猫カフェ危機一髪!?

作者:柊透胡

 『猫カフェ』なる喫茶店がある。広々とした店内に、個性豊かな猫達が自由気ままに過ごしており、客は玩具で一緒に遊んでみたり、キュートな仕草を撮影したり、猫を眺めつつお茶をしてみたり。猫達との癒しの一時を過ごせる空間だ。
 駅前の繁華街に在るその店も、そんな「猫カフェ」の1つ。リビングのような店内で沢山の猫達と遊べるし、勿論、撮影もOK。猫まっしぐらのおやつや可愛らしい猫用雑貨も色々あるようだ。
 午前10時――出勤ラッシュが一段落し、繁華街の店舗もそろそろ開店する頃。
 猫とのくつろぎ空間な店内と対照的に、猫カフェのあるビルの路地裏は何処か寒々しい。物置が置かれていて、中に壊れて廃棄直前のペット用ホットカーペットが突っ込まれていた。
 そこに現れたのは、街中では規格外に大きい蜘蛛――のような、小型ダモクレス。握りこぶし程のコギトエルゴスムが、物置の中に消えていく。
 ミァァァゴーーー!!!
 突如、路地裏に響き渡る機械音声。物置から転げ出たペット用ホットカーペットが、くしゃくしゃと丸まるや、猫のような姿に変形する。忽ち3m程まで巨大化するや、バチバチとスパーク。赤熱した体躯より陽炎が立ち上る。
 ゴォォォッ!
 カパリと大きく口を開けるや、大きな火球が猫カフェがあるビル目掛けて吐き出された。

「……猫カフェ、の危機……?」
「まさしく」
「敵も、猫……?」
「廃棄家電ダモクレスではありますが」
 訥々と呟く星奈・惺月(星を探す少女・e63281)は、小首を傾げている。
「定刻となりました。依頼の説明を始めましょう」
 タブレットの時刻を一瞥して、都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)は集まったケルベロス達の方に向き直った。
 とある駅前の繁華街の路地裏――猫カフェの物置で、廃棄を待つばかりであったペット用ホットカーペットがダモクレスになってしまったという。幸い、惺月の懸念がヘリオンの演算にヒットしたので、まだ被害は出ていない。
「尤も、表に出れば人通りの多い繁華街です。このまま放置すれば、多くの人々が虐殺されてグラビティ・チェインを奪われてしまう事態となるでしょう」
 その前に、ダモクレスを撃破する事となる。路地裏で待ち構え、物置からダモクレスが飛び出してきた所で迎え撃てば良いだろう。
「カーペット……猫用、だったのね……?」
「だからでしょうか、ダモクレスは機械仕掛けの猫のような姿をしています」
 主に雷気纏う爪で引っ掻き、大きな火球を口から吐き出す。更に、耳障りな金切り声を上げて、敵の戦意を削ぐようだ。
「金切り声は広範囲に響き渡りますので、お気を付け下さい」
 ちなみに、電気爪は単体の動きを妨げ、口からの火球の炎は延焼するようだ。
「どうやら真っ先に猫カフェが狙われるようですが、人々を虐殺してグラビティ・チェインを奪うなど、到底看過出来ません。被害が出る前に撃破をお願いします」
「まあまあ、猫型のダモクレス……火花さえ散っていなければ、可愛らしかったでしょうに」
 残念そうに、頬に手を添える貴峯・梓織(白緑の伝承歌・en0280)。ペットは飼った事ないそうだが、動物は嫌いでない様子。
「それにしても、猫カフェ……素敵なお店ね。お仕事の後、覗いてみる時間はあるかしら?」
「……問題ないでしょう」
 タブレット画面に目を落とし、創は微笑んだようだ。
「色々な猫がいるお店のようですね。一仕事の後に宜しければ。休憩時間ぐらいは、融通します」


参加者
マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)
愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)
イブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943)
虎丸・勇(ノラビト・e09789)
小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)
菊池・アイビス(飼犬・e37994)
セレネー・ルナエクリプス(機械仕掛けのオオガラス・e41784)
星奈・惺月(星を探す少女・e63281)

■リプレイ

●猫カフェ危機一髪!?
 朝の繁華街は閑散として。通勤ラッシュも終わった10時前など、路地裏は特に静かなものだ。
「あの物置から?」
「らしいね」
 小首を傾げる愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)に、言葉少なに頷く星奈・惺月(星を探す少女・e63281)。
 猫カフェはビルの1階で、路地裏の物置も猫カフェの管理にあるという。
(「猫カフェのピンチは……猫のピンチ。絶対に……守らないと」)
 寡黙な少女は表情も乏しいが、バイオレンスギターを握る拳の強さに意気込みが窺える。微笑ましげに眦を緩めたミライは、傍らのボクスドラゴンにも「頑張ろうね」と囁く。
 ミァァァゴーーー!!!
 機械音声が、ビリビリと寒気を震わせた。
 果たして、時刻は午前10時――物置から転げ出た小さな敷物が、くしゃくしゃと丸まるや、猫の姿に変形。忽ち3m程まで巨大化してバチバチとスパークする。
「なるほど。あったか毛布ねこちゃん……」
 だが、悠然と佇むイブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943)の声音は、寧ろ愛でるよう。
「……いやいや、相手はダモクレスだったな」
 すぐに、キリッと表情を引き締めたけれど。
「おうこら立派などら猫ちゃんや。猫カフェにゃんこ愛でる前に可愛がってやるけえのう」
 イブの言葉に応じるように前に出たのは、菊池・アイビス(飼犬・e37994)。不敵に唇を歪める。
「けど、うちのイブ猫ちゃん手えだしよったら八つ裂きなりまっせー」
 臆面もなく言ってのけ、両の武装を軽やかに振るうアイビス。明らかにイブを庇う体勢だ。
「お店の人やねこちゃんたちを不安にさせないよう、開店前に手早く片付けちゃおうね」
 淡々とした声音は変わらずながら、イブの頬がうっすら染まって見えたのは……果たして寒さの所為か。
(「猫カフェのピンチに駆けつけてみれば、敵も猫型とはね」)
 猫好きの虎丸・勇(ノラビト・e09789)としては辛いところ。とはいえ、どんなに可愛くても相手はダモクレス。
(「きちっと仕事して、猫カフェで遊ぶんだ」)
 仕事の後にお楽しみが待っている。過る憐憫を振り切り『敵』を見据える勇。
「ペット用カーペット、だっけ」
 早速、もこもこと毛を逆立てる機械猫を前に、マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)は眉根を寄せる。
 廃棄家電ダモクレスだなんて、暴れたくなる気持ちもわからないでも無い。
「でも、人を傷つけるのはダメだよ」
 言い聞かせるような呟きは機械猫の唸り声に掻き消されたが、肩を並べる小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)の耳には届く。
(「このカーペット、どうして猫の姿になったんだろう……」)
 もし、カフェの猫を暖めていた記憶が残っているならば。
(「尚更、猫カフェに被害は出せないね」)
 マインドリングから光刃を顕し、涼香は生真面目な面持ちで身構える。
(「相変わらず多いわね、廃家電のダモクレス」)
 路地裏で睨み合うケルベロスとサーヴァント、そしてダモクレスを、セレネー・ルナエクリプス(機械仕掛けのオオガラス・e41784)は1人、ビルの屋上から見下ろす。
(「戦略も何も無さそうだけど、どういうつもりかしら?」)
 ヘリオンからの直接降下と同時に攻撃を仕掛ける心算であったセレネーだが、降下位置はそこまで厳密ではない。何より「路地裏で待ち構え、物置からダモクレスが飛び出してきた所を迎撃」と提示された案より大きく外れれば、不測の事態が甚大な被害を招きかねないだろう。だから、今回はこの程度で我慢しておく。
「それじゃ、化け猫退治といきましょうか」
 義骸装甲『黒鴉装』に覆われた翼象る地獄を広げ、セレネーは屋上の柵を越える。一気にビル壁を駆け下りた。

●路地裏の機械猫
 ――――!!
 豪快にも、初手から黒葬(黒双)連撃を繰り出すセレーネ。地獄化した翼を包む機甲翼より黒い地獄の炎を噴出して加速。零式忍者としての体術とエアシューズの接地力で姿勢を制御し、黒炎を纏う二刀流を何度も叩きつけんと。
 ドゴォッ!
 だが、重撃が抉ったのは路地のアスファルト。粉塵舞う中、機械猫は物置の上にヒラと飛び乗る。
 ミァァァゴーーー!!!
 再び轟いた機械音声は、魔力を帯びて一帯を圧した。
「出会い頭はこんなものでしょ。ここからはじっくりいくわ」
 強気を呟くセレネーだが、内心では眉を顰めている。魂削るような不快感に加え、全身に圧し掛かるようなプレッシャー。元より、万全とは言い難かった命中率の更なる低下を、眼力は報せる。
 チラと窺えば、早速イブを庇ったアイビスの憤然とした表情も同様か。取り急ぎ、マサムネが爆破スイッチを押せば、爆発も色とりどりに。続いて、ミライが「想捧」を歌い上げる。
 ――望まず手にした永遠に、9つも命は宿らない……そうでしょう? けれど、生まれ落ちたからには。魂バチバチいわせたいのが性なのです! ミァァァゴ!
「どう?」
 勇の問いに、セレネーは小さく頭を振る。幾許か身も軽くなったが、払拭するには至っていない。
 編成のほぼ半数がサーヴァントを伴う。手数は明らかに優位で回復量は重ねれば良いが……問題は、強化や厄の付与率だ。列グラビティともなれば、範囲型の筈が2名に掛れば重畳という期待値となってしまう。
 マサムネもミライも、そして勇も、魂を分け合っている。それでも、相次ぐメディックのヒール有って尚、厄が掃い切れぬという事は。
「あっちも、ジャマーって事か」
 厄介そうに呟き、勇はワイルド化した右手を思い切り振る。混沌の水を前衛へ浴びせた。叶いさえすればジャマーのキュアは心強い。確実ではなくとも援けとなろう。
「ねーさん、清浄の翼をよろしくね」
「あ、あ、ネコキャットもファサーってね。背中は任せて、相棒」
 勇をサンドするように中衛に立つウイングキャット達は、親友の言葉に各々翼を羽ばたかせる。時間は掛っても、厄への耐性を行き渡らせるべく。
「ポンちゃんも属性インストール、いいね?」
 ミライのボクスドラゴンも同様に。こっくりと頷く様子がまた愛らしい。
「私は……」
 逡巡も束の間、涼香はマインドソードを振るう。後方より狙い澄ました一撃は確実に機械猫の体を捉えた。勇の愛車、エリィも炎を纏って突撃する。
「流石に最初からは……まだ早いか」
 確実を取ったイブの気咬弾が弧を描いて、機械猫に爆ぜる。だが、同時に飛び掛かったアイビスの達人も斯くやの一撃は、雷気帯びた爪に弾かれ相殺された。
「やっぱダモクレスやのう。ビリビリ来よるわ」
 アイビスは寧ろ愉しげな表情ながら、得物を握る手に力が籠る。
「皆、強い。でも……」
 惺月のスターゲイザーが宙を翔けた。確実に敵の前脚を刈り、一撃離脱。どんなに強力な攻撃も、まず命中してこそ。今回、確たる厄付けが叶う惺月は、何より敵の足止めが優先されよう。だが、見切りも鑑みれば、彼女1人では相当に時間が掛る。
 ――――♪
 流れる旋律は、ミライの歌と似て非なる――けれど、やはり失われた愛しい想いを歌い上げ、世界を愛する者達を癒やす調べ。
 懐中時計を手に、貴峯・梓織(白緑の伝承歌・en0280)が歌う妖精伝承は、ひっそりとケルベロス達を力付けた。一刻も早く、敵を穿つ手となるように。

●ミァァァゴ!
「……っ!」
 機械猫の口から迸る大火球。咄嗟にアイビスが射線を遮る。髪の焦げる臭いに顔を顰めながらも、ダメージがそれ程でもなかったのは、ディフェンダーであり防具耐性の賜物だ。
 だが、身に燻ぶる炎熱は中々消えない。
(「誰も倒れさせない、傷つけないよ」)
 すぐさま、サキュバスミストを広げるマサムネ。癒し切れぬを見て取り、ミライも癒しの歌を歌う。
 ――どんなに願っても、涙は枯れはしない。ゼロを1に変える魔法が、生まれたときから君に掛かってる。
 タイトルは「KIAIインストール」。願望こそ、人類の原動力たることを証明する応援歌だ。
(「私はあくまでサポート。皆の歌に、私の歌が被らないように」)
 だが、不足ないサポートを果たすには、戦況の的確な把握を要する。いつでも動けるよう声を掛け合い、ミライは戦場に目を凝らす。
 まずは、敵の足止め先。混沌の水を纏わせた愛用のナイフを構える勇。
 貴方の全てを拒絶する――紅き混沌から放たれるのは身を刻む刃の雨。無数の刀身は影をも縛らんと。続いて涼香のエアシューズが唸るや、流星の軌跡を描いて4つ脚を切り裂いた。梓織も厄付けの援護に、順にステルスリーフを放っていく。
 眼力が報せる命中率が確実と言えずとも、当たる時は当たるもの。弛まず攻撃を続けるケルベロス達。
 ミァァァゴ!
 忍びの如き体術を駆使する勇に対抗してか、機械猫も路地を駆け巡る。ビル壁が罅割れアスファルトが凹んだが、兎に角、撃破が最優先だ。
「炎勝負、だね」
 それでも凡そ、ケルベロス達の命中が安定したと見れば、惺月はゆっくりと息を吸う。
 ――小さな星屑の私だけど、あなたの力になれたかな。
 もし……もう一度あなたに会えるなら、一筋の涙を力に変えて、流星となってあなたの元へ――歌と共に炎纏う飛び蹴りは、まるで空翔ける流星のように。
「さあ、もっと燃えなさい!」
 すかさずグラインドファイアで応酬したセレネーは、雷気帯びた爪に抉られながら麻痺を振り払う。
「もう気が済んだ? なら、大人しく往生なさいな」
 ジャマーの厄に耐え得る体制が整った――それこそが好機。一斉にケルベロス達の攻撃が殺到する!
 鳴いて――切り裂くような風音は、涼香が鳴らす虎落笛。首を巡らせ威嚇する機械猫は、あたかも罠に囲まれた虎の如く。
「カラスの芸は、闇に舞うだけじゃないっ!」
 複雑な体捌きから一息で間合いを詰め、地獄の黒炎纏う鉄塊剣が今度こそ機械猫を捉える。今度は惺月のグラインドファイアが機体に突き刺さった。
 梓織が駄目押しと「想捧」を歌い上げれば、サーヴァント達も勇んでダモクレスに飛び掛かった。
(「イブさんも見てる。しっかりやらないと!」)
 神よ汝の子を哀れみ給え――マサムネが歌い上げるのは、暗澹たる旋律に乗せた呪わしい詩。やがて復讐と言う名の雨が、機械猫の動きを止めんと。
「生まれ変わったらホンモンにゃんこなりい。冬場はワシが温めたるわ」
 おコタ知らずだと笑みさえ浮かべ、アイビスの両足から衝撃が発生する。身中の螺旋力が血管と神経を通して標的へ――追い縋り、敵の全存在を打ち砕かんと。
 果たして、グルグルと唸りながら、機械猫の足取りは覚束ない。今が好機と、静かに近寄るイブ。
「可愛いねこちゃん、こっちむいて」
 ――苦しめるのは忍びないけれど。痛いのも辛いのも、一瞬だから。
(「ごめんね」)
 静かに口付け、注ぐのは強力な毒。愛した相手をも枯らす白薔薇の毒は――機械仕掛けの猫さえも。


 動きを止めた機械猫は、忽ち小さく縮むと1枚の敷物に戻る。
「ニャンコ温めて頑張ってたんよなあ」
 ボロボロを撫で、アイビスは静かに合掌する。カーペットを拾い上げた惺月は、物置に戻してあげた。ケルベロスのヒールで治せないのは、ちょっと残念な気もする。
 荒れた呈の路地裏に、癒しの歌が響く。憧れの人や可愛い妹分の前であっても、ミライは只、いつも通りに。
 そんなアイドル少女を優しく見守り、イブは猫カフェ開店までの時間を、壊れた箇所に気力を注いで回って過ごす。
 マサムネはサキュバスミストを振り撒く。
(「力って、便利だな……」)
 サキュバスとしての自身に複雑な想いを抱えているマサムネだが、癒せる力があるのは、きっといい事だ。
(「人の目につかない所でも、外観は大事だからね」)
 最後に混沌の水を一撒き。すっかり修復された光景を、勇は満足そうに見回す。
「さて、レッツ猫カフェ!」
「ねーさんもお疲れ様」
 やはり清浄の翼でヒールを頑張ったウイングキャット労い、涼香は待合せ場所へ駆け出した。

 午前10時30分――猫カフェ「にゃんにゃんみゅう」開店。
 リビングのような店内には、既に猫たちが思い思いに寛いでいる。
「あ、その……サーヴァントも、駄目?」
 ペット同伴は禁止と聞き、ネコキャットを抱えるマサムネはちょっと困った表情。
 家にいつくという猫は縄張り意識も強い。猫達のストレスと衛生的な理由もあって、ペット同伴禁止との事だが……サーヴァントはケルベロスの魂の半身だ。
「……今回は、特別という事で」
 サーヴァントは喫茶コーナーのみでという事で、許可が出た。流石に、勇のライドキャリバーは丁重にお断りされ、今は店の前で待機中だ。
「ねこねこにゃんにゃん♪」
 ホッとした表情で、ネコキャットと戯れるマサムネ。くつろぎコーナーの猫達も気になるが、余所見の度にネコキャットの肉球パンチがタシタシと。
「前から一緒に来たいと思ってたんだよね――アイビスは遊ばないの?」
 動物に懐かれる質なのか、イブは早々に猫にモフモフと囲まれている。
「わしは白猫撫でたいんやが」
「白猫……この子?」
 アイビスの返答に真っ白スコティッシュを抱き上げたイブだが、指差されたのは彼女自身の方。
「きみの猫です。もふもふする?」
 ふわりと微笑み両腕を広げれば、喜色満面で白薔薇咲く髪をモフモフ撫でられた。
「……でも、続きはお家でね」
 今はこっちとスコティッシュの女の子を渡されたアイビスも、今度は素直にお膝に乗せる。
「おまえも負けず劣らずかわええやんけ」
 喉を擽ってやれば、ゴロゴロと気持ち良さそうだ。
 ――11時のチャイムが鳴り、猫達も朝のモグモグタイム。
 皆一列に並んで元気良くモグモグ。余所見ばかりののんびり屋さん、お皿が綺麗になるまで一心不乱に食べている子もいれば、お隣のご飯にまでお邪魔する食いしん坊も。
「おいおい、可愛すぎかよ」
 スマホ片手にかぶりつきの勇は写真を撮りまくり。
(「虎猫、好きなんだよねー」)
 ふと目が合ったのは、大柄ふっさりの虎猫。メインクーンの男の子らしい。
(「絶対、仲良くなろう」)
 何だかキュンした胸を抑えて、勇は拳を固めて決心する。
 涼香もお目当ては朝食タイム。スマートフォンで撮影もばっちり。
「……あ、ねーさんも食べたいよね?」
 今は喫茶コーナーにて、待合せ相手の泉賀・壬蔭のお膝で大人しくしているねーさんだが、物問いたげな眼差しに涼香は店員に声を掛ける。
「ええと、おやつを持参したのですけど、ねーさんも一緒に食べても大丈夫ですか?」
「ウイングキャットちゃんですか?」
「これなんだけど……」
 壬蔭がチューブ入りの猫用ゼリーを見せたけれど、やはり衛生的な理由でNGの模様。
 代わりに、カフェで購入できるおやつを勧められた。数量限定で猫ちゃんにモテモテの逸品だとか。
「朝だからかな? すごくお腹すいてたみたいだね」
 ねーさんがカフェのおやつに夢中の間に、食事風景の動画を見直す2人。
「手前の子、もう食べ終わってるよ。隣の子のをじっと見てるけど……」
「どの子も一生懸命で可愛いね」
 ほっこりのんびり優しい時間。次の休日も、猫カフェで過ごすのも素敵かもしれない。
「色々な猫いっぱい……かわいい……」
 惺月とセレーネ、ミライにフィーラ・ヘドルンドも合流して、猫カフェ女子会はほのぼのと。
「みんなは……好みの猫、見つかった?」
 アメリカンショートヘアの女の子とネコジャラシで遊ぶ惺月。機敏に動かすと、勢いよく跳びついてはタシタシ。活発な様子に何だか癒される。
「惺月はどんな猫がいいと思う?」
「ん……そこの子、おっとりしていておとなしい……かな?」
 寛いでいる猫を膝に抱えて、セレネーは内心でガッツポーズ。
(「ここの猫は逃げないわね。よし!」)
 そもそも、喰うか喰われるかのカラスと猫は相性が悪い。野良猫と出会っても目が合っただけで逃げられてばかりなので、触らせてくれるニャンコがいるのが何だか嬉しい。
「よしよし、可愛がってあげる」
 一方、フィーラは白いふわふわのペルシャ猫とじっとお見合い。恐る恐る手を伸ばしてみたけれど。
「あ……」
 怖がっているのが伝わったのか、避けられてしまいしょんぼり俯く。
「しずく、ねことなかよし、いいなぁ」
 1人と1匹が遊ぶ光景が可愛く、思わず写真を1枚。今度は惺月を真似して、ネコジャラシをゆらゆらしてみる。
「わ……かわいい」
 今度は興味を持ってくれた。パシパシと前脚を出す様子に、思わず顔が綻ぶフィーラ。
(「あったかくて、ふわふわ、しあわせ」)
 漸く撫でさせてもらえて、ご満悦だ。
「やぁん……すっごい可愛いのです」
 持参の猫耳を付けて同志をアピール! 手ずからのおやつをぺろぺろしているニャンコに、ミライはメロメロだ。
(「猫ちゃんと遊ぶ皆も可愛いのです……!」)
 幸せ空間を見回して、ミライ自身もふんわり幸せ。でも、猫耳ミライも負けてられない!
(「私も猫じゃらしで遊んで欲しいなぁ」)
 期待の視線を送ってみるが、3人はそれぞれ猫まっしぐら。よく考えなくても、猫ちゃん達に可愛さで勝てる訳が無かった……!
「ミァァァゴ!」
「あらあら」
 のんびりお茶していた梓織は、くつろぎコーナーの光景に微笑ましそうに目を細める。
「まあ、おばあさんの相手もしてくれるの?」
 トコトコと寄ってきたマンチカンの男の子に、にっこりと手を伸ばした。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年2月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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