北を飛び立つ湯気に紛れ

作者:幾夜緋琉

●北を飛び立つ湯気に紛れ
 北海道千歳、北の玄関口、新千歳空港。
 その4階には、駐車場を望む方向に開けた露天風呂があり、北海道に来た人達を迎え、もしくは楽しんだ人達の疲れを癒やすが如く、黒褐色の湯が湯気を立てる。
 ……そんな温泉施設の女湯には、様々なお客さん達がキャーキャーと声を上げ、温泉を楽しんで居る。
 が……そんな温泉に近づくのは、不遜な者達の影。
『ギュフフ……オンナ、オンナ、イッパイ……!!』
 欲望に塗れた顔が、ニタリと歪む。
 そしてそんなオーク達が、次々と魔空回廊を抜けて……露天風呂へと落ちていく。
『え……な、何何何っ、キャアアアアア!!』
 高い悲鳴を上げる女性達……だが、その悲鳴はオーク達にとってスパイスの如く。
『オンナ、襲ウゾ!!』
『オウ、オレ、左カラ!』
 声を掛け合いながら、足場の悪い露天風呂から逃げようとする女性達を次々と抑えつけ……凌辱を始める彼らであった。

「ケルベロスの皆さん、集まって頂けましたね? では……早速ですが、説明させて戴きます」
 と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロス達に一礼も早々に。
「今回、北海道は千歳、新千歳空港の温浴施設に汚いオーク達が現れ、罪の無い女性達を凌辱する……という事件が予知されたのです。魔空回廊を経由し、多くの女性達が居る場所に現れる彼らは、正しく女性の敵と言えるでしょう」
「温浴施設自体はかなり広いのですが、露天風呂はそこまで多くありません。でも、オーク達は次々と周りの女性達を協力してその手に収めようとしています。欲望のままではありますが、他の仲間達と協力して凌辱しようとする彼らは、一際厄介な相手と言えるでしょう」
「勿論、被害者を減らす為に、先に女性達を避難する……という手段もあり得ます。しかしながら、凌辱できそうな女性が多くないと、オーク達は違う場所へと転送先を替えてしまう為、10人程度の女性達が入浴していなければなりません。一方、オークは20名程度……と、かなりの大集団で現れますので、数の暴力で抑えつけられてしまう可能性が高いでしょう」
 そして、更にセリカは。
「オークの出現箇所は、露天風呂側からが主ですが、5体程度は内湯側の方からこぼれ落ちてくる様です。露天風呂からの脱出路は、一箇所しかありませんので……内湯側のオークが挟み撃ちにしてしまう可能性が高いでしょう」
「又、女風呂に入っていた一般女性達は、当然襲われる等と思ってもいませんので、かなり混乱の境地に陥っているのは間違いありません。彼女達を落ち着かせた上で、脱衣所の方まで避難させる様……皆さんで声を掛け合い、避難誘導を御願いします」
 そして、最後にセリカが。
「一般女性達は、何の罪も在りません。そんな彼女達を卑劣に襲うオーク達は、絶対に許す事は出来ません……ケルベロスの皆さん、必ず、全てのオークを仕留めて戴ける様、御願いします」
 と、深く頭を下げた。


参加者
アリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659)
ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)
天司・桜子(桜花絢爛・e20368)
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)
ユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)
猪山・武佐衛門(猪剣士・e72077)

■リプレイ

●北を飛び立つ湯気に紛れ
 北海道千歳市、美々。
 北の玄関口、新千歳空港の最上階である4Fに位置し、駐車場を望む方向ではあるものの、清々しい風を感じながら露天風呂に入れるという、嬉しい温浴施設。
 勿論、新千歳空港にあるという事は、北海道に来た人を迎えたり、楽しんだ人達の疲れを癒やし、送り出す為……なのかもしれない。
 そんな温泉の黒褐色の湯の女湯に、様々なお客さん達がキャーキャー、わいわいと声を上げて、温泉を楽しんで居る。
 ……そんな女性達を凌辱しようと、不遜な欲望を丸出しにしているオーク達。
「まーたオーク相手か。どこにでも出てくるなー、本当に」
 と溜息を吐き、肩を竦めるアリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659)。
 それにユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)が。
「有無。忌々しい豚の群れ。彼等も私の仔と認識すべきだが、節操無しの莫迦どもを治す薬など皆無。故にお仕置きを与えねばなるまい。抱擁よりも尻叩きが相応しい。拉麺の具材に反映は不要なのだ。兎に角、悦びは赦されない」
 と、ユグゴトの難解な言い回しに、アリアは頬をぽりぽりと掻きながら。
「まあ……何にせよ情け容赦とか、一切要らない相手なのは気が楽ではあるね。とは言ってもこいつらが豚肉になっても食べたく無いけど」
「嗚呼、勿論食べようとしている訳ではないぞ」
 頷くユグゴト、そして猪山・武佐衛門(猪剣士・e72077)も。
「何であろうと、オークは死すべし。それ以外にない!」
 と拳を振るわせ絶叫するも、その視線は……女性陣とは逆方向を向いている。
 そして、天司・桜子(桜花絢爛・e20368)、七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)、ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)の三人も。
「この寒い季節だからこそ、その温泉だけど、やっぱりオークも現れるんだね」
「そうですね。温泉は心地が良いですから、皆来たいと思う気持ちは分かりますね。ですが、そこには常にオークの脅威がありますので、注意が必要ですが」
「ええ。オークたちは冬でも寒がらずに活動する、なんて元気なのですかね。とはいえ、わたくし達も負けずに頑張りましょう!」
「そうだね。女性達を絶対に助けるよ!」
 桜子が強く拳を振り上げると、アリアも。
「そうだね……正直男の僕には見向きもしてくれないから、女性陣の皆には負担を掛けるけど……出来る限り守るから」
「ええ、御願いします」
 と、綴がくすりとアリアの言葉に微笑むのであった。

●湯気に立つ裸身
 そして、新千歳空港の温泉に辿り着いたケルベロス。
 勿論、男湯と女湯に別れて居る温泉なので、女湯に入れるのは女性だけ……。
「……まぁ、取りあえず僕達は、すぐ突入出来る様にしておこうか……確か、男湯と女湯の露天風呂は隣り合ってるだけみたいだしね」
「分かった……兎に角オークが現れたら、完全に仕留めるだけだ」
 と、アリアに武佐衛門が頷く。
 ……女湯と繋がっているあかすり屋の所もあるので、そこから突撃する事は簡単そうで。
「うーん……一応係員さんには伝えておいて、ここで待っておこう」
 と、その場に待機。
 一方の女性陣は、一般人に混ざって温泉へと入浴するのと、浴室で着替えを装いながら……オークの出現の時を待ち構える。
 ……そして、待機し始めて、数十分程が経過。
 女湯には10名程度の一般客達が入浴しており、露天風呂には5人程……若い女子大生のグループの模様。
 と、それを……視認した様で。
『グフゥ……』
 どこからともなく、聞こえてきた欲望の呻き。
 次の瞬間、露天風呂の傍らから、次々と姿を現してくるオーク達。
『オンナ、オンナ……!!』
『ヒヒヒ……サァ、ヤロウゼ!!』
 涎を零しながら、一直線に女性の方へ……襲いかかろうとするオーク達に、悲鳴を揚げて、其の場にへたり込む女性達。
「させぬぞ」
 と、ユグゴトがオークと一般女性との間に立ち塞がり、抜き身のバスターソードを一閃。
『ヌ……!?』
 咄嗟に間合いを取り、一刀両断を避けるオーク……そして。
『ジャマスンナ!!』
『ソウダソウダ! オ前、ヤラレタイノカ!!』
 と不遜な言葉で罵倒してくるオークだが、ユグゴトは表情一つ変えず。
「全く、欲望に塗れた忌々しい豚の群れだ。その節操無さをここでお仕置きしてやらねばなるまい」
 と、睨み付ける。
 ……と、その間にルピナス、綴、桜子の三人は連携し、オークの立ち塞がる、露天風呂と内風呂を結ぶドアではなく、その逆側のガラスを破壊。
「皆さん、こちらです。こちらにげてください!」
 と隣人力を駆使し、一般女性達を落ち着かせようとするが……まだ、少々混乱の中。
 それに桜子も。
「大丈夫だよ、桜子達はケルベロスだから! 絶対に無事を保証するから、そこから避難して脱衣場の方まで逃げてね!」
 と声を掛け、露天風呂の女性達を早急に避難させる。
 ……しかし、その間にも、もう一つの裂け目が内湯側の方に発生……そこからも、五体のオークが出現。
『ニガサネエ!!』
『オレタチノモノ、ウバウンジャネェ!!』
 と、こちらも欲望に正直に、一般女性達を捕まえようとする。
 が、その間にも……綴が立ち塞がる。
「オークの抑えは私達がやります。皆さんは急いで避難を!」
 と、オークの土手っ腹に拳の一撃を与えながら、女性達の避難を促す。
 そして……女性達が悲鳴を揚げながら逃げるのが聞こえた所で、あかすり屋の所から突撃するアリアと武佐衛門。
 ……目の前を、裸の女性達が通り過ぎていく……が、余り見ない様にする。
 そして、仲間達が対峙する所へと急行、対峙すると共に……露天風呂側、内湯側の両面から、オークをドアの方に追い込む。
 ……流石に20体ものオークに対し、6人という数の差……追い込むというよりかは、抜かれない様に広く広がる。
 そして、オークが。
『ジャマ! ジャマダ!!』
『ゼッタイ、コロス!!』
 と、恨み節を叫ぶ彼らに、早速アリアが。
「穿て、雷よ」
 と『ヴォルトアロー』をオークの一陣に撃ち込む。
 雷鳴に痺れ、敵全員にパラライズを付与。
 動きが鈍った彼らに対し、続く綴が。
「私でも、やれば出来るのです!」
 目前の一匹に、大器晩成撃。
 更に同じ敵へ、武佐衛門が。
「オーク死すべし! 慈悲はない!!」
 と、獣撃拳で攻撃。
 ……その二撃はどうやらクリティカルだった様で、早々に一匹死亡。
『ナンダト……!?』
 と、一気に狼狽するオーク達……だが、もう既に囲まれていて、退路はない。
 戸惑うオーク、それにユグゴトが。
「頭蓋に這い寄る輝き――穿って啜る不定の所業――地獄の底で沸き立つ核――舐り続けて掻っ攫う――此処が彼等の終着点だ――ユッグゴトフ」
 『去れよ』を放ち、敵陣を氷に包む。
 流石に全匹、とまでは行かないが……半数以上が氷り漬け。
 そしてルピナスが。
「無限の剣よ、我が意思に従い、敵を切り刻みなさい!」
 『暗黒剣の嵐』が、一匹を無差別に切り刻むと、更に桜子が。
「桜の花々よ、紅き炎となりて、かの者を焼き尽くせ」
 『紅蓮桜』を放ち、敵を炎に包み込み、仕留める。
『ヌヌヌヌ……!!』
 ……最初は自分達が優位に立っていると思っていただろうが……一刻の間に仲間二体が倒されたとあれば、力差は認識せざるを得ない。
 ……でも、逃げ道はない……オーク達にとっては、ケルベロスを殺す以外に立つ瀬が無い。
 そして、18匹のオークらは、半ば自暴自棄になり、連携し、触手で手足を拘束しようとする……が。
「その程度じゃ、掴まらないよ!」
 とアリアが素早く躱し、綴も軽い身のこなしで回避。
 ……そして、敵陣の攻撃を一通り回避した後は、ケルベロス達の反撃。
 アリアはアイスエイジ、武佐衛門がハウリングを放ち、敵列に少なくないダメージを一気に与ていく。
 そして、綴、ルピナスが。
「この飛び蹴りを、受けてみなさい!」
「この一撃で、氷り漬けにしてあげますよ!」
 スターゲイザーと、達人の一撃の連携で、更に一匹仕留める。更にユグゴトの得物砕き、桜子のコアブラスターが更に一匹を討ち倒す。
 ……2刻で4体。
 更に、うろたえるオーク達。
「全く、自分達の思い通りにならなければ予想外という訳か? ……憐れな。さあ、お仕置きだ。全てを仕置きし、跡形もなくしてやろう」
 と、ユグゴトの宣言に、みるみる内に青ざめる表情。
 ……しかし、最早逃す訳も無く……オーク達は、ケルベロス達の猛攻の前に、なすすべ無く沈んでいくのであった。

●風を纏い
 そして……20匹のオークを全て討ち倒した後。
「ふぅ……終わりましたか。女性達は、無事でしょうか?」
 とルピナスが振り返り、更衣室の方を確認。
 ……ケルベロス達の方を、隠れながら見ている女性達。
 手を振り、無事に終わった事を示すと……歓声を上げる。
「さて、と……取りあえず、僕達は軽く修理したら、退散するとしましょうか……」
 とアリアの言葉に、武佐衛門は。
「……あ、ああ……」
 女性達の裸身を見ない様に、壊した窓硝子にヒールグラビティを掛けて、せっせと修復。
 ……そして、後ろを向いたまま、あかすり屋に飛び込んで、離脱……。
「……?」
 きょとんとしているアリア。
 ともあれ、その他、壊れている所を一通りヒールグラビティを活用し、修復。
 あらかた片付いた所で、綴が。
「大体終わりましたね。後は……折角ですし、私達も、温泉に入って行きましょうか」
 と提案すると、桜子が。
「そうだね! 黒褐色のこの温泉、熱の湯とも呼ばれる位、保温と保湿に優れてる温泉なんだって!」
「……まだまだ寒いですし、芯から温まって行きましょうか」
 ルピナスの言葉に女性陣は頷き……そして、ケルベロス達は、戦闘の疲れを、温泉でゆっくりと癒やすのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年2月21日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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