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「皆のお陰で、ミッション地域となっていた地域の奪還が出来たよ」
改めて感謝を、と高田・冴(シャドウエルフのヘリオライダー・en0048)は頭を下げる。
「バレンタインも近いことだから、今回は岩手県奥州市の復興もかねてバレンタインの催しを開くことになったんだ」
今は住人がいないが、このイベントを通してイメージアップを図りたい……冴は言って、奥州市について説明する。
「奥州市はかなり冷え込むが、温泉が豊富なのが良い所だ」
今回は温泉施設のヒールをし、ヒールが終わり次第イベントを行うことになる。
「せっかくだから温まるものをと思ってね、チョコレートフォンデュとショコラショー……飲むチョコレートというのはどうだろう?」
冷えた空気の中、足湯で足を温めてショコラショーでお腹を温める……外は寒くても、ぽかぽか楽しいイベントになりそうだ。
イベントの進行の手伝いも大歓迎、純粋に楽しむのも大歓迎だと冴は言う。
「ファウンテンの道具も多めに用意できるようだから、ミルクチョコだけでなく、ホワイトチョコ、ビターチョコ、そしてルビーチョコがある」
温かいチョコレートの滝にくぐらせる食材もたっぷり用意している。
「ショコラショーも何種類かある予定だ」
ショコラショーは『ミルク』『ホワイト』のほかに、ミルクのショコラショーにスパイスを混ぜてチャイ風にした『スパイス』、ホワイトのショコラショーにに和の風味を足した『ほうじ茶』『ゆず抹茶』の用意がある。
「どれも熱々だから、ヤケドには気を付けないとね」
ショコラショーをラッピングして、大切な人へのプレゼントにすることも出来るだろう。
「一年に一度のイベントだ。素敵な思い出に残る一日にしたね」
冴は言って、微笑むのだった。
「あったかいですねぇ……極楽です」
「足湯が温かいですね。これも誰かのヒールのお陰かな?」
霧依の手には抹茶のショコラショー。アルフレッドはスパイスだ。
「飲んでみますか?」
「どうぞ」
アルフレッドは交換――ふと気が付いて手を止める。
(「これっていわゆる間接キスじゃ?」)
アルフレッドは霧依の様子を伺うが、霧依はすまし顔。
……気恥ずかしさを覚えているものの、お姉さんっぽく動揺は見せないのである。
「いただきます」
そんな霧依の様子に悩むだけ損と判断して、アルフレッドはカップに唇を寄せるのだった。
「温まる……」
眠たげな表情のアラドファルは、眠気覚ましにショコラショーを。
アラドファルの隣に座る春乃は濃厚なカカオの甘さに体がぽかぽかだ。
「これも……だめ、絶対寝ちゃう……」
ゆず抹茶の香る和の癒し効果に再び眠たげなアラドファルへ、春乃は言ってみる。
「アルさん、もう寝ちゃうの? わたしをひとりにしていいのー?」
「一人にしない」
そんな言葉が嬉しくて、二人は飲み物を分け合う。
身体を離さず二人は空を見上げて。
「あの日から始まったね」
春乃の呟きは、一年前のバレンタインを思い出して。
大事な約束を交わしたあの日に思いを馳せ。
「何があっても、きっと来年も君と笑いあってるよ、ね?」
来年もチョコを食べていたいと、二人は寄り添う。
クラリスが爪先を足湯へ差し込むと、ほわっと溜息が漏れる。
勇、記も入り、スプーキーは彼女たちに腰掛けを渡した。
勇はミルク味を一口飲むと、その濃厚さに目を見開いた。
「……わ、美味しい」
クラリス・記のショコラショーの香りが鼻をくすぐる。
「クラリスさん達の和風も、良い香りだね」
「……うぅん、贅沢……!」
「素朴な御茶の香りと甘いショコラの絶妙なこと!」
スプーキーは巧みなレビューに粉末購入の決意を固める。
自分たちがフォンデュされてしまいそうと言う記にクラリスは。
「私達このまま溶けちゃうかも」
「クラリスさんはルビーチョコに浸した愛らしいハートのホワイトマシュマロ――」
勇はミルクチョコたっぷりの虎猫模様のバウムクーヘンなら、スプーキーはブランデー潜ませた大人ビターに塩味クラッカー。
夢見るように言ってから、記は。
「美味しそうすぎません?」
生まれ変わったら猫になる勇はその言葉にうなずいて、記はカラフルなフルーツのようだと思う。
クラリスの吐息はショコラで甘く。
スプーキーは粗塩の乗ったクラッカーにビターチョコを絡ませて一口。
「美味しいね」
竜鱗を晒しているから、スプーキーのつま先から温度は伝わる。
(「僕が……」)
成長出来ているのは彼女たちのお陰だと密かにスプーキーは思い。
いつまでも浸かっていられるほど心地良い足湯のお陰で、帰り道の寒さもへっちゃらそうだとクラリスは思う。
「ほうじ茶のにしたけど……少し飲んでみるかい?」
「いただこうかな」
ベルンハルトは受け取って一口――間接キスだと気が付いて赤くなると、兎夜は笑みを浮かべる。
ベルンハルトはフォンデュしたマシュマロを差し出し。
「熱いから気をつけてな」
兎夜は受け取り、口に運ぶ。
「わたしからも」
ベルンハルトへ苺のフォンデュを唇に挟む兎夜。
「それはちょっと、その……」
大いに躊躇って迷って。
意を決して、そっと口を近づけるベルンハルトだった。
「足、気持ちいいな!」
ラグナは、足湯にはしゃいで千梨に言い――不意に顔を上げて。
「疲れ取れたか? 癒された?」
きょとんとする千梨――しばらくして、自分が少し前に呟いた言葉のことを思い出す。
心身が温かいのは足湯のお陰だけではない……千梨は頷く。
「うん……疲れは取れたよ」
一転、ぱあっと表情を明るくするラグナ。
「癒されるが、もしも助手が手ずから、チョコをくれたならもっと効くかも知れないなぁ」
冗談めかしていたが、ラグナは更に表情を華やがせて。
「そしたら、俺、チョコ作るな! 俺は有能な助手だから、期待して待ってていいぞ!」
ラグナの勿忘草揺れる髪を撫でると、くすぐったそう。
「期待しているとも。ラグナはいつだって、最高の助手だからな」
「そんなの、決まってる! だって、最高の探偵の助手なんだから!」
「私、足湯に入るのは初めてなんですが、良いものですね」
「そういえば、こうして出かけるのは久しぶりになりますねえ……」
ビターなチョコフォンデュにフルーツを少しずつ。
「伊織のビターと果物の組み合わせ、美味しそう」
「ビターは果物系とよく合いそうですね」
アンセルムと千代の目の前にはルビーチョコの滝。
「どうしよう、すごく贅沢な事をしてる気分……幸せってこういうのを言うんだね……」
千代はポテトチップスやクラッカーにチョコを絡め、甘じょっぱさを楽しむ。
「癖になりますね」
ルビーとビターを楽しんだ後は、ショコラショーでのんびりすることに。
「柚子とチョコレートって合うんですね。美味しいです。お腹も足もポカポカになりますね」
アンセルムはカカオの風味を存分に楽しむ。
「これは火傷しそうな熱さです……」
遥は用心深く冷ましてから一口。スパイスのお陰か体が温まる。
「不思議な香りがするね」
甘いものでおなかいっぱいになるまで、『蔦屋敷』の三名はゆっくりとした時間を過ごす。
「このほうじ茶が気に入った。しかしさくらの柚子抹茶も良さそうだ……どれ、交換してみぬか?」
「ぁ、これってもしや間接キ………」
「ん、どうした、顔が赤いぞ?」
「な、なんでもないのよっ」
――雪のちらつく中、二人はとろける甘さと温かさの中にいる。
「でも、一番あったかくなる方法は、あなたもわたしも同じみたいね」
人目もあるので肩を抱くことは憚られるが、このくらいならとヴァルカンがさくらの指に指を絡ませれば、鼓動が伝わるようで。
この時間が長く続けば良い……そんな思いを込めて、さくらは別のショコラショーを注文するのだった。
二人分のショコラショーを手に、イブはアイビスの待つ足湯へ。
「嬉しいのう」
足湯に浸かってぼうっとしていたアイビスは、ショコラショーを受け取って嬉しそう。
(「しかしなあ」)
アイビスが横目で見やると、華奢なイブの肩は寒さに縮こまるようで頼りなく。
「寒ないか?」
訊きながらもアイビスが肩を抱けば、少し寒かったイブはびっくり顔に。
「おうちでもこうして二人で飲みたいね?」
あまあまなショコラショーに夢中だったイブの視線はアイビスへ。
照れくさそうな、それでいて幸せそうなイブの笑い顔を見下ろして、アイビスも心の奥から温かな気持ちが湧き出てきた。
「ハッピーバレンタイン、アイビス」
「ええいちんちね」
ここにいる人々にとっても幸せな一日になってほしいと願いながら、二人は視線を交わすのだった。
人のいない足湯スポットを見つけて、穣は腰掛ける。
「本当はなにか手伝ったりした方が良いのかもだけど……今日は……貴男と一緒にゆっくり出来たらと……ただそれだけ」
陽治はショコラショーを見。
「ショコラショー、って言うのか。なんだか可愛らしい名前だなあ」
口にすればスパイスの香り。寄りかかる穣の体を受け止めて、互いの体温を分かち合う。
「ひと仕事終えた後の一杯は格別だな。傍に大切な奴が居るとなればなおの事、身も心も温まるモンよ」
陽治は脚を絡め合って。
「そんな温もりを、穣にもお裾分け、ってな?」
大切な人の温度を、誰にも邪魔されずに受け取ること。
一番の贅沢に、穣の体温は上がって行く。
「今だけは独り占め……させてね。今だけで良いから」
芯から温まれば眠くなって、うとうとする穣。
穣のことを、陽治はずっと支えていた。
「足湯ショコラと聞いた時はてっきり足湯がチョコレートになっているのかと思ったが全くそんなとこはなかったな」
はっはっは、と真顔のシャルフィン。
マサムネが思い出すのは初めてのデートのこと。
「まさかの裸の付き合い、温泉のお風呂だったけど今回は足湯だね」
「あの頃はお互いの距離に初々しさがあったな」
「シャルフィンの事を好きな気持ちにまだ変わりはないよ?」
「愛してるぞ」
照れくささを押し殺してのシャルフィンの言葉。
「好き、愛してる」
マサムネはそう返す。
「あの時のチョコフォンデュで距離が縮まった気がする。意外とチョコに縁があるのかもしれないな」
シャルフィンはおでんの具をフォンデュして、マサムネへと差し出す。
「マサムネも食べるか?」
「奏君、どの組み合わせいく?」
「色々あるのだね。ビターにポテチかな?」
奏の言葉に従ってリーズレットは奏へと差し出す。
「あ~ん♪」
――リーズレットの指ごと口に含む奏。
「美味しいよ」
チョコを舐め取り笑顔の奏に赤面するリーズレット。
「わ……私はルビーに苺で試そうかな!」
奏は苺にルビーチョコを浸して、リーズレットの口元へ。
(「食べさせてくれるのか! 頬が熱い! 心臓が持たない! キュン死する! 食べるけど!」)
途端に騒がしくなるリーズレットの脳内。
食べさせてもらえば、美味しさに笑顔がこぼれる。
幸せな時間の中、奏はリーズレットの名前を呼んで。
「誘ってくれてありがとうな」
「此方こそ一緒に来てくれてありがと」
リーズレットの頬のチョコを拭い、手を握る奏。
甘い時間は、まだまだ続きそうだ。
「寒い中で足湯って、ちょっとした贅沢な気がいたします」
不思議な感覚に一華は呟く。
「わたし、ここから離れたくありませぬ」
根っこを生やした様子の一華に、万里は笑う。
「狐って寒さに強いんじゃねえの?」
賑やかさを楽しく思いながら、万里はチョコフォンデュへと一華を誘う。
「フォンデュはどれ……たいへん、ルビーがある」」
あの話題のルビーチョコ! と色めきたつ一華。
不器用な一華が溶けたチョコを衣服にこぼさずにいられるかどうか。
「今度は大丈夫か? 汚れそうなら代わりにやるが」
「くくく……万里くん、わたしはもう食べ方下手なの卒業しましたのよ!」
焼鳥だって黒文字で葛餅だってお茶の子さいさい、フォンデュだってと自信満々の一華。
「……大丈夫、な、はず」
串が震えているのは武者震い、と言い張る一華。
「ほら一華、早くしないといつまで経っても食べられないぞ?」
ポテチにチョコをまぶして食べながら、万里は笑うのだった。
「そう言えば、私は足湯初めて……かも?」
「私は初めてではないけれど、誰かと来るのは初めて」
アイザックの膝の上でラーシュは尻尾を浸している。
マイヤが目に留めたのは、ルビーチョコ。
「わあ、ルビーだって! こんなの初めて見たよ」
「無難にミルクチョコとバナナで!」
「ルビーチョコが気になるから、ウエハースにしてみようかな」
キアラとセレスがチョコに具材をくぐらせる中、アイザックは鈴へ。
「鈴ちゃん、食べたい物があったら言ってね?」
「マシュマロさんにルビーさんがいいなー」
アイザックからチョコレートを受け取った鈴は、満面の笑みで受け取って。
「おいしー! 鈴もアイちゃにあーんしたいな!」
鈴はアイザックと笑みを交わしてから、今度はセレスへも。
「鈴ちゃん、ありがとう」
チョコレートの個性は様々だから、好みも分かれやすい。
「パイナップルにミルクチョコが美味しかった!」
にこにこ笑顔のマイヤが〆に選んだのは、ポテチだ。
「ラーシュなら止めてくれそうだから……マイヤちゃん、やっちゃいますか?」
「いっちゃお!」
「鈴もポテチする!」
「ホワイトチョコ試してみましょうか!」
アイザックもやる気満々で、セレスはラーシュへ。
「しっかり止めてあげてね、小さな騎士君?」
カトレアは足湯に浸かりながら、フォンデュを楽しむことに。
「足湯が凄く気持ちよくて、極楽ですわ」
「全部試してみたいけど、欲張りすぎかな?」
ドラゴンフルーツが目に留まって、陽葉は試しにミルクチョコにつけてみる。
「カトレアも試してみる?」
「陽葉も、ほら。食べてみて下さいませ」
新鮮なフルーツにチョコの甘さが相まってとても美味しくて、陽葉は声を上げる。
「本当だ、美味しい!」
お腹を満たした後、陽葉はショコラショーのほうじ茶を二人分購入することにした。
菓子串とフルーツ串の二刀流でフォンデュに挑むエリアスを麗威は二度見。
「エリアス、お前刺しすぎじゃない?」
それが彼らしさなのかもしれないと思いながら、麗威はバナナにチョコをつけて。
「美味いなフォンデュ!」
目を輝かせる麗威。
ご満悦のエリアスの表情が強張ったのは、ポテチを発見したから。
「……これにもチョコかけんの? まじかよ」
引きつつ挑戦――溢れ出る旨さに、エリアスは目を見開く。
「これが旨いなら唐揚げもいけるだろ!」
麗威はタッパーを開けて一口大の唐揚げにたっぷりのチョコを。
「ほら、あーん!」
エリアスの口に消える唐揚げ。
「どうだ?」
尋ねる麗威の前で、エリアスは真顔になり。
「唐揚げはプレーンがいい……」
「……だろうな」
麗威は真似せずキウイを食べて、「うまっ」と歓声を上げるのだった。
梢子はショコラショーを見下ろして、その甘い香りを嗅ぐ。
「へぇ、ちょこれいとの滝を直飲みするのが夢だったけど、これもいいわね!」
梢子が選んだのはほうじ茶のショコラショー。は、なんだか優雅な気分になってくる。
足元を癒す足湯はもちろん心地よくて、チョコレートはたくさん。
「バレタラシイデーってなんて素敵な催しなのかしら!」
満足そうな梢子は、ビハインドの葉介へ目を向けて。
「足湯は無理ね、足ないから……代わりに温かいほうじ茶でも飲む?」
ほうじ茶を分けて、のんびりとした時間を……、
「あ、あの桃色のちょこれいとの滝も気になるわ!」
ダッシュする梢子を、慌てて葉介は追うのだった。
曄の背中には愛しい人の体温。
那智は自分の前、脚の間に曄の体を収め、粉雪から守るように後ろから抱きしめていた。
「寒くない?」
尋ねる那智の唇は曄の耳の後ろへ。
耳にかかる熱は曄を落ち着かなくさせるが、不自由な姿勢も思いの外悪くないものだった。
「お口開けて」
甘やかに那智が言えば、曄は雛鳥のような素直さで唇を開く。
そこに差し出されたのはルビーチョコのウエハース。
「甘……いけど酸っぱいな。不思議な味」
「じゃあ今度は甘いのを。味、試してみて」
曄が振り向いた途端、那智は曄の唇を食む。
那智は曄の頬に触れ、唇のチョコを舌で掬い、唇を啄んだ。
曄は那智のコートの中に顔を埋め、責める気持ちは握りしめた拳に示す。
恥じらう姿がいじらしくて、好きで、だいすきで。
那智は唇の余韻を覚えながら。
「――あぁ、美味しいね……。もっと食べる?」
いる、という答えが聞こえるまで。
那智は愛しさを胸いっぱいに抱いて、曄を見つめるのだった。
作者:遠藤にんし |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年2月13日
難度:易しい
参加:39人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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