竜牙兵は雪とともに降る

作者:紫村雪乃


 冬の鈍色の空。粉雪がちらちらと舞っている。
 髪に、肩に、雪をのせた人々が街路を行き過ぎていた。これから起こる惨劇を、無論、彼らは知らぬ。ある者は足早に、ある者は談笑しつつ歩みをすすめていた。
 木枯らしの吹く街路。
 寒いが、そこには愛すべき日常があった。今までも繰り返され、これからも繰り返されるであろう貴重な日常が。人々は、そう確信していた。
 が――。
 それは突如起こった。暗灰色の雲を割って、三本の巨大な牙が降って来たのだ。
 アスファルトの路面を割って突き刺さったそれらは、見る間に鎧兜をまとった異形へと姿を転じた。髑髏の顔をもつ不死なる怪物に。竜牙兵であった。
「オマエたちの、グラビティ・チェインをヨコセ」
「オマエたちがワレらにムケタ、ゾウオとキョゼツは、ドラゴンサマのカテとナル」
 そう叫ぶと、竜牙兵は周囲の人々を無差別に殺戮し始めた。飛び散る鮮血と肉、響く断末魔の絶叫。たちまち辺りは地獄絵図と化した。
 その時点で生き残っている人々は悟った。人間の無力さを。
「た、助けて」
 高校生らしい少女が悲鳴をあげた。恐怖で立ちすくんでしまったのだ。
 すると女性の前に男が立ちはだかった。高校生。彼女の恋人であった。
「やめろ」
 震える声で高校生は叫んだ。ありったけの勇気をふりしぼって。
「勇気がアルな、小僧。ガ、そんなモノは無意味ダ」
 哄笑をあげると、竜牙兵は高校生の首を刎ねた。
「イッタダロウ、無意味ダ、と」
 舞う雪の中、竜牙兵の咆哮が響いた。


「街に竜牙兵が現れ、人々を殺戮することが予知されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はいった。
「ヘリオンで現場に向かい、凶行を阻止してください。竜牙兵が出現する前に周囲に避難勧告をしたいところなのですが、そうすると竜牙兵は他の場所に出現してしまい、かえって被害が大きくなってしまうので、それはできません」
 ケルベロスたちが戦場に到着した後は避難誘導は警察などに任せられる。竜牙兵を撃破することに集中できるだろう。
「竜牙兵は何体いるの?」
 妖艶な娘が問うた。和泉・香蓮(サキュバスの鹵獲術士・en0013)だ。
「竜牙兵は三体。使うグラビティは簒奪者の鎌のものに似ています。威力はケルベロスのそれよりも大きいようですので油断は禁物です」
 セリカは警告した。すると香蓮がケルベロスたちを見渡し、
「竜牙兵による虐殺を見過ごす訳にはいかないわ。討伐をお願いね」


参加者
トエル・レッドシャトー(茨の器・e01524)
リィン・シェンファ(蒼き焔纏いし防人・e03506)
ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)
彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)
兎之原・十三(首狩り子兎・e45359)
エリアス・アンカー(鬼録を連ねる・e50581)
交久瀬・麗威(影に紛れて闇を食らう・e61592)

■リプレイ


「肌寒い時期ですよね、そんな中でも竜牙兵は元気に活動しているみたいです」
 白く染まりつつある街を眺めながら、その少女は苦笑した。
 どこかおっとりとした雰囲気のある可愛らしい少女である。宝玉のように煌く碧の瞳が印象的なであった。
「わたくし達ケルベロスにも、安息の時間は無さそうですね」
 少女――ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)はほっと白い息をもらした。
「平穏な日常を崩す竜牙兵たちは許せませんわ。一般人たちを助けてあげましょう」
 行き交う人々を見つめ、彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)はいった。その名のとおり、紫髪紫瞳の可憐な少女である。雪に黒く滲むゴシックロリータ風の衣服をまとっていた。
 決意を胸に紫が天を振り仰いだ。その時だ。鈍色の空に何かが光った。
 ざわりと大気が震えた。まるで災厄の予兆に怯えたかのように。
「いい加減…中途半端な数で来ても、返り討ちにあうって分からないものですかね。まぁ…元が牙では、脳みそとか入ってないのかもしれませんけど」
 空を見上げつつ、浅黒い肌の娘は抑揚を欠いた――いや、虚無的といってもよい声音でいった。舞う雪に溶け込みそうな白い髪を揺らせて。名をトエル・レッドシャトー(茨の器・e01524) という。
「冬は白いものです。それ以外の色はいりません」
「来たか」
 リィン・シェンファ(蒼き焔纏いし防人・e03506)は閉じていた目を開いた。現れたのはアイスブルーの瞳だ。
 そのリィンがまとっているのはゴシックロリータ風の黒のワンピースであった。が、可愛らしいという雰囲気はまるてない。白の世界の中でくっきりと浮かび上がったその姿は凛々しいといっていい。
 触れていた胸元の首飾りから手を離すと、リィンはシュシュを解き、瞳と同色の蒼氷色の髪をポニーテールに結い直した。
 直後である。アスファルトの路面が低く轟いた。続いた衝撃は瓦礫と砂塵を巻き上げ、事態に気付いた人々を恐怖で金縛りにする。あまりのことに叫ぶことすら彼らは忘れていた。
 が、ケルベロスから連絡を受けて待機していた警察官たちは違う。すぐさま避難誘導を開始した。
「させねえぞ、絶対」
 一斉に動き出す人波を掻き分け、精悍な風貌の男はいった。
 人間ではない。オウガであった。額から二本の角が生えている。
 男――エリアス・アンカー(鬼録を連ねる・e50581)は色の鋭い目で黒き大鎌を悠然と掲げる竜牙兵の群れをねめつけた。
「避難誘導は警察の方に任せて、その矛先が一般人へ向く隙のないよう戦いましょう。ロキ」
 若者の傍らを飛ぶウイングキャットに、交久瀬・麗威(影に紛れて闇を食らう・e61592)は穏やかな顔をむけた。
「俺にじゃねえのかよ」
 エリアスが苦笑した。


「やめろ」
 震える声で高校生は叫んだ。ありったけの勇気をふりしぼって。
「勇気がアルな、小僧。ガ、そんなモノは無意味ダ」
 哄笑をあげると、竜牙兵は漆黒の大鎌を振り下ろした。いや――。
 虚無の波が竜牙兵を薙いだ。たまらず竜牙兵が大鎌をとめる。
「誰ダ?」
 問う竜牙兵。その視線の先にあるのは一人の少女の姿であった。
 ピンクの髪。華奢な肢体。妖精めいた美貌。美少女といっていい。
 が、どこかおかしかった。この死地において、どこか現実離れした雰囲気がある。
「無意味な事なんて無いの。その人を愛したから、死んじゃう怖さを超えたの。それはすっごく、大切で素敵な事なの!」
 少女――盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)は叫んだ。そして少年と少女に微笑みかけた。
「素敵な彼氏さんなの。ここはふわり達が頑張るから、二人も頑張ってなの♪」
 ふわりはウインクした。すると軋るような嘲笑が響いた。
「馬鹿ガ。イカニ、貴様ラガホザコウトモ、無意味ナモノハ無意味ダ」
「数秒でも敵の動きを止めた行動、そいつが本当に無駄だとでも?」
 ふん、とエリアスは嘲るように鼻を鳴らした。
「こっちは相手を舐めてはかからねぇぜ、なぁ麗威」
 ニヤリとエリアスは麗威に笑いかけた。麗威が大きく頷く。
「恐怖に立ち向かう姿、素敵じゃないですか。無意味なわけ、ないだろ?」
 麗威が竜牙兵を睨めつけた。穏やかな顔からは想像もできぬほどの鋭い目で。
「格上の敵と百も承知。けど負けるわけにはいかねぇの。エリアス、大暴れしてやろう?」
 麗威が眩く輝いた。その身から白銀の光が噴いたのだ。光――オウガ粒子がケルベロスたちの超感覚を覚醒させる。
「おお!」
 エリアスか拳をアスファルトの路面に叩きつけた。いつの間にかその腕と拳には無数の角が生えている。
 次の瞬間だ。竜牙兵の動きを阻むように、その足元の路面を突き破って角が現れた。
「今のうちだ。逃げろ!」
 エリアスか叫んだ。
「ありがとうございます」
 礼をいうと、高校生が彼女の手をひいて走り出した。その背を見送りながら、ニヤリとエリアスは笑った。
「な、無駄じゃなかったろ」


 びゅうと旋風が渦巻いた。凄まじい殺気が具現化したのである。さすがの竜牙兵ですら一瞬動きをとめた。
「何度も、何度も、迷惑な、骨頭、たちだ、ね。普通に、生きてる人たちを、襲うだ、なんて、許しは、しない、よ」
 殺気の主である少女がいった。ウサミミをつけた浅黒い肌の少女だ。年齢は十三歳ほどだろうか。無表情だが、綺麗といっていい顔立ちをしている。
「……言っても、分からない、だろう、から。その首、もらう、ね」
 少女――兎之原・十三(首狩り子兎・e45359)は抜刀した。
 月喰み十三夜。デウスエクスに対抗しうる殺神武器だ。十三は、その月喰に選ばれた少女なのであった。
「月喰み解放……雷光、纏て、敵を縛れ」
 十三が命じた。すると月喰十三夜から多数の怨霊が放たれた。雷気をまとって竜牙兵を襲う。
「お前たち、の、好きには、させない、よ」
 刹那、一人と一匹が動いた。 リィンとロキだ。
 ロキが羽ばたいた。清浄なる風が戦場に満ちた邪気を払う。
 蒼い眼光を鋭く閃かせて敵を見比べたリィンは、熱泥のような殺意を漲らせる一体の竜牙兵めがけて疾駆した。蒼穹の蒼を映したかのような刃をその頭上へ叩き込む。
「空に舞い踊る白雪を血の紅に染めさせはせん。一体残らず貴様らを此処で排除する! 降り積もるは白き空の便り。今振り下ろすのは我ら番犬の裁きだ!」
 リィンは叫んだ。惜しみなく繰り出された鋭すぎる一撃に、銀に輝く異形の兜が砕ける。その威力の凄まじさに、仲間であるルピナスが舌を巻いた。
「わたくしも負けてはいられません。無限の剣よ、我が意思に従い、敵を切り刻みなさい!」
 ルピナスが命じた。すると無数の光が散った。ルピナスが生み出したエネルギー状の剣だ。
 光の奔流を竜牙兵は大鎌で防いだ。が、防ぎきれるはずもない。その甲冑ごと異形の身が切り刻まれる。
 その時だ。一体の竜牙兵が動いた。飛ぶような速さでルピナスに迫る。
「ヤッテクレタナ、小娘!」
 禍々しく光る大鎌の刃がルピナスを切り裂いた。のみならず、別の一体が投擲した大鎌が旋風のごとき風を巻いて疾り、ルピナスの肉体をえぐる。
 続けて斬撃をくらったルピナスは血煙につつまれてよろめいた。そのために第三撃を躱すことはできなかった。が――。
 三体目めの竜牙兵の動きがとまった。巨大な顎門が食らいついたからだ。
「それ以上はさせません」
 普段はそらしがちな視線をまっすぐに竜牙兵に据え、トエルはいった。その手からは捕食モードに変形したブラックスライムがのび、竜牙兵をとらえている。
「オノレ」
 足をとめられつつ、しかし腕のみで竜牙兵は大鎌を放った。命喰らう刃がトエルの脇腹を裂く。
 激痛がはしったはずだが、トエルの表情は変わらなかった。もっと深く痛い傷をすでに彼女は胸に刻んでいたからだ。
 そのトエルの顔が青白く染まった。彼女の眼前に築かれた雷の壁が放つ光をあびて。ケルベロスたちの傷が完治しないまでも分子レベルで修復されていった。
「私がいるかぎり、誰も傷つけさせはしませんわ」
 まだ紫電のからみつく戦闘用電撃杖を掲げた紫が叫んだ。竜牙兵の針のような視線が飛ぶ。が、紫は怯まない。誰かのために戦う時、彼女の精神は比類なき強さを得るのだった。


「確かにてめらは格上だが」
 エリアスは走った。間合いをつめ、足を跳ね上げる。刃の鋭さを秘めた蹴りが竜牙兵の腹にぶち込まれた。
 さらにロキが襲った。同じ竜牙兵へ鋭い爪を立てる。いや――。
 まだだ。エリアスの攻撃にあわせて麗威もまた跳んでいた。煌く爪先が光流をひきつつ疾り、規格外の重さの蹴りを叩き込む。
「アアッ」
 竜牙兵が吹き飛んだ。その横、同じ速度で走る者があった。リィンである。
「弱った者を斬るのは主義に反するのだが、お前たちは別だ。情けを知らぬお前たちの凶刃に、私の友は倒れた」
 叫ぶリィンは風になった。雪中を舞うのは無音、しかし閃く刃は龍すらすら怯む速さと鋭さをもっていた。月光のごとく流れた一刀が竜牙兵を薙ぐ。
 吹き飛ぶ速度をたもったまま、竜牙兵は両断された。そのまま塵と化して消える。
「さよならなのー」
 演技ではなく、嘲弄しているわけでもなく、本心から愛惜の情をもってふわりは睫毛を伏せた。どうやら、この花の妖精のような少女にとっては残虐な敵であっても愛情の対象であるらしい。
「皆を強くするの!」
 ふわりの手から黒い奔流が噴出した。漆黒の鎖だ。それは地を削りつつ疾り、守護魔法陣を描いた。
「後、二匹、だね」
 十三は竜牙兵を睨めつけた。バニーガールの衣装に似た霊装をまとった彼女の手には血濡れたような赤黒い刀身をもつ妖刀が握られている。
 その妖刀が脳裏で囁くのだ。首を刎ねろ、と。その囁きが弱まるのはデウスエクスと戦っている時だけであった。
 その囁きに衝き動かされているのか、それともその囁きを消すために戦っているのか、もはや十三にはわからなくなりつつある。とまれ、彼女は妖刀をかざした。
「骨の、髄まで、凍らせて、あげる、よ」
 十三から吹雪が迸りでた。それは、どこか雪兎に似ている。氷河期の精霊であった。何者をも凍てつかせずにはおかぬ白流に飲みこまれた竜牙兵の身が白い染まる。
「ともかく一体ですね」
 ルピナスが殺気を華奢な身裡にたわめた。が、その身は満身創痍だ。
「ルピナス様。私に任せて下さいませ」
 紫の指が素早く、軽やかに踊った。魔術的にルピナスの肉体を切開、一時的魔術回路を形成してルピナスの回復を行う。驚くべきことに紫の天才は切開と再生を同時に行うことを可能としたのだった。
「ありがとう。これでまた戦うことができます」
 微笑みを残し、ルピナスは駆けた。その碧眼にいまだ動けぬ敵の姿を映して。
 見返す髑髏の眼窩が何を映したのか、ルピナスは知らぬ。が、不死たる身が仰け反る程のダメージを与えたのは確かであった。
「まだ……これからです」
 トエルが身を仰け反らせた竜牙兵を見やった。どこか虚ろであった彼女の紫瞳が、この時ばかりは熱病にかかったかのように光っている。
 戦え、戦え、戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え――。
 心の裡に飼った妖刀に衝き動かされるようにトエルは自らの指を噛んだ。溢れる血を媒介に魔力を錬成。弾丸と化し、竜牙兵に撃ち込んだ。
「ナ、何ッ」
 竜牙兵がもがいた。着弾した魔力は茨が如く敵の体を蝕み、からみついたからだ。
「ヤッテ、クレル! ガ――」
 別の竜牙兵が両手を振り上げた。その手には二振りの大鎌が握られている。
 怨念開放。怨嗟の声を発しつつ、亡霊がケルベロスたちに襲いかかった。


 もう一体の竜牙兵も自由を取り戻した。その手には二振りの大鎌が握られている。この竜牙兵も怨念を解放するつもりであった。
 そうはさせない。ロキが動いた。尾の環をとばす。
「いいぞ、ロキ!」
 快哉をあげると、エリアスは麗威に目配せした。すると麗威が竜牙兵に組み付いた。そのまま背に負う形で投げ飛ばす。恐るべき膂力であった。
「馬鹿ガ」
 竜牙兵は嘲笑った。いかに投げ飛ばされようが、不死たる彼らにとってはさしたるダメージとはならないからだ。
「馬鹿はどっちだ!」
 エリアスが地に拳を打ち付けた。愕然として竜牙兵が呻く。次の瞬間、竜牙兵は地から突き出した角に貫かれ、息絶えた。
「オノレ!」
 竜牙兵が跳んだ。落下速度を加えた斬撃を麗威の首筋めがけて振り下ろす。
 なんでたまろうか。凄まじい威力に麗威の首の半ばまでがざっくりと裂けた。が――。
 その傷が見る間に癒えていった。麗威のそばに裸のふわりの幻影が寄り添っている。
「ふふ、次はあなたなのー」
 楽し気に、もしかすると哀しげに、ふわりは微笑んだ。
 瞬間、血なまぐさい戦場には似合わぬ涼やかな芳香が流れた。ラベンダーの香りである。
「ナ……」
 ぐらりと、まるで酒にでも酔ったかのように竜牙兵の身が揺れた。
「今です!」
 紫が叫んだ。一気呵成に攻撃すべしと判断し、癒し手から攻撃手へと役割を変えたのである。
 するとトエルが殺戮の権化のように襲った。その手には、彼女の背丈よりも巨大で無骨な大剣が一振り。地獄の炎をまとわせ一閃が竜牙兵を打ち据える。
「マ、マダダ」
 竜牙兵の大鎌が逆しまに疾った。トエルの身を逆袈裟に切り裂き――。
 いや、とまった。横からのびた手が竜牙兵のそれを掴んだからだ。
「螺旋の力よ、敵を破壊せよ!」
 手の主であるルピナスが螺旋力を流し込んだ。竜牙兵の腕が爆裂。がちゃりと大鎌が地に落ちた。
「マ、マダダァ!」
 竜牙兵が吼えた。愚かであるが、その執念は恐るべきものである。
 が、その執念を上回るものがあった。十三が背負った呪いの重さである。
 神殺しの宿命を背負った一撃は、まさに神ですら視認できぬ。十三の刃が竜牙兵の残る腕を断ち切った。
「ヤッタナ、番犬ガ!」
 竜牙兵が絶叫した。その顔面にに、ぴたりと刃が突きつけられる。
「やったが、どうした?」
 竜牙兵ですら凍りつきそうになるほどの冷たい目で見据え、リィンはいった。
「お前たちにくれてやる慈悲など、私はとうの昔に捨て去ったのだ」
 一片の迷いもなく、リィンは竜牙兵を両断した。


 戦いは終わった。が、どこかエリアスは不機嫌そうである。
「ロキロキうるせぇなぁ、しかもなんか主人より懐きやがって…」
 ロキと戯れる麗威をエリアスは睨みつけた。なんか面白くない。
 するとロキが外した麗威の眼鏡を咥えて逃げた。
「ザマァみろ」
 エリアスがほくそ笑んだ。ルピナスもつられて微笑む。その背に、そっとコートがかけられた。
「冷えた体を暖めてから帰還するのも悪くないだろう」
 リィンがカフェラウンジへ誘った。するとエリアスが目を輝かせた。
「あるのはコーヒーだけじゃないんだろ」
「当然だ」
 リィンは小さく笑った。

作者:紫村雪乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年2月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。