ヒーリングバレンタイン2019~星空クリエイション

作者:東間

●ヒーリングバレンタイン2019
 いいニュースがある。
 そう切り出したラシード・ファルカ(赫月のヘリオライダー・en0118)の表情は明るい。
「君達ケルベロスのお陰で、ミッション地域から奪還出来た場所は順調に増えている。という事で、今年も『あの』イベントが行われる事になったんだ」
「ああ、『あの』イベントね? 良かった、今年もやるのね」
「……? あ、バレンタインイベントですか?」
 去年の事を思い出したのだろう。楽しげに笑った花房・光(戦花・en0150)の後、壱条・継吾(土蔵篭り・en0279)も、三角耳をぴんっと動かしてから小さく微笑んだ。
 ミッション地域をデウスエクスの手から取り戻した事で、住人のいない地域を引っ越し先候補にと考える人や、ミッション地域の周辺住民が見学に訪れる可能性がある。そこで解放された地域のイメージアップも兼ね、一般人も参加出来るレンタインイベントを──というのが毎度お馴染みのバレンタインイベントだ。
「俺が紹介する場所は栃木県足利市。花のテーマパークや日本最古の学校を持つ町だね。まずは市の中央を流れる渡良瀬川、そこに架かる橋を山側へ渡った先の、ここからここまでをヒールしてほしいんだ」
 ラシードはタブレットに表示した地図を指先でなぞって『ここからここまで』を示した後、イベント会場となるポイントを指し示す。
「イベント会場はここ、高校の調理実習室を借りてのバレンタインチョコ作りさ。ただし、テーマがある」
 真っ赤な目がキラッと輝く。
 それは空と宇宙の欠片の共演──星空のチョコレート。

●星空クリエイション
 四角、長方形、楕円、三角、動物型、星やハートといったマーク。
 その他色々エトセトラ。
 沢山の型が星空チョコの舞台。
 流し込むチョコレートの色や味はお好みで。
 噛めばビターな1色にしてもいいし、ワインレッドから柔らかなピンクに変わる苺風味や、抹茶香る渋い緑色、色も味も爽やかなオレンジにしたっていい。
 3色以上使って固まる前にぐるりと混ぜてカオスにするのも、ぽとぽとと落とした丸い雫に串を走らせてハートが浮かぶものにするも良し。
 瞬く星々の材料候補は、カラースプレーやアラザン、金箔に、星の形をしたチョコチップ達。彼方の星雲を描きたいなら、食用スプレーが頼もしい相棒となる。
 型よりも小さなチョコレートやクッキーを用意して、冷蔵庫へ入れる前にチョコの空に入れれば、食べた時の味わいや歯応えがまた楽しいだろう。
「型は薄めと厚めの両方が用意されるから、好きな方を選ぶといい。ちなみに薄めの型は噛めば簡単にパキッと割れる感じで、厚めの型は噛んだらバキッて感じらしいよ」
 何cmではなく歯応えでの説明にくすくす笑っていた光が、ふむ、と思案顔。尻尾がぱたり、ぱたりと左右に揺れた。
「相手のイメージカラーで作ってみようかしら……」
「いいね。候補が複数あったら、マーブル模様やグラデーションにするって手もあるし」
「クッキーやフルーツを乗せて立体的にする事も出来ますね。作り方次第では、かなりインパクトのある物が出来上がりそうです」
 どんな星空チョコレートにしよう。考えているうちに楽しくなったらしく、継吾の表情は幾分か柔らかくなっていた。
 見た目、食べた瞬間の香りや歯応え、味。
 様々な要素で、贈る相手を驚かせられるかもしれない。
 どんな星空を創り出すかは──あなた次第。


■リプレイ

 方々を癒し、竜翼広げ資材運搬。晟が市内を飛び回る度に日常は近付くが、頼り過ぎではと気にする者も。それを晟の言葉が払拭する。本番前や後片づけも含めてこその『イベント』だ、辛気臭くやった所で楽しくはない。
「それにこういったことも楽しまねば損じゃないか」
「は、はいっ!」
 笑顔が増えれば、甘い香と賑わいがやって来る。

「いやー、壮観だな!」
 長方形星空にはアラザンで、星形マーブル星空にはチョコペンで星を。まず2つ仕上げたハインツは自分の山羊座だけでなく全種を制覇し、余った材料製ミニチョコを密かに摘み食い。
「ハインツさんもたくさん作ったねえ」
 笑う悠の手元には厚い星空。ジャムやアラザン、食用金粉スプレーを使った白鳥座の散光星雲は計算通り。
 片や壮観、片や壮大。浪漫詰まった品々を味わう帰宅後のティータイムはきっと、素敵な時間になる。

「いてえ」
「あっチヨくんてば。駄目でしょさゆりちゃんの邪魔したら」
 万里は叱った後にステラを見、2つ作り上げる。スパイスの隠し味にレディ気に入りの赤いドライベリー。一角に白チョコの雨が降るそこには、翼猫と揃いの色したチョコチップ、無邪気に輝く金箔の月、皆を導くクッキーの北極星。そして道標の如く輝く星の海。
 伝える代わりのビターな深色が出来た傍、チヨもアラザンの星々煌めき、小さなクッキーサプライズ秘めた紅茶香る三角チョコを2つ拵えた。
「よし、完璧だ」
「チヨも万里も……大好き」
 ステラはラムネとビターの弾ける星チョコを2人の口へ放り込む。そして『あの子』と見た星空──丸い銀月、緋色の音符、敷き詰めた金星を黙っていてくれと、必死に頼むのであった。

「星形のチョコレートを作って、後はアラザンも振りかけてみましょうか? 銀の粒がまるで銀河みたいで綺麗ですし」
「その銀色のが、そうなんだ……」
 ミントは無月と共にチョコレート作り。チョコはミントが好きと言ったビターに。型は宇宙の深遠さをイメージして厚く。ミントが色々と飾り付け、最後に無月が食用スプレーを掛ければ、楽しみにしていた通りの美しさがそこに。
「完成しましたね、頑張った甲斐がありました」
「美味しそうに出来たね……」

 水色に染めたホワイト。ビター。色も味と見た目通りのバナナにブルーベリー。そんな小さい星を抱いた大きな星も、ミルクにメロン苺にソーダと多彩。
 厚さも違う果乃の星に銀箔が散り、串が模様描きカラフルアラザンも追加すれば、ほら完成。

 型は楕円。子犬座形にチョコチップを並べ、星雲の近くにカラースプレーを。アラザンの星輝かせたウォーレンは、光流が書き足した事も知らずチョコペン製アホ毛に首を傾げる。
 光流作の星空は厚く、ホワイトチョコの天の川を金箔やアラザンが彩り綺麗だ。両岸には赤とオレンジのグミ。
「織姫と彦星?」
「これは……その……レニと俺やな」
 すると瞳に似た綺麗なオレンジが赤星の隣にくっついた。星の想いをウォーレンが代弁する。光流は顔が熱くなった気がした。

「わ、綺麗なのが出来たねぇ。グラデーションが綺麗だ」
「ヴィくんのもすっごい綺麗! 一緒に眺めた星空を思い出すなぁ」
 ヴィの星形はビターチョコとホワイトチョコのマーブル銀河に、トッピングシュガーや粉砂糖が作る満天。小さく刻んだアンゼリカは雪斗の瞳色。
 雪斗のは窓から見るような長方形。ホワイトチョコにそっと混ぜた青が日暮れ色を作り、アラザンと金粉が満天を生む。仕上げは教えてもらった星、黄と藍の金平糖で作ったアルビレオ。
 いつまでも一緒に。そして、また一緒に星を見に行こう。

 【インプロ】の3人は皆で1つの星空を作っていた。まず定番のオリオン。嘘っコ少女座にそれからと歌うようなメリーナの隣、アンナマリアは金の食用スプレーを吹きかけ、上に薄くベリージャムを塗る。小さな星形クッキーとアラザンも散らして。
「そうね、カシオペア座でも作ろうかしら?」
「観客見守る北ステージ、堂々踊るは――はい、白鳥さん♪」
 銀アラザンの十字と白いチョコペンで生まれた小さな白鳥。皆の様子を横目で楽しそうに見ていたアンナマリアの目が、留まる。
「はい木星! はい海王星!」
 ミルティが次々作る惑星トリュフチョコ。満足げな彼女にとある事が伝えられる。
「え、型で作るの?」
 間の後に、でーーきた! と声が響いた。考えるのを止めたとも言う。

 今回のテーマを聞き、自分に相応しいと張り切った絶華のチョコは圧倒的パワーを秘めていた。カカオ濃度、漢方を用いたリアルかつ個性的な色遣いの星空、香り。そして、サイズ。
「試食自由だぞ。ん? なぜ目を逸らす?」

「日頃のお礼に、受け取ってくださいませんか?」
 レカが届けるのは銀箔の天の川を輝かすビターな焦茶の星と、紫色のビオラ一輪咲かせた淡紫の縞模様持つ真白の星。ナザクも星を2つ作っていて。
「ハッピーバレンタイン……と、誕生日おめでとう。18歳のレカにも良い事が沢山訪れますように」
 赤みがかったオレンジとホワイトのマーブル模様には金箔が散りばめられ、予想外に難儀し咲かせたピンクアラザンの花はミルクの星の上。
 レカの目が輝く。良い事なら今、早速訪れましたとも。

 どんな星空にしようか内緒話を紡ぐラウルとシズネが作るのは、これまで共に映してきた星の彩。
 厚めのビターチョコを藍夜に変えたシズネが一粒味見する間、ラウルが降らし、燈すのは綺羅の輝き。星の魔法使いの技は橙の瞳も星のように輝かせ、果実が一粒、ぷつりと口の中で弾けた。最後にショコラを2つ浮かべれば、それが2人の星空に。
「今までおめぇと見た星空の中で、いちばん美味そうだ」
「君とだから、カタチにできた」
 2人浮かべる笑顔は、星空に寄り添い燈る青と橙のように煌々と。

 黄緑赤のマーブル銀河の主役は果肉入りバナナ。星は色付いたナッツ類。オッサンはい、とサイガから薄く長い星空の半分を受け取ったラシードが一瞬呆け、パッと笑顔に。
「味見なら得意だ」
 バキリと一口。親指立て笑顔で頷く様は予想通りだが。男の手元にある家用チョコを見てからニヤリ笑う。
「そりゃ全部アンタの分だ、返品不可」
 だって今日は、そんな日だろう?

 眸の為にと広喜は楕円形の型を選び、悩む。自分のコアに似た青色はどう作れば? それは食用スプレーを見付けた瞬間に解決する。
「眸、眸、これすげえっ!」
「ああ、良かッタな」
 ホワイトチョコに青空のような宙が描かれる間、眸も広喜の為にと菱形の型をした星空作り。自分の色に近くなるよう2つを混ぜたエメラルドグリーン。僅かに散らした金箔はまるで。
「なあなあ、眸と俺の色だぜ」
 笑う目の先には金と銀のアラザンが作る星空。
 並ぶ楕円形と菱形は、互いのコアのようにきらきらと。

 イヴァンは深く悩むアレクサンドルを気にしつつ紫、青、茶で作っていく。銀の粗目掛ける隣、アレクサンドルも過ぎる時間に気付き急ぎ作り上げた。満足げな手元に届いた物は。
「……俺の色を閉じ込めてみたよ。これを食べる時に、俺のことを思い出して食べてくれたら、嬉しいな」
「こんな素敵なものを貰って思い出さないワケないじゃん……」
 近くにいれたら嬉しいと心こめた小瓶には白リボン。絶対忘れられない魔法へのお返しは金に煌めく星形チョコ。

 陸から見た夜の輝き思わす真理の星空は、チョコペンやアラザンで星描いた丸いビスケットチョコ。見る場所によって全く違うからと丘や海等も描かれ、実に豊か。
 マルレーネの前に並ぶ2つはホワイトチョコの尾を持つ流れ星。完成したそれへ触れる前に。
「真理とずっと一緒にいられますように」
「じゃあ私は……マリーと、これからもずっと幸せでいられますように、ですね?」
 流星チョコなら、流れ星のように消えたりしない。

「星? 私は見えただけで嬉しいから」
「そっか。オレは冬かな」
 体温高めな為寒さには結構強いと光と雑談交えるサイファだが、星空が山道に金箔はまるで砂利に。悪戦苦闘&超没頭。慌てて謝り、首傾げる光へ贈るのは一番綺麗に出来た三層四角チョコ。

 厚いビターチョコの星に銀のアラザンを元気に散らせば一気に星空らしくなり、スバルの声が弾む。
「……ビターが好きなんですね?」
「色が濃い方が暗くて夜空っぽく見えるかなぁと思って。でも、ヒナキの作った方がキレイで美味しそうだね」
 同じ型でも薄めの星は食感重視、スタンダードなミルクチョコ。酸味香るオレンジを1つ、躊躇う事無くスバルの口元へ。
「うん、うまっ! めっちゃ美味いよこれ!」
 ヒナキの作る物なら絶対美味しいけどねの声は心の中。自分のも食べてみてと笑顔で差し出した。

 甘さ濃い紺青の帳、四角チョコには箔とアラザンの銀星にドライストロベリーの赤も。願う甘酸っぱい春告げの味に出来、藤尾は味見を頼んだ継吾に礼を言うと、継吾作の濃藍の星空を見て素敵ですよと目を細めた。
「惜しまず手を掛けた分、心もきっとお口へ届くでしょうね」

 出来たと声弾ませたマヒナの手元には厚い長方形。ビターチョコに浮かぶ惑星もとい酸味あるグミはソーダに苺、パインにオレンジ。散らした金箔も相まって宙を切り取ったよう。
 惺月の星空も長方形だ。ミルクチョコの空に星形ポップシュガーが輝き、創作星座の猫座やペンギン座が白く描かれている。
 出来たばかりの星空はその場で感謝と共に交換こ。
「今日は……誘ってくれて……ありがとう」
「ワタシの方こそありがとうね」

 ヨルの指先から零れた金箔が、中に甘いミルクチョコを秘めた黒い星座チョコに煌めいた。
 ひそり作り終え、ふと周囲を見れば賑わいに満ちている。自分は義務を果たせたら其れでと思うけれど。
「でも、どうせなら出来るだけ綺麗にしたい、わ」
 追加の魔法にリボンをひらり。

 艶めく蒼黒。輝き彩る甘い天の川。そっと置いた甘い白星は北極星。恋人の故郷の味、蒸したひよこ豆秘めた薄く円い星に、クーは自分もやれば出来るじゃないかと笑み──見惚れてた光へ『射手座』を送る。
「これからも仲良くして貰えると嬉しい」
「喜んで。私からも」
 それはダイヤ形の星空。交わした輝きは一足早いハッピーバレンタイン。

 ヴェルトゥは星型へエレオスを思わすホワイトチョコとミントチョコを流し込み、ゆらり流れるマーブル模様へ。銀の粒と甘い白星散りばめれば、煌めく翡翠色の天の川が生まれる。
 そこにチョコの小鳥が2羽飛んだ頃、エレオスの作った真っ黒な宙に純銀箔の星雲が瞬いた。小さな宙に薄水色の粒や鮮やかなドライ苺、宝石の如きオレンジピールと艶めく星々も加わる。
 出来上がったら交換を、と言葉交わすが。
「勿体なくて食べられないかもな」
「確かに」
 互いに相手をイメージした星空を前に、笑顔が並ぶ。

 2人が乗っても大丈夫そうな大きな星を、なんて。如月は萌花へ笑いかけ、薄い楕円形の型でややビター寄りのチョコを作り、自前の星型で作った苺チョコを乗せる。カラースプレーと銀の食用スプレーで軌跡も作ればピンク色流れ星の完成だ。
「ふふ。如月ちゃんのチョコ可愛い」
「萌花ちゃんのも綺麗なのよぅ♪」
 ベースのホワイトチョコと苺チョコのピンクの淡いグラデーションは厚めの長方形。アラザンや砂糖漬けの薔薇と菫の花弁が、銀やピンクゴールドの銀河に舞う。
 一緒に食べる前に、ぺろりと指先を味見しちゃおうか。

 星形チョコチップや金粉抱いた星空は紺から薄青に艶めき、その下は薄めのチョコでチョコ味パウンドケーキを挟んでいる。
 愛嬌ある形に自分の力量を見、むぅ、と唸ったマルティナの隣。金の食用スプレーとアラザンで輝く円い紺色の宙と同じくらい、雪菜は目を輝かす。
「わあ、和のはりかーだ! 可愛いなあ。リズのは……すごい、ハート型でも合体するんだね!」
 軽く金粉散らした朝焼け空の色に、和の瞳に似た抹茶色の星1つ。見た目楽しい星空の中に隠れる小さく刻んだドライフルーツは、宝探しになりそうだ。
 リーズレットの星空は少し細長い6つのハート型を1つにした物。中の層はホワイト、苺、普通のチョコで、煌めく星空は散りばめた金粉や銀色チョコ。
「それはとっても素敵な魔法の力♪ 届け大好きな皆へ! そして……」
 後はナイショに雪菜も内緒と笑い、和はいいこで留守番してる相棒・りーかへ。マルティナはというと。
「私はまぁ、何というか……想い人、に?」
 楽しいお喋りは、来られなかった皆へのお土産話へと。

「実は大昔に失敗してから料理だけはしねぇって思ってたンだよね。だから今めっちゃ緊張してンだけど」
「私も緊張してきたわ……」
 キソラと光は小声で笑い合う。好きなフレーバーの話で緊張は解れ、厚い星型に光から聞いたオレンジ風味、もう一方には別の物を慎重に。最後に金箔をきらり。
「綺麗ね……!」
「監督のお陰デス。それとこれ――授業料と、先日のお礼」
 差し出した物に返ったのは、笑顔のお帰りなさい。

「クローネちゃんはどんなのにするの?」
 淡いピンクから深いワインレッドに変わるのは、時と共に少しずつあの人色に染まるさくら自身。なんて。最後は、見つめられると胸高鳴る瞳に似た金箔の星を沢山。
「ぼくが作るのは、最初から決めてあるんだ」
 クローネはいつかの思い出を丁寧に辿り、ざくざくのクッキーを型の底へ。チョコの夜空に輝くアラザンの星と一等星のチョコチップは好きな人と初めて見たあの星空。
 冷やすその間は、チョコより甘いコイバナタイム。

 めろの推理通り春乃の本命チョコは別。柔らかな苺風味の星はユアの、爽やかなオレンジの星はめろの分。2人を思わす色のハートも浮かび、星の上に1つと2つ、抹茶とオレンジの星がキラリ。
 めろがパンドラと共に作ったのは2人の主と見た夜空。ダークチョコの空の下、境界無くしたホワイトチョコの砂浜とミルクチョコの海。パンドラが齧ったまん丸の月は切り抜かれ、金平糖散らした三日月に。
「いいなぁいいなぁ、バレンタインらしい♪」
 ユアの白い三日月は柔く甘く、ワインレッドの星は苺風味。不器用ながらも一生懸命作る姿を、咲乃とめろは覚えていた。気になる人はとキラキラ瞳に訊かれ、首傾げ、考えて。あげたい人はいるっ、と輝いたのは無邪気な笑顔。
「わたし、ふたりの話、もっと聞きたいんだけど……今度、たっぷり聞かせてね?」
「んー、ふふ、渡したい人は沢山いるのだけどね。勿論、2人にもよ」
 甘い香りの傍、恋バナと共に咲いた3人の笑顔は花の如く。

 鬼人が名を呼んだのは、苺チョコで彗星ライン描いた半月──甘めのミルクチョコの隣に、銀の食用スプレーで月模様描く抹茶の半月が並んだ時。
「もし、ヴィヴィアンと出会わなかったら俺は、一人で寂しく空に浮かんでる月だったんだな」
 今は、寄り添ってくれる薔薇がいるから、夜空漂う月も寂しくない。
 ヴィヴィアンは赤い食用花の花弁で薔薇を咲かせ、同じだよと笑った。
「月が照らしてくれるから、綺麗に咲き誇っていられるの」
 合わすと1つになる半月を2人で食べるなら、あの珈琲と一緒に。

 隣で一緒が幸せだから御影とエトワールが作る星空もふたりでひとつ。大きめの星型満たした夜空を御影が掬い、少しビターな大人の味にエトワールがへにゃり笑顔浮かべれば、味も決定。
「すてきな星空になーれ!」
 エトワールがぱらぱら降らせたアラザンに御影が目を細め、甘い緑星シュガーを月のクッキー近くに添える。その意味は。
「……一緒、」
 寄り添う三日月と綺羅星。ふたりでひとつの綺麗な星に少女の頬が緩む。
 食べたら消えてしまうが撮った後に半分こすれば──それも『一緒』の思い出に。

 薄い星型が並ぶ。メロゥの星はミルクチョコとホワイトチョコのマーブル、梅太の星は甘く可愛らしい金糸雀色。
 頼もしきメロゥ先生と一緒に飾り付ければ、アラザンや小さな星の砂糖が甘い星を彩って。メロゥがチョコペンで雲と星、それから隅に梅の花を。梅太も星のように沢山の花を咲かせれば出来上がり。
「わ、梅太のお星様かわいい。それにとってもおいしそうだわ」
「上手でしょう。なんて、メロのお陰だよ。メロのも、かわいい」
 金糸雀色と鮮やかな若葉色が交わり、細められる。
 出来たての甘い星は、愛しい人の元へ。

(「お酒が好きだから、ブランデーを入れて」)
 ワインレッドの星にハートをいっぱい散らしたら驚くかも。
 作りながら恥ずかしくなったクィルの顔は、普段と違い今日だけ特別な背中合わせで見られはしないが、ふにゃふにゃ気配は背中越しでも、何となく。
 ジエロが気にしながらも丁寧に作ったオレンジ、チョコ、ホワイトの三毛猫は、金箔夜空なビター風味のリボン付き。これを楕円の星空と──。
「そろそろ出来ましたか?」
「もうちょっと」
 口元に人差し指が、ぴたり。お楽しみは、もう少し後。

 義父ではなく恋人へ。エヴァンジェリンの言葉に里桜が仰天したりしつつ、2人の星空チョコ作りは順調に進んでいく。
 里桜の星空は厚めで、ビターと苺のマーブル模様。味は親友のアドバイスにより少し甘めだ。エヴァンジェリンの少し厚い星形はラムのガナッシュ包んでおり、銀の星雲に輝く2つの金箔星は彼の瞳と双子星。
「当日までは親友同士のヒミツ、内緒にしようね」
「えぇ、当日までは内緒」
 笑顔で“しーっ”。
 ドキドキの本番は、明日。

作者:東間 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年2月13日
難度:易しい
参加:60人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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