雪の戦

作者:雨音瑛

●冬の遊び
 手に取った雪を両手で固め、敵チームに向かって投げる。
 その遊びの名は『雪合戦』。
 東北のとある公園では、今日も楽しい戦が繰り広げられていた。
「雪玉製造班! 玉が足りないよー!」
「盾破損ー!」
「ごめん、当たっちゃった! 戦線離脱〜!」
 はしゃぐ子供たちは、必死ながらも楽しそうだ。
 小学校の1年生から6年生の生徒たちが2チームに分かれ、公園内を駆け回っては雪玉をぶつけている。
「ね、ね、お姉ちゃん。あれ何?」
「はあ? あんたそんなところにいたら雪玉が当た――」
 姉の言葉は、地面に突き刺さった竜の牙でかき消された。
 幸いにも姉弟ともに無事だ。驚きのあまり動けない弟の手を引き、姉はすぐに駆け出す。
 その判断は正しい。が、ほんの数秒、遅すぎた。
 姉が引く手の重さが、急に増加する。振り返れば、背をざっくりと斬られた弟、そして剣を手にした竜牙兵の姿が目に入った。
「グラビティ・チェインをヨコセ」
「な――」
 逃げられない、と思考が停止した姉に向かって剣が一閃。弟に重なるように、姉が倒れた。
「やべぇ、竜牙兵だ、逃げろ!」
 上級生の指示のもと、生徒たちはあちこちへ逃げる。しかし竜牙兵にとっては大した問題ではないようで、一人、また一人と命を落としてゆく。
「グァァァハハハハハハ!!」
「ドラゴンサマのカテとナレ!」
 もはや聞こえるのは、竜牙兵の咆吼だけ。
 誰かの作った雪玉は、赤い血に塗れていた。

●戦場へ
「――っていうのがヘリオライダーから聞いた予知の内容。よーするに、小学生が公園で雪合戦してるところに竜牙兵が来るから撃破してね、ってこと」
 スマホのメモに時折視線を落としながら話すのは、名雪・玲衣亜(不屈のテンプレギャル・e44394)。
「今回は竜牙兵が現れる前に避難勧告しちゃダメなんだって。現れる前に『避難してー』って言うと、竜牙兵が他の場所に出現するとか」
 そうなれば事件の阻止ができず、被害が拡大してしまう。
「あ、でも大丈夫。付近の交番に連絡してあるから、避難誘導はそっちに任せられるみたいなんだよね。ってワケで、ケルベロスは竜牙兵との戦闘に専念できまーす」
 現れる竜牙兵は4体で、公園の中心近くに現れる。牙の落下で怪我をする者はいないというから、ひとまずは安心だ。
 4体のうち、ディフェンダーが2体、スナイパーが2体。全員がゾディアックソードを装備しているという。
「戦闘を仕掛ければ、ケルベロスを無視して生徒たち狙ったりはしないみたいだからさ。素早く戦闘を仕掛けるのがいいんじゃないかなーって」
 また、戦闘開始後、竜牙兵は撤退しないとのこと。逃走阻止も不要となれば、まさにケルベロスの仕事は竜牙兵の戦闘のみとなる。迅速に、確実にこなしたいところだ。
「あ、そうそう。せっかくだし、竜牙兵倒したら雪合戦しない? もちろん、グラビティなしでね」
 と、玲衣亜は悪戯っぽく笑った。
 ――そういうわけで。
 竜牙兵との戦闘後は、いざ雪の戦へ。


参加者
浦葉・響花(未完の歌姫・e03196)
一之瀬・瑛華(ガンスリンガーレディ・e12053)
君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)
岡崎・真幸(花想鳥・e30330)
空野・紀美(ソラノキミ・e35685)
尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)
名雪・玲衣亜(不屈のテンプレギャル・e44394)
峰・譲葉(崖上羚羊・e44916)

■リプレイ

●雪の日
 積もった雪を踏みしめ、男は両腕を打ち鳴らした。男の名は、尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)。笑顔が心強いレプリカントである。
「小さな個体が遊んでんだろ、邪魔すんじゃねえよ」
 彼の言う小さな個体とは、子どものことだ。警官の指示に従って避難する子どもたちを見遣り、出現した竜牙兵に向かって駆け出す。
「!」
「直せねえくらい、壊してやるよ」
 あまりの気迫に仰け反る竜牙兵に、広喜はいっそう迫って拳から地獄の炎を放った。炎は竜牙兵の肩口に纏わり付き、青く蠢く。
「……本当ニ、子どもが好きなノだな」
 そう言って、君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)は妖精弓「彩光」から一本の矢を放った。整った顔立ちが見つめる先は竜牙兵ではなく、共に戦場に立つ岡崎・真幸(花想鳥・e30330)。矢は柔らかに真幸へと突き立てられ、彼に加護を破る力を与える。
 ビハインド「キリノ」は、広喜が攻撃を食らわせた個体へ雪の礫や空き缶をぶつけにかかった。
 それらを打ち払った竜牙兵は、子どもたちではなくケルベロスたちを見定めた。他3体の個体も、子どもを狙うのを止めてケルベロスを注視している。
「刃向かうナラ、キサマラから葬ってクレル!」
「ユクゾ!」
 凍てつくオーラと弾丸が飛来する中、竜牙兵の前衛に耐性が与えられた。
「たまには泥臭く行きましょうか」
 あまり精悍な方ではないのだが、このような戦闘に慣れ親しんだのは誰のおかげか。
 微笑むは年齢不詳の淑女、一之瀬・瑛華(ガンスリンガーレディ・e12053)。靡く髪を払った腕で銃を抜き、そのままオーラの弾丸を受けて周囲を見遣った。
「逃げ遅れはなさそうですね」
 ならば、と向けた銃口の先に見えるは剣を手にした竜牙兵。
「……捉えました」
 軽快な音ひとつ、竜牙兵の眉間に風穴が開く。
「うっわ、えーかサンかっこいー!」
 ぱちぱちと拍手を送る名雪・玲衣亜(不屈のテンプレギャル・e44394)の手には、オウガメタルくん1号が輝いている。
「アタシも負けてらんないな、っと。行くよ、オウガメタルくん1号! 命中率上げるよー」
 呼びかけに応じて現れた光の粒子が、前衛の前に降り注ぐ。
「続けられる人いる?」
「それじゃ、私が」
 進み出たのは、黒豹の獣人――ではあるが、常に人型を取る浦葉・響花(未完の歌姫・e03196)だ。響花が爆破スイッチを押し込むと、雪をも巻き込んだ極彩色の爆発が派手に起きる。
 瑛華の攻撃で足止めが、玲衣亜の援護で命中力の向上が見込める。
 であれば、と真幸は仏頂面のまま惨殺ナイフ「ミサキ」と「マキナ」を両手に握った。
「お前らを殴れるなら何でも良いんだがな……ガキどもは守らせてもらうし、ぶっ潰させてもらう」
 殴るような斬撃が、竜牙兵の関節に刻まれてゆく。
 本人は隠しているつもりだが、真幸は可愛いものが、そして子どもが好きだ。未成年となれば庇護対象とみなすし、相手が幼ければ幼いほどいっそう意識は強まる。
 ボクスドラゴン「チビ」の体当たりで、つい先程与えられた加護が剥がれた。
「まだまだいっくよー! ……もー、どっかにいっちゃえ!」
 空野・紀美(ソラノキミ・e35685)が加速する竜槌を振り回すと、ふわふわのストロベリーブラウンヘアがふわりと持ち上がる。夜空の瞳は輝きをたたえつつも竜牙兵をしっかりと映し込んでいる。
「せーっかく! 楽しく遊んでたのに! じゃまするなんて許せないよねっ」
 叩き込んだ一撃で、竜牙兵は短い二本の角を持つウェアライダー、峰・譲葉(崖上羚羊・e44916)の前に弾き出された。
「ゆずゆずさんっ!」
「ああ、任せろ紀美!」
 力強く応える譲葉の手には、如意棒。
「せっかく積もった雪で遊ぶ予定があるんだ、お前達に荒らされるのは嫌なんでな……大人しくさっさと倒されてもらおうか!」
 少しでも子どもたちに手出しさせるものかよと、勢いに任せて如意棒を振るい、地面へと多々見つけた。

●お仕置きたいむ
 確実に、1体ずつ。与える状態異常と傷は多く深く、受ける状態異常と傷は素早く消し去って。
 ケルベロス優位に進む戦闘ではあるが、些細な綻びから総崩れになることもあり得る。
 そうなる前に、決着を。眸は瞬きをし、言葉を紡ぐ。
「フィールド生成……これより攻撃ノ威力向上に貢献すル」
 自身の周囲に光の回路を展開した。雪に反射するその色は、白銀そのもの。
「行け、広喜。その力、見せテくれ」
「ああ、任せろ眸!」
 光踏みしめ、広喜は腕部換装パーツ八式を振りかぶる。
 広喜と眸は、量産型であったか否かの違いこそあるものの両者ともにかつてダモクレスであった。
 しかし、今はケルベロスとして人々を守る、地獄の炎を灯したレプリカント。
 信頼は厚く、決意は固い。
 雪を蹴って跳躍した広喜は、加護を発動させながら腕部換装パーツ八式を振り下ろした。
「――!」
 断末魔を上げる暇すら与えず、確かな手応えと骨を砕く音は撃破を示していた。
 事実、動かなくなった骨の兵は足元に横たわっている。
「よし、1体撃破だぜ!」
 なれば、キリノが金縛りにした個体が次の撃破目標だ。
「グヌ……!」
「フン、我ラ全てを倒してカラ喜ぶのダナ!」
 飛来する星辰のオーラと拳は、前衛に。譲葉と眸が紀美と広喜を庇い、振るわれる拳を瑛華が受け止めた。また、瑛華と対峙する個体に癒しのオーラが飛んでくる。
 しかし瑛華はまるで意に介さず、それどころか気品のある笑みを浮かべてバトルオーラ「宿命」の光を拳に集わせた。
「お返しです」
 売り込まれた拳は、竜牙兵には視認できない程の速度だ。
「ガ……ッ」
「いい拳ね。でも、無理はしないようにね?」
「ありがとうございます、浦葉さん」
 響花によって生成された満月球体が、瑛華を包み込んだ。盾役をする以上無傷では済まないのだから、癒し手によるヒールは有り難い。
「なるほど、次の個体には足止めが付与されて無いか」
 公園の植え込み、その縁に立った真幸は樹木を蹴って空中へと出た。髪に咲く赤、白、黄の彼岸花が揺れる。
 かつてドラゴンに関係するデウスエクスを憎んでいた真幸であるが、今では色々あって落ち着いている。
「だが、竜牙兵。お前らは別だ」
 無表情ともいえる顔で告げられた言葉は、普段の「キッツイ」口調よりもさらに厳しさを伴って。
 星屑を纏って蹴りつける速度も勢いも、先程の言葉をより強く印象づける。
 チビのブレスが吐き出されると、紀美は右手を指鉄砲の形にした。
「つぎはわたしの番っ!」
 人差し指に輝くネイルは、射手座のモチーフ。
「ばきゅーんっ! わるいこは飛んでっちゃえ!」
 ひときわ強くネイルが輝き、魔力の弓矢が放たれる。煌めく光は真っ直ぐに、確かに竜牙兵を貫こいた。
「よーし2体目っ! なゆきちさん、次はあっちだよ!」
 手を振り、友人である玲衣亜に声をかける紀美。
「おっけ、任せてきみきみ! 子どもを狙うようなずるくて悪いやつは――」
 超仲良しの友人に合わせるのだ、外すわけにはいかない。
「お仕置きたーいむ。ほーれ、行ってこーい!」
 玲衣亜は、肩に乗せていたハリネズミくん(実はファミリアだったのだ)を思いっきり投げつけた。狙いは、オーラを纏った竜牙兵。
「ちょいちょい回復とかしてきくるから、めっちゃ邪魔なんだよねー。耐性もついてたりするしさー」
「なるほどな、それじゃこれをこうして……こうだ!」
 譲葉の阿頼耶識から溢れた光が、前衛に浴びせられる。とたん発生した翼は、加護を打ち砕く力として発露することだろう。

●残るは
 回復の手が空いたと見て取るや、響花は戦列から飛び出して竜牙兵の前に出た。
「躊躇わず…討つ」
 響花の手足、その温度が急速に下がる。わずかに腰を落としてからの蹴り、それによって触れたところから熱を奪い凍傷を引き起こす。恩師から教えてもらった特殊な打撃だ。
「何が『ドラゴンサマのカテとナレ』よ。貴方達が自ら糧になりなさいよ。ドラゴン様だってちっぽけなグラビティチェイン貰ったって嬉しくないと思うわよ」
 腹部を凍らせた竜牙兵に、響花が言い捨てた。
「それじゃハリネズミくんもいいとこ見せてみよっか」
 笑いかける玲衣亜に、ハリネズミくんは「また!?」と言わんばかりに目を丸くする。玲衣亜の魔力を受けて飛ぶハリネズミくんは、竜牙兵の眉間に見事命中。ゆっくりと倒れて行く竜牙兵はそのまま起き上がらず、砕けては消えていった。
「それじゃ次はゆずゆず、よろしくー!」
「おう、畳みかけるぜ!」
 師範の言葉を脳内で復唱し、譲葉は竜牙兵の懐に潜り込んだ。
「ナニ!?」
「てめぇの腹、がら空きだぜ」
 にやり笑い、アッパーカットの要領で打ち込まれた一撃は首を直撃。
 手応えはしっかりとしたものであったが、拳骨の痛みを思い出して思わず苦い顔になる譲葉であった。
「続きますよっ、ゆずゆずさんっ!」
 飛び出した紀美の手に見えるは、攻性植物。譲葉は紀美に場所を明け渡し、竜牙兵が攻性植物で締め付けられるのを見遣った。
 氷晶ガントレットのエンジンを急加速した広喜の拳が、攻性植物の戒めから解かれた竜牙兵の頭部に叩き込まれる。よろめく竜牙兵を追う枝や雪の塊は、キリノが飛ばしたものだ。
 眸も地獄の炎をバトルオーラ「顕現型闘気」に織り交ぜ、竜牙兵を弾くように叩き込む。
「クッ……残るハ我ノミ、ダト……!」
 焦る竜牙兵は自身の傷と状態異常を消し去ろうとした。が、麻痺が発動したのだろう、持ち上げかけた腕をそのままに硬直している。
「残念でしたね」
 瑛華の声音は、まるで鈴を転がすよう。そうして放った弾丸は、竜牙兵のオーラの一部を霧散させた。
「観念してもらおうか」
 チビの属性注入を受け、真幸は冷たく竜牙兵を見遣った。返答は不要だと続ける言葉は、異世の神を一部召喚するものだ。
「来たれ神性。全て氷で閉ざせ」
「ヤメ、ロ……!」
「断る」
 真幸が表情一つ変えず告げれば、竜牙兵の全身が凍り付いた。軋む音が竜牙兵の全身を浸食しきった後は、砕けて細かい氷の粒となり、雪原の中にとけていった。
 雪の上を滑るように吹いた風は、もはや日常のそれだ。
「これで全員撃破ね、お疲れさま。これから雪合戦……といきたいところだけれど、先に公園を修復した方が良さそうね」
 そう話す響花が、公園内を見渡す。
 駆け回った跡にグラビティの跡と、そのまま雪合戦を行うにははばかられる風景がそこに広がっていたのだった。

●「竜」VS「牙」
 平和になった公園では、新たな戦いが勃発することとなった。
 チーム「竜」と「牙」に分かれての全力雪合戦だ。ルールはシンプル、『倒せば』勝ち。
 勝利の先にあるのは肉まんを奢って貰う権利で、敗北の先にあるのは肉まんを奢る義務である。

 公園にある遊具に隠れながら、チーム「竜」に所属する眸は素早く雪玉を製造してゆく。異常な手際の良さで作られた雪玉は、ほぼ真球だ。時折投げる雪玉の速度も、なかなかのもの。
 全力で戦闘に挑んでいた眸は、遊びにも真面目に全力であった。
「一之瀬、運搬を頼めるだろウか」
「はい、お任せください。運び屋として、こちらの雪玉を尾方さんと空野さんに届けますね」
 雪玉を運ぶ瑛華は、実は元少年兵だ。雪中戦の経験もそれなりにあるため、雪が深かろうと足跡がついていようと、舗装された道であるかのようにスムーズに移動する。
「お待たせしました、雪玉の到着です」
「おっ、ありがてえ! よーし、いくぞーっ」
 雪玉を受け取った広喜にとって、初めての雪合戦。彼が真正面からひたすら投げる雪玉が、「牙」チームに飛んでいく。
 実は雪合戦が初めての広喜だ。あちこち駆け回り、無邪気に本気で楽しんでいる。
「わわっ、雪玉いっぱい! 瑛華さんありがとーっ」
「どうしたしまして。……わたしも、少し投げてみましょうか」
 紀美の元に雪玉を届けた瑛華が、そのうちの一つを手に取った。引き鉄を引くのとは異なるが、狙いを定めるのなら慣れている。
「倒した方が勝ちだよーっ、それーっ! あったかい肉まんで温まるんだもんっ、負けられないよねっ」
 投げて動いて、紀美も大忙し。
「雪玉はこれぐらいでいいわね」
 うなずく響花は、「牙」チーム。久々の雪合戦、腕が鳴るという者だ。
 彼女の手元にある雪玉は、見事なボウリング球サイズであった。それを持ち上げて、
「頭よ! 頭を狙うのよ」
 ヘッドショットを狙う。
「わわわ、牙チームからなんかすっごいの来てるんだけどっ」
「任せろ、紀美!」
 と、身を挺して庇う広喜。当たった後はその場でひっくり返って、楽しそうに笑っている。
 命中率には少し自信があるという「牙」チームの真幸であるが、体力はそう高くないからと防御壁の陰で雪玉製造機と化していた。
 脇目も振らず雪玉を作る真幸の横で、チビもちまちまと雪玉を丸めている。
「ほらー男の子なんだから女の子を守れ―!」
 同じく「牙」チームの玲衣亜が笑いながらハリネズミくんを盾にすると、「マジかよ?!」と目を丸くする小動物、雪玉の直撃は避けられない。
「あははは、雪まみれー! ……って冷たっ!」
 それを見てさらに楽しげに笑う玲衣亜の足に、雪玉が直撃した。
「どうだっ、なゆきちさんー!」
「やるなー、きみきみ。ハリネズミくん、応戦だー!」
 と、ハリネズミくんごと雪玉を投げる玲衣亜。
「さあて、動き回る俺に雪玉を当てられるかな?」
 公園、特にジャングルジムの上を縄張りとする譲葉は、子ども相手の鬼ごっこで足が鍛えられている。
 軽々動き回っては、飛んでくる雪玉を一つ、また一つと避けてゆく。
「それならこっちはどうでしょう?」
「ふふん、見切っ……わぶっ!? ふぇ、フェイントだとー!」
 瑛華の雪玉を顔面に受け、譲葉はぶるりと体を震わせた。
「くっそう、応戦だ! 低いところからの雪玉は回避しづらいぞ!」

 雪合戦は、接戦だ。一人、また一人と倒れてゆく中、最後まで立っていたのは――。
 瑛華、だった。
「竜チームの勝ち、ですね」
 そんなわけで。
 譲葉は購入した肉まんを眸に渡した。肉まんを食べようとする眸であったが、すぐに手を止めた。そして背中に回していたもう片方の手が正面に回ると、紙袋が乗っている。中には、牙チームの人数分の肉まんが入っていた。
「せっかくダ、全員で食べよウ」
「飲み物もあるぞ。運動後は喉渇くしな」
 と、真幸も人数分のペットボトルを差し出して。
「すっげえ楽しかったっ! ……ん?」
 肉まんを食べ終えた広喜に、「小さい個体」――子どもたちが公園の様子をうかがっているのが見えた。
「雪合戦、再開できるぞー! なー、雪玉の作り方教えてくれよー!」
 大きく手を振り、声を張り上げると、子どもたちが笑顔でこちらに駆け寄ってきた。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年2月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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