
●
ふわりふわりと舞うぼたん雪をシル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)は、ぼんやりと眺めていた。
足首まで埋まる雪の冷たさも、頬を撫でる冷たさも、シルは気にしなかった。
まさかここにまた来てしまうとは。
はあっと息を吐き、シルはさくさく雪を歩いていると――。
『こんなところにいたのね』
「…………!」
聞き覚えのある声に、シルは耳を疑った。
『探していたのよ、ずっと』
シルは周囲を見回すが、人の気配はない。
『ずっと、ずうっと探していたのよ』
誰もいないというのに声だけが聞こえる。
これは幻聴だ。そうに違いないとシルは自分に言い聞かせるが、その声が消える事はなかった。
『ずうっと、ずうっと……探していたのよ』
嘘、嘘だ、そんな筈がない。
聞こえない筈の声にシルは耳を塞ぎ、目を閉じ。
だって、だって――。
『まあ……』
さわりと風が吹き、柔らかい雪が頬を撫でる。
『『シル』は、二人もいらないわ』
「――――」
その声にぎゅっと閉じていた目を開けば、青い瞳に映るのは。
――わたしだ。
シルの目の前に立つのは、まるで鏡を合わせたかのような姿。
ただ違うのは、雪と共に揺れる髪に、こちらを見つめる瞳の色。
『さあ『シル』、帰りましょう。山の空気は気持ちがいいけれど、日が暮れてしまうわ』
あり得ない光景に立ち尽くすシルだが、幻聴は消える事はなかった。
目の前に立つもう一人のシルはふわりと冷たい笑みを浮かべ。
『偽者は殺してしまいましょうね、『シル』』
雪煙が舞い、ぼたん雪と共に刃も軽やかに舞い踊った。
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「お前達、依頼に向かう予定がないなら手伝ってほしい」
ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)は足早にヘリポートへとやって来た。
声をかけられ何事かとケルベロス達が集まると、どうやらそれは急を要する依頼のようだ。
「緊急の依頼だ。シル・ウィンディアが、宿敵であるデウスエクスの襲撃を受けることが予知された。急いで連絡を取ろうとしたが、連絡をつけることは出来なかった」
シルと連絡を付ける事は叶わなかったが、場所は分かっている。
一刻の猶予もないとザイフリートは言葉を続け、シルが無事なうちに救援に向かって欲しいと話す。
場所はとある山の中。
「シルは以前この場所で敵と戦った事があるようでな。何か思う所があってそこへ向かったのだろう」
雪が積もりぼたん雪が舞う中、シルは己と同じ姿をしたデウスエクスと邂逅する。
「まるでシルをコピーしたかのような外見のデウスエクス……。お前達が救援に到着するのは、この『コピーシル』とシルが刃を交えるそのタイミングだ」
何故シルと瓜二つの存在が、シルの前に現れ、シルに刃を向けるのかは分からない。
「シルと全く同じ外見のコピーシルは身軽に動き、得物を振るう。恐らく惑わす術も使うだろう。油断すればこちらも痛手を負うだろうから、それだけは注意してくれ」
言いながら、ザイフリートはヘリオンの準備を確認する。
「説明は以上だ」
説明を終え、ザイフリートは並ぶケルベロス達をぐるりと見渡し真摯な言葉を続けた。
「おそらくシルにとって戦いにくい相手だろう。力を合わせて敵を倒し、シルを救ってくれ。頼んだぞ」
言い終えるヘリオライダーの背に出発の準備が完了したヘリオンの音が聞こえる。
説明を受けたケルベロス達はヘリオンに乗り込み、現地へ向かって飛び立った。
| 参加者 | |
|---|---|
![]() 幸・鳳琴(黄龍拳・e00039) |
![]() シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695) |
![]() アルトゥーロ・リゲルトーラス(蠍・e00937) |
![]() 燈家・陽葉(光響射て・e02459) |
![]() 愛柳・ミライ(宇宙救命係・e02784) |
![]() 皇・絶華(影月・e04491) |
![]() ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426) |
![]() アストラ・デュアプリズム(グッドナイト・e05909) |
●
「うそ、こんなことって……」
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)にと対峙する顔はどこまでも冷たく、感情を伺えない。
黒目、黒髪、そして『あの人』に似ている、そんな容姿……。
抜き放たれた刃がぎらりと閃き――、
「シルさん!」
それは上空からの声。降り注ぐ声は聞き間違えようもない人のもの。
迫る刃に見上げる余裕すらないシルだが、ケルベロス達が上空からデウスエクスとの間に割り入ると、さすがに目を丸くした。
「琴ちゃん、みんな!」
「大丈夫っ! シルさんは……私のシルさんは、あなただけ!」
ヘリオンの着地など待っていられなかった。飛び降り二人の間に入った幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)は愛しい人の前に立ち、
「ボクたちが来たからにはもう大丈夫だよ」
アストラ・デュアプリズム(グッドナイト・e05909)は言いながらシルの体をあらためる。攻撃を受けるに到着できた事もあってか、かすり傷一つさえない。
「目の前の『わたし』は、一体……」
シルがダメージを受けたとすれば――その、心。
「大丈夫です、私達が、ついてますから」
「たしかに、似てる……かな? 顔立ちは。でも色が違うし、見間違いはしないよ」
愛柳・ミライ(宇宙救命係・e02784)と燈家・陽葉(光響射て・e02459)が励ますように言葉をかけ、
「待たせたな、シル。もう大丈夫だ」
アルトゥーロ・リゲルトーラス(蠍・e00937)も帽子を押さえて、敵を見据えたまま声をかける。
「ついにシルにも偽物が現れるようになったか。ケルベロスとして一人前の証だな。それにしても、俺以外は皆女子……いやすまん、勘違いしていたわけじゃないんだ、絶華!」
どことなくしみじみと言うリゲルトーラスだったが、皇・絶華(影月・e04491)の無言の視線に慌ててフォロー。
「どうあってもお前はシルと同じ名前のそっくりさんでしかないよ」
絶華の瞳が見つめる先にあるのは、シルのコピーだというデウスエクス。
「およ、黒いシルおねえとな、またしてもワイルドスペースが開かれたのかのう? 今度のワイルドハントは剣が主体のようじゃのう。およ、違うのかのう?」
じっと見つめるウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)だが、かつて邂逅した存在と勘違いしてしまった。存在がどうであれ、敵は敵。
「なんと、シルおねえのコピーの者とはのう。じゃが、どちらにしても気を引き締めて挑まぬといけないのう」
「2人もいらないのには同意しますけどね! そんなに、愛しきれないのです……!」
柔らかい風にウィゼの付け髭がふわりと揺れ、ミライは銀糸についた雪を払いながらも安心させるように笑ってみせる。
「大丈夫です、私達が、ついてますから」
「敵は、本当にシルさんに瓜二つ……惑いはしません!」
続くミライの言葉に鳳琴も言い、仲間達、そしてシルも武器を構えた。
ここで、倒す。
攻撃を妨害されたコピーは突然の妨害者達を前に得物を下げていたが、すと構えなおす。
「偽物? ううん、ちがう、わたしが……わたしが、『シル・ウィンディア』だからっ!」
ぼたん雪は舞い、黒いコピーは再び雪を蹴った。
●
雪煙が舞う。
「シル!」
迫る刃の前にアルトゥーロが立ち塞がる。コピーに狙われるのは明白であった。
が、っ!
「くっ……」
蠍は構える拳銃で受けるが、そのプレッシャーに押されるのを耐え払う。
「いくよ、琴ちゃん!」
振り返り見る必要もない。シルの声に煌めく脚撃に鳳琴が続いた。ヒトならばまともにくらうだろうそれを捌く様を目にアルトゥーロが戦闘態勢を整えると、白翼の靴が駆け抜ける。
狙い定めた陽葉の攻撃が腕を撃つと、仲間達の為にミライは歌う。
手製の靴と共に絶華は炎と共に駆け――、
「なに?!」
炎を纏う一撃は空を切るが、まだ一手。
「シルおねえのコピーの者とはのう。じゃが、どちらにしても気を引き締めて挑まぬといけないのう」
ケルベロス達の攻撃を捌きつつも、コピーの瞳が追う姿は一人。それに気付いたウィゼがシルへとバリアを張り、ミミック・ボックスナイトへりらりと目をやるアストラはスマートフォンを取り出した。
「弾幕薄いよ、なにやってんの!」
慌てずスマホでコメントを素早く打ちながら的確に援護するが、ボックスナイトへの指示も忘れない。
「仲間を守ってね」
こくりと頷くのを目に前を見れば、コピーがすと手を前にかざすのが見えた。――動く。
すると雪が舞い上がり、静かな平原にが吹雪きだした。
「ポンちゃん!」
ミライに応えボクスドラゴン・ポンちゃんが動くとボックスナイトとアルトゥーロも仲間を守る為に前へと出た。
吹雪の寒さは刺すような痛みで、思わずアルトゥーロは眉をひそめてしまう。
「問おう。おまえは何故それほど氷雪の力に拘る? 『シル・ウィンディア』の個性に、それは無いはずだが?」
目前の存在はシルのコピーだという事だが、ヘリオライダーから聞く能力はそれとは異なるものばかり。何故、同じではない。
アルトゥーロが問うその先、デウスエクスは答えない。力ずくで聞けと言うのか。
「大丈夫?」
「主役に早々に退場されては、盛り上がりも何もないからな」
袖や服に張り付く霜を払いながら、答えるアルトゥーロは向ける瞳をシルへ向け見れば、その手が微かに振るえているのが見えた。
それは静かな怒り。
「大切な人達を傷つけた……。あなたは『わたし』じゃないっ!」
ぎいんっ!
刃と刃が打ち合い火花を散らす。
青い瞳が睨む先、それを写す瞳は闇のように、暗い。
戦いは早期決着とはならないようだった。
コピーは攻撃や守りに特化しているようではなかった。かといって百発百中という訳でもない。
「しかしまあ、助けに来ておいてなんだが、俺らの手助けがなくても、シルなら普通に偽物を蒸発させてしまいそうなんだがなぁ」
古めかしい拳銃を構えアルトゥーロはそんな事を呟いてしまうが、相手はデウスエクス。対峙するこのメンバー全員で戦っているこの時点で互角なのだから同程度以上の力はあるだろう。
ならば――やはり、コピーしているのは外見だけなのだろうか?
放つ弾丸は頬をかすり紅線を引くも表情に変化はない。
同姓同名なんてありふれてる。陽葉は弓を構えるがそこに番えるべきものがない。
「君がシルと同名の別人として生きていくなら、それでよかったのに」
言葉なくケルベロス達の攻撃を捌くコピーへと狙い定め、引く弦を、放つ。
「……何故お前はシルを殺そうとする。そうまでして『シル』になりたいのか」
ミライからの癒しを受け絶華はコピーの死角に回る。
「……お前はシルにはなれないよ。どれ程姿が同じでも……例えシルを殺しても」
カタールを手に言う絶華はかつての自分を重ねているのかもしれない。
「黄金色の唐辛子じゃ」
実らせた唐辛子をウィゼは仲間達へと配って対策を講じ、アストラも仲間を癒す。
もしかするとコピーが動揺させる言葉をむけてくるかもしれない。ボックスナイトに攻撃を指示しながら仲間達の攻防を見ていたが、コピーは一言も言葉を発しない。
鳳琴とシルの攻撃を受け、息つく暇さえ与えないアルトゥーロと陽葉の攻撃をも受けても声を上げなかった。雪原に立つコピーは流れる血を拭う事すらしない。
舞う雪がきらきらとコピーに降り注ぐと止まらぬ血はぴたりと止み。
「厄介だね」
「そうだね」
戦いの中、アストラとミライは言葉を交わした。
シルを狙い続けていたコピーだが、厄介と判断したのか後衛にターゲットを向けてきたのだ。ディフェンダーが全でを庇いきる事はできない。
(「家族や自分の姿に似た人に襲われ続けるなんて大変だよね」)
最前で戦うその姿を目にアストラは内心で呟くと、ボックスナイトがちらりとこちらを向いた。
「ボクも少しでも力になれればかな」
こくりと頷くのを目に、仲間達を癒す。
そんな中、絶華は言葉を向け続けた。
それは己の過去。己が弟の影武者であった事、弟になろうとして大笑いされた事。
「私が私以外の何者にもなれないように、お前もお前以外にはなれないよ」
攻撃と共に向けられる言葉に応えはない。コピーは一体何を想うのか。
「鳳琴おねえ!」
「琴ちゃん!」
続く戦いの中、ディフェンダーを掻い潜り、黒い風が抜けていく。ウィゼとシルの声に身構える鳳琴の目前に黒が迫り、白に染まる。
雪だ。舞い上がる雪が隠す。
「大丈夫か!」
「気を付けて」
己を惑わすその攻撃を振り払うべく行動する鳳琴にアルトゥーロと陽葉の声が聞こえる。大切な人や仲間達の戦いの音も。
そして――。
「……っ?!」
視界を遮る雪煙から現れたのは――愛しい人。
『琴ちゃん』
「あ……」
その幻聴に一瞬だけ手が止まり。
純白に紅が散る。
●
ぽたり。
「鳳琴さん!」
「しっかりして」
ミライとアストラが駆け寄り見れば、致命傷には遠い。大事に至らず済んだ様子にウィゼは安堵した。
――だが。
「大丈夫……」
よろりと立ち上がろうとした目前。
「……わたしの、大事な人、傷つけた」
「?!」
ごっ。
鈍い音が響き、コピーは宙を舞う。全ての感情を叩きつけられ吹っ飛ばされたが、倒れる事はなく、着地し踏みとどまった。
「覚悟、いいよね?」
その姿を目に鳳琴が思い出すのはあの日――シルの母親との戦い。
自分の胸で涙する彼女を見て、誓ったのだ。
「必ず守り抜きます!」
「琴ちゃん……!」
受けた傷を癒し、鳳琴は立ち上がる。
「さて、反撃開始だ!」
アルトゥーロは仕切り直しとばかりに声を上げ、拳銃の標準を定め引き金を引いた。
再開された戦いはケルベロス達が優勢となった。
デウスエクスとの戦いは一対一ではまず勝てはしないだろう。だが、シル――いや、ケルベロス達にはデウスエクスが持っていないものをもっていた。
「シルの武器は剣だけじゃないからね。収束砲とか、エアシューズとか、今は持ってないけど杖とか、……僕達との絆、とかね」
そう――絆だ。
陽葉のつぶやきの先、大きくコピーがふらついた。それをケルベロス達は見逃すはずもない。
「《蠍》には毒がつきものさ!」
「……っ!」
精神を研ぎ澄まし、放たれる弾丸はコピーの肩口を貫くと、雪と星の導きと共に陽葉は一撃を叩きつけた。避けようにもその余力さえないのだろう。
(「私だって、なんのために生まれたのかはわからないの。目の前の、黒い彼女はどうだろう?」)
黒い瞳を向ける姿を目にミライは思案する。
彼女は何の為に――。
「でも何をしたいかなら、私にだって」
ポンちゃんと共に最後の攻撃をし、
「我が武技と精霊魔導の競演……特と味わい散るがいい」
転身する絶華は魔法少女の支援を受け雷光の如き猛攻を仕掛けた。
「さあ行くのじゃ、誇り高き魂を持つ英雄。アヒルちゃんミサイル発射なのじゃ」
ウィゼの一声と共にアヒル型ミサイルが発射され、アストラは星型のオーラと共に渾身の蹴りを放つ。
「……、…………」
畳みかける猛攻にコピーは行動をとろうとするも、指ひとつ動かす事も辛そうだ。
「これが、絆の力。あなたには負けない!」
傷を癒す動きさえもままならない状況下、精霊の少女と龍の少女のコンビネーションアタックが炸裂し――。
きいんっ!
甲高い音が響き、弧を描きながら飛ぶ得物はとすりと雪原に突き刺さった。
「…………」
ぽたぽた、ぼたぼた。
黒い髪も、黒いその服も血に濡れるデウスエクスはだらりと腕を落とすと、紅の滴が落ちていく。
受けた傷を庇う力も、離れた場所に飛んだ得物を取りに向かう力さえ残っていないのだろう。
「シルさん」
「シル、最後は任せた。思い残しの無いようにな」
アストラとアルトゥーロは言いながら道を開け、
「思いっきりやっちゃっていいんじゃないかな」
陽葉が言うと、ミライとウィゼも頷き一歩下がる。
「もう一度言う。お前はシルにはなれないよ」
絶華の声はさわりと風に流れ、
「大丈夫、あなたには私達がいます……!」
愛しい声が背を押した。
……ごめん、わたしのせいで。
「あなたの事は忘れない……だから、これで終わりにするね」
さくりと歩き、シルは静かに声をかける。
その声にその存在は何を思うのだろうか。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ……。六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれっ!」
それは全てを終結させる宣言であり、デウスエクスの最期を告げる詠唱。
そして、シルがシルである事を知らしめるもの。
「――――」
血濡れた唇が微かに動き、何かを紡いだように見えたが、シルが放ったそれにすべて飲み込まれていく。
放たれた六芒精霊収束砲が消え去ると、撃ち抜かれたデウスエクスの姿も跡形もなく消えていた。
戦いは終わったのだ。
●
辺りはしん、と静まり返る。
さわりと優しい風が吹き、ケルベロス達の戦いの熱を冷ましていく。
長い戦いの決着にケルベロス達はその場に立ち尽くしてたが――、
「シルさん!」
緊張が一気に解けたのか、へたり込むシルの元へ鳳琴は駆け寄った。
「私は、貴女の居場所はここです」
張っていた気も抜け、力ないその愛しい人を後ろからそっと抱き、伝える思いに微かに背が震えるのが分かる。
――彼女の心を癒せるのなら、支えとなれるなら。
「何度だって……私の胸をお貸しします」
「……琴ちゃん……琴ちゃん……琴、ちゃ……」
大切な人の名を呼ぶ言葉は徐々に崩れ、シルの口からはぼろぼろと嗚咽が零れ出す。
悲しみを吐き出すかのように泣きじゃくるその体をぎゅっと鳳琴は抱きしめた。
その悲しみを耳に陽葉は空を見上げ、あのコピーがコピーではないモノとなれる事を絶華はただ、祈る。
静かな場所にただ鳴き声だけが響き渡るが、吐き出される悲しみも徐々に薄れ。ようやく落ち着いたのか、涙を拭きながらシルは仲間達をぐるりと見渡した。
「……幻聴、もう聞こえないよね」
皆の表情にシルの頬をつと涙が流れ、鳳琴はそっと拭う。
「大丈夫です」
愛しい人は優しく微笑んだ。
「帰ろうよ、シルさん」
「いつまでもここにいても風邪をひいてしまうからのう」
日ごろの感謝の意を表すボックスナイトを傍らにアストラとウィゼは言い、ずれた帽子をぐいと直したアルトゥーロはざくざくと雪原を歩きだす。
「早く帰って温かい飲み物でも飲みましょう、シル先生」
言いながらヘリオンへと向かう陽葉と仲間達の背をシルは見、
「帰りましょう、シルさん」
鳳琴の手を取り、シルも仲間達の後を追う。
花のように舞っていたぼたん雪は、いつの間にか止んでいた。
全ては終わり、ケルベロス達は去っていく。
去りゆくその背を追う姿はなく。愛し子を引き止める声もまた、聞こえる事はなかった。
| 作者:カンナミユ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2019年3月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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