 儀式を中断する必要性を理解して、四方に散りながら体当たりを敢行したり手裏剣を投げ放つ。
『アオーンっ!』
「ワ~ウ! 爪や牙による居合い抜きデス!?」
 獣は自らが回転する事で螺旋の力を得ると、そのままの勢いで体当たりを掛けた。
 直撃の際に爪で斬りつけ牙で噛みつき、シィカは驚きながらもガードする。
 ここで引いては相手が抜けてしまうかもしれない。そんな事はさせられないと一歩も引かぬ覚悟だ。
「このっ! 当たれー! 地面とキスする準備はいいか!」
 ミリムはハンマーに着火しその推進力を活かして肉薄した。
 零距離からの猛烈な勢いで急加速を掛けた。
 回避しようとした事などお構いなしに無理やりぶち当てて叩きのめす。
「ロックンロール!」
 シィカは思わずギターで殴りたくなったが、担いで壊れないように構える。
 もう片方の手で斧を振り下ろしながら、担いだギターの弦が耳元で揺れる様を愉しんだ。
「踊りまショウ。死ぬまで。オ互いが。ドチカラかgaがガ!」
 フラッタリーの視野は既に目の前の相手だけを見つめている。
 狂気の淵に立つのではなく、そのど真ん中で本能のままに戦う。
 制御する理性が足りないならば、最初の時点で王道を歩けば良いではないか。それで十分に最後まで走り抜ける。
「シ死、し。Shi。シャア、殺。コロス!」
 狂気と理性が同じ方向ならば、何一つ躊躇をする必要などないのだ。
 フラッタリーという名の暴風は、歩く姿は剣風であり当たれば炎、偶然刺さったら刃であった。
「随分と楽しそうに戦いおるのう……。ヴァルハラにおった頃の記憶は殆ど消されて詳しくは覚えておらぬが……セントール達は妖精八種族の同胞と聞いておる」
 アデレードは心置きなく戦う仲間を見て、少しだけ羨ましそうにした後で首を振った。
 純粋な戦いを愉しむのは本能の様な物だ。しかし彼女には為すべき正義がある。
「それをエインヘリアルや他のデウスエクスどもに利用されるの見過ごせぬ!」
 同胞を利用し、世界の秩序を乱し、己の利益に供しようと言う輩。
 それらに対する怒りを持って、アデレードは悪を断罪する。
 軽く翼を開いて飛び上がり、魂を狩る一撃を振り下ろした。
「なんとかなったか」
「そうだな。集中攻撃で一体ずつ潰しながらいくとしよう」
 グレッグとアルベルトは走り込みながら、傷付いた一体に攻撃を集中した。
 まずはグレッグが蹴り飛ばし、それで態勢が崩れたロコロをアルベルトが突き入れる。
 最初にの移動や援護が無くなり、相手は儀式で動けなかったこともあり戦いは優勢で進んでいた。


 数分の時間が経過し、上手く避けて居た敵も追い詰められていく。
 相手が機動型であったり、足止めの為に攻撃が分散して居た分だけ時間はかかったが、ようやく戦いに終わりが見えて来た。
 一体が倒れ、また一体が倒れようとしていた。
「それ! 雷を御馳走してあげましょお」
 ラーナの落とした稲妻が敵を撃ち、オゾンの香りが立ち込めた。
 獣型螺旋忍軍は最後まで必要以上の声を上げず、ビクリと痙攣して崩れ落ちる。
「ふうむ。準備が役に立った様じゃの。上手くコトが運んでおる。……そろそろ動く時かの」
 ウィゼはオウガメタルの導きや黄金の加護を仲間達に与えたことで、相手の動きに一歩先んじて居た。
 改めて金属片を含んだ蒸気で仲間達を守りつつ、敵が減ったことで攻撃しても良いかな―。とか思い始めた。
「後は……逃げられない為の戦いか……」
「そうだね。任務には忠実だろうけど、馬鹿じゃないだろうから気を付けた方が良いかも」
 アデレードは敵の投げた手裏剣を捌きつつ、包囲網の構築を提案。
 その言葉にミリムは頷いて遠距離戦の準備をしつつ、少しずつ移動し始めた。
「人々に危害加える者はみな私の敵……! 妥協はないよ!」
 ミリムは思いのまま、力任せに剣を振るった。
 既に別の仲間が抑えていた相手だ、直撃させるのはそれほど難しくはない。
 毛皮や油ごと当たった部分の肉をこそぎ取って行く。
「掲ゲ摩セウ、煌々ト。種子ヨリ紡ギ出シtAル絢爛ニテ、全テgA解カレ綻ビマスヨウ。紗ァ、貴方ヘ業火ノ花束ヲ!」
 流石に暴走中のフラッタリーも味方くらいは区別を付けている……はずだ。
 割り込んだ相手を無視しただけかもしれないが、そのまま螺旋忍軍を殴りつけて爆発させた。

 歩みを止めた敵にケルベロス達は猛攻を掛けた。
 手裏剣や烈風の痛み程度に怯むことなく、むしろここで逃がす方が問題とばかりに距離を詰める。
「ゆくぞ。そちらは任せた」
「付かず離れずで良ければ、な」
 アデレードがハンマーで殴りかかると、グレッグは手刀に蒼い炎を纏わせた。
 まずはアデレードが逃げ道を塞ぎ、グレッグが牽制を兼ねて攻撃、そのまま回り込むようにヒット&ウェイを掛ける。
「ボクが反対側を抑えるデス」
「了解だ!」
 逃がさない様に回り込みながら回し蹴りを放ち、シィカは両翼を築く。
 アルベルトはその隙を狙って強襲し、空間を断ち割って相手の態勢を崩した。
「あと少し……しかし油断は禁物ですね。まあ何とかなるよぉな気はするのですが」
 ラーナはハイキックからローキックを放つ連続蹴りを浴びせつつ、一回転して腰溜めに拳を構えた。
 最後に一刺し喰らわせようと、クナイを咥えた螺旋忍軍が飛びかかろうとした時……。
 そのクナイに奇妙なモノが被せて在った。
「ふぉふぉふぉ、ようやく気がついたようじゃの、お主の武器の異変にの」
 それはウィゼの仕掛けた悪戯だ。
 なんとクナイに竹輪が被せて在り、クナイの威力が発揮できないで居た。
 それでもグラビティで押し込むがそれが限界。
「これで終わりだぁ! 終わりでなくても、ボクは、君が、動かなくなるまで攻撃を止めない!」
 最後にミリムが正義の鉄槌を振り降ろし、事件に幕を下ろした。

「これか。……とんだ戦利品だが……味方になってくれればいいな」
「地球や人間をとはいわんが、文明でも何でもいから愛を抱いてくれればのう」
 アルベルトが宝玉を大切そうに持ち上げると、アデレードはもう一つを回収した。
 これから数が集まり、初期に解放された数人の意見を聞きながら、状況によって平和に儀式を行うことになるだろう。
「これまでも何とかなって来たんだもん。なんとかなるよ」
「まあ万事塞翁が馬ー、ですわねぇー」
 ミリムの意見にフラッタリーが肯定の言葉と共に頷いた。
「まずは螺旋忍軍の野望を打ち破り、同時に数を回収する事じゃな。賛同してくれる者がおれば、次第に影響されて行くじゃろう」
「そもそも数が無ければ儀式も無いも無いしな」
 ウィゼとグレッグはそれぞれの立場で、肯定とも否定とも付かぬ言葉を掛ける。
 何しろ敵が三に対して、今は二個。
 場合によっては五体で一つ・二つと言う事もあろう、まだまだ数を揃えるのにどのくらい掛るか判らない。
「いっそ、残りのグランドロンの場所を特定して、回収する方が早いかもですけれどね。とりあえず修復を行いましょうか」
「どちらにせよ、敵が来たらお居返してやるのがロックです!」
 ラーナが残骸を持ち上げて移動させ始めると、シィカは歌を唄ってヒールを掛け始めた。
 どんなに困難が待ち受けていようと、何とかしてやると祈りを込めて天高く拳を突き上げて声を張り上げるのであった。

作者:baron 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年2月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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